2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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池田紀行氏:少しずつ論理的なお話もしますけれども、僕は会社を創業したのが34歳で、ちょっと細かくは覚えていませんけど、転職は今まで4回ぐらいはしていると思います。
このグラフは、昔キャリアに関連する雑誌の取材を受けた時に、「池田さんのスキルと年収をグラフに描いたらどんな感じになるかやってみてください」と言われて再現したものなんですね。年収を書くとすごく生々しいので、年収の金額は刻んでませんけれども。
普通、大学を卒業して新入社員で働くと、年収250~350万円が初任給だと思います。僕もだいたいそのレンジに入っていた普通の人間です。そこから、それなりの金額に年収を上げてきているわけですけれども、どのタイミングでどんな転機があったのか、転機があったのかというと、このグラフが急勾配で伸びている20代の後半ですね。
僕が死ぬ時に「いったい自分の人生はどこでスイッチが切り替わったのか」と考えるとすると、あきらかに26~29歳のこの3年間です。「20代のほうがいいよ」という話をしているわけではありません。僕は26〜29歳の3年間がそうでしたという話をしているだけです。若いほうがいいとか、そういう話ではありません。
その時代に何をやっていたかというと、人の2倍働いて、人の2倍勉強して、人の2倍遊んでいたんです。本当それだけです。
なんでそんなことやろうと思ったかというと、先ほどお話ししたとおり、22歳でFランク大学を卒業し社会人になったわけです。ちなみに一番最初に社会人になった会社は、大阪が本社の英会話学校でした。英会話学校を運営する会社に新卒で入って、ひたすら営業している人間だったんです。
当時からこんな性格ではあったんですが、ぜんぜんFランク大学を卒業したコンプレックスもなければ、社会に出て営業をやっていたら成果も出て、とても楽しい楽しいとか言って、普通に生きてたわけですね。
キャリアに不安はなかったんですけど、少しずつ「自分はどうなるんだろうな」ということを考え始めて。キャリアの本をチロチロ読んでみたり、いろんなことをやってみると、実は世の中って猛烈に広く、社会はこういうふうに回っているのかみたいなことを知って、「実は自分は相当下のほうにいるのではないか」と、ようやくその時、僕は初めて認識したわけです。22~23歳あたりですね。
『BIG tomorrow』という今はない自己啓発の雑誌を読んでいたら、落合陽一さんのお父さんの落合信彦さんが、すごい過激なことを言われていて。「新卒の社員で給料が20万円、手取り10万円台なのに、将来が不安だからって月に1万円や2万円貯金をしているお前らは、去勢された豚野郎だ」みたいな、すごく刺激的なことが書いてあったんです。
「え、そうなの? 俺も貯金しちゃってるけど……」みたいな。とにかく成り上がるための最高の投資先は自分自身に他ならないんだから、可処分所得は全額今の自分につぎ込めというようなことが書いてあって。
中小企業診断士という経営コンサルタントの国家資格があって、それで「資格の勉強をしてみよう」と思って勉強を始めました。するとそこで知り合った方々が、一流大学から一流企業で猛烈に働いている、今まで僕が会ったこともないような人たちで。その中で勝手に相対比較をすると、僕はもう底辺中の底辺だったんです。
「俺は今から、とんでもない社会の中で成り上がらなきゃいけない」と感じたのが、23~24歳ぐらいですね。
資格は25歳でラッキーに取れまして、26歳で初めての転職をしました。僕はここで初めてマーケティング業界に入ったわけですね。仕事も猛烈に楽しいですし、お客さんが大企業の、一流企業の、一流の宣伝マンや広報マンやマーケターの人たちになった時に、あらためてこの人たちのレベルの高さを感じたのと同時に、「自分は今、何もできない」と茫然自失しました。
僕は勝手に自分のことを人よりもできない、人よりも下にいると思ってたわけです。人より下にいる人間が、数年間でその人たちより上にいこうと思っても、普通にやってたら絶対に抜けないわけです。その人たちも遊んでるわけじゃなくて、努力をしながら日々どんどん成長していってしまうわけですから。
例えばマラソンとか駅伝で全力疾走している人たちを抜いていかなければいけないということは、全力疾走している相手を全力疾走で抜かなきゃいけないわけですよね。ということは、人が遊んでいる時にも働き、人が勉強している時にも働き、人が勉強している時には勉強し……みたいなことをやらないと、絶対に抜けないということなんです。
