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コロナ禍における社員コミュニケーションの在り方 トークセッション(全4記事)

過度な仕事の要求、パワハラ、新卒とのコミュニケーション不足…… リモートワークの課題に対して、大手3社が取り組んだ施策とは

コロナ禍でリモートワークへの移行が進んだことにより、社員同士のコミュニケーション量の低下や、職場の一体感が損なわれるなど、経営層・マネジメント層はさまざまな課題に直面しています。これからのリモートワークにおけるコミュニケーションの在り方について、企業独自の色を活かした経営戦略を実行している責任者4名がイベントに登壇。本記事では、オンラインコミュニケーションの苦悩や施策について、各社が取り組み事例を語りました。

作業効率に合わせて、出勤とリモートを使い分け

西田政之氏(以下、西田):曽山さん、サイバーエージェントでは曜日別に出社とリモートを分ける「リモデイ」という話を、さっきおっしゃってらっしゃいましたが。前に曽山さんに個人的にうかがった時は「リアル優先なんだよ」というお話をされてた記憶があって。リモートワークも増やされるに至った背景を、教えていただけたらなと思うんですけれども。

曽山哲人氏(以下、曽山):サイバーエージェント全体で申し上げると、コロナの前までは週5日出社が普通の会社でした。一部のエンジニアやママ社員、業務上必要な人とか、家庭の環境上必要な人はぜんぜんリモートでいいよ。でも、基本は顔合わせてやろうという話をしてたんですが、コロナの影響で大きく変わりました。

緊急事態宣言下のフルリモートを経て、先ほど申し上げたとおり現在は週3出社の週2リモートになったわけです。全員でリモートを経験したことで、学んだんですよね。

リモートの学びは何かというと、まず大人数の会議などで時間的なコストが非常にいいねと。1個上の会議室に移動するとか、机を片付けるとか、そういったものがなくなるので、大人数の会議にはリモートがめちゃめちゃいいねということが1つ。

もう1つは、オフィスでやるか家でやるか別にしても、ものすごく1人で集中したい時には離れてやってるほうが効率がいいよね。ふだんのオフィスだと、電話とか声がけがあるから。リモートのメリットはとってもあるから、経営陣で議論してまずは「週5日出社はやめよう」という意思決定がされました。

新卒社員からは「出社したい」との声が多数

曽山:週5日(出社)ではなく、2日がいいのか3日がいいのかを議論しました。今も実験段階なんですが、「週3出社、週2の今ぐらいはどうかな?」と社員に聞くと、「今ぐらいがちょうどいい」という声が多いです。

西田:ありがとうございます。じゃあ、常に試行錯誤を繰り返してるってことですね。

曽山:そうですね。

武田雅子氏(以下、武田):1点いいですか? うちは成果から逆算して、(出社日を)「好きにしていいよ」って丸投げにしちゃってるんですが、それでも出勤の日を週に3日でキープしてるのは何か理由があるんですか?

曽山:僕ら毎年新卒を採ってることもあって、新卒と中途に聞くと、(新卒は)「出社したい」という声が多いんですよね。

私は「二感と五感」という言葉をよく使うんですが、オンラインでは「視覚」と「聴覚」の二感が多いんですよね。一方で、リアルで出社すれば五感での共体験ができる。「味覚」や「嗅覚」もあるかもしれない。

そういった五感をフルで活用できるのがリアルのメリットです。20年後、30年後になると、テクノロジーも進化して五感になると思うんですが、まだそこにギャップがある。まずは出社して、対面で話すとか、リアルで話すことを大事にする会社にしよう、という意思決定をした感じですね。

武田:なるほど、ありがとうございます。

リモートワークと出社の使い分け

武田:今聞いて、少し思い出したことがあって。実は毎月アンケートの時に、「先月はどれぐらいの割合で働きましたか?」といって、100パーセント在宅だった人をチェックしてるんですよ。「来てないな」「どんなんなってるかな?」っていうのを、個別にちょっと声をかけたりをコツコツとずっとしてるんですね(笑)。

曽山:いや、すばらしい。

武田:聞くといろいろな理由があったり、でも話してるうちに「やっぱりちょっと行ったほうがいいかもですね」という声が、実際に聞こえてきたり。こないだも実は、ばったりその方とオフィスで会ったんですよ。「来てるじゃん」と。

