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片岡教授による無料体験講座(全4記事)

履歴書に書けるような「結果の積み上げ」が人生ではない 変化の時代を追い風に、楽しくキャリアを切り拓く人の共通点

修了後の人生の飛躍を目指して「ミドルの学び直し」に取り組む「多摩大学大学院MBA」主催の無料体験講座に、『「目標が持てない時代」のキャリアデザイン 限界を突破する4つのステップ』などの著書を持つ客員教授の片岡裕司氏が登壇。これからの「キャリアの時間」の捉え方や、従来のキャリア理論が大事にしていたことなどが語られました。

これからの「キャリアの時間」の捉え方

私はミドル向けとかベテラン向けの本をたくさん書いているので、ベテラン社員の活性化の研修をたくさんやっています。ある会社で53歳の研修をやったんですけども、研修のスタートで人事部長が「53歳ですけど若いですから、みなさんこれからもどんどん挑戦して成長してくださいね」と言いました。良い話だと思うんですけど、ある方が手を挙げて「ふざけるな」「53歳の俺に挑戦とか成長とか、いい加減なこと言うんじゃない」とおっしゃったんですよね(笑)。

本気だったのでなんとも言いようがないんですけども、その方にとっては53歳はもう成長なんておこがましい年齢だということですね。「私は持っている経験を後輩に伝える立場なんだ、挑戦なんて若者がするもんだ」という前提なんですよね。

でもその方は53歳ですから、まだすごく長い期間働くということに気づいていないんですよね。

我々の前の世代と後の世代ではキャリアの環境がかなり違いますから、そこを切り替えて、アップグレードではなくまさにアップデートしないと、ついていけなくなってしまいます。

70歳でも「長いな」と思ってらっしゃるかもしれませんが、実はそのあとがもっと長いんですよね。22歳から70歳までが職業キャリアとして、1日8時間、年間240日で48年間とすると、9万時間あるんです。70歳から90歳で1日12時間充てられるとすると、年間365日が20年間で8万時間あります。

70歳までのキャリアを楽しく前向きに、自分の才能や持っているものを発揮して社会に貢献できるのは、すごく幸せなことです。そのあとの70歳から90歳、最後5年くらい体が悪くなる可能性はありますが、順調にいけば15年から20年くらい。自分が仕事人生で48年間の仕事に投入したのと同じくらいの時間があるんですよね。

70歳以降の人生への備えを早めることの重要性

何かやりがいを持って生きたいと思いませんか? それとも毎日昼間のワイドショーを見続けて過ごしますか? 多くの方は「そんなことはその年齢になったら暇なので、その時に考えます」とおっしゃいます。その時になってできることもたくさんありますけども、その時では仕込みがもう遅いこともたくさんあります。準備が早ければ早いほど助かります。

友達関係を広げるとか、ネットワークを広げることは、仕事より優先度を下げてらっしゃるかもしれませんが、今よりネットワークを広げられる時期はないかもしれません。ミドルで働き盛りで名刺もある時のほうが、ネットワークはたくさん広げられると思います。こんなことを言っていますが、私も70歳から90歳がすごく不安です。超絶に長い時間あるんですよね。

(22歳から70歳までの)仕事の時間と同じ期間、70歳以降にまだあると思えば、これをどう味わい尽くすか。何事もやり遂げられる時間がたくさんあるので、どうしていくかということです。

ルールなしの自由の難しさ

いろいろありますよね。何が起こるかわからないから、(スライドの)ソサエティ5.0なんてカタカナを使うんですけども。テクノロジーがめちゃくちゃ進化していきますが、テクノロジーの進化についていけていますか?

自分が若い頃は「おじさんたちは」なんて言っていました。20数歳で会社に入って、パソコンが初めて職場に来た時は、本当にマウスに向かって「もしもし、もしもーし!」と話しかけているおじさんがいっぱいいたんですよ(笑)。ああいうふうにはなりたくないなと思いましたけど、今Twitterを使いこなせていないと、同じように見られているかもしれませんよね。

そして働き方とか価値観もかなり多様化してきました。副業は「やったほうがかっこいい」という流れになってきたり、兼業を解禁している会社もあったり、いろんな働き方や選択肢が問われています。

言われていることは結局、自主性ですよね。自分なりのスタンスが求められています。ルールでがんじがらめの時はルールが苦しかったんですけど、ルールがなくなるとそれはそれで難しいという、自由の難しさもあります。

価値観も多様で、アメリカでは大量退職ブームとか「働かない革命」が起きていて、イーロン・マスクが1人で暴れていますね(笑)。

組織依存から脱却しないといけないですし、我々のキャリアがめちゃくちゃ長いので、1つの組織でキャリアをまかなえるかどうかは、かなり疑問になってきました。

いろいろありますが、ピンチがチャンスということだと思っています。この風を変えるのはけっこう難しいんですよね。70歳、80歳まで働く時代が絶対こないようにするとか、技術進化を止めることは難しい。今日ご参加の方にとって大事なことは、ここには逆らわず、この風を追い風にする自分に変えていくことかなと思っています。

