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経営者力診断スペシャルトークライブ:できる30代は、「これ」しかやらない!(全7記事)

今の企業は、「超できる人」は社外から起用する 自社で出世するなら「超優秀」を目指さないほうが良いワケ

経営者やリーダー向けに、「経営」「マネジメント」をテーマとした各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、外資系大手コンサル会社幹部を歴任し、『できる30代は、「これ」しかやらない』『「ラクして速い」が一番すごい』などの著作を出版しているHRストラテジー代表の松本利明氏が登壇。経営者JPの代表・井上和幸氏と共に、根回しする人の「キャラを見切る」ことの重要性や根回しにおける一番のNG、リーダーを評価する際の工夫などを語りました。

根回しする人の「キャラを見切る」ことの重要性

井上和幸氏(以下、井上):僕は幹部の方々の転職支援を行っていますが、転職の理由として「社長の言っていることがなんか違うと思う」とか「自分の意見を聞いてくれない」みたいなことがよく出るんですよね。

この理由が正当な時もあるとは思うんですが、よく聞いてみると、ちゃんと話をしていないことが多いんです。僕は「辞めるぐらいなんだから、1回ちゃんと話をしてみたらどうですか?」とよく言うんです。話をしてみると、意外とお互いが理解できて、元のさやに収まるケースもあるんですね。

松本利明氏(以下、松本):結局、立場が違うから使っている言葉が違うけど、実は同じ方向だったりすることもありますよね。

井上:そうなんですよね。同じ場にいながら会話もせずに、遠目で見ているだけでは「自分の考えと違うことを言っているし、何かおかしいんじゃないか」と思ってしまう。でも、会話をしてみると「そうか、確かにそういう角度から見れば社長が言っていることは正しいな」ということがよくありますよね。

松本:全員が1ミリも異論を挟まない提案はないと考えましょう。その上で、根回しする人のキャラを見切ることが大切です。「権限がないのに『俺の意見を聞け』という『うるさ型のキャラ』」なのか、「痛くて厳しいけど『きちんと正しい判断をしてくれる人』」なのか、「顔色をうかがって『保身しか考えていない人』」なのか。立場と言葉が違うけど、同じことを言っているのか、キャラが違うので反応しているのかを見切る必要があります。

「裏の組織図」を意識する

松本:そして、どの順番で口説けばいいのかを考えなくてはいけないんですが、これはゲームとして割り切っちゃえばいいんです。

よく営業が戦略を立てる時に、会社の表(おもて)の組織図ではなくて、「裏の組織図」という言い方をすると思います。「実は部長より課長のほうが根回しが得意で組織を動かせる」とか、裏の組織図もきっちり描いておいたほうがいいでしょう。ただし、紙に書いたものを見られたり、デジタルデータを間違えて共有フォルダに入れてしまうとえらいことになるので裏でやるしかないんですけど(笑)。

井上:「気をつけましょう」という感じですね(笑)。

松本:この時キーになるのが、賛成多数の人の意見を取りにいくよりも、「第三者的に、きっちり全体を見据えた上で厳しい意見を言ってくれる人」から情報を取りにいったほうがいいです。というのは、賛成多数の人はそういう人たちの顔色を見ているからなんですよね。

だから、サラリーマン社長みたいな人は、自分より立場が低い、このキャラの、取締役の言うことにビクッと反応したりする。まず厳しい人たちのさまざまな意見を聞くことによって、案をどんどん良くしていく。その上で、そこから多数派工作にいかないと最後に全部ひっくり返されちゃうんですよね。そこがキーになったりします。

井上:なるほどですね。

松本:だから、見方を変えて厳しい意見を言ってくれる人を味方だと思えばいいんです。

「競合他社のデータを取ったのか?」と言われれば「うっせーな」と思うし、「この未来予測データはどうなっているんだ?」と聞かれれば「やってみなきゃわかんねーよ」と思うかもしれないけど、それはこの案を良くするためにあえて言ってくれているんだと。そう思うと非常にポジティブになりますよね。

