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「ひとりマーケター成果を出す仕事術」出版記念オンライン共催イベント(全3記事)

新しい施策を打つ時「横断部門からの口出し」を減らすには ひとりマーケターの“がんばり”を社内認識してもらうコツ

ナイル株式会社大澤心咲氏の著書・『ひとりマーケター 成果を出す仕事術』の出版を記念して、株式会社ナイル、ブランディングテクノロジー、Baseconnectの3社共催によるオンラインイベントが開催されました。本セッションでは、元ひとりマーケターのゲスト2人を迎えたパネルディスカッションの模様をお届けします。孤軍奮闘する“ひとりマーケター”の悩みについて議論が交わされました。最終回の本記事では、参加者から寄せられた質問に答えました。

マーケティング意識を浸透させる、「感想」の社内共有

大澤:では、残り10分くらいでQ&Aにお答えしていこうかなと思います。質問がいくつか来ているみたいです。事前にいただいていた質問やQ&Aに書いていただいている質問をスタッフのほうで転記してもらっているので、答えられる範囲で答えたいと思います。

「マーケティング意識の浸透のためのポイントが知りたい」は、先ほどのマーケティングトレースの話とちょっと似てきますね。マーケティングトレースは、マーケティング担当者以外の方とはあんまりやらないワークですかね。

黒澤:そうです。ここに関しては、マーケティングトレースはあくまで戦略回りの認識を持つ目的として活用できます。

マーケティング意識の浸透だと、顧客価値に対する共通認識を持つのはすごく重要だなと思っているので、顧客課題やユーザーインタビューとかを、部門横断でちょっと経営層を巻き込みながらやるのを合わせるのが、非常に重要なのかなと考えています。

大澤:マーケティングの意識が何を指しているかもちょっと難しいところではあるんですが、「デジタルマーケティングの効果が見えづらいから全体的に浸透していない」という文脈からいくと、マーケティングのチームがどういう取り組みをしているかといった部分もご理解いただけていないのかなという感じを文面から察しています。

回答の方向性が間違っていたら申し訳ないんですが、その捉え方が合っていたとしたら、まずマーケティングの難しい話というよりは、デジタルマーケティングでSNSをやっていらっしゃるということなので、「SNSでこういうことを書いたらリプライでこういううれしい感想をもらいましたよ」とか(を社内に共有する)。

弊社が今でもやっているのが週に1回弊社のメルマガを出すことなんですけど、「今日のメルマガ、おもしろかったです」とか、メルマガの感想をなぜか返信メールでいただけることがあるんですよね。

そういうものでも社内に共有すると、「マーケティングチームはこういう仕事をしているんだ」と少しずつ仕事の内容を理解していってもらえて、「マーケティングチームはああいう仕事をしていると言っていたから、今度この情報を共有してあげようかな」と、ちょっとずつ意識が向いていくんじゃないかなと思います。

前提が間違っていたら申し訳ないんですが、私の肌感覚としては今までもあったかなというのがあります。

ポジティブなコメントを「ハッピーシェア」

河村:そこでちょっといい技があるので、共有させてほしいです。

大澤:教えてください。

河村:実は今の会社に入ったのが直近なんですが、そこからずっとやっていることがあります。

「ハッピーシェア」というのがあって、今おっしゃったとおり、Twitterで「Musubu」や「Baseconnect」に対してポジティブなコメントをくれている方や、例えば社内で「新しくやった施策の初動がすごくいいですよ」「データをまとめたらすごくいい結果が出ましたよ」というのがあったら、こまめに全社にALLで送っているんですね。

それによって何ができるかというと、マーケティングは結果がわかるまでなかなか期間がかかるので、こまめに情報を出してあげることで、「こういった取り組みをしているんだな」と社内に浸透させることができる。

かつ、ポイントは「ハッピーシェア」と書いていることです。「マーケティング、やったぜ。どや!」とやったら、「あいつらのリード、質が悪いじゃねえか」と営業から刺される。

(一同笑)

河村:それよりも「お客さまからうれしい声・うれしい反応が届きました」として、社内に「マーケティング部はお客さまのことを考えているんだな」「お客さまにこんなに反応をもらっているんだ。僕たちもがんばろう」という雰囲気を醸成してます。

