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freee出版『起業時代』編集長に聞く、「やりたいこと」や「できること」で無理せず挑戦する起業家たち(全2記事)

会社員生活になじめず「マッチングアプリの添削」で起業? 『起業時代』編集長が紹介する、“無理のない働き方”事例4選

「ふつうの人がフツーに起業できる時代へ」というテーマを掲げ、freee株式会社より創刊となった『起業時代』は、起業・開業を検討している人が始動するための段取りを、わかりやすく網羅的に解説した雑誌です。今回は、本誌の編集長である井口侑紀氏が、やりたいこと・できることで無理なく起業した起業家の事例などを解説します。本記事では、実際に起業をした4名の事例を紹介しています。

「やりたいこと」や「できること」で、無理のない起業

井口侑紀氏(以下、井口):起業を決めかねている人に関しては、体験談を読んでいただきたいです。いろんな方のいろんなエピソードとか、属性も地域もさまざまですので、その中で1人でも、むしろ1行でも共感できる部分があれば、何かしらのヒントにしてもらえるかなと思っています。

まだ起業を考えていない人に関しても、(『起業時代』は)ビジネス誌と思って作っておらず、ライフスタイル誌だと言い聞かせて作っていますので、人生やストーリーを楽しむという見方もできるんじゃないかなと思っております。

では最後に、取材した起業家の事例紹介をさせていただいて、締めさせていただきたいと思います。今日のテーマが「『やりたいこと』や『できること』で無理のない起業」なので、それに近い方を実際私が取材した中から、いくつかご紹介できればと思っています。

彼はFurry Friends株式会社の山田さんといって、ペットフードの輸入販売をされている方です。彼は動物がすごく好きなので、自分はすごく打ち解けたんですけれども(笑)。ペットフードの卸の業者に勤務していた中で、「ペットの健康を考えたフードを自分の手で販売してみたい」と思ったみたいなんです。

そう思ったので、国内外を問わず、いろんなメーカーのフードを自分の目で見て、「これがいい」と思ったものを、良いと感じてくれた方に販売するスタイルを確立しようと。実際にそういうスタイルを見つけたそうです。

趣味を重視し、好きなことを仕事にした起業家の事例

井口:もう1つ。彼はそのスタイルの中で、趣味をだいぶ重視されている方なんですね。本格的にリノベを自分でやっていて、基本的に仕事は「昼前に来て、夕方には帰る」というスタイルに決めて、空いた時間を使って電気工事士の勉強をしました。実際に資格を取得して、かなりがっつり古民家再生をして、知り合いに貸したりもしているみたいなんですね。

山田さんのセリフですが、「趣味でも仕事でも、ただ好きなことをやっているだけなのに『ありがとう』と言ってもらえるって、最高じゃないですか」とおっしゃっていました。

彼から得た学びとしては、やはり好きなこと、できることを仕事にしたこと。ペットフードや動物に対する思いを活かしたところと、メーカーに勤務していた経験を活かして、できることを軸に仕事に(繋げていった)。

取材をする中で、これはけっこう他の方もおっしゃっていたんですが、「自信を持って人に薦められるものを売れるのが、起業してすごく良かったことだな」と。自分で選べますので、ここはポイントかなと思います。

あとは彼の場合、プライベートの時間を確保するためのスタイルを模索してたどり着いた。こういったことを、自分の判断でできるのが起業の良さだと山田さんはおっしゃっていましたし、実際にそうかなと思っています。

「マッチングアプリのプロフィール添削」で起業した女性

井口:次はちょっと毛色が違いますが、彼女は個人事業主として活動されている方です。彼女が起業した理由は、「会社員生活になじめなかったから」。

もともとバンドをやっていて、高校教師をやり、IT企業の企画職もやりましたが、とにかく規則正しい生活が苦手でした。早起きがつらい、会社組織になじめないと思った時に、「何か自分でできることってないのかな?」と、いろいろ考えたみたいです。

当時、彼女はマッチングアプリを使っていて、「なんかプロフィール、もったいなくない?」と思ったみたいなんですね(笑)。「これはもしかしたら添削できるかも」と思い立って、いったん小規模にこれ(マッチングアプリのプロフィール添削)を始めたと聞いています。

実際にやってみたらすごく需要があったので、今も続けていますが、別に「これがやりたいことだからやった」というわけじゃなくて、「自分でできそうだな」と思って始めたそうです。

高校教師もされていたので、教えることも得意だったでしょうし、企画もやられていたので、アプリやITに関する知識も活かせる。かつ、マッチングアプリを利用していた経験も活かして、できることを見つけたということですね。

「やりたいこと」というわけでもないので、正直、事業自体に強いこだわりはないです。実際にいろんな付き合いの中から派生して、違うビジネスの種が生まれたみたいで、今後はそういった活動もしていくそうです。

高橋さんがおっしゃっていたのは、「フリーランスは特別じゃなくなってきています。好きなことじゃなくても、できることでよくて、いろいろ挑戦してみたらいいのではないでしょうか。『失敗してもよい』と言う起業家が周りに多い」ということです。

また、こういう実体験から個人としてやられていますので、「今、やっと息をしている。自分の人生を生きている」とおっしゃっていました。彼女から学んだことは、繰り返しになりますが、「できること」で起業してみることもありなんじゃないかと思います。

「やりたいことじゃなくてもいい」というお話なんですが、もう1個、「やりたくないことをやらないために、何を考えたらいいか」という発想もありますよね。そして、失敗していいから挑戦してみると。この3つが僕の学びでした。

美容院なのに日曜休み? 家族優先でたどり着いた働き方

井口:次は、大井町の美容室UmiCoriさんですね。鈴木さんというご夫婦で開業されています。今、みなさんのお手元にあるかもしれない『起業時代』という雑誌の7月に発売する2号目に出てくる、今日初めて公開する方です。

