2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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久保彩氏(以下、久保):みなさん、こんにちは。今回進行させていただきます、久保です。ゲストは澤円さんです。楽しみにしておりました。よろしくお願いします。
澤円氏(以下、澤):こんにちは。
久保:みなさん(Zoomのリアクションで)パチパチしてくださっています。ありがとうございます。今日は、澤さんが講師の「セルフプレゼンテーション~『ありたい自分』であるために~」のセッションについてご紹介いただきながら、澤さんの意図、思い、願いを聞きながら、最後はカリキュラムについてもお聞かせいただきたいなと思っています。
今日のウェビナーは700人以上の方にお申込みいただきました。かなりのたくさんの方にご参加いただくので、ぜひ参加者の方も交えながらの会にしたいなと思っています。すごい人数です。
私はフライヤーの新規事業の担当をしております。澤さんを知らない方はいらっしゃらないとは思いますが、簡単にみなさんに自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。
澤:澤と言います。「今日初めて見た」という人はどのくらいいらっしゃいますか? 手を挙げてもらっていいですか。「お前誰だよ」という感じで、知らない人。あ、けっこういるじゃん。
久保:33、34人。
澤:けっこういますね。
久保:でも、今の参加人数からするとほとんどいないですよ。(笑)。
澤:だいたいこれって、クリックしている人の3倍ぐらいはいると思ったほうがいいので。3分の1くらいは知らないかもということなので、下の「手を挙げるボタン」を押してくださいね。
ということで、澤と言います。間違われる職業トップ3はミュージシャン、美容師、サーファーです。全部違います。千葉県の山武市というところに別宅があるので、「サーファーですね?」と言われるんですが、違いますから。やったことないです。
もともとはテクノロジーの世界でずっと生きていて、マイクロソフトという会社で、マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長をやっておりました。広く遍く、いろんなテクノロジーを多くの方に伝える仕事をしておりました。
澤:最近ですと、9社と業務委託や顧問契約をさせてもらっていて、ベースはテクノロジー、コミュニケーション、マネジメント、プレゼンテーションのタグでいろんなお客さんと契約させてもらって価値提供をしている仕事です。
そういった意味で言うと、今回は「プレゼンテーション」と「マネジメント」に関わってくると思います。今日はマネジメントで培ってきた体験をチョイチョイと見せながら、最終的には講座のほうでそれを深掘りしていく感じにしようかなと思っています。
久保:ありがとうございます。タグをたくさんお持ちだということで、今回はその中でも「プレゼンテーション」と「マネジメント」にフォーカスした内容ということでしたが、今回のイベントのタイトルは「セルフプレゼンテーション」です。
このタイトルにさせていただいたのは、澤さんからの問題意識から来たものです。なぜ「プレゼンテーション×セルフ」と付けられたのか、最初にこのあたりをお聞かせいただいてもよろしいですか。
澤:まず、日本人のマインドセットとしてよくないよなと思う言葉があって。……僕、目をこっち(カメラ外)に向けていますけど、不真面目なわけじゃないですから。不真面目なんですけど、今回のセッションを真面目にやってないわけじゃなくて。
久保:(笑)。澤さんのところ、いっぱいディスプレイがあるんですよね。
澤:こういう時に限って機械が動かないんですね。だいたいIT機器は、寸前になって突如動かなくなるんですね。なんか知らないけど、固まってしまいました。チャットに入れますね(「滅私」)。
久保:「滅私」と読んでよろしいですか?
