2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):時間になりましたので始めさせていただきます。本日は元LINEで、今、ベンチャーキャピタル(VC)でお仕事をされている桜川和樹さんをお招きして、「現場に生きるか、マネジメントに生きるか、40代以降のクリエイティブキャリア」というテーマでお送りさせていただきます。すごい笑ってらっしゃいますね(笑)。
桜川和樹氏(以下、桜川):いやいや(笑)。あらためて聞くと、なんかプレッシャーだなと思って(笑)。
川原崎:テーマの概要としては、特に制作職とかクリエイティブ職の方ですね。編集、デザイナー、もしかしたらエンジニアとかも少し入ってくるのかもしれないんですけども。
そういった現場でのもの作りが好きでキャリアを始められたのに、30~40代を超えてくると、どうしてもマネジメント側に回ることを求められるプレッシャーだったり、自分のキャリアステップとして、そちら側に行かなければいけないのかなと悩む方が、たくさんいらっしゃると思うんですけれども。
そういった時に、「どういう判断軸で自分のキャリアを選んでいけばいいのか」に応える内容にしていければと思っております。まず最初に、桜川さんの自己紹介から始めさせていただきます。よろしくお願いします。
桜川:よろしくお願いします。ご紹介にあずかりました桜川です。簡単に自己紹介をさせていただきます。1979年生まれで今年42歳ですね。宮崎県に生まれました。
このへんはよく話すことですけど、宮崎県って民放が2局しかなくて。当時はインターネットもそんなに普及しておらず、僕が片親で一人っ子というのもあって、情報環境としてはすごく格差が強いところで育ちました。
その反動なのか、宮崎を早めに出たいなと思って、今は九州大学に統合され、もう名前が残っていない九州芸術工科大学に入りました。
僕は直接知らないですけど、先輩には『キングダム』の作者の原(泰久)さんや、もっと古いところで言うと、PostPetを作った八谷(和彦)さんといった方々がいる大学で、後輩にも映画監督とかがいるんですけど。
そういうおもしろい人たちに恵まれたり、外部の講師の方の話を聞くこともすごく刺激的で。この大学で何をやっていたかというと、ヌードデッサンをしたり石を掘ったり、卒論でダイジェストビデオを作ったり。CMをスキップさせる画像解析のプログラムを作ったり、ハードからソフトまでいろんなことを勉強しました。
桜川:宮崎は民放2局しかなくて、あまりインターネットもなく、一人っ子なので基本ずっと一人で過ごすという中からワーンと世界が開けた感じがあって。エンターテイメントとかコンテンツの仕事をしたいと考えるようになりました。
大学院までモラトリアムで行き、就活がんばったんですけど、就職氷河期ど真ん中だったので……。1年間自分でお金を貯めて、あてもなく東京に出てきました。その時が、今の新R25の前の、リクルートがやっていた時代の『R25』のモバイルサイトR25式モバイルが立ち上がるタイミングで、リクルートに入って、編集者生活が始まりました。
R25式モバイルは事業上うまくいかなくて、閉じたタイミングでいろいろ探していたら、NAVER Japanという会社に編集として入らせてもらって。今のLINEになるんですけど。NAVERまとめではずっと編集長をやらせてもらったり、LINE NEWSに関わったりとかいろいろやってきました。
11年くらい勤めたんですけど、いろいろ思うところがあって辞めまして、縁があって今はグローバル・ブレインというベンチャーキャピタルで、情報戦略とか投資先のPR支援とかをやっています。まだ入って2ヶ月ぐらいで、メディア畑でやってきて、スタートアップや投資にぜんぜん興味がなかったので、そこの勉強から始めたんですけど。
今は徐々にオウンドメディアの編集であったり、社内イベントを監修したり、イベントのタイトルを付けたり、投資先のPRをやったり、「SNSはこういうふうに使ったほうがいいですよね」みたいな話をしています。簡単ですが。
川原崎:ありがとうございます。さっそく最初のテーマなんですけれども、LINEからVCへ転職されて、けっこう珍しい道を取られていますが、肩書は編集者でいいんですかね(笑)。
桜川:そうですね。肩書きとしては編集長のままでやっています。
