2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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傳智之氏(以下、傳):ここからはお二人にお話をうかがいながら進めていきたいと思うんですが、堀田さん、石川さんが(会社にいるうちにやっておくべきベスト3の)3つの中で一番刺さったことってどれですかね?
堀田孝治氏(以下、堀田):やっぱり1番ですね。
傳:「1年で会社を辞めると決める」。堀田さん、確かこれはもともとはそういう流れじゃなかったんですよね?
堀田:上司に「その仕事を一生やると思え」と言われたんですね。最初は外食さまへの営業だったんですが、4年か5年で異動する会社ではあったんですよ。だから、「4年後、5年後はどこに行こうかな」ってみんな考えるんですが、「それはお客さまにも失礼だし、絶対にライバルに勝てないぞ。お前は一生この仕事だと思ってやれ」と言われて。
けっこうズキンとは来たんですよね。一生やるつもりでいたら、やっぱり(がんばっても)勝てない人とかに出会ったので。「1年で辞める」と思った時にどうなるのかが、聞いていてすごくおもしろいなと思いました。
傳:日本の大企業が前提になると、人事異動でローテーションしていくのが未だに多いですよね。
堀田:そうですね。ちょっと変わってきてはいますが、まだメインじゃないですかね。
傳:「目の前の仕事に全力投球しろ」という意味では、石川さんのお話に通じるところがあるのかなということですよね。
堀田:「なるほどな」とすごく思いました。「1年で辞める」と思ったら、逆に本気でやるんだなって。会社でのやり残し、それこそ独立した時に経理のことがわからないと困るから、経理のことをそうしておけばよかったと思いました(笑)。
石川和男氏(以下、石川):いやいや(笑)。
傳:結局、自分の本気スイッチの入れ方はいろいろあって。「辞める」と思うのも1つの選択肢だし、「今の仕事を一生やる」と思った場合にはどう考えるのか。考え方は対照的ですが、行き着くところは「いかに一生懸命になるか」。おもしろいですよね。
石川:前提で1個抜けてたことがあって。「1年で(仕事を辞めると決める)」と言いましたが、心が病んじゃうとか、苦しい、大変だという人はすぐに辞めていいです(笑)。
石川:あと、堀田さんが「ババを引きまくる」と言ったのと、今のが似ていると思っていて。独立や転職する前に「1年で辞める」と思ったら、普通だったら逃げるような嫌な仕事もどんどん進んでやるかな。自ら進んでやることによって、スキルアップ、キャリアアップができるんじゃないのかなと思います。
「1年で会社を辞める」という考え方の前提は、本当に「転職したい」「独立したい」「会社がやだやだ」という人であることがまず1点。それと、その人は1年待てよということ。もう1点が、「一生その仕事に就きたい」と思っている人であっても、1年契約で首を切られる覚悟でやれということ。
メジャーリーガーが日本にプロ野球に来て「1年契約ですよ、結果出さないとダメですよ」みたいな。ただ、自分自身は続ける気はあるという感じですね。だから、堀田さんの「ババを引きまくる」と、ちょっと似ているのかなと思っていました。
傳:1年契約で首を切られるという意味で、堀田さんの本の中で「独立すると失敗はできない」とおっしゃっていましたよね。ラーメン屋の例えもされていましたが、一度不味いと思ったらリピートしてもらえなくて、そもそもチャンスがもらえないから、失敗だったものがわからないと。
堀田:上司に「サラリーマンは8勝7敗で生きろ」って言われたんですよね。自分の企画が15個全部通るわけないから、思い通りにはならないということだとは思うんですが、それでメンタルがきつい方は独立しちゃったほうがいいと思っていて。
独立って、本当に勝てることしかやらせてくれないんですよね。まさにラーメン屋さんって、同じラーメンを作ってずっとお客さんに勝ち続け、満足させ続けないといけないじゃないですか。急に「オムライスを作れ」と言われても、できなくてもいい。逆に言えば、それはやらなくていいわけですよね。
堀田:ちょっと話が違うんですが、石川さんがすごいなと思うのは、(事業を)絞りたくならないのかなって。いろんなことをマルチでやられてるじゃないですか。
石川:はい。
堀田:ぶっちゃけ、全部できちゃうから全部がおもしろいんですかね? それとも失敗とかもありつつ、その幅がおもしろいんですかね?
