2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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片岡裕司氏(以下、片岡):今日の体験講座を担当いたします、多摩大学大学院の片岡です。よろしくお願いします。大学院に入学されるかどうかはまだ悩み中かもしれませんが、一緒にディスカッションしながら楽しい時間を過ごせればと思っていますので、よろしくお願いします。
今日のテーマは「キャリアをアップグレードしたいミドル人材は、いま何を学ぶべきなのか」ということです。ビジネススクールの学びで人生とキャリアをどうデザインしていくかについて、1時間お話しさせていただきます。
キーワードは「アップグレード」です。キャリアをアップグレードするとはどういうことかということですね。報酬が増えるとか、立場が変わるという意味ではキャリアアップという言葉があります。
複雑な環境の中で価値観も多様になっている今、アップグレードをどう捉えるのか。そして多摩大学大学院に限らず各校特徴はありますが、社会人大学院とはどういう場なのかをお伝えできればと思います。
「ミドル人材は、今何を学ぶべきなのか?」と書いていますが、最終的な結論としては何を学ぶというよりも、どういう学び方をしていくのか。学ぶコンテンツはいつも陳腐化してくるので、「何を身に付けるべきか」という議論になっていきます。「なんだ、何を学ぶかがわかると思ったのに違うじゃないか」と言われるかもしれませんけども、最後までお付き合いください。
自己紹介です。多摩大学大学院の客員教授として、キャリアとモチベーションという講義を担当しています。本職はジェイフィールという会社で組織開発とか、人材育成のコンサルタントとか、マネージャーの研修講師をしています。あと(スライドの)2つの社団法人がありますけども、いずれも多摩大学大学院の徳岡(晃一郎)先生と紺野(登)先生と作らせていただいた研究所になります。
実は、私も多摩大学大学院を16年前に修了して、当時からいらっしゃった先生と今もコラボレーションしてビジネスもやっていて、現在に至るというキャリアです。なので多摩大学大学院にも社会人大学院にもものすごく思い入れがあって、私自身は「こんなにお得なところには絶対行ったほうがいい」といつも思っています。そんなことも含めてお伝えできればと思います。
キャリアの背景としては、もともとアサヒビールでビールを売る営業をしていました。その後アサヒビールが作った外食企業を中心に支援するコンサルティング会社に出向しました。そこでコンサルティングが自分の肌に合うと感じて、今に至っています。
今はコンサルタント業務もやっていますが、祖父が作った製造業の会社が愛知県にあるので、そこの代表もやっています。
私自身キャリアに悩んで多摩大学大学院の門を叩いたわけですが、当時の選択肢はアサヒビールを辞めて家業を継ぐのか、アサヒビールでのキャリアを続けるのかという選択肢でした。ただ多摩大学大学院に来てぜんぜん違う選択肢に出会えたのが、とても感謝していることです。
(スライドの)下は宣伝がてら本が載っていますので、ピンときたら買ってください。今日のお話は真ん中のキャリアデザインの本が中心になりますので、よろしくお願いします。
最初からアップグレード、アップグレードと言っていますけども、今日ご参加のみなさんは何を学びたいですか? 1つ目はとても多いですし、私のところに相談に来る方も多いんですけども「想定されるリスクに備える学び」をしたいという声です。
「こんなことが起こるかもしれないので、保険として資格を取りたい」ということですね。そういう観点で「大学院に行きたいんですけど」という相談を受けたりします。
ただ多摩大学大学院にいるからといって就職が有利になることは、残念ながらまだないと思いますので(笑)、そういうリスクには備えられないかもしれません。
一般的にはリスキリングと言ったりしますが、世の中の変化の中で求められる学びをアップデートしていくというのが、想定されるリスクに備える学びになります。そこに社会人大学院の場がふさわしいかどうかというと、少しそうではない側面があります。効率的に学ぶのであればSchooなど、オンラインでコンテンツを学んでいただくほうが効率的かなと思います。
