2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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芳村瑞恵氏(以下、芳村):では、勝浦さんから自己紹介をいただけますでしょうか。お願いします。
勝浦雅彦氏(以下、勝浦):どうもみなさん、本日はよろしくお願いします。電通コピーライターの勝浦と申します。
私が勤めている会社については、マスコミなどでいろいろと聞いたりしている方も多いと思います。そこでコピーライターをやっているわけですが、何かと内情と外で言われていることが違ったりもしていて、けっこうのほほんと、日々楽しく仕事をしています。
(コピーライターは)言葉を中心としたあらゆるコミュニケーションに関する仕事です。私はそれを生業として広告を作り、クライアントと接し、世の中の人々と向き合っていく中で、長年にわたり私の中にと蓄積されていったものをこのあとご紹介いたしますが、このたび書籍(『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前 』)として出版させていただきました。
今日、なぜこの場が作られたかと言うと、おそらくこの中には、僕のTwitterのフォロワーの方々もいるかもしれませんが、先ほどセミナーの前説をやってくれた唐木さんが、Twitter関係なくAmazonのサジェストで出てきた私の本をを見てくれて。試しに読んでみたらよかったので、書籍を買って、イベント登壇を依頼してくれたんですね。Amazonのサジェストは意外と効くんだなぁと思いました(笑)。
そんなご縁で、今日はお話をしています。コミュトレさんについて、僕もある程度調べてはきているんですが、今日はコミュトレ随一のファシリテーターである芳村さんに対談のパートナーをしていただけるということで、心強く進めていきたいと思っています。
特別講座、「言葉は最高のビジネススキルである」というタイトルを一緒に決めさせていただいて、今日はお送りいたします。いくつかのパートがあって、対談イベントと言ってもある程度視覚的な資料があったほうがいいと思うので、それをお見せしながらお話していきます。
勝浦:さて、だいたいどのセミナーでもまず「今日は何をお話するか」という主題の提示があるわけなんですが、僕がこれからお話しするのは、20年近くコピーライターとして、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションや人との向き合い方を実践した経験から導き出した真実やメソッドについてです。「コピーライティングについて」ではありません。
あくまで広告業界に関係ない皆さんでも、これからの活動のヒントになるであろうことをお話したいと思います。僕は有益だと思うものの、これが有益かどうかはみなさんが決めることです。考え方やメソッドは膨大にあるので、いただいた時間の中で絞ってお話させていただきます。
さて、ここでみなさんに質問です。何の質問をするかというと、「私は誰でしょう?」という質問です。
おそらくこの中には、コミュトレさんの宣伝を見てなんとなく来た方、あるいはコピーライターや広告だったり、私のやっている属性に対してすごく興味を持っていただけた方、Twitterのフォロワーの方など、いろいろいると思います。
なぜこれを聞くかと言うと、冒頭でガツンとした話になって申し訳ないんですが、特に学生さんや、新人に近い年齢の人の前で講義をやる時に言っていることです。
ズバリ、「これからセミナーやインターンを受ける際には、必ず講師やその会社のことを事前に調べましょう」ということです。その上で、考えて質問をするようにしてください。
例えば今日のセミナーは、みなさん土曜日の貴重な時間を2時間使って聞くわけですよね。だから、最大限吸収してほしいわけです。「何かを収穫していく」という気持ちでやっていくことで、受け終わった後の満足感も、心地よい疲労感も違うと思うんです。
勝浦:学生さんや若手には、けっこうはっきりと「漫然とセミナーを受けるのは時間の無駄です」と言っているんですね。実は今日、私は芳村さんのこと事前に調べたんですよ。
芳村:(笑)。そんなに情報ないですよね?
