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片岡教授による無料体験講座(全4記事)

人間の「長寿化」と企業寿命の「短命化」によって起きること キャリアを目標ではなく「目的」で考えたほうが良いわけ

修了後の人生の飛躍を目指して「ミドルの学び直し」に取り組む「多摩大学大学院MBA」主催の無料体験講座に、『「目標が持てない時代」のキャリアデザイン 限界を突破する4つのステップ』などの著書を持つ客員教授の片岡裕司氏が登壇。目的を探すための28の問いや、意志の重要性を説いたダライ・ラマ14世の言葉などが語られました。

人間が長寿化したのに、企業寿命が短命化して起きること

片岡裕司氏(以下、片岡):「キャリアの目的」という言葉がわかりにくいので、最後に、少しだけキャリアの目的の解説映像を見ていただきます。

【映像再生】

ナレーター:ビジネス、世の中の変化のスピードがますます早く、そして大きくなっています。事業再編、M&A、イノベーションなど、たくさんの変化がありますが、私たちに大きな影響を与えるものとして、キャリアを取り巻く環境と考え方の変化があることはご存じでしょうか。

特に大きな環境の変化は、人生100年時代化です。この映像を見ている方の人生は、好むと好まざるにかかわらず100年近くになると言われ、そして、その長期の人生を支えるには、多くの方が80歳近くまで働く必要が出てくると言われています。結果、職業キャリアは50年近くに長期化します。

しかし、長期化するものばかりではありません、短命化するものもあります。それは、企業や技術の平均寿命です。事業再編やイノベーションの影響が大きく、現在その平均寿命は20年とも言われています。

長期化と短命化、みなさんここで大事なポイントに気づきましたでしょうか。その答えは、私たちの職業キャリアが、組織や産業の寿命を超えてしまっているということです。

結果として何が起こるかというと、自分のキャリアのベースとしてきた組織や専門性、そして、その上に築かれている目指すものが失われる時代となり、人によっては何度もそんな経験をする時代となります。キャリアは、目標喪失の時代に入ったのです。

キャリアを形作っていくには、目標は重要なパートを占めますが、その目標が次々に消滅する時代。そんな時代に私たちにとって重要で明確化が必要になるのが、今回ポイントとなるキーワード「キャリアの“目的”」です。

なぜ重要で必要なことなのか。それは簡単に言うと、目的が明確なことで、目標をいったん失っても、また再生ができるようになるからなのです。

目標は「becoming」、目的は「being」

ナレーター:キャリアの目標は通常、「私は何々になりたい」とか、「私は何々になるぞ」といった表現で表されます。英語で表現すると、「becoming」となります。現在はAという状態ではなく、今後の努力を通じてAになっていくぞという構図になります。将来は、医師になりたいというキャリア目標を持っている高校生は、当たり前ですが、現状では医師ではありませんよね。

これに対して、キャリアの目的は、「私はいつも何々でありたい」「私は何々な存在でありたい」といった表現で表されます。英語で表現すると、「being」となります。現在Bという状態で、未来でもBという状態であり続けたいという構図になります。

将来、医師を目指している高校生のキャリアの目的が「他者の苦しみ・ピンチを助けられる人」だとします。

自分が小学生の頃に大病を患ったものの、担当の医師に助けられたことや、病気を治すだけでなく親身に自分の悩みを聞いてくれたという原体験から、その目的に到達したとしたら、高校生はまだ医師ではありませんが、クラスの仲間が困っている時、寄り添ってあげたり、具体的に手助けしてあげたりすることもできます。これがbeing、キャリアの目的となります。

この高校生は、他者の苦しみ・ピンチを助けられる人として、今も未来もあり続けたい、という軸を持つことができます。

もし、医師になりたいという目標レベルの認識で止まっていたら、医学部に合格しなかった時に、子どもの頃からの目標・夢を失うことになるかもしれませんが、自分の目的が他社の苦しみ・ピンチを助けることと定まっていれば、カウンセラーになろうと思ったり、学校の先生というかたちで夢を実現しようと思ったり、はたまた、警察官になってピンチの人の助けになろうと思えるかもしれません。