川原崎:これまでもリクルートさん、LINEさんと、華々しい企業に長く在籍していらっしゃると思うんですけど、どういったキャリア観といいますか、仕事観でお仕事を選ばれているか、最初にお聞きしたいなと思って。
桜川:そうですね。なぜVCへと言われると、縁があったとしか言いようがないんですけど(笑)。大学の頃からコンテンツに関わりたいなとは思っていました。このスタジオ内も機材がめちゃくちゃありますけど、自分でデジタルビデオカメラで撮ったりしていたので、カメラの使い方とかはわかるんですけど、ソフトをどう作るか、中身をどう詰めていくかが、自分はすごく弱いなと思って。
なので、考えに考えて、言葉を扱う仕事をやらなきゃいけないと思って、メディアの編集者に入ったんです。この話し方はちょっと長くなるのでいいか。
(一同笑)
桜川:それで、コンテンツを作って、16年くらい編集の仕事をずっとやってきたんですけど、ある種限界を感じ始めたというか。特にLINEとかになると、ユーザーの規模が数千万人になってくるので、極論かもしれないんですけど、僕が特集コンテンツを企画して、「すごくウケたね」「PVもいっぱい出たね」となったとしてもスポットでしかなくて。
プラットフォーム事業って、街を作っているというか政治をやる感覚に近くなってきているなと。あの規模からさらに成長させるためには、どこに公園を置いてどこに道路を通して、どういう企業を誘致するかみたいなことを考えないといけないと、薄々思っていたんですけど。
でも自分は、どうしても公園のトイレの便器のデザインをどうするかとか、そういうことが気になっちゃう性質だとなんとなく感じ始めていました。街を作り、大きく局面を考えていくのか、ディテールのクリエイティブにこだわっていくのかですごく悩んで、とりあえずこのプラットフォームの仕事は自分に向いていないなと思って。
だから、とりあえず辞めるのが先だったんですよね。最初はLINEもベンチャーっぽい動きをしていたのでよかったんですよ。コンテンツも仕組みも中身も一緒に作っていく感じが濃かったんですけど。
ある一定の規模感を超えた時から、コンテンツを作る仕事でちょっとウエイトを下げざるを得ないなみたいな。もちろん仕組み側にも行きたくて、チャレンジしたけどダメだったなみたいな。
川原崎:(笑)。
桜川:元上司とかは「もっとがんばれよ」と言うと思うんですけど(笑)、どうしてもできないなと思って、辞めて。たまたま知り合いの方から「こういう仕事どうですか?」といくつかお声がけいただく中に、ぜんぜん想定していなかったVCがあったんです。
ぜんぜん想定しない道を選ぶのを、自分も含めて「なんかおもしろそうだな」と思い、もちろん面接させていただいた時に、「知識はないし、そっち側の仕事のスキルもぜんぜんないんですけど、大丈夫ですか?」と言ったんですけど。
「スキルや知識はこちらにあるから大丈夫。それをどうやって伝えるかが私たちにはわからないので、そこを手伝ってほしい」と言われて。だったらやりがいとか、貢献できる部分もあるかもしれないなと思って入ったというのが実際のところです。ちょっと長くなりましたけど。
川原崎:いえいえ。なるほど(笑)。ありがとうございます。
川原崎:ちょっと細かくいろいろ気になることを、聞いていきたいなと思っているんですけど。主に当時のNAVERまとめとLINE NEWSでは、ポジション名に編集と入っていなかったんですか?
桜川:NAVERまとめ編集長として入っていましたね。部長っぽい肩書きとか、いろいろ組織の在り方によって肩書が変わってきたところがありますけど、NAVERまとめは編集長としてずっとやっていました。
川原崎:事業責任者が、また別にいらっしゃるかたちなんですか?
桜川:NAVERまとめでは、最後は事業責任者も僕でしたね。
川原崎:なるほど。
桜川:いろいろPMが変わっていく中でですけど。LINE NEWSは編集として手伝ったり、LINE MOOKというLINE NEWSの派生系のプロダクトを立ち上げたり、広告事業化を手伝ったりしていました。
川原崎:そもそも最初に『R25』で編集をやられていて、編集という仕事自体に「このままこれだけを続けていって大丈夫なのか?」という不安は感じませんでした?
桜川:いや、そこ鈍感なんですよね(笑)。
川原崎:(笑)。
桜川:とりあえず僕は、大学で2回も就活浪人をして失敗して。後輩もどんどん追い抜いていくし、土屋太鳳ちゃんとかが声優をする映画監督とかも1個下の後輩にいるんですよ。
川原崎:へえ!