そのために何をするのかが大事だと思います。私も実感値として思っていますが、社会人大学院に来るのはとてもお得です。パッケージになっていて自分で考えなくていいので(笑)。そこにあるものを満喫していただけると、次の時代の風を追い風に感じられるように変わるんじゃないかなと思っています。

ここまでがだいたい前半で、キャリアのアップグレードという主題でした。変化の風を追い風に変えて、自分のキャリアを想像以上のものにしていただきたいです。

これまでのキャリア理論が大事にしていたこと

そのために何を学んでいけばいいのかが、後半の主題です。目先のスキルアップであれば、今コロナ禍でオンラインコンテンツも増えていますので、そういうところで学んでいただいたり、本を読むほうがより効率的です。

わざわざ社会人大学院で2年間という拘束時間で学ぶとして、コロナ禍もだんだん収まってくれば、今はZOOMを使ったリモート受講も可能ですが、リアルでも参加してほしいと思います。リアルで参加すると飲み会があったり、先生と仲良くなることもあります。それを通じて、最後に論文を書く。これは多摩大学大学院の特徴としてあります。

論文を書かない大学院もあるので、MBAの修士がただ欲しいだけであれば2年ではなくて1年で、論文がないところに行ったほうが効率的かもしれません。でも我々はそれにこだわってやっているので、とても意味があります。その理由はこのあとちょっと話していきたいなと思っています。

「これからのキャリアを充実させるために必要なことは何ですか」と聞かれると、いろいろな答えが出てくると思います。ただ今までキャリア理論は何を大事にしていたかというと、「明確な目標・ゴールを立てる」ことなんですよね。

例えば大学受験であっても、大学受験の先にあるどんな働き方をしたいのか、そのために何が必要なのか、何で学ぶのかを考え、目標とゴールを立ててがんばっていくのが人生を切り拓く基本モデルとしてあったと思います。

でも、本当にそうかという疑問があります。特に目標とゴールを立てると想定内になってしまいますし、想定外の変化があったら対応しきれなくなる。なのでコロナ禍も含めて今、キャリアがとても不安だという方が多いんですよね。

インタビューをしても、何が不安かというと「目指すものが見つからない」という不安です。結果、「これでいいんだ」、「これでしょうがない」という感じになってしまっています。残念ながら、日本のエンゲージメント、働きがいは先進国最下位になっています。

変化の時代を追い風に、楽しくキャリアを切り拓く人の共通点

私もキャリア論を教えていて、本当に今のキャリア理論は世の中の助けになっているんだろうかという疑問がありました。本を書く企画もあったので、いろんな人にインタビューもしました。

楽しくキャリアを切り拓いている人とか、本当に時代の先駆けとなっているような働き方をしている人が、テレビなどでもフィーチャーされる機会が増えてきました。ああいう人たちが何を考えているのか、インタビューをたくさんさせていただきました。

みなさんに共通していたのが「目標がない」ということなんです。正確にはちょっと違うんですが、インタビュアーとして「キャリアビジョンとかキャリアの目標を教えてください」と質問すると「私はたぶん劣等生なので、そういうビジョンとか目標はあんまり明確に持っていないんですよね」とおっしゃるんです。「僕の話が参考にならなくてごめんなさい」と、本当に何十人もの方が同じことをおっしゃいました。

でも、「ぼんやりと『こんなことをやったらおもしろいんじゃないかな』ということは、すごくたくさんありますよ」という話なんです。明確な目標を持って突き進んでいる人ではなくて、変化の時代を楽しんでいる人、まさに変化の時代を追い風に変えている人は、「目標」はぼんやりしているけど、「目的」に向かって楽しみながら前に進んでいるんです。

AやB、Cにも興味があって、それぞれ少しかじり出していて、ちょっと多動的だとおっしゃるんです。「でも共通してるのはこういうことなんですよね」という、いろいろな目標を束ねる「目的」でも「軸」でも「価値観」でもいいですけど、「そこだけははっきりしているんですよ」とみなさんおっしゃっていました。

履歴書に書けるような「結果の積み上げ」が人生ではない

今日はキャリアをアップグレードするというテーマですが、「こんなふうにアップグレードしたい」という目標を持ち、それを因数分解して、これを学ぼうと思って努力をすると、成果が現れるんですよね。そうやって、例えば課長になった、部長になった、社長になったと履歴書に書けますけど、それは結果論なんですよ。

でも人生は「努力をしている」期間そのものが人生です。人生は結果の積み上げではなく、日々の時間の使い方ですよね。人生そのものを楽しみたいというか、謳歌したいということかなと思っています。そして、そういう人がこの変化の時代を追い風に変えている。人から見ると器用だとか、チャレンジ精神があるとか好奇心があるように映るんですけども、そういう方は目標ではないものに突き動かされているのです。

そこが欠けてるのではないかということで私自身、目標主導、目標ドリブンのキャリアデザインから、目的ドリブンのキャリアデザインへ、キャリアの新常識へということで4つのステップを本でまとめています。この観点が大事かなと思っています。

不安定で不確実な時代に、楽しくキャリアを切り拓く。「切り拓く」という言葉がつくと苦しくないと納得いかないという方もいらっしゃるかもしれません(笑)。でも「苦しんだ末の結果が良」ということでは、つらくなってしまいます。人生そのものが楽しいことに意味があるんです。

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