澤:サッカーのトッププレイヤーのメッシとは、まったく関係ないですからね。オヤジギャクを言っちゃいましたね。そっちのメッシじゃなくて、私を滅ぼすという「滅私」。滅私奉公の「滅私」。
久保:「日本の企業のマインドセットとしてよくないところ」と言われましたね。
澤:「己を抑えて何かをするということが美しい」みたいな考え方があるでしょ。それはもう、流行らんよと。流行り廃りの話じゃないんですが、己を減じて何かに尽くすことで人生が豊かになる時代って、ずいぶん前に終わっちゃってるんですよね。
澤:例えば経団連でも話題になりますが、「終身雇用や年功序列って、もう今はうまくいきませんよ」と、ギブアップしているわけですよね。
多くの経営者がそう言っているにも関わらず、なんとなく現場では滅私というか、「会社」という非常に大きなものを主語にして話をすることが美しいという感じになっちゃうんですが、もうそうじゃないですよね。
ということは、自分をどんどん出していくことが求められるんだけど、これまた教科書がないから、なかなかできていないというか。そこに対して問題意識を持っていて、どうにかできないかな? というところからスタートしています。
久保:なるほど。(視聴者コメントで)「刷り込まれてしまっている気がします」と書かれていますね。
澤:そうそう。これはなんでかと言うと、日本にはそれでうまくいっていた成功体験があるからなんですよね。成功体験があるので、「そういうふうにやったほうがいいんじゃないか」と言われていて、教育プログラムもこういうものをベースにして考えられているところがあるわけです。
日本の教育プログラムって、数十年あまりアップデートされていないんです。途中でゆとり教育という謎の教育プログラムがあって、それでいろいろとおかしくなっちゃって迷走したこともありましたが、基本はあまりうまくいっていないところがあります。なので、そろそろアップデートが必要だよなと思っています。
澤:アップデートで大事なのは、まずは自分自身を深掘りしていくことが効果的です。このイベントを依頼された時の一番最初のオーダーって「プレゼンテーション講座」でしたよね。
久保:そうですね。book camp laboの中でも自己表現の場がすごくあるんです。本を読んで人と語るとなると、著者の考え方だけじゃなくて「×(掛ける)自分」になるところもあるじゃないですか。自分をうまく表現するエッセンスとして、プレゼンテーションを教わりたいなと思っていまして、澤さんにお願いさせていただいたんですね。
そうしたら、澤さんから「プレゼンテーションで一番重要なのは、自己紹介のプレゼンテーションだ」と言われてハッとしたんです。まさに私たちが考えた文脈と重なる部分もあり、本を深めるにはまず自分なんだ、というところと重なる部分がある。
「これだ!」と思ったわけなんですが、プレゼンテーションの一番大事なものが「自己紹介」だという、この文脈をもう一度お聞きしてよろしいですか。
澤:「たくさんの人を前にして何かを語ること」をプレゼンテーションだと思う人がまあまあ多いんです。もちろんそれもプレゼンなんですが、実際のところ一番多いパターンは「自己紹介」なんですよ。
プレゼンテーションの定義は「人に何かを伝えること」だと言っているんですが、相手が知らないかもしれないことを伝える時って、最初にだいたい自己紹介が来るわけですよね。自己紹介があって、初めて人と人はコミュニケーションがスタートできるので、どこの誰かわからない場合は間に「物」があると成立するんですよ。
澤:例えばコンビニで物を買う時には、店員とのコミュニケーションというよりは、物をベースにした短時間のコミュニケーションで済みます。そういうレベルであれば「人となりまで知らんでもいい」となるんだけど、車や家とか大きい買い物だと、「誰から買うか」がけっこう重要だったりしますよね。
久保:そうですね。最初は物自体のスペックから入ってくるんでしょうけど、相手の方を信頼できるかによって最後に決められるかどうかが掛かってきます。
澤:そう。「まったくこいつを信用できないけど、とりあえず家を買おう」とかって、あんまりないと思うんですよね。
久保:そうですね。