これ言うと呆れられるんですけど。僕の場合、26~29歳の間は東京の中野で1人暮らしをしていましたけど、16平米のすさまじく狭い部屋でした。ドアを開けた瞬間に部屋という、廊下がない中野の狭い家に住んでたんですけど。
週に2回ぐらいは、ドアを開けてそのまま、玄関というか靴を脱ぐすごい狭いスペースのところに、靴を履いたままのスーツ姿で、うつ伏せで部屋に向かって倒れ込んで寝てるみたいな。新聞を取っていたので、朝新聞配達の人に「あんちゃんまたこんなところで寝ちゃって、風邪引くよ」って起こされるみたいな生活を、3年ぐらい送っていた気がします。寝ようと思って寝ることがあまりないくらい、限界まで仕事してるか、限界まで勉強してるか、限界まで遊んでるかでした。
僕のやっている仕事ってマーケティングなので、「なんで今、この店がこんなに流行るのか」「なんでこの商品が売れてるのか、こっちの商品はぜんぜん売れないのか」ということを解明しながら、商品が売れるようにやっていかなければいけないので、勉強だけしててもぜんぜんスキルって磨かれないんですよね。
なぜこの場所にこんなに多くの人たちが集まるのか。なぜこの商品は割高なのに、みんなが行列をなして買うのかということを論理的に解明しなければいけない。やっぱり人より何倍も遊んでいないと、消費者の心理がわからないんですね。
なので、勉強も仕事もやるんですが、それだけじゃ足りないので、人の2倍は遊ぶということにもコミットしていました。本当に6倍ぐらいやったんじゃないですかね。
この26~29歳のちょっと変態的な時期があったので、今の僕がいるなぁと思っています。まとめると、スライドの上に「意思」か「意志」かって書いてありますが、僕はなりゆきに任せてキャリアを作っていくことを否定しません。山登り型のキャリアと、川下り型のキャリアっていう2つがあるっていうのは有名な話です。
「絶対にあの山の頂上に登るぞーっ」という、虎視眈々と準備をしながら山の頂上を目指す山登り型のキャリアの作り方もありますが、僕も昔はどちらかと言うと山登り型を自認してたんです。最終的にどの山の頂上に登りつきたいかというところは猛烈に強く思っていましたし、今も思っています。でも今振り返ると、当時は意外と川の流れに身を任せながら、その時その時の流れの中で、全力でこいできたのかなという気はしているんですね。
転職活動ってこの26歳の時の、英会話学校からマーケティング業界の会社に転職をした1回きりで。あとの転職はすべて転職活動をしておらず、取引先とか、知り合いの会社の社長や先輩から、「いけちゃんちょっと手伝ってほしいから来てくれないかな?」って言われて転職してるんですね。
なので、いわゆる一般的な転職活動は人生の中で1回しかしていません。結局その川下りなのか山登りなのかは別として、「思う」だけでは、やっぱりなかなか物事ってうまくいかないのかなと思っていて。
やっぱり「思う」のではなく、とにかく「志す」のだと。絶対にあの山の頂上に登りきるんだ。ないしは、あの海に流れ着くんだという、その強い思い・志を持ちながら、今の地点の目の前のことを全力でやるんだと。
こういう話をすると、「いやいや、そんなん絶対私には無理です」みたいな話になるんですけど、あくまでもサンプルが僕1人の話でお話ししているだけなので。まぁ僕はそんな感じのことがありましたよというだけです。すべての人にわかっていただきたいのは、思うほうの「意思」ではなく志すほうの「意志」で、強くきっちりとコミットするんだと。まずは決めるんだと。
行動って続けないと、成果が出ません。じゃあ続けるためには何が必要かというと、やっぱり「意志」なんですね。志がないと、絶対に続かないと思います。
キャリアを作っていく上で一目置かれる人間になるためには、やっぱり普通の人間が普通の人と同じことをやっていたら、普通のキャリアにしかならないということです。これは残念ながら世の中の真理だと思います。普通の人が、普通と同じことをやっていたら普通の人間にしかならない。僕の場合、普通以下の人間が普通以上になりたいと思っていたので、3倍から6倍ぐらいがんばらないといけないと思ってやってきたという話でした。
最近のワークライフバランスと言われている風潮についての話なんですけれども。実は僕、この言葉が好きではなくて。うちの会社の中でも、最近は働き方改革をものすごくやっていて、当然残業時間だったり36協定だったりは重視していて、しっかり働きやすい制度や環境を整えた会社でやっております。でもやっぱり僕はこの「ワークライフバランス」という言葉が好きじゃないですね。
なんでかと言うと、ワークとライフのバランスをとりましょう。なんでバランスをとるのというと、ワークはものすごくつらいもので、つらいがゆえにお金をもらえると。つらいよ、努力が必要だよ。やりすぎると体壊すし、メンタルも病むよ。だからすごく楽しいライフと、バランスをとりなさい。これがワークライフバランスの考え方の根底にあるんじゃないかと、僕は勝手に、すごく強く感じてしまうんです。