そうしたら、「やっぱ来るって大事ですよね。もうちょっと来るようにします」という声が本人から。だから完全に在宅というよりも、これも会社によっていろいろあると思うんですが、そこは本当に組み合わせが重要。

まさにうちのアンケートの変遷でいくと、今年の春に人が入れ替わったり新入生が来たり、異動があったりするじゃないですか。なので、「新しいことやってますか?」というアンケートのところに多かったのが、「こういう時に(会社に)行くことにしました」という声がすごく多かったんですよ。

曽山:いいですね。

武田:「この人たち、本当に(オフィスとリモートを)使い分けはじめたな」って確信をしたんですが、そんなことを思い出しました。

曽山:オンボーディングの時には行ったほうがやりやすい、とかがあると思うので、そういうふうに選んでいけるようにするといいと思うんですよね。

武田:そうですね。ありがとうございます。

松浦俊雄氏(以下、松浦):確かに僕らの会社も、100パーセントリモートという人は少なくて。リモート主体の働き方を選ぶんだけれども、週2日まではオフィスに来ます。なので、1日の人もいれば、2日来る人もいれば、あるいは月に2、3回という人もいます。

「オフィスに来る」ということに対して、すごく目的意識を持って来るようになったところが1つの変化かなと受け止めていますね。

過度な仕事の要求など、リモート下のデメリットへの対策

西田:どうしてもテキストコミュニケーションだと、ついつい過度に仕事の要求をしてしまったり、あるいはプライベートに影響を及ぼすようなことが少なくないんじゃないかなと思うんです。

第3者の視線がないというか、パワハラって他人の視線がない中で起こりやすい環境かなと思ってて。これを防止するためのルールや工夫って、それぞれみなさんどんなことをやってらっしゃいますかね?

曽山:試したことが1個ありまして。2020年の6月だったと思うんですが、パワハラ防止の法案が実際に動き始めたと思うんですよね。そのタイミングで管理職からも「どれがよくてどれが悪いのかわかりません」という不安の声があったので、「OKマネジメントとNGマネジメント」という勉強会をやったんですよ。

やったこととしては、厚労省が出している6類型を「パワハラのこういうケースがだめで、ダメなケースはサイバーで当てはめるとこうです」という箇条書きにして、チェックリストにして渡したんですね。

それは30分のセミナーなんですが、そういう簡単なセミナーをやって伝えて、最後は「やりません」って署名する。「困った時にはいつでも言ってね、これだけ気をつけていてトラブったらぜんぶ人事が守るから」と、人事が言うことがすごく大事です。それをやってから、すごく安心してくれたのはありましたね。

武田:アンガーマネジメント協会の戸田(久実)さんの研修を、うちも全役職者にお願いをして。その時に人事からのメッセージとしては、「怖がらないで、きちんとやるべきマネジメントはやってくれ」ということを、合わせてお伝えをしました。

実はその後も、各地域の人事担当やたくさん部下を持ってる工場長さんとかに向けて、ずっとマネジメントの勉強会を細々と続けてるんですね。そういった中で、社内で実際にあったちょっと危なかった事例や、ヒヤリハット的な事例なんかを共有をして、みんなで話し合ってもらうことを続けてるので。

これはハラスメントに限らずですが、労務系のそういった知識は、全体的なレベルはやや上がってきつつあるかなというのを実感し始めてる状態です。

新卒社員との大きなコミュニケーションのギャップ

西田:ありがとうございます。最後にみなさんにうかがいたいことがあるんですが、新卒が入ってくるじゃないですか。大学でも後半はリモート授業を受けてきたみなさんが入ってくると思うんです。

新卒の受け入れに際して、コミュニケーションの問題をどう扱ったらいいか、というのがあるんじゃないかなと思っていまして。そのあたりの備えで、各社「こういうこと考えてるよ」というのはありますでしょうか?

