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3社のスタートアップで働くデザイナーに聞く、副業のリアル(全2記事)

副業は、仕事のスキルを“輸入”するための手段の1つ 3社のスタートアップで働くデザイナーが語る、副業のリアル

昨今では、1つの会社が優秀な人材を“独り占め”して囲い込むのではなく、副業を解禁する企業も増え、人材定着のための施策としても認知されています。スピード感の求められるベンチャー企業で培ったスキルを活かし、副業をしている人材も増える中、実際はどのような働き方をしているのでしょうか。そこで今回は、3社のスタートアップでデザイナーとして活動する600株式会社の金子剛氏に、副業の「リアル」をうかがいます。本記事では、副業を始めた経緯や、金子氏のキャリア観を語りました。

大手やメガベンチャー勤務を経て、3社のスタートアップを兼務

――今回はベンチャー企業の副業(副業)のリアルをテーマに、お話をうかがっていきたいと思います。金子さまは、ヤフー、サイバーエージェント、リブセンス、弁護士ドットコムと、さまざまな会社に勤務されたご経験があり、現在は3社のスタートアップを兼務されています。そもそも、今のような「副業」という働き方を選んだきっかけは何だったんでしょうか?

金子剛氏(以下、金子):1つの理由は、自分のデザイナーとしてのキャリア面ですね。1つの会社で1案件だけやっていると、どうしても学びが収束しがちだと思っています。

1事業、1ペルソナだけにずっと向き合っていると、それしかできなくなってしまうという焦りがあって。いろんな事業を経験することで、自分のスキルの引き出しを増やしていきたいなという思いがありました。

――3社それぞれでどういった業務をされているのか、現在のお仕事内容を教えていただけますか。

金子:本業は600株式会社さんというところで、仕事内容は広く言うとデザイナーです。お客さん(ユーザー)の体験だったり、(自社サービスにおける)アウトプットのクリエイティブに責任を持つ、役職としてはExperience Ownerというかたちでやらせていただいております。

所属させていただいているのは他に2社ありまして、1社はKAERU株式会社という、超高齢社会に向けたフィンテックサービスを作らせていただいています。少し認知機能が衰えてしまったり、体が弱ってしまったり、デジタルに馴染みがない世代の方向けのフィンテックサービスを制作しています。今年はプリペイドカードも発行させていただきました。

3社以外にスポットで仕事を引き受けることも

金子:もう1社がGOGEN株式会社さんです。(事業内容は)不動産×DXという感じではあるんですが、住居を買う・住む・売るというのは、人生において一番大きなお買い物です。一番長い時間を過ごすところに対して、どういうふうに幸せになってもらいたいか、資産としてどう運用してもらいたいかをデザインしています。

車もサブスクになっていたり、体験に対価を払うSaaSにモデルが寄っている中、住居が一番時間もお金もかかるのに、SaaSの文脈が入ってないのはもったいないねということで、住むところにアズ・ア・サービスをご提供できたら、とデザイナーとしては思っています。

仕事としては、両方ともUXデザイナーをやらせていただいています。肩書きはちょっと細かいんですが、KAERUさんではExperience Lead、GOGENさんではCXOとして入っています。

――現在のお仕事について、「3社プラスα」という書き方をされていましたが、この3社以外にもスポットで案件を受けることがあるんですか?

金子:会社のつながりで、「アプリのUI/UXを考えたいな」とか「採用したいので相談に乗ってね」というお話をもらうことも多いです。デザイナーの横のつながりも多いので、たくさん副業していたり、いろんな人と会う機会が多いと、人脈が広がるのかなと思います。

社外からスキルを“輸入”するための手段が副業だった

金子:スキルは“輸入”するとバリューが出ることが多いんです。私もわりと転職回数が多いほうだと思うんですが、転職後の1年目が特に一番重宝されるんですね。なんでかと言うと、その会社になかった能力を持ってきてくれることが、けっこうありがたがられるんだろうなと思っていて。

(転職して)2年後、3年後にそれができないわけではなくて、みんな仕事の合間で勉強しながら(新しい能力を身につけて)その輸入をやっているんですよ。でも、社外で吸収する機会が少なくなると、会社の中でも新しいことに挑戦しにくくなってくるんです。

なので、その「勉強する」ということを、自分は「副業」に置き換えたほうが効率がいいなと感じました。

特にクリエイティブ職やプロフェッショナル職だと、オープンソースを触ったりコミュニティに参加したりと、エンジニアとかもめちゃくちゃ勉強していると思います。自分にとって、一番やりやすい勉強の方法が副業だったと思っています。