キャリアの目的が明確になることで、目標喪失や、自分に起こるショッキングな出来事を超えて、前進できるようになります。

キャリアの目的を少し言い換えると、人生の目的となるかもしれません。人生の目的なんて言われると、「そんなすごいもの、そう簡単に見つからない」と思われるかもしれませんね。でも、安心してください。キャリアの目的は、すでにあなたの中にあります。未来を見通さなくても、これまで歩んできた人生を丁寧に振り返ることで、きっと見えてくるはずだからです。

これまでのキャリアは目標を達成することで充実していきましたが、これからのキャリアは目的に沿って行動し続けることで充実していきます。目的が明確でないと、いろいろな変化の中で、自分を見失ってしまうかもしれません。ぜひ、みなさんも目的を持ったキャリアを過ごしていきましょう。

【再生終了】

目的を探すための28の問い

片岡:私の講義の中身もほぼほぼカバーできるので、少し使わせていただきました。

目標を創出しなくても、環境は変わっていきますし、私たちのライフステージもたぶん、今までとは違う過ごし方をしていくはずです。

その中で、目的を持ち続けていれば、30代、40代、50代、60代、70代、80代もおそらく働くでしょう。自分自身を見つめながら、積み上げていろんなチャレンジができるといいかなと思います。

私の本や講義の中では、キャリアカウンセラーがキャリアの目的みたいな軸を探求する時によく使っているテーマで28個の質問集を作ってます。

これにぜんぶ答えるのはなかなか難しいんですけれども、1個ずつ答えてもらいながら、自分のキーワードを考えてもらう。強制発想法で、「私のキャリアの目的は何々する存在であることです」なら、何と言いますか? みたいな質問集を作っています。

今日の時点で「キャリアの目的はこれだな」と作ったものが、いろいろな経験をする中で、変わっていくかもしれません。それが変わるからと言って「自分は軸がなくてプレている」というわけではなく、自分の軸が成長したり、見えていなかった軸が見えてきたと前向きに捉えていただけるといいかなと思います。

何かができたとか、収入が増えたとか、そういうことも大事ですが、目的が満たされていく状態を見つめられると、とてもいいと思います。

意志の重要性を説いた、ダライ・ラマ14世の言葉

最後のまとめに入ります。冒頭で紹介した人生100年時代のリンダ・グラットン先生は、「社会開拓者を目指せ」と言っています。

我々は、寿命を倍化させるという革命を達成したんですね。人類史上最大の成果は寿命の倍化、人生100年時代をもたらしたことです。「医療制度が破綻する」「年金制度が破綻する」と心配するばかりではなく、寿命倍化の中で、新しいストーリーや新しい神話を生み出さないといけません。

自分のストーリーをつむいで、新しい物語を作る。日本は人生100年時代の世界のトップランナーになっていくはずなので。ぜひ、新しい人生の過ごし方を、みなさん自身も体現できるといいかなと思います。

大事なことは、「よい人生とは何かに意志を持つ」ことだそうです。

「人は金を稼ぐために健康を犠牲にして、健康を取り戻すために金を犠牲にする。未来を心配しすぎるあまり、現在を楽しめないし、その結果、現在を生きることも、未来を生きることもできなくなっている。そして、自分の命が永遠に続くかのように漫然と生き、真の意味で生きることがないまま死んでいく」。

私に言われても「なにくそ」と思うと思いますけれども(笑)、ダライ・ラマ14世に言われれば納得していただけますよね。私も、そうだよな、そうならないようにしないとなと思っています。

こんなことを言うと怒られてしまいますけれども、リンダ・グラットン先生も私と似たようなことを言っています。将来を見据えて、先手を打つことが大事です。人生100年時代を前提に、未来を重んじた選択を行うことが大事だということです。

その行動を妨げるのが、ありうる自己像です。私も自己像が狭かったために、実家の稼業を継ぐのか、サラリーマンを続けるのかという、狭い選択肢しか持てなかったわけです。

でも、世の中にはもう無限の選択肢があります。ありうる自己像を広げていくことがとても大事です。選択肢の広がりを自覚し、選択肢を閉ざさないことが重要です。

社会人大学院の価値

そして、可変性と再帰性が大切なので、なるべく早く取り組んだ方がいいです。人生の移行期間が直線的でなくなることも受け入れる。マルチステージに抵抗感を持たないことも大事です。