2つ目は「理想の自分を目指しての学び」という観点です。これに関しては社会人大学院が答えられる側面と、答えられない側面があるかなと思っています。理想の自分が明確であればそれにあった学びをすべきで、その理想とすべきものが各大学院にあれば、それを学ぶことはとても意義があります。
社会人大学院という場やミドル人材に必要な場は、(スライドの)「想像以上の自分になる学び」をすることです。
今日は「ミドル人材は、今何を学ぶべきなのか?」というテーマですが、ある程度キャリアを歩んできた方々は、おそらく組織で自分自身がどうなるのか、なんとなくイメージがつく年齢に差し掛かってきていると思います。がんばる・がんばらないとか、夢が持てる・持てない、転職や副業をするにしても難しいという状況が、見えるレベルになっているのではないかなと思っています。
今我々が直面しているのは「想像以上の自分になれる」というチャンスであり、「想像以上にならないといけない」というリスクでもあります。なぜかと言うと、世の中が想像以上の変化をするので、想定内にならないからです。なので想像以上になっていくためにどんなことが必要かが、とても重要です。このあと、想像以上とは何かということを一緒に考えられればと思っています。
(スライドに)「想像以上の自分になる方法は?」と書いてありますが、キャリアアップというよりは、みなさんが心から幸福だなとか、キャリアが充実しているなと思えるとすれば「何があればできそうですか?」という問いかけになっています。議論やブレイクアウトができないので、少し自分の中でこの疑問を考えてください。
難しいですよね。「理想の自分はこれです」というのはすでに想定内なので、そうではないことですよね。私自身もアサヒビールで働いていて「こういう立場になれたらいいな」と思ったり。家業を継いでがんばると決めた時も、15年後にこんなふうに話しているなんて想定外の出来事でした。それがなぜ起こせるのかを、我々の調査も通じて考えていくことでお伝えできればと思います。
(スライドに)「キャリアをイノベーションする力を身に付ける」とあります。企業の中にイノベーションを起こすこともとても重要ですが、みなさんのキャリアをイノベーションしていく力を身に付けるにはどうすればいいのかということです。
今日ご参加の方にVUCAなんて言っても今さらかもしませんが、何が起こるかわからない時代ですよね。世の中の環境変化は激しいです。コロナもそうですし、ウクライナの件もそうです。こんなに物価が上がることも、想定ができない事態です。
想定ができないものに備えるのはかなり難しいですが、足元を見ると、必ず起こる変化にもなかなか対応できていないところがあります。もちろん想定外の変化には対応できたほうがいいですが、大事なのは必ず起こる事態にちゃんと準備をすることです。
絶対起こることとして、人生100年時代と、人口減少の2つがありますよね。(スライドに)ラフティングの写真が載っていますけど、荒波をちゃんと乗り越えていくには、時間をかけながら徹底した準備が必要だということです。
「ゆでガエル」という言葉があります。急激な変化ではなく、緩やかな変化のほうが対応が遅れ、気づいた時にはもうどうにもならなくなっているという状態です。ミドル向けの研修で「何歳まで生きると思いますか?」と聞くと、みなさん「80歳くらい」とだいたいおっしゃるんですよね。人生は「100年にはならないでしょ」と。
平均は100歳なんだけど「たぶん私は80歳くらいで」と、なんの根拠もなくおっしゃいます。それは今のキャリアのモデルが、それくらいで終わる前提で作られているからですね。そこから抜け出せないということです。そうするとゆでガエルになってしまうので、徹底した準備が必要です。
そこに対してリスクがあるので、「リスクに備える学習」という選択肢もあると思います。やらざるを得ない、「追われる学び直し」ですね。でも、今日みなさんに考えてほしいのは、追っていく、時代を変えていく想定外の学びです。
あらためてご説明するまでもないですが、これは国土交通省から持ってきた図です。鎌倉時代を左として右にいくほど日本の人口は急激に増えて、びっくりするほど急激に下がっているんです。2020年がこのあたりですので、2050年はこんな感じになります。
終戦後に伸び続けた日本の人口が転換点を迎えました。我々のキャリアでは、終身雇用もかなり幻想になりつつあります。人口の転換点を過ぎてすでにかなり時間が経っているので、どんどん常識が変わっています。そこに対してアップグレードではなく、アップデートしなければいけないということです。
