2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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友末:では、またちょっと違う質問をします。例えば、Cチームが売上目標を達成します。そうすると、売上目標が上がって、プレッシャー自体は続きます。この状況をどう変えられますか?
ロバート:これが「自分の無能のレベルまで上がっていく」というピーターの法則ですね。
ピーターの法則が正しいのは、「人が学ぶことができない」という時です。もし「とにかく売上を上げろ、上げろ、上げろ」という目標であったなら、その目標はどうやって設定されるでしょうか?
組織の中で構造的に見ると、販売・営業のチームと生産のチームの間で葛藤、対立が生じていることがあります。報奨制度がそれぞれで違うからですね。まったく足並みが揃っていません。
これは典型的な組織の分断化です。これは補償的なフィードバックといいますが、販売チーム・営業チームが、工場が生産できる数よりもたくさん売ってしまうとします。そうすると、営業チームはたくさん売り上げた報酬をもらいます。
すると、クオリティや納期やコストなどの面で、工場、生産部隊にプレッシャーがかかります。そうすると、製造することが非常に大変な仕事になってきます。納期が遅れ、商品を市場に送り出すのが遅れることになります。
そうすると、顧客が自分の望むものを手にすることが難しくなってきます。すると、長い時間の間に、納期が遅い、あるいは「クオリティ=品質」が低いために、売上が下がっていきます。そうすると、顧客、市場は他社に行ってしまいます。
売上が下がると、営業のマネージャーは営業部隊にプレッシャーをかけて、もっと売上を上げろと言う。そうすると、このサイクルがまた繰り返していきます。
ロバート:このトピックは、(今回出版したものとは)別の本、『偉大な組織の最小抵抗経路』に書かれている話です。生産できるよりも、たくさん売ってはいけないのです。もし営業部隊と生産部隊が一緒に仕事をしていれば、売上目標は「とにかくどんどん売上を上げろ」ではなく、生産能力に見合ったふさわしいレベルに設定されるはずです。
もし売上目標を上げるのであれば、売上目標を上げる前に、「生産能力=キャパシティ」を上げる必要があります。そうしないとシステムに負荷をかけるだけです。これは、構造的に組織の設計が間違っているのですね。それによって組織が断片化し、分断が起こるようになっているのです。
今僕が話したことを、自分も経験した、見た、聞いたことがある人。みなさんの中に何人くらいいらっしゃいますか? 手を挙げてもらえますか?
部屋を見回してください。僕が話したこととまったく同じことを、この部屋の中で半分以上の人が体験しています。ここで重要なことは、これはみなさんの個人的な経験ではなく、構造的な原因がある経験だということです。
これもみなさんが見たり、経験したりしていることだと思います。組織の中で、仕事がうまくいっていない人がいます。まったく違う人とその人が交代します。半年もすると、(新任者も)前任者とまったく同じ仕事ぶりになってしまう。
ロバート:「モチベーション=動機付け」について重要だと言われることを考えてみてください。交代した新任の人は、DNAも違うし、文化的なバックグラウンドも違うし、世代も違うし、心理状態も違うし、占星術も違うし、数秘術、プロフィールも違うし、何もかも違う。
しかしまったく性質が違う人が同じポジションについたら、まったく同じ振る舞いをする。人が何かをする時に、その個人的な動機付けの要因よりも、その構造の中におけるポジションが与える影響のほうがずっと強いことがわかります。
これを裏返してみると、それほど何か秀でたものがある人でなくても、特定の、良くデザインされた構造の中に入ると、非常に良い仕事をするということですね。
たいていの人たちが状況的に考えていて、構造的に考えていないのです。構造的に考えないと、本当の因果関係がわからないのですね。その状態でなんとかこの状況を変えようとしても、逆戻りするばかりです。もし、根底の構造を変えれば、振る舞い方が変わっていくのです。
Cのレベルの営業チームがもっともっと高い目標を達成していく話に戻ると、それは一つひとつの目標を達成しているからですよね。
ですからその場合、A・B・Cというチームの質ではなく、そこに配置された構造が間違っているのです。これは明らかにMMOTのテーマではなく、組織の根底にある構造が、断片化、内部の葛藤を生み出している現象です。
友末:ありがとうございます。ではちょっと別のトピックです。MMOTが生まれた時のエピソードをとても知りたいです
ロバート:ちょっと思い出さないといけない(笑)。
(会場笑)
ちょっと思い出しています......。ブルースと経営幹部のチームと一緒にいました。経営計画、事業計画に未達がありました。そこで、何が起きているか? どうしてそうなったか? と、MMOTの4つのステップをやっていました。
厳格にそれをやっていったことによって、組織の中にどんな力学が働いているかについての非常に深い理解が得られたのですね。
その時にどんなことが起こったか? どんなエピソードがあったか? という質問でしたが、ブルースと経営幹部の人たちは、1つのステップに居続けることが難しかったのですね。
ズレがあることがわかったら、分析する代わりに「次、どうするか?」と考えてしまっていた。
最初の規律は、「今いるステップに居続ける」ことでした。どういうわけでこうなったのか、話をするためには、今何がズレているのかを認めなければなりません。
「どういうわけでそれが起こったのか」をすっかり完全に分析する前に、「次、どうするか?」というプランを作ることはできません。この、「今いるステップに居続ける」規律が、非常に効果を上げました。そんなことがありましたね。
友末:ありがとうございます。では、もう1つMMOT関連で質問です。子どもにMMOTを使いたいです。例えば、「夕方6時のごはんまでに家に帰ってくると約束したけれど、帰ってこない」みたいなことがあります(笑)。
子どもの理解力とか成長の度合いを考えること以外に、子どもにMMOTを使う時に、何か気に留めておくことはありますか?
