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片岡教授による無料体験講座(全4記事)

キャリアの選択肢が「どっちを選んでもいまいち」になる理由 限界を超えてキャリアをアップグレードできる人の特徴

修了後の人生の飛躍を目指して「ミドルの学び直し」に取り組む「多摩大学大学院MBA」主催の無料体験講座に、『「目標が持てない時代」のキャリアデザイン 限界を突破する4つのステップ』などの著書を持つ客員教授の片岡裕司氏が登壇。キャリア視点で見る社会人大学院を選ぶポイントや、良いキャリアを身に付けられる人の特徴などが語られました。

限界を超えてキャリアをアップグレードする4つのステップ

片岡裕司氏(以下、片岡):楽しくキャリアを切り拓いて、もしくは自分らしくキャリアを切り拓く。大事なことは限界を突破することで、(スライドの)この4つのステップを考えています。

ステップ1は、「キャリアの目的を育てる」。キャリアのパーパスでもいいので、そういうものをしっかり持ち、「育てる」ことが大事です。人生の目的ともニアリーイコールになるので「そんな大それたものは見えません」という人はたくさんいますが、育てるという感覚がとても大事です。それがキャリアの充実や充足につながっていきます。

その上でステップ2は、「体質改善に取り組む」。これもめちゃくちゃ大切で、社会人大学院に来る意義でもあります。例えば今日は卑近な例しか出せませんが、私自身がまあまあ大きいアサヒビールでそのまま出世を目指すか、家業を継いでがんばるか。この二者択一で悩んでいましたが、たぶんこれは昭和の選択肢なんですね。大きい企業に残るか実家の家業を継ぐかという。

当時の私の視野やネットワークでは、これ以外の選択肢が浮かばなかった。どっちを選んでもいまいちという選択肢はつらいです。キャリアの相談をたくさん受けますが、ほとんどの方が選択肢で悩んでいるんですけど、それ以外の選択肢がたくさんあることに気づいていないんですね。時代が変わり、キャリアの選択肢はめちゃくちゃあります。それをつかみ取る体質に変えていかないといけないのかなと思います。

そのためには世の中のことをたくさん知ることです。自分の会社しか知らなくて、職場の上司にキャリアを相談すると、だいたい「あと3年我慢しろ」と言われるだけです(笑)。「今の職場がつらいんだろ? 3年我慢したら俺が引き上げてあげるから」と、私も100回くらい聞きました。そんな人に相談しても体質は変わらないので、圧倒的に違う視点からアドバイスしてくれる人に出会うことがとても大事です。

社会人大学院の魅力

今日言いたいことはこれです。なのでキャリアのアップグレードをするには、体質を変えるしかない。自分にとって最善に近い選択肢をキャリアの上で並べられれば、たぶん選ぶことはそんなに難しくないはずです。「これは絶対やりたい」というものが明確に見えてくるはずなので。その体質改善がとっても大事です。

体質改善はめちゃくちゃ難しいんですけれども、大学院に来ると体質改善がある程度できるということがあります。理由は、先ほども言いましたけど、客員も含めて60〜70人の第一線で活躍する教授がいるわけですね。ビジネスの最前線で活躍する、コンサルタントを頼むとそれなりに高い人たちです(笑)。その方々に論文相談であれば30分、1時間、何でも相談できるわけですね。

論文はみなさんが大事にしたいテーマなので、論文の相談はニアリーイコール、キャリアとか人生の相談にもなっていきます。自分の気づいてない角度からいろいろアドバイスをされたりもします。そういうことに向き合うことによって、自分自身の体質改善が進むと思っています。

ただ我々は目標を決めてがんばる癖があるので、体質改善のあとは、ステップ3の「目標をたくさんつくる」。まず目標をたくさん作ってみるんです。みなさん1つの目標に絞らないとダメだと思っていますが、これからの時代は変化に対応するために、ある程度ポートフォリオを組む必要があります。例えば「Aをやっているけど、BとCにも挑戦しておこう」と、目標をたくさん作ることに慣れる必要があります。

そして、ステップ4は「キャリアを楽しく実験する」で、実験をしていく感覚を持つことがとても大事です。

「好きなことで食べていくことを考えないとつらくなる」

この4つのステップについて、もう少し考えていきたいと思います。ステップ1は「キャリアの目的を育てる」です。(スライドの)新常識は「目的は『明確に決める』ではなく『育てる』」です。