澤:「この人が言うんだったら間違いないかな」と思って、初めて大きなお金をつぎ込んでみようと思えるのだと思っていて。例えば当たり前ですが、「自分」って人生の中で最も大きい物ですよね。自分より他人が重いということは、絶対にないはずなんですよ。
家族がいる、子どもがいる。もちろんそっちのほうが重要だという方もいらっしゃるんですが、家族のためにも、まずは自分自身が豊かな人生を送ることが必須条件だと思っているんです。
ライフセーバーが人を救う時の一番の原理原則は「自分が溺れないこと」なんですよね。消防士もそうですね。まずは自分の身の安全を確保できるか否かが、一番最初の判断基準なんです。命懸けなんだけれども、命を捨てに行っているわけではないので。
結局、自分が最も重いということがベースにあるんです。そうしないと、いいことはできないんですよ。つまり、いいことをするためには、まずは己を知ることが必須項目なんですよね。
久保:なるほど。
澤:その必須項目を埋めていくためには、自分を深掘りする必要があります。「自己紹介」というキーワードでお話をしていますが、テクニックやスキルやメソッドは、全体からすればこのくらい小さいので。
ほとんどにおいて、「自分について何を語るのか」を知ってもらうことが重要です。なぜかというと、人生において最も大事なことだからです。それがベースラインにあります。
久保:なるほど。先ほど言われた「いいことをするために、己を知るところからスタートする」というのがすごく共感を得ているんですが、一方でこれは難しいですよね。
例えば、今日の澤さんの「ミュージシャンでもサーファーでもありません」というつかみについて、みなさんも「秀逸だ」と言われてました。これもある意味タグの裏返しというか、ここから距離感を掴むところだと思うんです。
私も自己紹介がけっこう苦手で、今日も「新規事業の担当です」という会社の肩書きをポンと言って終わりました(笑)。みなさん、自己紹介の苦手意識はおありですか? どういうところが苦手なんでしょうか?
澤:そもそも「自己紹介がめっちゃ得意だ」という人、ぜひ手を挙げてみてください。
久保:あ、少ない。
澤:冒頭から挙げっぱなしの人もいるかもしれないですが、いるにはいますね。
久保:けっこういる。でも、17人とかです。
澤:5パーセントくらいかな。全体からするとちょっと少なめですね。じゃあ次に、「自己紹介がむっちゃ苦手だ」という人。いや、もう少し具体的に言おう。「知っている人がいないパーティに行くのがつらい」という人は、どれくらいいらっしゃいますか?
久保:飲み会でもいいわけですね。
澤:飲み会でもいいです。うわ、すご!
久保:多い多い。100人とか。
澤:100人を超えた。
久保:(笑)。
澤:ありがとうございます。かなり多いですよね。
澤:そういう場所(飲み会など)に行くと大抵動けなくなって、壁の花になっちゃう人はどのくらいいらっしゃいますか? 手を挙げてみてください。うわ! これまた多いぞ。
久保:さっきの方とほぼイコールです(笑)。ちょっと減ったけど、という感じですね。合コンとかもつらいですね。
澤:大抵の場合、「その場で何をしゃべっていいのかがわからない」というのもあるわけですよね。実際には「何をしゃべるか」は非常に簡単で、自分を知ってもらうために自己紹介するわけなんですが、いきなり超アウェーなところに行って「やれ」と言われても、まあつらいわけですよね。
ちなみに僕も、知っている人があまりいないパーティはめっちゃパワーを使うので、基本的に行かないんですが、そういうところにチャンスが転がっているのも事実なんですよね。
久保:そうなんですね。
澤:社外に知り合いを増やすために異業種交流会に行ったことある人は、どのくらいいらっしゃいますか? まあまあいらっしゃいますね。
久保:けっこういますね。
澤:オンラインなら。
久保:オンラインなら(リアルの交流会とは)ちょっと距離が違いますね。
澤:じゃあ、「異業種交流会で名刺交換ぐらいしかしなかった」という人は? つまり、そこででっかいチャンスを得たというよりは、名刺交換くらいしかしなかったなという人。やっぱり、けっこういますよね。
久保:(笑)。(手が挙がっているのが)50人とかになりましたね。
澤:たぶん、何をしゃべっていいのかがわからないんですよね。名刺交換をして、そのあと何かが発奮したとか、無二の親友ができたとか、何かしら自分の人生に対してプラスになった人がいるか、という意味で聞きました。