大澤:なるほど。「お客さまがこういう声をくれているのは、マーケティングチームのメンバーが何かやったからというよりは、ふだんの営業の対応や自社の商材そのものがいいからですよ」と共有するのは、かなり大事ですよね。

河村:大事です。

「お客様のことを考えている」という社内認識が、新しい施策をやりやすくさせる

河村:例えば、「『Musubu』の機能、めっちゃ使いやすいです」というコメントだったら「システムチーム、ありがとう」とか、「CSの対応最高ですね」だったら「CSチーム、ありがとう」とやると、盛り上がるんですよ。

話が長くなってごめんなさいね。何が言いたいかというと、「マーケティングチームはお客さんに一番近い人だ」という認識を社内で持ってもらうので、新しい施策を掲げた時に反発を受けづらいんですね。

お客さんのことを常にウォッチしていて情報を持っている人だから、新しい施策を打つ時にも「お客さんのことを考えているからやってくれる」となって、横断部門の横からの口出しが減るんですよ。これを3ヶ月間やっています。

大澤:大事ですよね。どんなに大事な施策でも、社内の人の「Go」がなかったらできないものってありますもんね。なるほど、ありがとうございます。

次の質問は、「具体的で効果的なマーケティングの仕方がわからず、頭を抱えている」なんですが、この一文だけだとこの質問者さんが納得いくようなレベルでの具体的な回答ができるかは若干難しいかなとは思います。

「具体的で効果的なマーケティングの仕方がわからない」の一文だけを見ると、私はできることをとにかくいったん洗い出して、やりたいことも洗い出して、現実的にできるものから優先順位をつけてやっていく、施策を回していくという回答になってしまいます。

黒澤さんと河村さん、この1行をパッと見た感じで、この情報だけで伝えられることとして「こういうのどうかな?」というものがもしあれば、質問者さんの役に立てればと思います。

施策ベースで止まっているなら、まず「顧客ヒアリング」から始めてみる

黒澤:ちょっと的外れだったら申し訳ないのですが、ただ鉄板かなと思っているのは、まずはその施策よりは、どの顧客セグメントに対してアクションを取るのかを決めたほうがいいかなと思っています。

新規事業だったら申し訳ないんですが、既存顧客はおそらくいらっしゃると思うので、その中でLTV(顧客生涯価値)が高いとか、満足度が高いとか、そこの顧客セグメントをしっかり抽出して、その層に対して可能であればインタビューをする。

ふだんどういう情報収集をしているのかだったり、要はどのチャネルにその層の人たちがいるのかを理解して、そこに対してどういうアクションを取れるかという順番で考えていくことができれば(と思います)。

もし「施策ベースで何をやったほうがいいのか」というので止まってしまっているようであれば、確度が高い打ち手はとりやすいのかなと考えています。

大澤:確かにそうですね。「頭を抱えている」というのがどの程度かですが、本当に困って何もできないという感じだったら、やはり顧客ヒアリングから始めてもいいかもしれないですよね。

施策ではなくて、既存のお客さまに話を聞いて、うちの良いところが何で、何をきっかけにうちを知ってもらったのか、そのきっかけをもっと強める動きはできないかなとか、顧客ヒアリングを先にやってもいいかもしれないです。

黒澤:ヒアリングや調査で行ったところがちょっと動きにくいようであれば、成功事例コンテンツの作成という名目というか、そのアウトプットを作ることを前提に、一番評価してもらえているお客さまに、ちょっと前段階のところも聞くことからやる。

成功事例コンテンツは、BtoBのマーケティングだったらマイナスになることはないというか、コアなコンテンツになるので、そこから始めちゃうのは有効かなと思います。

ひとりマーケターが読んでいる本は?

大澤:承知しました。Q&Aに事前にいくつもいただいていたみたいですよ。可能な範囲でメルマガとかでも回答できればとは思っているので、いったんQ&Aチャットにすでに来ている質問のほうもご回答できればと思います。

パパッと答えられるものだけ先にお伝えすると、(「大澤さんが購入された本を知りたいです!」という質問に対して)まず私が購入していた本です。

「本を読んで施策を洗い出して」という話だったと思うんですが、『THE MODEL』は買ったのと、広告関係の本もちょっと買っていたんですが、そのあたりは今パッと出てこないので、見つけ次第Twitterとかに貼っておきます。『THE MODEL』はめちゃくちゃおすすめです。

あとは、『顧客起点マーケティング』という西口一希さんという方が書いた本です。河村さんの背後にあるんではないかな?