井上:確かに、おっしゃるとおりですね。

根回しにおける一番のNG

松本:他にもいろんな根回しのコツがありますが、その中の1つとして、一番ダメなのは相手の面子を潰すことですよね。根回しには順番があります。なので、話がわかんないからと上にすっ飛ばしていくと、後から降りてきた時に嫌われるんですよね。

それは自分の会社でもそうですし、お客さんもそうです。よくあるのが「駄目な営業」と僕はいつも言うんですけど、昔はとにかくキーマンに会えばなんとかなるという営業のパラダイムがあった。今の大企業は担当者に検討を任せてキーマンが担当者の提案から選んでいるから、キーマンに会いに行くと、担当者は激怒して「俺を飛ばした」となりますよね。

だから担当者と一緒に根回しをするように持っていかないといけない。トップダウンで社長が決めたら全部決まる会社や、中小企業のオーナーだったらいいかもしれませんけど、今一定以上の組織はそのあたりの権限委譲もちゃんと進んでいるので、ちゃんと選ばなきゃいけないということ。

あとはどうしても根回しと言うと、意思決定してもらうために自分よりも上の人だけを見るんですけど、伝えたいことは物事を通すだけじゃなくてちゃんと動かすことになってくるので、自分より立場が低い人とか弱い人とか、味方になる人を最初から手を付けなきゃ駄目ですね。

ここに書いているんですけど、根回しには分子と分母があります。

実行する時に横と下を押さえていないと、それこそ「俺が承認もらったんだぞ」「僕が部長だぞ、言うことを聞け」と言って「わかりました」と言いながら総スカンされたりとか、手を抜かれたりする可能性はありますよね。

井上:ありますよね。

松本:そうならないように「井上さんが言うならわかりました」というふうに、ふだんからそういう関係性を築いておかなきゃいけない。あとは下の階層から押さえていくのは実はコスパが良くて。なぜかと言うと上の階層は定年退職だったり異動していなくなる可能性があります。

井上:ものすごい中長期スパンですね(笑)。

松本:自分の下は増えていく一方なので、逆に下からやったほうがコスパは良いんですよね。

井上:確かに。

松本:意外とここは書いていないんですけど、ここがキーだったりします。

井上:すごくそう思いますね。

営業にも通じる、根回しの手法

井上:実行のところは会社によると思いますけど、それなり以上の組織体のところだったら絶対そうだと思うんですよね。なので一緒に根回ししてあげるみたいな感じですかね。そういう意味ではね。担当の方と一緒に攻略してあげるみたいな。

松本:そうですね。特に対クライアントだったりすると、一緒に攻略してあげるというかたちのほうが今正解が多いですし。

井上:そうですよね。

松本:昔だったら飛び込み営業だっていろんな手段がありましたけど、今はなかなか会ってくれない。インサイドセールスになったりとか、しかもクロスセル・アップセルを上げていこうと思った時にいきなり上から行くよりは、この営業と一緒のほうが通しやすいと思われる味方になる。自分自身で通す自信がない人のほうが、いろいろ言ってきたとしても、最後は、通してくれる人を一緒に同席させたがるので。

井上:確かに。

松本:変に任せて意思決定されちゃうよりは、井上さんは味方だから、井上さんと一緒にプランを考えたい。一緒に上司の席に同席して欲しい。役員説明も同席してくださいというように持っていくほうが今は正解ですね。

井上:そうですね。そう思います。

経営や人事に好まれ、幹部に選抜される人の特徴

松本:ということで、予定していた私の情報提供は以上になりますが、1つだけ追加があります。ここに書いていなく、次の本には入れる内容なのですが、これからは「できる人」じゃなくて「信用される、いい人」を目指すことが正解です。

