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オンライントークイベント「松浦弥太郎さんと語る『生きる』と『働く』がつながる未来の働き方」(全2記事)

これからの時代、信用を得るのは「馬鹿なこと」ができる人 松浦弥太郎氏が考える、楽しく仕事をする「きほん」

株式会社博報堂と博報堂グループの株式会社エクスペリエンスDの共同主催で行われたトークイベント「松浦弥太郎さんと語る『生きる』と『働く』がつながる未来の働き方」の模様をお届けします。イノベーションを生み出す人材・チームづくりをテーマに開催された本イベント。本記事では、「くらしのきほん」編集長の松浦弥太郎氏が考える「きほん」とは何か、語られました。

企業とか組織が内側から元気になっていく活動を支援

小林舞氏(以下、小林):まず最初にお二人のご紹介から始めたいと思います。兎洞さん、これまでのお仕事や現在関わられているプロジェクトについて教えてください。

兎洞武揚氏(以下、兎洞):みなさんこんにちは。博報堂の兎洞と申します。ブランディングに携わる仕事をやっているんですけれども、その中でも特にインターナルな領域を担当しています。インナーブランディングとかインターナルブランディングとか言ったりしますけども、そういうお仕事をやっています。

何かと言いますと、企業とか組織が内側から元気になっていく。そういうサポートをさせていただいています。もちろん博報堂なので、いろんなかたちの発信とかコミュニケーションも担っているんですけれども。

本当にいいブランドができるためには、内側から元気になって、結局「人」が元気かどうかが非常に大事だなと思っています。そうしたお仕事に携わらせていただいている人間でございます。

いろんなプログラムを開発をしてきているんですけども、今日後ほどお話をするプログラムの根幹を、松浦弥太郎さんと一緒に開発してきた経緯があります。今日弥太郎さんとお話しできることを大変楽しみにしております。よろしくお願いします。

松浦弥太郎氏(以下、松浦):よろしくお願いします。

よりよく働く・よりよく暮らすための考え方を発信

小林:兎洞さん、ありがとうございます。松浦さんもよろしくお願いします。

松浦:みなさんこんにちは。松浦弥太郎です。ここでご紹介していただいているように、ふだんエッセイを書きながら、いろいろな企業の事業やコンテンツ作りとか、アドバイザーの仕事に関わっていながら、我々がよりよく働くにはどうしたらいいのかなとか、よりよく暮らしていくにはどうしたらいいのかなということを、日々発信しております。

最近はコロナが明けたということもありまして、中国の出版社との関わりの中で、コンテンツ作りとか、いろいろなプロジェクトに関わっています。日々仕事をしながら、自分でも試行錯誤しながら、自分でもどうやって働いていったらいいのかなとか、仕事をしていったらいいのかなとか、人とコミュニケーション取ったらいいのかなみたいなことを模索しながらがんばっています。以上です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

小林:お二人とも、ありがとうございます。それでは話を進めていきたいと思います。

「きほん」とは、疑問を持って新しいことを明らかにすること

小林:まずはじめに松浦さんにおうかがいしたいと思います。松浦さんはこれまで『100の基本』『はたらくきほん100』といった本を出されたり、「くらしのきほん」というWebメディアを立ち上げられていますけれど、松浦さんにとって「きほん」とはどのようなことなのでしょうか。

松浦:いきなり、一番難しい質問ですね。

兎洞:(笑)。

松浦:そうですね。自分にとってはどんなものにも、人であったり本であっても、すてきなもの、コトは必ずそこには潜んでいて、すてきなことというか、自分がそれを好きになって、見つけて、それを明らかにしていくことだと思っています。

ですから「きほん」というのは、常に何か物を見つめながら、物について考えながら、何か新しいことをどんどん明らかにしていくことではないかなと思っていますね。だから答えは1つではなくて、姿勢としては哲学的な、いろんな物を見ながらいろんなことに疑問を持って、いろんなことを明らかにしていければいいなというような、ちょっと活動に近いような感じですかね。