――デザイナーさんなどクリエイティブな仕事となると、さまざまな現場で学びを得ることで、アウトプットの幅も広がりそうですね。

金子:そうですね。最先端は現場で起こっていると思うので、「先端にいたいな」といつも思っていて。最先端の事例って、どうしてもWebや書籍とかには出てきにくいんですよ。

海外事例を集めたりはするんですが、今まさに課題が起きて解決しているのは現場だと思うんですね。それを自分のスキルで解決することで、できることが新しく増えると思っています。

1つの会社にいると、その会社で起きた課題は解決できたとは言えるんですが、それ以外は(情報のスピードが)1個遅れた本や勉強会で入手するしかないので。今、自分が伸ばしたいキャリアに近い課題を社外でも拾って解決することが、キャリアの先端にいるための秘訣なのかなと思っています。

実際、時間の管理はどのように行っているのか?

――現在は3社で副業されていますが、コミットする会社のぶんだけ仕事の量が増え、かなり長時間労働になってしまうイメージもあります。時間の管理はどのように行われているのでしょうか。

金子:これは大手に勤めている方とはぜんぜん違って、私独自だと思うんですが、基本はスタートアップからしか仕事を受けていないんですよ。600株式会社は週休3日ですし、他の会社もフレックスだったりと、時間の自由が利く制度があるところとしかやっていないので(業務が)回っているところがあります。

基本的には各社のGoogleカレンダーを同期していて、打ち合わせの内容はわからないようにマスクした状態で、空き時間を管理しています。(副業先に対しては)「夕方とか、水曜日(本業の600社は水曜が休日)のカレンダーの空いている時間に入れてください」というかたちで管理していますね。

――ちなみに、1週間のおおよそスケジュールはどんな感じなんでしょうか?

金子:今、昼の時間は本業をやっています。私の場合は小さい子どもがいるので、だいたい18時から20時くらいまでが家族の時間になっています。なので、21時、22時以降に(副業の仕事を)1〜2時間やったり、夜に手を動かすことが多いかなと思います。

基本的には非同期でできる仕事をメインで受けているので、Slackで即レスとかはせずに、まとめて日の終わりにお返しするかたちで仕事をさせていただいています。

具体的には、金曜の夜と土曜日の朝はGOGENさんとKAERUさんの定例を入れさせていただいてます。ただ、あんまり定例を増やさないようにしています。定例でお話しした上で、Slackなどで立ち話的にカジュアルにやることが多いですね。

自分自身が、自分にとっての「プロダクトオーナー」

――ご家族との時間を設けられているとのことですが、仕事以外の時間も意識的にスケジュールに組み込まれているんですか?

金子:それがまさに「自分の軸」につながると思うんですが、家族も含めて優先順位をちゃんとつけて、パズルをはめていくのが大事かなと思ってます。

1つの企業に勤めていたら、会社がよしなに(ワークライフバランスに)配慮してくれることもあると思うんですが、そうじゃない限りは、「自分がこういう生活をして、こういうキャリアになるためには、投資するのか・休むのか」という軸を持っていないと、ひたすらに仕事を受けてしまうなと思っています。

何が一番大事なのか、優先順位を上からつける。スクラムの考え方と本当に同じだと思います。「私」というプロジェクトのビジョンがあって、無限にバックログが積み上がっていく中で、優先順位順にやるしかない。

プロダクトオーナー(自分)がタスクをどんどん入れていくんですが、それらの優先順位をつけるのも自分です。プロダクトオーナー(自分)が「育児」「子どもと遊ぶ」を提案しない限り、予定に入らないんですね。

「会社に言われたとおりに何でもやらなければいけない」というのだと、自分というプロダクトのオーナーの仕事をしていないと思ってるんですよ。なので、軸を持つのがすごく大事だなと思ってます。

人それぞれだと思うんですが、私の場合は、家族も含めて自分の取り巻く私の人生そのものをプロダクトと思ってオーナーシップを持った時に、どんな順番でやるかを考えています。

長期で仕事を引き受けるのは「信頼関係があるところ」のみ

――複数の仕事をする上では、「自分が自分のプロダクトオーナーである」という考え方はすごく大事ですね。先ほど、副業先とは非同期でのコミュニケーションが多いとおっしゃっていましたが、信頼関係を築いて、安心して仕事を任せてもらうために気をつけているポイントはありますか。