好きなことやワクワクすること、楽しいことは、誰でも何か1つはあると思います。「そんなことは仕事にならないよ」と思われるかもしれませんが、先ほどお話したように人は長い時間、働くことになります。70歳まで働いて9万時間、その後90歳まで生きて8万時間。とんでもない時間があります。

その期間で、お金をもらう・もらわないは別として、社会に貢献して、地域とつながる営みが必ずあると思っています。それだけ長いと、好きなことや楽しいこと、ワクワクすることじゃないと、学び続けられないですよね。

今、みなさんの前に仕事があって、それについて何か学ばないといけないことがある。でも、気が進まないのであれば、それが事実だと思うんですよ。それではないことをやったほうが、たぶんいいと思うんですね。

「好きなことで稼いで食っていけるほど、世の中は甘くない」とおっしゃるかもしれませんけど、私は甘いことを言っているつもりはないです。もっと厳しいことを言うと、「好きなことで食べていくことを考えないとつらくなる」のが、この人生100年時代かなと思っています。

人生100年時代のキャリア理論

急に始めなくてもいいので、まず目的を明確に決めようとせず、育てていくことが大事です。いろんなことにチャレンジして、「私はこういうことが好きだな」とか、「やっぱりこういうことに価値観を感じるんだな」「やりがいを感じるんだな」と気づいたら、それにふたをせず、諦めずに、丁寧に育てていただきたいと思います。

キャリア理論は、もともとは職業マッチングなので、「あなたには何の仕事が向いているの?」ということだったかもしれませんが、今はキャリアが人生全体になっています。キャリアの目的が自己実現なわけですよね。アイデンティティを満たして、自分になっていくことだと思うんです。

自己実現するには、自己がわかってないといけません。以前、社会人2年目ぐらいの人に、「将来の夢は何?」と聞いたら、「年収600万円になることです」と言われて、私は思わず転んでしまったんです。でも、そう考えてしまう現実があるんだなとも思いました。それが彼女の想定内だとすれば、まず想定外になっていく必要があると思います。

大事なことは言葉にしないと育たないので、「本当の自己実現、目的とは何だろうか?」と、言葉にすることが大事だと思います。「こういうことを大事にして生きるんだ」「こういうことを軸にして生きるんだ」と決めて、それを大事に育てていくと、いろんなふうに進化して変わってくると思います。そのプロセスを楽しめるようになることが、とても大事です。

キャリア視点で見る、社会人大学院を選ぶポイント

ステップ2の「体質改善に取り組む」はめちゃくちゃ大事だと言いましたが、新常識は「自分のキャリアは自分で考えない」です。正確には「自分だけで考えないでね」かなと思います。

「自分のキャリアぐらい自分で考えろ」と散々言われ、会社でも「キャリア自律、キャリア自律」と言われているのではないかと思いますが、考えないことが大事です。自分で考えたら、先ほど言った自分の思いつく狭い選択肢しか生まれないからです。

ダグラス・ティム・ホールというキャリアの先生が、1970年代にこう言ってます。「今日のような複雑で混沌とした社会において、ビジネス界で起こる事象を完全に理解することは、もはや我々には不可能だ」「個人の能力を超えている」と。だから、「社会に蓄積された知性を持ってするしかない」と言っています。

プロティアンという神話をもとにした変幻自在の神からとった、「プロティアンキャリア」。「変幻自在」がけっこうフューチャーされているんですが、ダグラス・ティム・ホールが言いたかったのは、関係性を通じたキャリアという考え方です。

要するに、キャリアの変化点は、自分で考えるのももちろん必要だけれども、どれぐらい自分のネットワークを広げてアドバイスがもらえるか、ですね。人の力を借りないと想像以上にならないですよね。自分の力だけではできないことなので、仲間が大事だということです。

例えば社会人大学院に行って勉強しようとか、資格を取って勉強しよう、それもめちゃくちゃ大事ですけれども。実は、キャリアを切り拓くためには、そこで仲間を作ることのほうがより重要かなと思っています。

大学院の先生たちも含めて仲間だと思いますので。どんな先生たちがどれぐらいいるのか、量と質を丁寧に見ていただけるといいのではないかと思います。私自身、多摩大学大学院は一番良い場ではないかなと思っています。