石川:昔、『サラリーマン金太郎』『俺の空』とかを描いていた、本宮ひろ志という人の自叙伝があって、その中で「自分は1度きりの人生でいろんなことをやりたいんだけど無理だ」とずっと悩んでいて。
放浪の旅に出ている時に、「漫画家になれば、漫画の主人公にいろんなことをやらせられるな」と本宮ひろ志は考えて、漫画家になったと言っていましたね。それを子供の頃に読んで覚えていて、「自分がリアルでそうすればいいんだ」と思って。
(一同笑)
石川:だから税理士をやったり、サラリーマンやったり、著者をやったり、セミナー講師をやったり、やれることは全部やっています。結局、本をずっと書き続けられるのは、サラリーマンをやり続けているからビジネス書を書けるというか。
堀田:そうですね。
石川:もちろん、独立している人は独立している人の良さを伝えるコンテンツがありますが、サラリーマンとしての今のリアルな困りごととかを書いていけばいいかなと思っています。
堀田:なるほどね。「リアル本宮ひろ志」って初めて聞きました。
(一同笑)
石川:(事業を)絞ってもいいことはいいんです。これを言うとあれなんですが、会社員として働きながら税理士の資格を取ったんですが、「今、暇だから大原行ってきていいよ」「時間あるから午前中に勉強してもぜんぜんいいよ」と言われて。
傳:いい会社ですね。
石川:いい会社なんですよ。「受かったから辞めます」って言えないじゃないですか。サラリーマン時代にアメリカに留学させてもらって、MBAを取って、さっさと辞める人みたいなのもあれかなと思って(笑)。
石川:ただ、会社員をやりながら税理士をどうやってやるのかなと考えたんですよ。全部はできないけど、書類作成や申告業務はもう1人の税理士にやってもらって、自分は経営者や財務部長としゃべることだけやろうと思い浮かんで。じゃあ、分業でタッグを組んで税理士やろうと。
「どうせ無理」と思うとできないけど、「何か方法がないかな?」と思ったらやれるので、どんどん事業が増えていった感じですね。
傳:あらかじめ、「これだけやるぞ」というのではなくて、自然と1つずつ増えていったという流れですか?
石川:それもあるし、さっき言った本宮ひろ志さんのもあるし、どっちもありますよね。でも、「もう無理かな」と思った時にセミナーを会社の事業にしようと思って、会社にセミナー事業部を立ち上げました。
堀田:すごいな(笑)。
石川:セミナーは会社の事業の一環なんですよ。
傳:なるほど。
石川:平日でも堂々と全国に行ける仕組み作りをしたんですよね。そうすると、自分1人で抱え込んでいると建設の仕事が忙しくなるから、どんどん部下に任せたり、部下を育てられるようになるんですよね。
堀田:すごく素朴な疑問ですが、石川先生は日曜に「明日、会社行きたくないな」と思ったことはあまりないんですか? 僕は『笑っていいとも増刊号』(日曜日の朝10時放送)ぐらいから嫌で嫌でしょうがなかったですが。
(一同笑)
石川:堀田さんの『笑っていいとも増刊号』、笑っちゃったんだけど、聞いて。自分は『サンデーモーニング』(日曜日の朝8時放送)の音楽を聞いただけで行きたくなかったことがありましたよ。
堀田:ええ! そんなに。それは早いですね。
石川:早い(笑)。日曜日の朝のナレーションのあの音楽を聞いただけで、「もう、ちょっと……」という時もありましたね。ただ、今はあまりそういうマインドじゃないというか。いい部分を見つけようとか、ベタですけど「ピンチこそチャンス」というマインドでいられるので。
石川:あとは、自分にはどうにもできないことで悩まない。例えばコロナ禍において、「コロナを絶滅させるぞ」とか。自分のできる範囲だけで悩むと、悩みが小さいもので済んだりするかなと思います。
傳:堀田さんも本の中で書かれていましたよね。コロナになった時に、「講師業なのにセミナーができない。じゃあどうする?」と。
堀田:一時は、本当に練炭を買おうかと。
(一同笑)
堀田:講師全員で集まって、「どうなるの? 廃業かな?」という時期だったんですね。
石川:いやぁ、苦しかった。去年の3月は、講師仲間で集まって(セミナーが)1本しかないとかね。
堀田:そうですね。
石川:「俺も苦しい」と言ったら、「お前、会社員やっているだろ。お前は生活が大丈夫だ」と言われて、ばれちゃったというか。
(一同笑)
堀田:もう、変えられないことだったら受け入れてね。「じゃあZoomでやろうか」みたいに、どう切り替えていくかですよね。
石川:そう、そのとおりです。コロナ自体はどうしようもないから、堀田さんが言ったように「Zoomでやろうか」「オンラインで極めようか」とか、今はインプットの時間だと思うとか、そんな切り替えができればと思います。
堀田:カリスマ編集者の傳さんにむちゃ振りだけど。
傳:何!?(笑)。
