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学校・会社では教えてくれない!新しいキャリアの見つけ方(全4記事)

「組織の評価」に一喜一憂する従来のキャリア形成 自分の幸福感を大事に働く「プロティアン」の考え方

さまざまなセクターから集う30人の若手メンバーで横浜のまちづくりを行う「横浜をつなげる30人」発・チームIKIGAI主催にて、一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事 有山徹氏の著書『今のまま働き続けていいのか一度でも悩んだことがある人のための新しいキャリアの見つけ方 自律の時代を生きるプロティアン・キャリア戦略』の出版記念講演が開催されました。予測不可能な時代で生きるための「プロティアン・キャリア」。本記事では、従来のキャリア形成と「プロティアン・キャリア」の違いについて語られました。

『ライフシフト』から『プロティアン』へ継承された3つの考え

有山徹氏:「キャリア理論、プロティアンと言っているけど何なのそれ」というところにもうちょっと入っていきたいと思います。じゃあ今プロティアンがどういうことで世の中で言われているのか、ですね。みなさん『ライフシフト』は読んだことがあるかと思っています。

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)

『LIFE SHIFT2: 100年時代の行動戦略』(東洋経済新報社)

『ライフシフト2』が10月くらいに出ました。実はちょうど明後日記事化されてリリースされる予定なんですけれども、先日、このリンダ・グラットン教授と『プロティアン』を書いた田中教授と対談をしておりまして。実はこの『プロティアン』は考え方のベースに『ライフシフト』も取り入れています。

『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP)

つまり100年時代の生き方の行動戦略、『ライフシフト』を踏まえて、田中教授はこの『プロティアン』を、ダグラス・ホール教授の1976年に提唱されたものより進化させて、日本に持ってきたと捉えていただければと思います。

実は日経で連載や広告があったり、日経ビジネスでしたり、HR系の方はご存じかと思うんですけど「日本の人事部」での連載ですとか、NewsPicksなどですね。グロービス学び放題にも入っています。これは田中研之輔教授ではなく、理事の千葉さんのコンテンツになっています。私の本も含めたプロティアンの関連書籍もございます。

先ほどあった『ライフシフト』と『プロティアン』のところへ、継承していることは大きく3つあります。

外に答えを求める「ロールモデル」は役に立たない時代に

(1つ目は、)ロールモデルは役に立たないということです。私も大企業での研修に登壇しますけど、ロールモデルがないので悩んでいるという方が多いですが、必ずしもロールモデルがあるわけがないんです、ということがまず前提です。

今は変化の時代で、これだけ価値観が多様化している中で、ロールパーツモデルはあります。部分的に「この部分は素晴らしいな」とか「この部分は真似したいな」というのはぜんぜんあると思いますけども、その人自身を目指すことはまず考えない。

まず、その「外に答えを求める」という考えを変えていくことです。答えは自分の中にしかないのに、ロールモデルといって自分にはない外のものを目標にする考え方をまず改めましょうということですね。

変わるべきは個人です。あとは教育、仕事、引退の先を見据えたキャリアの設計ですね。プロティアンでは、キャリアは当然過去だけではないということで、未来も含めて「キャリア」と捉えます。先を見据えたキャリアの設計ですね。

あと、無形資産へ着目したところが『ライフシフト』で大きかったかなと思っています。この「キャリア資本」という考え方で接続しているところになります。こちらはまた後ほどお伝えさせていただきたいなと思います。

協会の設立後、4万人以上に研修を提供させていただいています。上場企業は50社以上に導入しています。時価総額上位50社の3分の1以上で、なんらかのかたちでプロティアンが入っているのが今の実態です。例えば日本での時価総額上位の大手電機/エンタメグループの管理職向け、全体向けとかにも研修などを提供しています。

本当に大手の会社さんで、プロティアンの考え方を伝えていくことで、今いろんなところから話が来ているという状況でございます。

ちなみにこのプロティアンの検定もやっておりまして、「認定ファシリテーター」はこの検定に合格した人がなれるものです。ここには人事の方も来ていまして、大手自動車メーカーやメガバンク、大手製薬メーカー等多様な会社の人事の方、特に、教育担当の方などが多くいらっしゃっております。

自分がプロティアン人材か診断する15個の質問

ではキャリア理論、「プロティアン」とはなんなのかということで、プロティアン診断というものがありますので、ぜひこれをやっていただきたいと思います。読み上げますので、主観で自分に当てはまるものをマルバツで数えていただければと思います。