金子:ここは持論なんですが、「副業を決めてから信頼関係を築く」というよりは、「信頼関係があるところに対してのみ副業する」というのが、私のスタイルに近いですね。そうでない場合は、1週間なのか、1ヶ月なのか、1アウトプットなのかを必ず絞ってご契約させていただいています。

いろんな仕事をしている中で出会った人が、私の発信を見てくれて、そこから依頼されることがほとんどです。「仕事があって人足として集められた」というのはたぶん1つもなくて、「金子さんに出会って一緒にやりたいと思った」というところからスタートしたもの以外は、長期にしないようにしていますね。

でないと、長期はちょっと苦労することが多いなと思っています。初期の頃は、仲間のデザイナーから「手が足りないのでやれる人いますか?」みたいなこともあったんですが、やっぱりそういうのは長続きしないなと感じましたね。

仕事の中で掛かってくる“信頼構築コスト”はなかなか請求しにくいというか、信頼構築の維持や管理って、実はめちゃくちゃコストが掛かるんですよ。

見えない業務があったり、「会食しなきゃいけない」って言うと変ですが(笑)。信頼関係があれば「呼ばれたら行きます。楽しいです」という感じではあるんですが、そうじゃないと、信頼関係を作るために「お茶させてください」「お酒を飲みに行きましょう」というのが多くてけっこう大変でした。

それはそれで、時間の使い方としてはちょっとよくないなと思っていました。飲み会に誘われてうれしくない副業はいったん長期でやらない、というのはありますね。

ピラミッド型ではなく、目指すのは「分散型自律組織」

――金子さんの働き方とは反対に、副業をされている方の中には、依頼をポンポンと引き受けてしまって、自分の軸がぶれてしまっている方もいるのではないかと感じました。金子さんご自身は、これからのキャリアをどのように描いていらっしゃいますか?

金子:未来の話としては、これは自分がこうなったらいいなと夢想しているところもあるんですが、よくWeb3の文脈で「分散型自律組織」と言うのを聞くようになりました。

これは、株式会社のようなピラミッド型の従来の会社組織ではなく、有志が自律的に集まってプロジェクトが推進される分散型な仕事の仕方のことなんですが、このような考え方がプロフェッショナル職には今後普及してほしいなって思っています。

組織に所属してプロダクトを作るわけではなくて、オープンソースの中から、「じゃあこれにコミットします」というかたちで作りあげていく。

例えばエンジニアが有志で何かを作る時に、みんなが一緒の組織にはいないけれども、オープンソースのコミュニティに参画することがあるのかなと思っていて。それと似たような形でプロダクトやサービスも生み出せていけないかな? というのを夢見ています。

組織の中で外部と隔離された状態で能力を高めて、その組織を成長させるためのプロフェッショナルになるというよりは、もっと大きな共同体として、社会全体で必要な能力を必要な時に発揮することが今後増えてくるんじゃないかなと思ったりしています。

私はけっこう(職域を)絞ってる人間だと思うんですが、昔からある大企業では総合職でジョブローテして、全部できるようになって、「この会社にずっといます」というキャリアの人が多かったかなと思います。

そうではなくて、「今こういったプロフェッショナルな能力があるので、こういうプロジェクトに関してはこういうベネフィットを提供できます」ということをやっていきたいなと思っています。

「副業がしたい」というよりも「自律分散型でありたい」

金子:1つの組織にずっと所属し続けた時に、職域を絞ると自分が暇になる瞬間や、フェーズによっては必要ない瞬間とか、逆にめちゃくちゃ忙しくなる瞬間があって。それで言うと、今の会社組織の仕組みって、プロフェッショナルが組織の中で働くのは、けっこう非効率な仕組みなんだろうなと思ってます。

というところで、分散型自律組織のように、社会全体で必要とされる部分に自律的にコミットする働き方ができるといいなと思っています。

そうすることによって、私もプロフェッショナルとして能力を最大化できるし、日本全体としても(働く人の能力を)最大化できるんじゃないかなという思いがすごくあって。そういう働き方が増えていくといいなと、個人的に思ってます。

――優秀な人を1つの組織で囲い込むのではなくて、日本企業全体の成長を考えても、できる人ができるところにコミットしていくという流れは、今後広がっていくように思いますね。

金子:そういう未来を夢見ていますね。今すぐそうなるとは思わないので、5年後、10年後にそうやってクリエイターたちが活躍していたらすごくうれしいなと思って活動してます。

副業の話を聞かれることが多いんですが、「副業がすごくしたい」というよりも、「自律分散型でありたい」というのが私の軸なので。そこに向かう時に、今一番いい枠組みが副業なのかもしれないですね。

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