さっきも「人生のうちの半分が仕事だよね」という話をしましたけれども、つまらない仕事と楽しいライフって、バランスはとれないと思っているんです。万が一、100万歩譲ってとれるとしても、人生の3分の1とか半分が劇的に最高につらくてつまらない人生を、もう半分の楽しいライフでバランスが取れるかといったら、絶対にとれないと思うんですよ。だって半分がすさまじくつまんないし、つらいわけですから。なので、実質的にそんなバランスがとれないと思っています。
僕の原体験で、僕は昔からよくしゃべる人間だったんで、高校・大学時代は「お前は営業になったらエスキモーに冷蔵庫が売れるぞ」とずっと言われながら育ってきた人間でした。
なので自分が営業をやったらどれだけ物が売れるのか、大学時代にバイトを通して試してみようと思って、教材のアルバイトと、自動販売機の設置のアルバイトをやりました。世の中には、家とか工事現場に行って「うちの自動販売機を置いてくれませんか」っていう営業がいるんですよ。
そうしたら、びっくりするぐらい売れなくて。河原であんパンを食べながら牛乳を飲むというのを、本当に自分もやる日が来たのかみたいな感じで。完全成果報酬なので売れなかったら報酬0円なんですけど、そんなことを経験したんです。
そんな辛いバイトをしていると、前日からすげぇ気持ちが沈んで、鬱なんですよ。「俺、また明日飛び込み営業して、ほうき持たれながら追いかけ回されるの、やだなぁ……」って。本当に追いかけ回されたこともあるんですけど、そんなこと感じで、もう前日からすごく嫌な気分なんですよね。
当日働いている時は当然、もっと嫌な気分で。帰り道も、仕事が終わっているにもかかわらず「また明後日バイトか」みたいな感じで、ずっと鬱なんです。ワークが終わったらライフを楽しめるかといったら、ぜんぜん楽しめなかったわけですよ。
一方で、僕が一番楽しかったのは、自動販売機にジュースを補充するというアルバイトがすごく好きだったんです。8ケースぐらい山積みのジュースを持って、全力疾走で先輩と競争して、ジュースをがらがらがらって入れていくんですけど。
すごく喉が渇くんで、ジュースを1日8本ぐらい飲むんです。すごい力仕事なんですよね。その仕事は、今日の仕事が「はい、終わり」ってなったら、終わりなんですよ。肉体はめちゃくちゃ疲れているにもかかわらず、ストレスがないから心はぜんぜん疲れてないんです。当時、夜の2時とか3時までカラオケ歌ったり箱根までドライブに行って、翌日また7時に起きてバイトに行くようなことが、まったく苦じゃなかったんですね。
なにが言いたいかというと、つらい仕事っていうのは楽しいライフを蝕む、邪悪な力を持っていて。仕事がつまらなかったら人生がつまらないなということを、すごく強く感じた原体験でした。
だから僕は今、「ワークライフミックスだぞ」と全社員に言ってるんです。日本には「サザエさん症候群」という言葉があるぐらいで、一番元気なのは金曜日の夜で「明日から週末だ!」みたいな。土曜日の遊んでいるうちはすごい元気で、「明日も休みだ」みたいな感じなんですけど。
日曜日になると、「日曜か。明日は月曜日だな」みたいな。夕方ぐらいから気分が沈んでいって、サザエさんの歌を聞いた瞬間に「もう俺の人生は終わりだ。明日は仕事だ、死にたい」みたいな感じになる。これが「サザエさん症候群」なんですけど。
1年って52週間あるので、サザエさんもだいたい52回やるわけですよ。52回日曜日の夜に気分が暗くなり、52回金曜日の夕方に元気になるという人生は、僕はもう絶対にまっぴらごめんで、そんな人生は絶対にいやだと思っていたんです。金曜日の夜と月曜日の朝は全部地続きでつながっていて、1回きりの尊い人生なので、全部丸ごと楽しむという設計じゃないとありえないと、僕は思っているんですね。
だからといって、とにかく休日出勤から深夜残業まで死ぬ思いでやりまくれという話をしているわけではなくて、「楽しく働こう」ということです。楽しむことが何より大事。人生は、楽しむことが目的なので。楽しんで社会に貢献するというのが、僕の人生の目的だと思っています。
人生を楽しんで使いながら、社会をよりよくすることをやるためには、ワークもライフも、別にどっちでもよくてですね。どっちも楽しんで社会をよくすることをやるという考え方でワークを設計していかないと、僕の場合は絶対に続かないし、無理かなって思っているし。みなさんもそう考えてみてはいかがでしょうかということでして。
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