良いキャリアを身に付けられる人の特徴

もう1人、スターフォード大学の先生で日本でも人気のあるキャリアの理論家ジョン・グランボルツ。キャリアにとって、「ラッキーをものにする」ことはとても大事です。この方の本の帯には「キャリアプランなんていらない」と書かれていますが、キャリアの転換点で成功した人を後追い調査して、明確な目標を持って努力をしてキャリアを実現した人は約20パーセントだったことがわかったんですね。

キャリアの大事な転換点の80パーセントは偶然の出来事でしかない、という本です。もちろん80パーセントの偶然に任せればいいという話ではありません。ほんの表紙にも「その幸運は偶然ではないんです!」と書いてありますね。偶然ではないんです。

良いキャリアを身に付ける人は、目標を決めて努力しているのではなく、偶然の出来事がいっぱい起きます。そこに対して、「開かれた生き方をしている」とグランボルツは言っています。

「リスクを取れるか」とか、「好奇心があるか」とか、「柔軟性があるか」とか、そんなことを彼は問い、キャリアに対する姿勢がとても大事だと言っています。そして関係性。キャリアを相談できる相手がどれくらい多様か。年代、業界、専門性も幅広く持てているかですね。

そして、偶然をつかみ取るための自分の「マインドセット」を作れているか。「開かれた生き方」と「マインドセット」の2つが大事だということです。

なので、体質を変えていくために、ネットワークを広げたり、自分自身の知らない人にどんどん会いにいくことをどれぐらいできるかがとても大事です。

「ネットワーカー体質」と(スライドに)書いてありますが、相談できるネットワークを作ったら、みなさんのキャリアは恐ろしく変化していくのではないか。なので、自分で考えすぎず、相談できる相手を増やす方法を考えたほうがいいと思います。

自分のアイデンティティを発見し、個性を浮かび上がらせるには?

そして、ステップ3の「目標をたくさんつくる」。新常識は「1つの目標に絞って努力しない」です。

もちろん、オリンピックで金メダルを獲りたいとか、サッカーのワールドカップで優勝したいと思ったら、1つの目標に絞って、人生をかけて努力しないといけないと思います。

ただ、私自身は、普通の人がそこまでのことはなかなかできないかなと思っています。そういう中で、自分自身のアイデンティティを発見し、個性を浮かび上がらせるものは、「目標の束」ではないか。Aの仕事もして、Bの副業もして、その中で新しい専門性を身に付けていくことが大事かなと思っています。

私も大学で教えながらコンサルタントをして、従業員100人程度の中小企業の代表をしていますが、あまり存在しないタイプの人間かなと思っています。そういう、「なんか自分らしい感じになってきたな」という感覚が、目的も含めて大事なのかなと思います。

最後、ステップ4の「キャリアを楽しく実験する」。ここまで言うと「お前は何者だ」と言われそうですが(笑)、新常識は「決めた目標は最後までがんばってやり遂げない」です。

変化の時代なので、がんばってやり切ろうとせずに、実験だと思ってある程度で見極めて、いろいろやっていく時期があってもいいのかなと思います。

キャリアの中では、絞り込んで努力する時期ももちろんとても必要ですし、「今その時期だ」という人は私の話は聞かないほうがいいです。でも、「自分がどうしたらいいかわからない」という時には、可能性を広げていくことが必要です。

例えば「2年間は選択肢を広げる時期だ」と決めたら、いろいろつまみ食いをして、新しい発見をしてほしい。そんなことを通じてキャリアをアップデートし、キャリアの選択肢を圧倒的に増やしていただくことがとても大事だと思います。

もちろんいろんな知識や専門性を身に付けて損はないので、どんどん身に付けていただきたいと思います。そういうのはビジネススクールでも学べますし、他の手段でも学べます。

ただ、みなさんのキャリアをアップグレードするのは、上に乗せるアプリケーションではなくて、OSのほうです。みなさんのオペレーションシステムを変えていかないとニューノーマルについていけないので、体質改善をして「みなさんが軸をしっかり持って生きる」ことがとても大事です。

そのために2年間でいろいろなものを見たり、ネットワークを劇的に変えてくれるのが社会人大学院ではないでしょうか。

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