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最高の会社の辞め方(全4記事)

「もう辞めたい」と思った時、転職活動でミスらないために 簡単に縁が切れないSNS時代に役に立つ「退職学」のポイント

「退職学®︎」の研究家であり、『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』著者である佐野創太氏が、キャリア戦略としての「最高の会社の辞め方」について語りました。転職が当たり前になった時代において、辞めた会社とも友好な関係であり続け、退職後も声をかけられる人になるための「退職学」を学びます。

「最高の会社の辞め方」の4つのポイント

佐野創太氏:独立してから1,200人ぐらいの人に「最高の会社の辞め方」や「セルフ終身雇用」を切り口に働き方や転職の有料相談をしてきました。そうしたら、再現性があったんですよね。仕事がバリバリできる方もいれば、仕事以外にも大事なことがある方もいると思います。そういう方も、退職学を実践することができたんですね。なので、特に再現性のあるものを4つ、ぎゅっと凝縮してお話しします。

最高の会社の辞め方は、この4つのステップをぐるぐる回していきます。1個やったら完成ではなくて、ぐるぐる行ったり来たりする感じです。

(スライドに)パワーワードを並べています。①退職成仏ノート、②人間関係の仕分けノート、③社内創業、④明日への手紙。この4つをぐるぐる回すことで、最高の会社の辞め方が完成されていきます。

「退職成仏ノートって何やねん」と思いますよね。心の中でいいので、「退職するぞ」というのを1回決める。退職するということは、ぶっちゃけ不満があるからなんですよ。これはきれいごと抜きで、そうだと思います。

転職する際に、面接ではいいことを言いますが、実際は「あー、もう辞めたいな」「この会社に後はないな」と思う時にはモヤモヤがすごいんですよ。その状態で転職活動をすると、けっこうミスっちゃうんですね。

みなさんの中で、採用を担当したことがある方はいらっしゃいますか? 前の会社への恨みつらみがすごい人って、採用したくないですよね。他責が強すぎて。

志望動機として「なぜ転職活動をしているんですか?」と普通に聞いただけなのに、前の会社の悪口めっちゃ言うと、「うわぁ。うちに入ってきてもこの人めっちゃ文句言いそう」と思っちゃって、採れないこともありますよね。

「働き方を変えたい」と思ったら、不満を書き出してみる

モヤモヤとか、会社に対する不満をノートに書きなぐってほしいんです。モヤモヤは本音のうずきです。2層になっているジュースを思い浮かべてください。下に溜まっているのが本音で、上にあるのが不満なんです。なので、不満を取り除くことで本音が浮かび上がってくるんです。

だから、「働き方を変えたいな」「会社の人間関係が良くないんだよな」「ぶっちゃけ仕事に飽きてきたな」という本音を書いてみてほしいです。

書くことで「なぜ飽きてしまったのか」とか、その先にある「実はこういう仕事がしたいんだ」ということが見えてきたりします。この退職成仏ノートを作って、退職するつもりになって自分のモヤモヤを成仏させてみてください。

会社を辞めたり退職する場面はマイナス状態なので、やっぱりちょっと不健康なんですよ。だから、平熱に戻していくんです。

みなさんも徹夜明けには大事な意思決定とかしないじゃないですか。僕も徹夜で本を書いている時はテンションが上がって、「これは売れるわ!」と思うんだけど、次の日に見返すとひどいんですよ。「なんだこれは?」と驚くことがよくあります。

学生時代にラブレターを書いた方はいませんか? 夜中に書きながら、今で言う「エモい」みたいなテンションになっちゃって、「きた! この思いは届く!」と思って次の日に見たら、「あれ、何だろうこれは? 誰が書いたんだろう。恥ずかしいな」みたいなことって、けっこうあります。

だからとにかく書いてみて、次の日にもう一回見てみてください。意外とすっきりします。これが、まず1個目の循環の出発点です。モヤモヤはノートに書きなぐってください。

不満を放っておくと「前に進んだ気」で仕事をしてしまう

このことはいろんな本にも書かれています。神谷美恵子さんの『生きがいについて』という本はすごく良い本です。佐野の本より良い本なので、みなさんぜひ読んでみてください。抜粋した部分を読んでみますね。