勝浦:今の世の中、エゴサーチをすればネットで調べられますよね。そしたら、意外と情報がなかったんです。
芳村:ないと思います。
勝浦:でも、コミュトレさんが20年以上やってらっしゃる会社なのはわかりました。そして、芳村さんが草創期から20年近くコミュトレさんにいらっしゃる方だということがわかった。さらに芳村さんのことを調べると、とにかくセミナーや対談のファシリテーションをずっとやっていらっしゃる方だとわかる。まさにプロファシリテーターですよね。
ということは、もう質問が生まれますよね。「今までファシリテーションをやられた方の中で、印象に残ってる方は誰なんですか?」、あるいは「難しかったセミナーは何ですか?」「印象にすごく残った生徒さんはいましたか?」「ものすごく成功した生徒さんはいらっしゃいましたか?」というふうに、調べることによって、自然に相手に対して質問が生まれるんですよ。
なんとなく参加して、なんとなくの情報でセミナーを受けてしまうと、「この人はこういう人なんだ」というのを聞きながらわかって、消化する前に次の内容に行っちゃうんです。
もちろん、気合いを入れても、何でもかんでもつまびらかに調べるのは無理だと思います。ただ、その人の情報がなくても会社の情報はある程度出ていると思うので、「この人はその会社の人なんだ。だったら、こういうことを聞いてみよう」と、その会社に対しては質問ができますよね。
そんなふうに、ほんのちょっと気持ちと取り組みの姿勢を変えるだけで受け取れる“果実”がぜんぜん違うので、ぜひみなさんもやってみていただきたいと思います。
勝浦:私の自己紹介ですが、千葉県生まれで、転職を3回ほどしています。読売広告社という会社に入社して、最初は営業配属だったんですが、ずっとクリエイティブをやりたかったんです。その後クリエイティブ局に転局し、一念発起して九州の電通に入りました。出向などを交えながら、3つの電通の会社に社員として所属したことがあります。
本社の人間が、「地域の電通」と言われる電通九州とかに出向することはあるんですが、私は電通九州、電通東日本、電通ですべて社員だったことがあるので、ちょっと変わったキャリアを歩んでいます。
ただ俯瞰してみれば、ずっと広告業界にいるので、それが広いキャリアなのか・狭いキャリアなのかはみなさんのご判断にお任せします。ということで、自己紹介を終わらせていただきます。
芳村:ありがとうございます。今の話だけでも、すごく学びが多いなと思いますね。やっぱり、相手のことをいろいろ調べるのはすごく大切なことです。
実際に私も営業からキャリアを積んでますので、勝浦さんもそうですが、訪問する際はかなり会社のことを調べますよね。例えば転職活動をお考えの方でも、成功させるポイントは「企業についてどれだけ調べているか」ということですね。
よく、仕事を恋愛に例えることが多いんですが、「相手のことをすごく知りたい」と思うのが恋心です。お客さま、面接を受ける相手先に対して、どれだけ“恋心”を抱けるかどうか。調べることも興味を持つことになりますので、大事な要素だなと思いました。
ではさっそくなんですが、実はコミュトレの受講生でも「コピーライターさんって会ったことないかなぁ」ぐらい、あまり身近にいなくて。個人的な友人で、電通さんから仕事をもらって広告をやってる企画の仕事の子がいるんですが、それ以外にはあまりいなくて。
コピーライターというと、糸井重里さんぐらいしか知らないというか。ぶっちゃけどういう仕事なのか、おうかがいできればと思います。
勝浦:そうですね。まさに芳村さんの感想はけっこう正しくて。後ほど、コピーライターの歴史もざっとお話しします。
勝浦:職業として認知されていて、たまにメディアでも聞くこともあると思いますが、別に資格商売ではないので誰でもなれるんですね。ただ、絶対数があまり多くないので、やってる人に会ったことがない。
私も人と会うと、「コピーライターという人に初めて会いました」って言われることが多いんです。(コピーライターと言っても)人によってやっている仕事はかなりバラバラなので、そういったことも掴みどころのなさに起因してるんじゃないかなと思います。
私は職業として「コピーライター」と名乗っているわけなんですが、これを聞いていらっしゃるみなさんにも、それぞれの肩書きといいますか、ジョブタイトルがきっとあるんだと思います。
それぞれがそこに至るまでの道のりがあって、望みがあったり、あるいは望んでなかったのに、いつの間にかこの方向に来ちゃって、それがけっこう楽しいとか、いろんなたどりつき方があると思います。僕がコピーライターになるまでの道のりを少しお話をします。
なぜコピーライターを目指したのか? というお話なんですが、「コピーライターってどんな人?」と言われるんですよね。先ほど説明したとおり、資格がありませんので誰でもなれます。なので、今聞いてらっしゃるみなさんが「コピーライター」という名刺を自分で作ったとしたら、その時点でコピーライターではあります。
芳村:自称でいいんだ。
勝浦:自称でも別に構いません。
芳村:そうですよね、資格ではないですもんね。
勝浦:なれます。
芳村:なるほど。