ロバート:正直であること。このテクニックを使って、どうしてこのパターンが繰り返されているのかを突き止めよう。子どもを責めているのではなく、何があって、こういうことが繰り返されているのかを理解したい。
本当に興味深いことに、子どもたちはこれがフェアなゲームだとわかれば、フェアなプレイをするのです。でも、フェアなゲームは稀なんですね(笑)。
6時に帰ると約束した。今はもう6時半だ。6時に帰ると約束したのに、6時半である。この事実に合意するか。昨日以前のすべての話をするのではなくて、今日、今起こったこと、いったい今何が起こってこのズレが起こったのか? その時に、子どもの何か思い込みが間違っていたことを見つけるかもしれません。
あるいは「6時までに帰る」という約束を真面目に考えていなかったのかもしれません。友達と話していて、今何時かを忘れたのかもしれません。
6時に帰ってくると言ったのに、6時半に帰ってきたことの中で、実際に現実にいろいろなことが起こっていますね。
ですから、その日に具体的に何が起こったのかを突き止める。正直にそれを突き止めることによって、良い結果に結びつきます。いつもうまくいく保証はありません。でも、うまくいくことが多いです。
友末:次は、大人への導入なのですけれども(笑)。事例を1つ例示します。大口顧客からクレームがありました。それで、マネージャーが部下に、「状況報告はどうなったわけ?」と聞くと、会社のほうには落ち度がないような報告がありました。
実際には、例えば製品の仕入れ先とか、部下以外の第三者に落ち度があったことを部下は知っていながら報告しなかった。こういうパターンが繰り返されているところにMMOTを導入したいのですが。
ロバート:今の事例で見えていないのは、明確な期待と実態の間のズレです。もう1つ言います。このテクニックで、世界中の問題を扱うわけではありません。髪を黒くするためのテクニックではありません。自分の体重を理想の体重にするための方法ではありません。でも、それにも使えるかもしれませんが。
(会場笑)
どんどん若くなるテクニックでもありません。このテクニックは、期待と実態にズレがあった時、期待と実態のズレがなければMMOTのテクニックはありません。
床に死体が転がっている。そこから推理小説が始まる。男と女がいて、恋に落ちて、何かが始まる。これが起爆的な事件だとすると、MMOTのスターティングポイントは、期待と実態のズレである。
ここを逃すと、MMOTが何か別のものと誤解されることになるから、こういう意見を言っているのです。
友末:冒頭にアラインメントという単語が出てきて、それを「足並みを揃える」と訳されていました。このアラインメントが組織にとって必要不可欠とおっしゃっていたのですけれども、その意味合いを今一つ理解できていないので、具体的な事例を交えて教えていただけますか?(というご質問です。)
ロバート:会社でこっちを向いている人がいたり、こっちを向いている人がいたり、あっちを向いている人がいたりします。この会社組織にエンパワーメントのプログラムを導入します。一人ひとりがどんどんパワーを持って、バラバラの方向に向かっていきます。
アラインメントを「足並みを揃える」と訳しましたが、いろいろな人たちが同じ方向を向いて足並みを揃えている。これをアラインメントといいます。そしてこの人たちがエンパワメントで力をつけることになるけど、組織全体が同じ方向に向かって力をつけることになります。全体的、集団的な力を高めていくんですね。
アラインメントとは、合意のことではありません。アラインメントがある組織の中でも、やり方、プロセスについて見解に相違があることがあります。それでも同じところに向かっているんです。
先ほど言ったように、見解に相違がある場合は、組織においてもっとも上位にある人が決定します。これがアラインメントです。
友末:ありがとうございました。今終了時間を5分ちょっと過ぎているのですけれども、フロアのほうから「これだけは最後に聞いておきたい」というもの(質問)がありましたら、ぜひお願いいたします。いかがでしょうか? あ、じゃあどうぞ。
ロバート:またあなたですか? ありがとう(笑)。
(会場笑)
質問者1:エンパワーメントとMMOTは対立するものなのですか?
ロバート:MMOTとエンパワーメントは、お互いに独立したものです。別々のものです。
(フリップチャートを指して)足並みが揃っていない人たちをエンパワーすることができます。そうしたら、この分断や対立のボリュームが上がるだけです。ですから、足並みが揃っていなければ、「エンパワーメント=力をつける」は意味をなさないんですね。
MMOTは有機的に2つのことを成し遂げます。まず、人々の足並みを期待に揃えることです。そして時間をかけて人々の仕事をする力を高めていくことによって組織全体が同じ方向に進んでいくことです。これほど、エンパワーメント、力を与えるものはありません。ですから、とてもクールなものなのですね。これは強くみなさんに推薦します。
質問者1:ありがとうございます。
友末:ありがとうございました。以上をもちまして、この『マネジメントの正念場』出版記念セミナーを終了いたします。参加者のみなさまと活発なディスカッションができ、みなさまにとって、そしてロバートさんにとっても非常にエキサイティングな時間になったことと思います。
本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございました。ロバートさんに大きな拍手をお願いします。
(会場拍手)
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