「社会的にどんなに立派にやっているひとでも、自己に対してあわせる顔のないひとは次第に自己と対面することを避けるようになる。心の日記もつけられなくなる。ひとりで静かにしていることも耐えられなくなる。たとえ心の深いところでうめき声がしても、それに耳をかすのは苦しいから、生活をますます忙しくして、これをきかぬふりをするようになる」。

「この自己に対するごまかしこそ生きがい感を何よりも損なうものである。そういうひとの表情はたるんでいて、一見してそれとわかる。これがまたかなり多くの神経症をひきおこす原因となっていると思われる」。

これは「不満を放っておくとどうなっちゃうか」という話です。僕はすごく刺さりました。僕、けっこう自分の心をごまかしちゃうタイプなんですよ。ペラペラしゃべって、自分の本音や感情もそれっぽい言葉で包んじゃうんですね。

そうすると、後から自分の心がわからなくなって、とにかく仕事を忙しくして前に進んでいる気になっちゃうんです。そんなことを繰り返した経験があるので、この言葉が刺さったんです。

(今日ご参加のみなさんでも)お仕事をすごくがんばっている人はこういう可能性があるので、疲れたり元気がないなと思ったら『生きがいについて』を思い出してください。良いブレーキになります。

人間関係を「つながり」と「しがらみ」に仕分けする

2つ目が「人間関係の仕分けノート」。人間関係を仕分けしていいのか? という問題はあれど、いいんです。人間関係は仕分けしていきます。

僕はまだ34歳ですが、だんだんと「この人とは根本的に合わないな」「初めて会ったのに気が合うな」というセンサーが育ってきました。そのセンサーを使って、退職する時やコミュニティを抜ける時には「つながり」と「しがらみ」にグッと仕分けしてほしいんです。残りの時間は限られているので、大切な人を大切にする時間を確保するのです。

会社を辞めたいと思っている時は、「会社の全部が嫌い」となっちゃうことが多いんです。会社は嫌いでも、隣の部署のあの人は好きかもしれないし、3つ前の上司はまだ尊敬しているかもしれないし、初めて部下になってくれたあの後輩は好きかもしれない。

会社は嫌いになっても、人のことは全員嫌いになってほしくないんですね。その人が転職したり、独立したり、サロンを開いた時に、一緒に何かができるかもしれない。なので、「つながり」と「しがらみ」にガッと分ける。人間関係はいつでも選び直せるということを思い出していただきたいです。

「つながり」と「しがらみ」の違いは何かというと、「この人と未来でこうしたいな」ということがなんとなくでもある人は「つながり」です。僕は音楽が好きなので「音楽の話をしたい」でもいいし、子どもが2歳なんですが「子どもの話を聞きたいな」でもいいです。未来があるかどうかです。

この時、過去にお世話になった人を「つながり」にしがちなんですが、意外とこういう方が「しがらみ」になったりするんですよ。

人の心は変わるから「将来の和解」の余地を残す必要がある」

みなさんもありませんか? 「お世話になったあの人の顔をつぶせないから、会社を辞められない」「仕事を変えられない」とか、Facebookで投稿する時も「こんなことを言うとあの人を傷つけちゃうかな」みたいな。でも、その人に最後に会ったのが5年前だったりすると、それはもう「しがらみ」になっているかもしれないんです。

それよりも、これからがある人や、今一緒にいられる人を大事にする。こういう考えで「つながり」と「しがらみ」をガッと仕分けしていくと、自分がどんな人と付き合えて、どんな人とだったらこれからも一緒にいられるのかがわかります。

転職する時に「どんな社風がいいですか?」という質問がありますよね。「どんな会社だったら自分の力を発揮できますか?」「伸び伸びできますか?」ということを考える時に、これをやっておくとすごくヒントになります。だから、ぜひ「つながり」と「しがらみ」をガッと分けてみてください。これは強力ですよ。

次に人間関係についてです。僕の心の師匠でもある田坂広志先生が『人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」』という本の中で、「別れた後も、『心の中』で、相手との関係を絶たぬこと」と書いているんですね。

なぜかと言うと、「人の心は、変わるので、『将来の和解』の余地を残す必要があるから」なんです。これは心理学者の河合隼雄先生の言葉を引用しています。

会社員時代に厳しいことばかり言ってくる人を「うざいな。この人は『しがらみ』だな」と思って独立したら、その人がすごく応援してくれたとか。学生時代すごく厳しかった先生が、今思えば一番心に残っている良い先生だったということが起きたりするんです。