兎洞:松浦さんとお話をさせていただいている中で、ちょっとこれは僕の見方なんですけど。松浦さんは「きほん」という概念とか言葉に着目されて、再定義して、発明し直した感じがしているんです。

そもそも「きほん」ということに着目をされた背景とかきっかけとか、再定義という言葉が合っているかどうかわかんないですけど、「きほん」をどういうふうに捉え直したのか、弥太郎さんにぜひこの場を借りてお聞きしたいなと思ったんですけど、どうですかね。

これからの時代「本当の1次情報」に触れることが必要

松浦:いろんな経緯があって「きほん」という言葉に着目して、それを言語化してくことを自分自身のプロジェクトにしているんです。

ただ僕らは、働き始めて社会活動して、人とコミュニケーションを取っていく中で、世の中には応用されたものとか、アレンジされたものばかりです。「そもそもこれってどういうところから始まっているんだ」とか、「(そもそもこれは)何だったのか」みたいなことを見つめる機会がなかなかなかったんですよね。

その応用されたものとかアレンジされたものとか、言ってみれば2次情報、3次情報、4次情報みたいなことで、僕らはそれから何かを考えたりしているんですけど、「本当の1次情報」に触れることって、これからの時代に絶対必要だなと思ったんですね。

先ほどの答えとしては、「きほん」というのは、本当の1次情報にいかに自分がタッチするか。キャッチアップして、自分でしっかりと理解できるかどうか。またそれを自分の言葉で語れるかどうかということなのかなと思っているんです。

非常に難しいことに取り組んでしまったんですけど、その難しいことに取り組んだおかげで、自分自身をよく知ることにもなるし、自分以外の社会とか他人とか地域を愛することもできるんだな、という可能性を僕は感じたんですよね。

つまらないのは、自分の「根っこ」の部分を自分の武器にできていないから

兎洞:今のお題を聞いて、弥太郎さんは分野を跨いでお仕事をされていたり、お話を語られているなと思っていました。今言われて、僕も自分でちょっと反省の気持ちが出てきたんですけど。

なんとなく応用で生きているというか、応用をより際立たせたいとか、ちょっと自分を盛って見せたり、目立とうとしたりすることが自分の中にもあるなと。自分の仕事もそういうふうに見せている部分もあるなと思ったんです。

さっき1次情報とおっしゃいましたけど、応用のほうじゃなくて、もうちょっと根っこのところを大事にしていくとか、そこをしっかり見つけていく。だから分野を跨ぐのかなという、勝手な解釈ですけど思ったりしました。

松浦:僕らは30代、40代でいろいろやってきているけど、僕は仕事とか暮らしがあまりおもしろくないなと思ったんですよ。

兎洞:(笑)。

松浦:何でおもしろくないのかなと思うと、自分自身が何かのアレンジだったり応用だったりしていて、結局自分の根っこの部分を自分の武器にできていない、明らかにしていないから、何かをしているようで少し偽りがあるような、何かを演じてしまうような生き方とか仕事の仕方をしている。そうぼんやりと感じることが、すごい嫌なんですよ。

なので、自分も自分自身をどう明らかにして、社会とかその仕事仲間とか地域とか、そういうところと関わっていくのかという取り組みをしたいだけなんですよね。そのほうがおもしろいし、絶対楽しいと思うんですよ。

兎洞:今のお話は大事だなと思いながら、なかなかそこに自分の目と意識を向かせるって、実は難しいところだなと思ったりするんですね。

ルールは与えられるものではなく、自分たちで作っていくもの

兎洞:話が一瞬だけ逸れますけど、弥太郎さんの料理動画が好きで(笑)。

松浦:ありがとうございます。

兎洞:動画の世界って、今でこそ本当に10秒とか15秒とかの動画がたくさんになっちゃっているんですけど、弥太郎さんの動画って長尺じゃないですか。何でこんなに長いのか。でも手触り感があるんですよね。それって、もしかしたら今の「1次情報」に関係するのかなと思ったんです。