天才と呼ばれている人は、あることには卓越しているけど他が駄目だったりということは多々あるので、優秀な頭脳が必要な時はコンサルタントなど一時的に外部を活用する。ただし、社内の人間は、ハラスメントはなく、人間関係のいざこざもなく、誰からも、この人と仕事をしたいと思われる信頼される人、応援される人を配置したいと経営や人事が考えるように変化しました。

井上さんは身近に感じていらっしゃると思うんですけど、今の企業では超できる人は意外と外部だったり、外部と組むという話が多い。幹部として上げていく人は、周りに信頼されて、「ついていきたい」とか「この人を応援したい」と思われる人を選抜するように大きく変わってきてますよね。

井上:はい。おっしゃるとおりですね。

松本:超できる人になるよりも、信用される人のほうが楽で、再現性も高い。

なので、ぜひここは目指してください。

マネジメントに必要な5つの力

井上:盛りだくさんの内容を端的にお話しくださってありがとうございました。Q&Aをしながら残りの時間を過ごせればと思うので、みなさんご質問とかがあったらチャットに書き込んでいただければと思います。

今日お話しをうかがって思ったのが、例えば5つの力。我々は「経営者力診断」というものをリリースしまして、ビッグデータを解析したところ、大きく「描く」「決める」「やり切る」と、「まとめる」、それから「学び続ける」。こういうものでマネジメントの方々の力は構成されているなと理解できました。

この中のやり切る力をまとめた時におもしろかったのが、当然やり切るために業績へのコミットメントや戦略の果断な遂行は大切なんですけど、戦略をちゃんと説明、周知、浸透させることがやり切る上ですごく大事だとわかったんですよ。これは根回しも当然そうですし、先ほどのようなコミュニケーションや、人柄・人望みたいところもそうですよね。

こういうあたりとリーダーの方たちが物事を実行していくところが、すごく密接に結びついている。決して本人だけが徹底的に走ったり、決めたりすることで物事が実行されたり決断されたりしないみたいなことが、けっこう見えたんですよね。

松本:そうですよね。特に経営力となってくると、一般社員に求められていることとレベルがポンと変わってくるというか。決めると言っても、よく本とかに載っているのが、「決断力をつけるためには今日のお昼ごはんに何を食べるか瞬時に決めましょう」みたいなのがあるのですが、そういう話じゃなくて。

経営になると、正しいとは言い切れない情報が半分ぐらいしか入ってこない会議室の中で決めなくてはいけない。ランチのメニューを選ぶこととは判断力でもぜんぜん違うじゃないですか。

井上:そうなんですよね。今松本さんがおっしゃってくださったとおりで、この経営者力診断というのは、まさしく1人だけで何かをやるということではなくて、みなさまがリーダーとして組織・チームとかを率いて物事を起こしていくという前提に立っているところがあるので、やっぱりそこは出てくると思いますね。

経営者力診断の価値

井上:コメントいただきました。ありがとうございます。「人生100年、30代でできなくても40代、50代から諦めずに始めることも大事です」。それはそうですよね。

松本:逆に、経験をうまく活かしていきながら必要なところだけをリスキリングして新たに身につけていくけばいいので、面倒だなと思っても、変わる気になれば40代、50代の方がリスキリングしなくていいものは既に身についているので、有利だと私は考えています。

あと、誤解してはいけないと思うのは、こういう診断をやると「こんなスーパーマンはいないよ」とか「こんな大変なことはやってられないよ」と思うかもしれませんけど逆で、これができるようになったら楽になりますよね。

井上:そうなんですよ。

松本:今まで100かかってきた労力を、実は30とか50で早く進められるようになってくるんですよね。

井上:そうなんです。今日松本さんにコツのお話とか、ポイントを発見してそれをうまく使っていくところなどをお話しいただいて、それが松本さんのおっしゃる「これだけ」の部分だと思うんですけど。

経営者力診断も自分の確認をしていただくためのもので、まさしく経験的とか感覚的にはみなさんだいたいわかっていたり気づいているようなことを、構成要素としてわかりやすくまとめているという意味合いがすごく強いと思っています。再現性を持っていただきやすくなると思うんですよね。