河村:本棚にありました。これですね。

大澤:これですね。これも私はめちゃくちゃ溺愛しております。あとは、ベタですが『確率思考の戦略論』です。これもけっこう難しい本ですが、かなり読みました。toC向けのマーケティングが書いてある本なので、「toBで真似するなら何を変えるべきか?」という視点で、本にガリガリ書き込んで読んでいました。まずこの3冊がおすすめです。

河村:『THE MODEL』は、これです。

大澤:そうですね。『THE MODEL』はこの黒い本ですね。

黒澤:鉄板なんですね。

大澤:はい。インサイドセールスのことを考えた時に、最初に読んだ本ですね。

顧客へのヒアリングで「競合との違い」を聞いてみる

大澤:あとは、「お客さまへのヒアリングで具体的に何を聞いていたか」ですが、私が絶対に聞いてるのは、競合他社と弊社にそれぞれどんな印象を抱いているかです。

両方ポジティブな印象でもいいし、マイナスな印象でもいいんですが、「ナイルさんは真面目な印象があります」「競合他社さんの返信が早いイメージがあります」とか、何でもいいので他社と比較したイメージは絶対に聞くようにしています。

少なくとも私は比較によって物事が見えやすくなる感覚を持っているタイプなので、競合との違いは聞くようにしています。

あとは、「ナイルさんは真面目ですよね」と言われたら、「なんで真面目だと思いますか?」「どういう時に、弊社のことを真面目だと感じましたか?」と、なるべく具体的なエピソードを引き出すようにお客さまへのヒアリングではやっていました。

先ほどの河村さんが見せてくれた赤色の『顧客起点マーケティング』にも、そういった顧客ヒアリングのTipsというか、やり方は載っているので、こちらを読んでいただくと何を聞けばいいかがかなり明確になるかと思います。

河村:黒澤さんの本(マーケター1年目の教科書)もよろしくお願いします。

大澤:黒澤さんのこの本もよろしくお願いします。

黒澤:河村さんが8割くらい書いてるので。

大澤:河村さんも書いていますもんね。

河村:ちょっと(第3章・第1節)だけです(笑)。あと最後に一つだけ、大事なことを思い出したんで、これだけ伝えていいですか?

大澤:どうぞ。

河村:僕の師匠の名前ですが、宮本でした!

(一同笑)

ツール導入の社内交渉のコツ

大澤:これはちょっとおもしろいケースかなと思っているんですが、「『HubSpot』の購入を社長に直談判するんですが、どうやったら通ると思うか?」という質問です。「社内交渉をどうすればいいですか?」ということだと思います。

ちなみに、私もちょうどつい最近、とあるツールの購入を上司と社長に(相談)して、決裁を無事に取りました。「作業が多いため、作業を自動化するために」と書いてあるので、一番やったほうがいいのは、何の作業が何時間あるかがどのくらい可視化されているかで、けっこう鍵を握るんではないかなと思います。

「その時間が浮くんだったら『HubSpot』を入れたらいいじゃん」となるくらいちゃんと可視化されているのか、あるいは「その浮いた時間を使って、プラス『HubSpot』でこういうことができるので問い合わせが何倍になります」みたいなシミュレーションをちゃんと見せる。これをやるとけっこう議論は進むかなと思うんですが、黒澤さんはいかがでしょうか?

黒澤:うちの場合だと、「『Marketo』を入れて」というところはありました。大澤さんがおっしゃっていた業務効率がどう上がるかと、浮いた時間を何に使うかしかないかなと思っています。自分がけっこう合意形成する。

あとはお客さんのところでも推奨しているのは、MA(マーケティングオートメーション)を入れて、MAの費用対効果というよりは、マーケティング全般の計画をちゃんと示す。

そこに基盤として、「固定費でMAがこれくらいかかります」という全体像をちゃんと示すことのほうが重要かなというのと、経営層が理解しやすいかなと思っています。

年間のマーケティング計画をしっかり作って、マーケティング予算全般の中にMAがどう入っているのかを示すのを、自分は意識しているかな。(それが)大事かなと思っています。

大澤:ありがとうございます。以上でセミナーを終了します。ありがとうございました。

『ひとりマーケター 成果を出す仕事術』(マイナビ出版)

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