堀田:傳さんは「独立したい」って考えたりするんですか? ここだけの話。
傳:今のところはないですね。
堀田:会社の会議室では言えない。
石川:さすがに言えないですよ。あとからこっそりメッセンジャーで「実はさ……」って。
傳:(笑)。今のところ、おかげさまでやりたいことがやれています。それこそ、会社でのびのび稼がせてもらっているので。
(一同笑)
石川:堀田さんみたいに極めている方はいいけど、自分1人では1,000万円単位の仕事しかできなくても、会社員は個人事業者で小さくプロジェクトに取り組むんじゃなくて、味の素だと大きなプロジェクトに取り組めるから、会社にいることによって1億円や10億円とかの仕事をやれる。
堀田:そうですね。
石川:言い方は会社に失礼なんだけど、仮に失敗したとしても人生は終わるわけじゃない。
堀田:(笑)。
石川:みんなの決裁をもらってやっていて、いち個人でやっているわけじゃないから、「この大型物件にトライしよう」とかもできるし、責任を100パーセント自分が負うわけでもない。何でもチャレンジできるのが会社のメリットかなと思いますけどね。
傳:そうですね。失敗できるのは会社のいいところですよね。悪い言い方をすると、会社のお金で失敗できる。
石川:そうそう(笑)。それがある。
(一同笑)
堀田:そこのメンタルの強さが、俺にはなかったのかもしれないです(笑)。
石川:堀田さんは責任感が強いし、完璧主義だったから。
堀田:そうかもしれないですね。
石川:「どうしよう。だったら自分自身でやろう」と思う。そのメンタルもいいと思いますよね。
堀田:本題からずれるかもしれないですが、石川先生の本を読ませていただいて一番ビックリしたのは、平たく言えばバランス感覚というか。まさに僕の真逆。
僕は白黒発想で、すぐに100か0かになっちゃうところがあるんですが、「どちらでもいい」ということが頭でわかるんじゃなくて体で入ってきた瞬間って、どういう時なんだろうかと思うんですよね。たぶん、頭ではどちらがいいかがわかるんですよ。でも、体に入っていないからイライラしちゃうんです(笑)。
石川:(笑)。
堀田:石川先生は、本当に体でわかってらっしゃるんだなと思っていて。それはどういう経験をすると身に付くんですかね? たぶん、会社員の極意だと思うんですが。
傳:私も気になりますね。
石川:1点小さいほうの話からすると、自分が平成3年に入社した時って、年功序列、終身雇用で、「今度、飲み会があるぞ」と言われたら「ワー!」だし、多少のパワハラだったら我慢しなきゃダメだし。
堀田:(笑)。
石川:先ほど言ったように「この会社に一生いるんだ」という感覚だったんだけど、今は能力主義で、会社を辞めることもできる自由さがある。飲み会に行ってもいいし、行かなくてもいい。行きたければワーワー騒いで飲みに行っていいし、嫌だったら二次会は断って自分の好きなことやってもいい。時代背景が「どっちでもいい」を生んだのが1点。
あと、もう1個。ちょっとかっこつけてというか、大きなことで言うと、時間は命を数値化したものじゃないですか。平均寿命の80年生きるとしたら、80年×365日×24時間で、70万800時間が命を数値化した時間だから、40歳だったら(残りは)35万時間くらいしかない。そう思った時に、変な1個にこだわらなくてもいいんじゃないかなと思って。
何かにこだわってストレスを抱えて……ではなくて、「楽しい」とか「1個に集中するのがめっちゃおもしろい」なら、そっちでもいいんだけど。自分の場合はいろんなことをやりたいし、どっちでもいいし、これもやりたいしあれもやりたい。残りの時間をそうやって使いたいです。
堀田:なるほどね。傳さん、また僕が聞いちゃっていいですかね。
傳:どうぞ。ぜんぜんいいですよ。
堀田:石川さんみたいに生きているロールモデルって、すごく少ない感じがするんです。
石川:はい。
堀田:僕はプロの講師になる上で、3人のプロの講師の先輩の真似をしたんですよね。やっぱり、真似から入るわけなので。
石川:ええ。
堀田:自分で言うのも恥ずかしいけど、私のロールモデルで言えば、加山雄三さん、郷ひろみさん、田原俊彦とかさんなんですよ。毎回同じコンサートをやっていればいいと思っている人なんです。
(一同笑)
石川:素晴らしい。
堀田:『君といつまでも』を歌って、お約束のことをやるとお客さんが喜んでくれて、本人も飽きない。僕はそういうロールモデルなんですが、そもそも「スーパーサラリーマン」って石川さん以外に見たことがないんですよね。
石川:ありがとうございます。
傳:確かに、5つの仕事を掛け持つレベルはあまり聞かないですよね。
堀田:やろうと思っても、普通はできないと思っちゃって。やっているロールモデルがいればいいんですが、そこはどうだったんですかね?