(1)毎日、新聞を読む。(2)月に2冊以上、本を読む。(3)英語の学習を続けている。(4)テクノロジーの変化に関心がある。(5)国内の社会変化に関心がある。(6)国外の社会変化に関心がある。

(7)仕事に限らず、新しいことに挑戦している。(8)現状の問題から目を背けない。(9)問題に直面すると解決するために行動する。(10)決めたことを計画的に実行する。

(11)何事も途中で投げ出さず、やり抜く。(12)常日頃から、複数のプロジェクトに関わっている。(13)定期的に参加する社外のコミュニティが複数ある。(14)健康意識が高く定期的に運動している。(15)生活の質を高め、心の幸福を感じる友人がいる。

この15個ですね。いくつになったか、チャットで教えていただいてもよろしいでしょうか?

(参加者がチャットに書き込む)

さすが、こういう場に出てくるみなさんは(点数が)高いんですよね。13番の「定期的に参加する社外のコミュニティがある」については、ここに出ている方々はだいたいマルですよね。素晴らしいです。ありがとうございます。

この結果なんですけども、実は先ほどのマルが3個以下だと「ノンプロティアン人材」ですね。現状のキャリア維持にとどまり、変化に対応が難しいんじゃないかということです。「セミプロティアン人材」というのは、マルが4個から11個。キャリア形成は行っているものの、変化への対応が弱い人。

「プロティアン人材」というのが12個以上ですね。変幻自在に自らキャリア形成を行い、変化にも対応ができるという人になっています。参考までに、先ほどの診断のところでできていないところを考えて、1個でもマルになるようにすると、変化への適応力は高められるかなと思っております。

「キャリア=職業」だけではない

プロティアンは「変幻自在のキャリア」ということで、組織にとらわれるのではなく個人によって作り出されるキャリアですね。組織の評価に一喜一憂するのではなく、自分自身の評価を大事にして、心理的成功感や幸福感を大事にしていく考え方です。

転職をされた方も多くいらっしゃるかなと思いますけども、これまでのキャリアは転職したとしても、その会社内での垂直型に上に出世していく、昇進昇格していくところを目指すキャリア感でした。

ここ最近「キャリア自律」という言葉が出てきますけども、プロティアン・キャリアでは、キャリアの成否を決めるのは自分自身であって、組織は(自分のキャリアを歩むための)地面のようなものだという考え方になっています。

プロティアン・キャリアにおける「キャリア」とは何かというと、一人ひとりが大切にする考え方で、これまでのすべての過去の経験になります。この「すべて」が重要なキーワードです。

別に職業だけじゃないんです。生活や子育ても、彼女とデートしたこととかも含めてすべてです。別に「キャリア=職業」だけじゃない。履歴書に書いてあることだけではないんですね。

これからを生きる羅針盤、未来戦略であるということで、「これからを生きる未来のこともキャリアですよ」と言っています。なので、働き方や生き方を自らよりよくする。変化を前提にした考え方でもあるので、プロセスを重視しますということですね。

プロティアン・キャリアの特徴は「プロセス重視」であること

100年時代を見据えて考えると、先ほどもお伝えさせていただきましたが、目の前の失敗はぜんぜん大したことはないんです。私も70歳まで元気だったら普通に働いていると思うので、あと30年近くあります。今の失敗から得た学びは、その30年後の職業人生においても必ずプラスになるんですね。なので、(プロティアン・キャリアはキャリア形成の)プロセス重視であるところに特徴があります。

伝統的なキャリアとプロティアン・キャリアの比較になっているんですけど、今までの考え方は「環境変化が前提ではない」考え方です。環境変化することが前提なのが、プロティアン・キャリアの考え方です。

ですので、より今の時代に考え方が合っているのは右側のプロティアン・キャリアになるかなと思います。キャリアを考える主体というのは、組織ではなく個人。核となる価値観は昇進や権力ではなく自由や成長。重要なパフォーマンスは心理的成功、今の言葉でいうと「ウェルビーイング」です。

地位や給料を「キャリアの目的」にはしない

伝統的なキャリアで(求めるもの)に、地位や給料があります。でもここで1個注意していただきたいのは、こう対比してみせると「じゃあプロティアンでは地位や給料は求めないんですね」と言う方がいらっしゃいます。その答えはNOです。

あくまで「地位や給料のために働く」ところから、「自分自身の心理的な幸福感のために働く」と考えた時に、手段として地位や給与を求めることはありえるということですね。そこが大きな違いです。部長になることを「キャリアの目的」にはしない、ということですね。