SNS時代の人間関係は「後味を悪くしないこと」が大事

これは逆もあります。「この人はずっと一緒にいられる最高の人だ。『つながり』だ」と思っていた人が急に手のひらを返したり。怖いですよね。独立したり、結婚したり、退職したり、自分のフェーズが変わった時に人は見る目を変えてきます。

こちらは見る目を変えていないのに、向こうが変えてくる時があるんですね。なので、どんなに「この人はつながりだ」と思っていたとしても、一回仕分けをしてみてください。

それから、「しがらみだな」と思っている人とは距離を取ってもいいんです。無理に連絡を取る必要はないし、「最後に一言なんか言ったろ」という感じでメッセージは送らないほうがいいです。

SNS時代の人間関係は、後味を悪くしないことが大事です。SNS時代って、会社で会わなくなっても、またこういうサロンやイベントで会うんです。「何かプロジェクトをやりましょう」となった時も、メンバーの中に「最後に一発言ってやろう」という人がいると、まぁやりづらいです。

メッセとして残っているのが良くないんですよ。これまでみたいにガラケーならば、携帯を変えたらメッセージ履歴がなくなるんです。でも、FacebookやLINEはデータを保存しているので、見えちゃうんですよね。

「もう一回お世話になります」と送ろうした時に、過去に送った「もう会うことはないでしょう」という言葉が残っちゃっていたり(笑)。

これがSNS時代の悪いところで、そんな簡単に縁が切れないんです。なので、心の中で相手との関係を絶たぬことが、実はものすごく大事です。距離は取ってもいいんですが、滅多打ちにはしない。こてんぱんにはしない。これは意外と大事でございます。

会社を辞める前に「社内創業」をしてみる

3つ目、ここからが「攻め」の退職学になります。攻めの「最高の会社の辞め方」ですね。最後に「社内創業」をして会社を辞めてほしいんです。仕事を「創ってみる」をやってみてください。

これまでも、退職・転職をする時には業務の引き継ぎをしていたと思いますが、それのパワーアップバージョンをやってほしいんですね。すごく感謝されます。

例えば、営業や企画やマーケティングなど数字で表しやすい場合は、自分が出した結果やノウハウを誰もができるように研修のようなかたちにしてみるとか、再現性のあるノウハウにするんです。

それをやっておくと、それを見た次の担当者がもっとパワーアップすることができる。自分が前年比120パーセントを出していたら、次の人は180パーセントを出せるかもしれない。そうやって会社は強くなっていきます。

でも、けっこう引継ぎってしませんよね。僕の先輩は……今日いないことを祈りますが、引き継ぎをしてくれなかったんですよ。そのくせにあの野郎(笑)、パソコンを会社に返却しなかったんですよ。今は仲がいいからいいんですけど(笑)。

先輩がパソコンを返却しなかったから、僕のところに総務が本気で怒ったメールをしてきて。「パソコンが返却されていません。個人情報が入っているので、何が何でも見つけてください」と。「俺が? パソコンのありか知らんぜ?」ということがありました。それぐらい、引き継ぎに関しては適当なことがあります。

社内創業は、会社への“最後のお土産”

なので、社内創業をして最後に仕事を「創ってみる」というのをやってほしい。これは管理部門の人もできるんですよ。管理部門は営業目標ほど明確なものがないので、数字が作りにくいですよね。でも、人事や法務や経理の人でも自分の仕事を自動化することができるんです。

今は「経理テック」とか「法務テック」とか、いろいろあるんです。そういうのを調べて、例えばExcelでもいいんですが、ツールを使えばギュッと仕事時間が短縮できるかもしれない。これを最後にやってみてください。

この「短縮する」ということも、すごく良い仕事を作る経験になるので、自分の業務を振り返ってやってみてほしいです。あるいは最後に上司の仕事をちょっともらってみると、1歩視点が上がった状態で転職や独立ができる。次に行く前にパワーアップできるので、これもおすすめです。

退職成仏ノートをやって、人間関係の仕分けをしたら、会社に対してすごくポジティブになっているんです。恨みつらみは成仏しているし、「しがらみ」と「つながり」も分けられている。「つながり」の人にだけ、まずは短期的に関係を結べばいいとわかっているので、気持ちの良い状態になっています。

なので、「最後に会社に良いお土産を作れないかな」というポジティブな気持ちで、「社内創業」というキーワードを思い出してください。

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