18年間サロン勤務をされていて、昨年独立をされた方です。お子さんが2人いらっしゃって、この「UmiCori」という店名も、お子さんの名前が由来になっているそうです。

それくらい、家族の時間を最優先にしたいという強い思いを持って独立をされて、最低月2回は日曜日を休みにしています。僕もそんなに美容師の業界に詳しくないんですが、日曜日は一番の書き入れ時だと思うんですね。

それを休みにするという判断をして、「そのためにどういう店舗コンセプトにすべきか、どういうメニューにすべきか、価格はいくらにすべきかを試行錯誤しているんです」とおっしゃっていました。

18年間のサロン勤務時代で言うと、「もちろん日曜日に休むというのは、そう簡単にはできなかった」「独立をしたことで、それにチャレンジできる環境を手に入れた」とおっしゃっています。

18年が長いのかというのは、彼自身も「どうなんだろうね」ということでした。もっと前に開業する可能性もあったし、チャンスもあったみたいなんですが、なかなか決断できずにいたそうです。

最終的に決断をしたきっかけはコロナでした。勤めた店舗が休業になってしまって、従業員にはそこまでの補助がなかったと彼は感じたそうです。なので、逆に今が独立のチャンスだと思い、当時は違うところでやられたんですが、地元に戻って開業すると決めて、1年かけて準備をされていました。

開業してからは、自分の「得意なもの」に取り組めるように

井口:この「日曜日」というところが、すごくおもしろいなと思っていて。普通だったら「日曜日が休めないのは当たり前だ」と、業界的に思っちゃう気がしているんです。そうじゃなくて、逆に「日曜日を休むにはどうしたらいいか」と考えて、その方法として起業という選択肢を取ったという人ですね。

なので学びで言うと、プライベートの時間に関しては先ほどの「日曜日」の話。そしてもう1個は、先ほどの話とも被るんですが、勤めていると固定のメニューもありますし、(勤務先の)サロンのカラーがあるので、自分の得意な領域をフルに発揮できる状態では正直なかったとおっしゃっていました。

ただ、開業してからは自分でサービスを決められるので、本当に自分の得意なものを施術できている。だからふだんの業務に関しても、今まで以上にハッピーに業務に取り組んでいるとおっしゃっていました。

もう1つが、会社員もリスクがないわけじゃない、というところですね。これは会社員がリスクが一番大きいという話ではなくて、当然起業にもリスクはあります。ただ、「じゃあ会社員はリスクがないんですか?」と言うと、そうではなかったなと彼は感じたそうです。

ここまでの3組は、わりとテーマが「時間」になっていたと思います。自分の自由な時間や家族の時間をどう確保するか。

「イチかバチかの戦略」ではなく、週末起業で小さく始める

井口:次は、まんがたりの前田さんという方なんですが、どっちかと言うとバリバリ系で、バリバリ系も紹介させていただきます。実は新卒の時から「起業をする」と決めていました。ただ、その時点で事業構想はありませんでした。

ある日、とある漫画家の卵と出会って、漫画家が漫画だけに集中できる環境を作ろうと思ったのです。というのは、その漫画家の卵の方から、漫画家があまりにも食えていない状況を聞いたそうです。「じゃあ、俺は漫画で食える漫画家を増やしていくんだ」という強い決意をしたのですが、すぐに会社を起こしたわけではないんですね。

勤めていた会社に勤務しながら、週末起業でスタートしています。漫画に関するテーマで50以上のサービスを実行して、その中でメイン事業を1つか2つか見つけました。そして手応えが見えたタイミングで法人化をして、独立するために一本に絞るという動きを取っています。

「本業と副業の両立がめちゃくちゃ大変だった」と、彼はおっしゃっていました。でもいろいろ試す中で、法人化できたんですね。その強みとしては「小さく始める」ということですね。彼は「イチかバチかの戦略はとらない」とおっしゃっています。彼自身はこれを、「しょぼい起業」という言い方をしていたんですが、ぜんぜんそんなことはないと思っています。

「副業で始めて、楽しくなくなったら引き返してもいい」

井口:もう1つ。彼は漫画の業界の経験があるわけじゃないんですが、漫画業界の経験がないからこそ、特別な漫画界にあるバイアスもなしで勝負できる。経験がないことを強みにしようということです。

自分自身も、出版業界の経験がなく「雑誌を作る」と言っていたので、すごく共感しますね。それをどう活かすかを考えていたんですが、彼も同じような考え方で、経験がないことを強みにする。これはすごくおもしろいなと思いました。

彼がおっしゃっていたのは、「副業で始めて、楽しくなくなったら引き返してもいいんじゃないか。おもしろそうなことを小さく始めて、徐々に広げていく。まずはその小さな一歩を踏み出してみることが大事なんじゃないですか」ということです。

彼からの学びで言うと、副業から小さく始めてみる。そして、大きなリスクは取らない。未経験でも開き直る。逆にそれを強みにしていこう、というお話でした。

今日はテーマに合わせて4名の方をご紹介させていただいたんですが、いかがでしたでしょうか? このような、本当にリアルな起業家の方々が、この時代にはたくさんいらっしゃいます。

一つひとつ全部をまねする必要はないと思いながらやっていますが、いろんな要素を取り入れながら、自分たちを通して自分らしさを見つけるきっかけ作りができたらいいなと思っていますし、今後もいろんな方々のお話を聞いていきたいと思っております。

この『起業時代』創刊号は発売中で、先ほどのUmiCoriの鈴木さんも出てくる2号目が、(2022年)7月中旬発売予定でございます。よろしくお願いいたします。以上です。

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