曽山:とても難しいっすよね。「大学生活をオンラインでやった」という、もう完全に僕らは体験したことのない世代なので、とても苦労したと思います。僕らはどちらかというと、コミュニケーションの頻度を増やすことがまず1つの解だなと思ってます。先ほどの面談の頻度を、週1やデイリーにしていくアクションもそうですし。

あと、1つやってる試みとしては、メンターとメンティー、トレーナーとトレーニーみたいな、1対1の関係を作るケースがよくあるんですけど。最近は3人1組とか、4人でペアとペアがけっこう良いのではと思って実験していまして。

1人の新人に2人の先輩を担当につけて、3人1組でチャットのルームを作り、1人が日報を送ったり、なんかいいことがあったらやると。1対1だと照れがあって言わないものが、3人だと、1回だけランチや飲みに行ったりすると、めっちゃ仲良くなるので。こういった組み合わせをしたり。

あとは、トレーナーとトレーニーの1対1を(2組で)4人にして、1班にしてやると、クロスで情報交換も働くので。1対1をやってはいるんですが、「1対1を否定していく」というのは、けっこう大事な切り口かもなって思ってます。

西田:逆に新鮮かもしれないですね。

内定者や学生から集めたアンケートをフィードバックに活用

西田:松浦さんは、たぶんインターンをいっぱい受け入れてらっしゃるので、そのあたりも感覚が高いんじゃないかなと思うんですが、いかがですか?

松浦:そうですね。まずは内定者の時代から僕らのインターンシップのサポートとして参加してもらったり、アルバイトやってみたりして、自分自身が相談できたり連絡できる相手・仲間をどんどん増やしてってもらう。

一回会っていたり、一緒に共同して作業をしていれば、連絡もとりやすくなることもあるので、それはけっこう意識してやっています。

あとは、これは内定者や学生に限らないんですが、当社は感想文を求める文化があります。例えば、今日のようなセミナーを社内でやっていたとすると、ほぼ間違いなく参加者の人たちにアンケートを取るんですね。「タレントパレット」というツール上でアンケートが開放され、みんな終わった30分以内に書くのがだいたいのルール。

そうすると自動的に集計されて、その日のうちに主催者に伝わってくる。ということで、まさにコミュニケーションって「伝わったかどうか」だと思うので。相手が今、どう受け止めてるのかとか、どう伝わったのかを、フィードバックをもらう。そういうことは、あちこちで習慣化はされてきてる印象はありますね。

西田:なるほど。

例年北海道で行う、カルビーの新人社員研修

西田:カルビーさんは、十勝で芋を拾わせればいい感じですよね?(笑)。

武田:リアルの場もすごく大事ですし、さっき曽山さんおっしゃっていたのはいいなと思って、やろうかなと思いました。まさに馬鈴薯研修の最後の時に、1ヶ月間自宅から離れて彼らは十勝で過ごすわけじゃないですか。

その時に、A3の紙を全員に1枚渡して。真ん中に自分を書いて、この期間中に自分が関わった人たちを周りにぜんぶ書いてもらうんです。

曽山:それはいいなぁ!

武田:振り返って、もし自分にもうちょっと勇気があったり、もうちょっと圧倒的当事者意識を出してたらやっていたこと、やったらどうなってたかを書かせるんですね。

そうすると、内容によってはうるうるしながらコメントを書いてる子とか。今年おもしろかったのは、みんなで集まって飲み会とかができないので、新入社員同士が「オンラインで飲み会をやろうよ」って言った時に、疲れ果ててたのか誰も応じなかったという事件があって(笑)。

でも、そのことについてみんなが「実はあの時、○○くんの呼び込みに応じればよかった」って書いてる人たちがいて。そこで彼は報われる、なんていうおもしろい出来ごとがあったり。

まさにそうやってリフレクションを行うことで、要するに「やらない後悔」は「やった後悔」よりも大きいという話も、最後のラップアップで私がするんです。「じゃあ、次の時からはやってみようよ」という、意識づけ、気づいてもらえるような場を設けることはやってます。

これに近いことは、各部門でも、各地域の人事やOJTリーダーたちにもお願いをしています。十勝の経験はかなり強烈な1回にはなりますが、リアルと内省も組み合わせてうまく使っていきたいなと思ってます。

西田:いやあ、絶対泣かせる研修ですね。すごいな。ありがとうございます。

オンライン上で価値が上がったものは「信頼」

西田:じゃあ時間もなくなってきたので、最後に今回のコロナを通じて得た気づきと合わせて、それぞれみなさんからメッセージをいただければと思います。最初、松浦さんからお願いしてもいいですか?