(知らない人がいる場所へ行っても)名刺交換くらいはできるんですよ。日本人って、名刺がないと自己紹介できない人の割合がすごく高いという印象なんですね。
久保:わかります。私、家庭の事情で2年ほど会社を辞めていた期間がありまして、その時の名刺に頼れない絶望感。自分で名刺を作ればいいのかもしれないんですが、何をそこで語るのか、というところもぜんぜんなくて。
澤:結局それって、名刺がすごく便利なツールだからなんですよね。名刺というのは情報が入っていて、それを読むだけでもそれなりに間が取れるので、すごく便利なんです。
今は久保さんもフライヤーの肩書きを使って自己紹介もできるし、もっと言えば、フライヤーを通じていろんな学びを得てお話もできる状態なので、たぶん自己紹介で苦労することはないと思うんですね。だけど、そうじゃない人たちがたくさんいらっしゃって、特に非常に多いのが定年退職をした方々です。
澤:あるレポートによると、名刺に頼っていた自己紹介しかできない人たちは定年退職をしたあとにボケるのが早い。思考する癖がついていないので、名刺がなくなった途端に立ち位置がなくなっちゃって、痴呆になっちゃうパターンが多いんですね。
あるエピソード見て衝撃を受けたのが、痴呆が進んでしまった方の奥さんがいらっしゃって、ご家庭で過ごされていたんだけど、ある朝起きたら旦那さんがスーツを着ていたんだって。スーツを着て「行ってきます」と言って、カバンを持ってどこへ行くんだろうと思ったら、自分がもともといた会社だったんですね。
(その旦那さんは)役員か何かまで行ったらしいんだけど、受付の人に「何で入れないんだ」と詰め寄っている状態になったらしくて。
当時のチームメンバーだった人で、今は会社の役員になっていた人がたまたま出社した時に見つけて。「あ、○○さんだ」と言って、様子がおかしいことが瞬間的にわかって、すぐに入館証を発行して役員室にお連れしてケアしたんだって。
話をいろいろ聞いて、「勉強になりました。今日はお疲れになったでしょうから、お帰りいただいてけっこうですよ」という感じで、満足させて帰ったという話なんですけど、悲しくない?
久保:うーん、悲しい。
澤:たまたま役員の人がいて、たぶん人格者だったのかよくわからないですが、「とりあえずケアしてあげよう」ぐらいに思ってもらえたのがその人にとってはラッキーよね。その人が現れなかったら、普通に通報されて警察沙汰ですからね。
久保:そうですね。それくらい、肩書きや拠りどころを1つ失った時の喪失感がすごくあって、なくなった途端に混乱が起きてしまうこともあり得ますよね。
澤:だから、キャリアの一本足打法は本当に危険なんですよね。実は痴呆などにもつながって行くんですよ。(視聴者コメントを見て)このチャットには、対談を受けて自由に書き込んでいいですよ。誹謗中傷とかはガチ泣きしますからね。
久保:私も泣きます(笑)。
澤:それ以外だったら、何を書いてもいいです。それで、自己紹介はイコールキャリア論にも直結するんですよ。キャリアは名刺の肩書きを作ることではない、ということなんですよね。
これはすごく意識しなきゃいけなくて、「“名刺じゃんけん”に強くなるためにキャリアを考えるのである」と思っている人がいるのだとしたら、これをアップデートしなきゃいけないですよね。名刺じゃんけんって知ってる?
久保:いや、知らないです。名刺じゃんけんというのは?
澤:名刺をパッと出して、どっちのほうが肩書き上か、社会的バリューが上か、株価が上かとかで比較するのが名刺じゃんけん。こんなことを言うと炎上するかもしれないけど、『東京カレンダー』の物語に出てきそうな話ですよね。
久保:(笑)。なるほど。名刺でどっちが上か・下かを測るのはそうじゃないと。
澤:そういうことじゃないよね。だって、名刺が人生を豊かにしてくれるんでしたっけ? これはさっきの話に直結するわけですよ。
もともといい会社に勤めていたとしても、定年退職したあとは過去の話なので、それ以上は絶対にアップデートはできないですよね。アップデートがまったくかからない過去の話に自分の拠りどころを求めるって怖くないか? という話なんですよ。
久保:怖いですね。
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