何がお話したかったかというと、なかなか弥太郎さんがおっしゃる「きほん」とか1次情報とかに、自分自身を持っていくことって、私も含め普通の人ってなかなかできにくいんじゃないかなという気がするんです。

弥太郎さんってそのあたりのことをどんなふうに見ていらっしゃるのか。あるいは自分はこうやっているとか、アドバイス的な観点がもしあるとしたら、どうですか。

松浦:概ね企業とか地域とか、自分たちのコミュニケーションに、仲間でのルールというか、約束みたいなものがあるんです。これまではそういうルールとか約束とかカルチャーみたいなことに、自分も順応していけば安全安心だったし、仕事も暮らしもそれで何も困らずにできたと思うんです。

でも今は時代的にそういうルールとか約束事とか決まりみたいなものって、企業や組織、またはコミュニティから与えられるものじゃなくて、自分たちで作るべきだと思っているんですよ。

「ルール教えてください」とか「これ、何したらいいんですか?」というのは、やっぱり僕ら聞く側が本来考えるべきもので。これからは自分たちで必要なルールを作るべきだし、約束もするべきだし、指示も自分たちで主導していくべきだと思っているんです。

そうならないと、なかなか地域もその企業も仕事の業務も成果も期待値を超えないですよね。世界的な空気感として僕はそう感じているので、「指示待ち体質」というか、「何かペラ1枚ください」「何か手がかりください」って待っている仕事の仕方とか暮らし方は、もう楽しくない気がするんですね。

これからの「信用できる人」は、馬鹿なことをやる人

松浦:よく若い人たちで話をしてて、「どうしたら何かを成し遂げることができるか」とか「何か生き甲斐を感じる」だとか、「どうしたらあとは信用を得られるか」と(いう話題が出てきます)。信用って大きいと思うんです。信用を得るために、じゃあ今の時代何をすればいいのかというと、言葉は悪いかもしれないけど「馬鹿なことをやる」。

兎洞:(笑)。

松浦:馬鹿っぽいことをやるんですよ。馬鹿と言われることを、めちゃくちゃ思い切り真面目にやる人。これからの時代って、そういう人のほうが信用度が高まっていくと思うんです。

でも「馬鹿なこと」って、口が悪くて申し訳ないんですけど、でもそれは言ってみれば「自分でルールを作る」とか、そのあたりの話なんですよ。そこに自分が立ち入れるかどうかというのはすごく感じていますよね。

要するに、どうやって今の時代の価値としての信用、信頼を積み重ねていけるか。その方法を考えていくのが、今のスタート地点として大事なことだと思います。

兎洞:ありがとうございます。受動的じゃなくてルール自体も自分で作るくらいの気持ちになっていくことが、「きほん」にアクセスするために大事なことだと言ってくださったのかなと思います。

きほんは「人の言うことを聞かない」

松浦:これも僕の中の「きほん」ですが、「人の言うことを聞かない」というね(笑)。人の言うことを聞いている以上は、結局どうしようもないし、人の言うことを聞かないからこそ、もしかして信頼を積み重ねることができるというような、そんな気がしますね。

兎洞:ありがとうございます。「一般的に『きほん』を大事に」という言い方だと、まったく違うものの見え方が(できるんですが)、今の弥太郎さんのお話から(「きほん」とは何かを)受け取れてよかったです。

松浦:例えば「自由」とは何かというのは、自分の言葉で語れるようになるかどうか、みたいなことだという気がしますよね。

兎洞:ありがとうございます。ちょっと進行の小林さんが、ずっとこっちを見ているので......。

小林:いつまでも聞いていたいダイアログなのですが、テーマをいくつか用意していますので、次に進めたいと思います。

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