松浦:今日の論点は「コロナ禍におけるコミュニケーションのあり方」だったと思うんですが。しっかり情報を循環させていく、それがしっかり伝わったかどうかを確かめていくことに向けて、いろんなヒントややり方があるなというのが、今日の大きな気づきです。

やっぱりこれって、コロナだからすごく気づかされてる面はいっぱいあるんだけれども、日常からこういうことがしっかりできてるチームは強いんだろうなと思いますので、引き続き、またどんどんと進化をさせていきたいなと思います。今日はいろんな気づきをありがとうございました。

西田:ありがとうございます。じゃあ、曽山さんお願いできますか?

曽山:今日はみなさまありがとうございました。非常に勉強になって、私もたくさんメモを取りました。松浦さんのおっしゃるとおり、コミュニケーションの難しさに気づかされたこの2年なんですが、価値が上がるものは何かというと「信頼」だと思っています。

信頼が大事でちゃんとする人と、信頼に気づかないまんまで仕事だけをやる人で、すごく人間関係の厚みが変わってきてしまうんだろうと思ってまして。なので、信頼の重要性をメンバーに説いていって、理解してもらうこと。信頼関係があるとすごくいいチームで仕事ができるんだなということを、どれだけ伝えられるかがすごく大事だなと思います。

個人的には、信頼と脳科学、生物学とかが好きで。オキシトシンっていう幸せホルモンや信頼ホルモンがどうやったらもっと出るんだろう、みたいなことは、すでに試行錯誤しているところなので。今後、みなさまと一緒に勉強していきたいと思います。本日はありがとうございました。

コロナ禍は「社員の人たちに人事の背中を見せるいい機会」

西田:ありがとうございました。最後、武田さんお願いします。

武田:去年、本当に大変なことがあった1年だったと思うんですね。続いて今年も、(コロナ禍が)2周目になってるんですが。ただ、すごくチャンスなこともありますし、たぶんこの後何年もかかってやらなくちゃいけなかったことを一瞬でやる羽目になったっていう、すごくいい経験をしたとも思っていて。

その時は本当につらかったんですが、社員の人たちに人事の背中を見せるいい機会にもなったのかなと、個人では思っています。人事って、現場への情報戦が仕事だなと思っていて。離れていても何か声をかけてもらえるとか、または声を聞く場をいかに設けるか。

その時に社員のみんなと連携をして、どう変化を起こしていけるか。それをずっと試されているような気がして。たぶん失敗もするんですが、そこの手は緩めずにこれからもいろんなことに挑戦していきたいと思ってます。今日は本当に勉強になりました、ありがとうございました。

「ディスコミュニケーションはコミュニケーションの本質」

西田:ありがとうございます。最後にちょっとラップアップさせていただきますと、カルビーさんは社員に徹底的に寄り添うことをベースとして、個人の課題の一歩先まで支援することで、逆に仕事に対する意識やクオリティを上げることにつなげていらっしゃる。

サイバーさんは経営として求めるものをより明確化して、困難な時期こそ逆にリーダーの育成チャンスと捉えて、ベストプラクティスを仕組み化して、経営戦略から人事施策まで一気通貫でアラインさせていく。

CCCさんはコロナ禍だからといってあらためて特別なことをしなければならないんじゃなくて、組織運営で必要なことをふだんからしっかりとやっていくことが一番大事なんだということを、コロナが気づかせてくれたと受け止めていらっしゃる。

3社、大変すばらしいお話をいただきまして、総括するとこんなことかなと思います。それぞれ非常に参考になるお話をうかがえたのではないかなと思います。

私自身は先ほども申し上げましたように、オンラインコミュニケーション主体の中でも、ディスコミュニケーションはコミュニケーションの本質だと思っていますので、過度に気にしすぎる必要はないと思う一方で、ベストプラクティスは仕組み化して横展開したほうがよいですし、雑談の機会を意識的に多く持つ。

そういった、あえて非効率的なことを入れて余裕を持たせることが偶発的な創発という要素を担保して、逆に社員やメンバーの能力を維持、高めることになるんじゃないかなと思いました。

あらためて、曽山さん、武田さん、松浦さん、本日は本当にありがとうございました。視聴者のみなさんも、長時間お付き合いいただきましてありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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