部長になった上でやるべきこと、例えば「社会に対してこういうインパクトを及ぼしたいので、部長というポジションでこういう仕事、こういう目線での仕事をしたい」、「自分が成長するためのプロセスとして部長というポジションがほしいので部長を目指す」はぜOKです。ただ「部長になりたいから部長を目指す」というのは、プロティアンだとNOというのが注意点ですね。

重要な態度は「仕事の満足感や専門性へのコミット」です。ここでいうと大手の日立さんが最近(ジョブ型採用で)話題になりましたけど、日本型のジョブ型雇用と親和性が高い考え方ですね。組織コミットメントのために仕事をするのではなく、自分の専門性を高めるという考え方です。

人事界隈のキーワードはすべて「プロティアン」で整理されている

アイデンティティ(自分らしさ)とアダプタビリティ(適応する力)でいうと、自分らしさは「私は何をしたいのか」という、自らの意味づけですね。最近の流行りの言葉で「ジョブ・クラフティング」と言いますけれども、自分が今の仕事をどう意味づけるのかを考えていく。

アダプタビリティでいうと、組織でどうやって生き残るのか、組織でどうやって出世するのかではなく、自分のマーケット価値を向上するために、リスキリングとかアップスキリング、チャレンジをやっていくという考え方です。

最近の人事界隈での流行りのキーワードとして、例えば幸福経営、日本型ジョブ型、ジョブクラフティング、リスキリングなどの考え方がバラバラ出てきていますけど、実はプロティアン・キャリアの中では、主体的に働くキャリア自律の考え方として、これらが理論の中で体系的に整理されています。

人事界隈の人は、いろいろな施策を「点」で実施されているイメージが強いです。特にキャリア研修はそう、人事戦略との紐づけがなく実施されている会社が多いです。

私からすると、いま起きていることは組織内キャリアから自律型キャリアへの過渡期、組織と個人の関係性が変わってきていること、なぜみなさんなぜそれを「点」で言うのか、それってプロティアンだよねと。実は今言われている人事界隈のビックワードは、すべてプロティアンという一言で説明できてしまうものなんですね。

キャリア感をアップデートするところで、旧来型の左側の価値観の方は、みなさんの会社にも多いかなと思います。変化に強い組織にするためにどうやったら右側に移行できるのかというところが、多くの人事の方が悩んでいるところになっています。

キャリアは「個人のもの」ではなく「関係性」

もう1個別の観点でいうと、プロティアンでは関係性理論重視ということで、理論的に言うと実は「キャリアは個人のものではない」です。キャリアは関係性であると捉えます。

これも大手の研修で「みなさん、キャリアは誰のものですか」というと、「個人のものです」とバーッとチャットに並ぶんですね。それで「いや、プロティアンではそうじゃないんです」と。個人のものではなくて関係性。個人にとっては社会との関係性、組織との関係性、またここには入っていないですけど家族との関係性。その関係性をよりよくすることがキャリアですよ、と捉えます。

会社でいうと「個人と組織と社会」になります。個人の成長が組織の可能性を広げ、組織の成長が個人の活躍の場を広げると捉えます。個人と組織が相互に成長し合うような関係性を作っていくのが、プロティアン・キャリアですよということですね。

ですので変幻自在というと、「変幻自在にどんどん転職をしていっている人間がプロティアンなんだ」と誤った捉え方をされますが、そうではないです。あくまで内面的に、自己の成長のために働く人がプロティアンであって、履歴書上で転職回数が多いからプロティアンというわけではないというところも覚えていただきたいです。

「関係性」を表している、豊田章男社長のメッセージ

組織と個人の関係性でいうと、トヨタの社長のYouTubeにも出ているんですけど、これがプロティアンで言っている「関係性」と一緒です。

豊田章男社長が言いました。「みなさんは自分のために自分を磨き続けてください」と。「トヨタの看板がなくても外で勝負できるプロを目指してください」と。「私たちマネジメント、経営陣は、プロになってどこでも戦える実力を付けたみなさんが、それでもトヨタで働きたいと心から思ってもらえる環境を作り上げていくために努力してまいります」ということですね。

なので企業と組織の関係性、雇用の従属関係が、「長期雇用を保証するから言うことを聞いてくれ」という従属関係から、「あなたたちはプロになりなさい」、そして「自分たち組織側は選ばれるように組織としての魅力、キャリアを築きやすい、もしくはキャリア機会が提供できる、そういう組織を目指しますよ」というパートナー関係に大きく変化しているんですよね。

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