桜川:クリエイティブは1回挫折というか絶望して、「あまり贅沢を言ってらんねぇな」みたいな感じで東京に出てきているので、20代は正直編集だけを続けて大丈夫かなどと考えていなかったですね。今考えたら、大げさなんですけど。
川原崎:はい(笑)。
桜川:当時は絶望を感じていたので、あまり先のことを考えていなかったですね(笑)。
川原崎:「今、編集できるからうれしい」みたいな感じでやられていたんですね。
桜川:そうですね。
川原崎:私も出版社に入って、紙の編集アシスタントからWebのキャリアを始めているんですけど、本当に儲からない職種だなというか。
桜川:(笑)。そうですよね。
川原崎:ライターさんとかにお支払いするじゃないですか。リクルートさんだとそれなりの額だと思うんですけど、うちみたいな小さい出版社だと、「これだけやってこれ?」みたいなレベルのギャラだったりして。
自分自身の給料も別に安くてもよかったんですけど、周りの方を見ていてもすごく低くて、1年くらいやった時に、これ将来どうするんだろうとけっこう不安を感じたんですけど。そういうのは、あまりなかったということですね。
桜川:そうですね。当時はなかったかもしれない。むしろ僕が入った2009年当時ぐらいのNAVER Japanは、事業化もしていなかったので。当時は200人弱くらいいたので、「こんなに人がいるけど、売上を上げていなくて大丈夫なのかな」というほうが不安でしたね(笑)。
川原崎:ええ! デザインは売れたりするから、もしかしたら事業にどう貢献しているかがわかるかもしれないんですけど、コンテンツはそれがわからない。事業への貢献度が気にならない人が、「いいものを作るんだ。それをお金に変えるのは他の人間の仕事だ」みたいな。
桜川:そうですね。出版社だと流通と生産部門が、けっこうバキッと分かれていることが多いと思うので。
川原崎:はい。
桜川:Webだとそうはいかないじゃないですか。「SNSでどうやって宣伝するんだ」とか、「Yahoo!ニュースとかLINE NEWSと契約して、ニュースに流してもらうんだ」とか、「アライアンスはどう考えるんだ」とか、流通も考えないと難しいと思うんですけど。
歴史もあるし、積み重ねもあるという意味で分かれているから集中できるし、それ(分業)が悪く出ると「それは俺たちの考える仕事じゃねぇ」みたいになっちゃうのかもしれないですけどね。
川原崎:昔は聖域化されていたところがけっこうありましたよね。Webって仕事における役割が基本的に細分化されていくものだと思ったんですけど、逆に流通というところで言うと、やらなきゃいけないことが増えていますかね。
桜川:そうですね。流通のことを逆算してタイトルや企画を考えていかないと、結局ずれていっちゃう。悪く言うつもりはぜんぜんないんですけど、出版は届いちゃうと言えば届いちゃうというか。本屋には並ばない本もあったりして、営業さんとかがすごく苦労されているとは思うんですけど、届くは届く。テレビも見るかどうかは別ですけど、届くは届く。
書店に平積みされているのは見ることができるけど、「Webって見ることができない=存在しない」のと一緒になっちゃうから。パイプラインがないので、生産側も流通を意識しないとけっこう難しいみたいなことは、2010年代とかはよく考えていましたね。
川原崎:初めて、記事を作る以外のマネジメントとかの仕事が降りてきたのって、どのタイミングだったんですか?
桜川:最初の頃ですよ。確かマネージャー候補として入社させてもらったので、最初は「入社=マネージャー」みたいな。
川原崎:その時は別に違和感はなかったんですか?
桜川:そうですね。僕は案外、先のことを考えるの苦手なタイプだなと(笑)。
川原崎:(笑)。
桜川:今も話しながら、来たものをとりあえず打っているみたいな(笑)。
川原崎:新しい発見がありましたね。
桜川:仕事だから来たものをちゃんとやるというところで、いったんはやってみる。それで、挫折するようなことの繰り返しですね。
川原崎:編集職とかデザイナーの方って、「これ以外はやりたくない」とか、「こういうデザインだけやりたい」とかがむちゃくちゃあるじゃないですか。そういうタイプじゃなかったんですね。
桜川:いや、僕は自分を凡人だと思っているからだと思いますよ。大学で後輩に抜かれたり、「センスないな」と思ったり、クリエイティブのプロじゃないというか。でも、「凡人だからクリエイティブができない」とか言いたくない気持ちもあって。
川原崎:はい。
桜川:オリンピック選手だったらすごい才能があると思うんですけど、別にインターハイでベスト8に入っている選手とかも、そのあとスポーツのコーチになったり、育成に入るキャリアもあるじゃないですか。
地区大会1回戦負けみたいなのだと向いていないと思うんですけど、「インターハイベスト8くらいまでは目指せるんじゃね?」と思って、とりあえず20代はやったところがありました。
そこでの戦い方ってどういうものだろうとか、ある程度センスに頼らない、技術でリカバリーできるところまでは行きたいなとか。ソフトで負けたからこそ、ハードというか技術にこだわったところも、どこかにある気がするので、来たものを断るほど偉くないというか。
川原崎:(笑)。謙虚ですね。
桜川:そんな大したもんじゃないと思って生きてきているところはあるかもしれないですね。
川原崎:難しいですね(笑)。できるのかなという不安はもしかしたらあったかもしれないですけど、特に選ぶことは考えなかった。求められているからこれをやってみるかという。
桜川:そうですね。そういうところはあると思います。
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