その中で人生が100年時代になるというリンダ・グラットン先生のお話があった。ロンドン・ビジネススクールの先生ですが、日本の諮問会議にも入ってご意見していただいています。彼女は「70歳、80歳まで働く時代になるんだ」と言っています。
100年人生を送った人を「センテナリアン」と言うそうです。2016年に6万人だったセンテナリアンは、2050年に100万人になると言われています。今日ご参加の方が40歳前後だとすると、92歳から96歳くらいまで生きることになります。
ちなみに健康寿命はずっと伸びていて、不健康なギャップ年齢はだいたい10歳前後と言われているので、基本的には健康で元気な期間が伸びていきます。そういう中で起きるのは、教育、勤労、引退というライフステージモデルの破綻です。
特に日本人は就職後の学び直しが、先進国でも最下位クラスと言われています。なので大学で学んで、そして会社に入って最初の教育期間を過ぎると、そこから勤労し続けていきなり引退という「1ステージモデル」だったということです。
これではまったく役に立たないというか、通用しなくなると言われていて、2ステージ、3ステージで、教育・勤労のあとにまた学び直すという時期を、自分で意図的に作っていかないといけない時代になるということです。
グラットンさんは、それを怠ると「先進国に新たな貧困層が生まれる」と言っています。賃金が安い仕事はもっと賃金が安い地域に移されていくので、先進国の高齢層に貧困問題が戻ってくるのです。なので乗り越えていくのに徹底した計画が不可欠だと彼女は言っています。
これだけ見るとちょっと怖い話です(笑)。「人生100年時代は最悪だな」「寿命なんか伸ばしてくれなくてよかったのに」と思われるかもしれません。でも健康長寿は人類が夢見たものですので、それをポジティブに使っていく必要があると思います。
ロンドン・ビジネススクールの先生がこう言っても、私が研修をしていると「私は80歳で死ぬんですよね、たぶん」とみなさんおっしゃいます(笑)。でもすでに寿命は90歳近くになっているわけです。我々は平均寿命の議論をしがちです。女性なら約88歳、男性は81歳ですけど、これはもっと若いうちに亡くなった方も含めての平均なんですね。
なので我々が注目しなければいけないのは寿命ではなくて、この死亡年齢最頻値という数字です。ちょっと言葉が怖いんですけども、何歳で死ぬ人が一番多いかという年齢です。2020年の統計では女性はすでに93歳、男性は87歳くらいになっています。
死亡年齢最頻値は20年ごとに、だいたい3〜4歳ずつ伸びています。単純計算するとあと20年で96歳から97歳に必ずいくということです。
つまり2020年で93歳が女性の死亡年齢最頻値なので、人生100年時代はもうすぐそこに来ています。男性は90歳を超えて生きるということです。そんな長い人生を楽しく過ごせる準備ができているのか。長い人生になるからこそ、できることにチャレンジするチャンスがあって、その準備ができているのかということです。
なので、キャリアをアップグレードするために人生の設計図を変えないといけないんです。課長さんが部長さんに、部長さんが役員になるためにこういうことを学びましょう、ということを話す気はないです(笑)。
今日ご参加している方が70歳まで働くとすると、中間地点は46歳くらいになりますね。今現役で働いている人の中には、「自分が入社の時は55歳が定年だった」という人もまだいらっしゃいます。また、55歳で役職定年という会社も多いと思いますが、それはもともとそこが定年だったことからできた制度です。そういう人達からすれば、33キロマラソンが突然48キロマラソンに変わったということです。
労働期間を小学校6年間だとすると、46歳は3年生ですね。まだ低学年です(笑)。46歳くらいになるともう中堅バリバリで、そろそろ後ろから数えたほうが早いと思うかもしれませんが、まだ低学年なんですね。54歳というと、人によっては会社の中で仕事仕舞いに入っていますけど、まだ4年生です。中堅です。62歳を超えてようやく認められて、70代になってやっと最高学年という感じかなと思います。
46歳くらいまでに積み上げてきたみなさんの知識や経験で、そのあとのキャリアをやっていけるかといったらそういうことではないわけですよね。なので仕事については学び続けなければいけないんです。
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