勝浦:言わずもがなですが、「コピー」というのは複写のコピーではなくて。たまにそういうギャグを未だに言う人がいるのでびっくりするんですが、まあまあ、いいんです。それはそれで「古典だな」みたいな感じなんですけど。昔の人はコピーを取る時に「ゼロックス」って言いますよね。あれ、何なんですかね。
芳村:古いですよね(笑)。最初期はやっぱり、ゼロックスからなんですよね。
勝浦:「これゼロックスして」と言う人いますよね(笑)。
芳村:うちには思いつかないです。「ゼロックスして」を動詞にはしないですね。
勝浦:昔はいましたよね。いわゆる、おじさんたち。あと出力することを「ハンドアウトして」と言う人も……って、脱線しがちなので元に戻ります。
「コピー」とは1つの表現技法であって、コピーライターは1つの仕事のジャンルです。なので、コピーライターの歴史を深く学び始めるとそれだけで時間をオーバーするので、今日はざっくりお伝えします。
よく驚かれるのが、日本初のコピーライターは、江戸時代の平賀源内だと言われています。
芳村:平賀源内、エレキテルの人ですよね。『キテレツ大百科』感があります。
勝浦:みなさんの生活様式の中に入り込んでいる「土用の丑の日」は、この人が作ったと言われています。
芳村:へぇ~。「土用の丑の日」は、平賀源内のキャッチコピー。
勝浦:そうですね。
芳村:すごい。
勝浦:暑い時、バテないようにうなぎを食べようというのは、逆に言うと「暑い時に熱いものを食いたくない」というマインドだったのを、彼はひっくり返したわけです。それで(うなぎを)売れるようにした。エレキテルみたいな、いわゆる「モノ」の発明もしていれば、「コト」の発明もしていたということです。
芳村:これって、うなぎ屋さんに友達がいて、「夏はなかなか客足が……」みたいな相談を受けていたってことですかね。
勝浦:そうなんですよ。当時、土用丑の日には「う」のつくものを食べるという流行があったため。それをうなぎ屋でやったと言われています。
芳村:へぇ~。
勝浦:(スライドには)「歯磨きの広告」とも書いていますが、今みたいに印刷されたポスターというよりは、たぶんチラシのようなものだったと思います。歯磨き粉を売るような文言を書いて、そこに掲出していたという記録があるので、日本初のコピーライターが平賀源内と言われています。
芳村:おもしろい。
勝浦:そういう「広告文案家」みたいな仕事の人たちがいたわけなんですが、そこから1962年まで飛びます。戦後初のコピーライターの団体「東京コピーライターズクラブ」が設立される。ここで初めて、業界団体として、ちゃんとコピーライターを認知させてやっていこうという機運が生まれました。私もTCCに入っています。
その次に糸井重里さんみたいな、いわゆる「コピーライターブーム」が1982年に起きたんですね。これはほぼ、バブルと時を同じくしていたということです。
芳村:確かに。『ギミア・ぶれいく』『笑ゥせぇるすまん』とか、世代的に知っている人がどれだけいるかわからないんですが。
勝浦:深夜にやってましたね。もうその頃から糸井さんは、どちらかというと「文化人」「芸能人」というかたちで、若者の番組の司会をやっていたりして。コピーライターの認知が飛躍的に高まって、糸井さんはタレント扱いであり、「1行で100万円」という言葉が生まれたんですよね。つまり、キャッチ1本で100万円。
本当は(1本100万円という)そんなに単純なものじゃないんです。ものすごくちゃんとした企業さんの戦略に付き合い、分厚いプレゼン資料を作ったり。その中で一番代表的な言葉が「おいしい生活」というキャッチコピー。
芳村:西武ですかね。私も、糸井重里と聞くと「おいしい生活」を思い浮かべます。
勝浦:そうですよね、やっぱり時代を動かしたキャッチコピーですもんね。
勝浦:その後、バブルが崩壊しました。それまでのコピーライターは、フリーの人たちがずいぶん強かったんですが、今の私がいるような会社がメディアとセットでいい仕事を持っている時代になっていきます。
テレビがずっと強かったので、CMプランナーの時代があって。その頃はテレビが強すぎて広告業界が儲かっていたので、デジタル化にちょっと遅れた。
IT革命が起きたけど、広告業界がデジタル化に遅れていたことが後々尾をひきました。今は猛追してだいぶリカバリーが進んでるんですが、クリエイティブ、いわゆるものづくりもデジタルの中でやっていくことになって、広告制作のデジタル化が進みました。
現在コピーライターは、本当に「言葉なら何でもやる」という時代に突入しているということですね。なので、コピーライターの守備範囲は確実に広がっています。みなさんがぱっと思い浮かぶのは、「キャッチコピー」「キャッチフレーズ」「スローガン」「ネーミング」。あとはCMプランニングも一緒にやるので「CMプランナー」とか。
それに限らず、デジタルクリエイティブ、Webあるいはイベントプロモーションの企画もやったりもするので、そういった意味ではどんどん(コピーライターの守備)範囲は広がっています。
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