野球の話のところで、成功のポイントは何だみたいな話をしてくださいましたが、組織の上に立つみなさんのコツみたいなものが結局経営力診断にある一つひとつだったりします。

「そうか、自分は構想力を発揮しなきゃいけないな」といった時に例えばこの因子を見ていただけば、「これとこれとこれは一番注意したり、自分が実行すると高まったり発揮できるのかもな」というふうに考えられると思うんですよね。そういう使い方をしていただけるといいなと思っています。

リーダーを評価する際の工夫

松本:自分自身で知ることももちろん重要ですけども、例えば「大きい」といっても人によって大きいの感覚が違うみたいに、自分の結果とかを会社の中でお互いにフィードバックし合ったり、場合によっては多面評価で周りから本当にそう見られているかと確認したり。

あとは、できれば会社同士でどういう傾向があるかを見合ったりというかたちにしていただいたほうが、より納得度とか理解度とか活用度が変わってきますよね。

井上:そうなんです。このへんの運用のご相談はよくあるので、私たちも作っていかないといけないなと思っているのですが、前提は松本さんが今おっしゃったとおりで、お互いオープンにしていただけると良いと思うんですね。変なものが出てくるわけでもないですし。

一般の方々には「自分の強弱を調べるのはなんか嫌だな」みたいな感覚もあるみたいですけど、僕はリクルートで育っているので、けっこうオープンにお互いのものを見ながらフィードバックし合うような研修とかも実際にあったりしたので、そういう抵抗がないのかもしれません。

松本:選抜リーダーの育成をやる時は、最初と最後で評価を取ると良いです。選ばれた人たちは「自分は優秀だ」という、自覚もあるので、「こんなレベルでできています」と高めの自己評価をするのですが、回が進むにつれてできていないということに気づいて1回ドーンと落ち込むんですね。そして乗り越えて初めて冷静に自分のレベルを把握できるようになります。

なので、自己評価の項目は一工夫必要です。最後の回は、最初から最後を見て、「100点満点のうち何点から何点まできましたか」とか、そういう聞き方をしてあげると、できると勘違いした部分を差し引いて、本当にどれだけ成長したのかが摑めるようになります。これは自己評価だけでなく、メンバー間でお互いに多面評価することをお勧めします。優秀な人ほど、自分に厳しいので自己評価が低くなりがちだからです。

井上:そうですよね。

今の時代のリーダーに必要な資質の測定

松本:「最初は何点から何点でしたが、この半年間で何点から何点に成長しましたか?」「50点から70点からですか?」「それとも20点から40点ですか?」みたいなところをお互いにフィードバックし合うと、より理解度や納得度が深まります。今の時代のリーダーとして必要なのは、スキルの高さより、短期間で成長する力や信頼を得る力なので、この方法ならそれも測定可能です。

井上:そうなんですよね。基本的に現状のものはご自身で自己サーベイで使っていただくことを前提にリリースをさせていただいていますが、次は、周りの方々からの見え方みたいなところも見ていただいて、それを照らし合わせていただけるようなステップを予定している感じですね。

松本:会社さんによって、あるいは部署によって傾向が違ったりする可能性はありますよね。

井上:すごく出てくるかもしれないですね。

松本:出てきますよね。逆に言うと、なんでこんな目標達成した人たちなのに、達成力を低く評価するとか、この部署の人達は、こう見ている等、あらためてその会社や部署の傾向は出るので、、ある程度まとめた人数でやって、相互比較したほうが効果でますよね。

井上:そうですね。松本さんのクライアントとかでも、これは無料で使えるものもありますので、ぜひご活用ください。

松本:わかりました。

井上:本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。

松本:ありがとうございました。

井上:みなさんもご参加いただきありがとうございました。またお会いしましょう。失礼いたします。

松本:失礼いたします。

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