石川:ロールモデルはいなかったんです。ちょっと話が変わりますが、さっきの(会社にいるうちにやっておくべき)ベスト3の中で、「真似る」というのがランキングから漏れたんですよ。
傳:真似る。
堀田:真似るね。
石川:これはロールモデルですよね。最速・最強に仕事が早くなるのは、人の真似をすることだと思っていて。0から1を作り出す未開の地を走るよりも、すごく自分が尊敬するとかメンターとか、「この人すごいな」という人を真似ていくこと。それが(堀田さんの場合は)トシちゃんだったり、加山雄三だったりすると思うんですけど。
(一同笑)
石川:「こういうのいいな」みたいに、真似るのはいいと思っています。絶えずいろんな人のいろんなことを真似ていくことによって、結局は5つの仕事ができちゃったのかなと思うんですよね。
堀田:そうか。5つの仕事をやっている人を真似たんじゃなくて、それぞれの(ロールモデルの)5つを真似てきているんですね。
石川:セミナー講師業界ではこの人がメンター、仕事が速い人ではこの人がメンター、サラリーマンではこの人がメンターとか、いろいろあるんですよ。その集合体が5つの仕事になった感じですね。
傳:いいとこ取りしていく感じですよね。
石川:そうですね。
堀田:それはすごいっすね。
傳:いわゆるロールモデルというと、昔の師弟関係みたいな感じで「1対1」というか。「絶対にこの人の言うことを信じる」みたいに、真似る先が固定化されちゃうイメージがありますが、そうじゃないよということですよね。
石川:そうですね。でも、それぞれの仕事はもちろんリスペクトしています。
傳:堀田さん。さっき挙げていただいたのは芸能人でしたが、他の研修講師とか、違う業種でもビジネスサイドで真似られた方はあまり思い浮かばないですか?
堀田:研修講師になっちゃうと、他の講師も二度と見れないんですよね。
石川:(笑)。
傳:ああ、そうか。
堀田:人事部にいた時はすごく見れたので、人事部にいた時に出会った方たちを真似たんですね。ただ、私は石川先生みたいに本がなかなか売れないのであれなんですが。
石川:いえいえ。
堀田:本を書く時は、例えば林真理子さんの本とかをちょっとなぞってみて、「語尾をこう変えるんだ」とか。ちょっと違う方向に行っちゃいそうだったんですが。コンテンツが期待されているので、文体は期待されてないかもしれないんですが、習性としてはまず真似から行こうと思いますね。
あと、石川さんの話を聞いてうれしかった。人生87万6,000時間一本勝負だと思って生きてきたので、100歳までだと思うんですよ(笑)。
石川:ああ、100歳。そうですね。
堀田:そこはすごくうれしかったです。同じ考え。
石川:ありがとうございます。こちらこそうれしいです。
堀田:「人生って何時間ですか?」と聞いて答えられる人は受講生でもゼロですから、考えている人は少ないですよね。
石川:時間で考えると意外と少ない。その時間に何をやるかと思った時に、一番やりたいことをやればいいのかなと思います。
堀田:そうか、そうですね。
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