働きながら大学院に通うのが、多摩大学大学院の特徴の1つですが、働きながら大学院に行っている人なんてなかなかいないので、ある意味、移行期の練習になります。多摩大学大学院が終わると時間が作れるようになっているはずです。それを使って次のマルチステージに進められるといいのではないかと思います。

想定されるリスクに備える学びや理想の自分を目指した学びはいろんなところでもできるかなと思いますが、想像以上になる学びは、私は大学院でしかできないかなと思っています。

多摩大学大学院の修了生だと言いましたが、私は社会人大学院のような、ビジネススクールのようなものを2つ修了しています。ケーススタディで学ぶところで2年間学び、その後多摩大学大学院に来ました。ケーススタディで学ぶことはすごく楽しかったですし、左脳はすごく鍛えられました。考える力がすごくついたなと思います。

でも、なかなか納得がいかなかった。当たり前ですけれども、ビジネスの理論は、起こったビジネスを前提に作られます。なので、1990年代のビジネス理論は、1980年代のケースをベースに作られますし、2000年の理論は、1990年のビジネスを参考に作られるわけですよね。

過去のケーススタディをその事象をもとに作ったフレームワークできれいに説けるのは当たり前です。事実を通じて作ったフレームマークなので。でも、我々が今対処したいのは、今の問題であり、未来の問題です。

過去のフレームワークで、今と未来の問題に対処できることもたくさんありますが、対処できないこともたくさんあります。私はコンサルタントであり、経営に携わりたいと思っていたので、「これでは物足りない」と思いました。

右に倣えをしないこと

多摩大学大学院では論文執筆があり、当時は「めんどくさいな」と思っていましたが、修了してからは修論を書いたことがとてもよかったと思っています。

修士論文と言うとちょっと堅苦しいんですが、まさに新しいフレームワークを自ら生み出す力です。いろいろ分析して、今起こってる自分の問題をテーマにして、新しいフレームワークを作る。フレームワークを作る力さえつけば、この後いろんなことに対しても向き合っていけると思います。

社会人大学院での学びは、フレームワークを生み出す学びと、自分自身の体質を一気に変える機会になると考えています。ですので、ぜひみなさんには、多摩大学大学院でなくてもいいんですけれども(笑)。各校特徴があるのでいろいろ見ていただいて、私は多摩大学大学院がとてもよかったなと思っていますし、後悔はしていません。

多くの人にとっての向かい風が、自分には追い風だったら楽しいですよね。目の前に選択肢の正解がないかもしれない時代なので、ぜひ目的を知って、キャリアの幅を広げてほしいです。

最後に、『仕事は新しいかね?』という本の一節を少しアレンジしたものです。「もし(君が)、アトランタの薬屋、ジョン・ペンバートンだとして、その店の奥の部屋に入った時に、従業員が売り物の頭痛薬を炭酸水で割って飲むのがおいしいと言っている時に、商品に手をつけ、サボっている従業員に『おもしろいね』と言えますかね?」という話ですね、でも、これ「おもしろいね」と言えたから、コカ・コーラが生まれたんです。

「我々には、宇宙が必ずチャンスを与えてくれるので、それを受け取る準備ができているか」です。

みなさんも、こういうところに来るので「成功したい」と考えているはずです。何が成功かはみなさんの定義ですけども、成功するのは残念ながら右に倣えをしないことですよね。普通ではない選択をすることです。

働きながら学ぶ時間を捻出するのも大変ですし、学費を準備することもとても大変です。正直社会人大学院に働きながら通うことは、まだ世の中的にはクレイジーだと思うんですけれども、右に倣えをしないという選択肢を、みなさんには選択していただければうれしいです。

他人を凌駕する人材になろうとしているのに、他人と同じようにするなんて、なんて図々しい、と。能力が著しく高い方はそれでいいんですけれども、私はあまり能力がなかったので、右にならいませんでした。ぜひ大学院でお会いできればと思っています。

本日はありがとうございました。

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