2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中章雄氏(以下、田中):オードリー・タンさんのスペシャルインタビューセッションにようこそ。それではオードリーさんをご紹介したいと思います。
オードリー・タン氏(以下、オードリー):みなさん、こんにちは。今日は本当に参加できてよかったです。というのも、台湾政府がZoomを禁止したので、ブラウザを初期化して、プライベートモードで開いて、私が「人間」であることを証明して。そうしてブラウザから参加しているんですね。でも、そうするだけの価値はあります。
ただセッションが終わったら、サイバーセキュリティ部門の指示通り、ブラウザを完全に消去しようと思っています(笑)。
田中:ありがとうございます(笑)。さて、おそらく日本の誰もが、オードリーさんの顔を知っているのではないでしょうか。彼女は日本で有名になりました。さまざまな雑誌にも掲載されました。
今日はまず最初に、(スライドを指して)この写真についてお話ししたいと思います。このスライドは、ファンキーでかなりアバンギャルドですよね。ファッション雑誌の『ELLE(エル)』によるデザインで、彼女の特集で使用されたものです。
私はこの画像が、このセッションにぴったりだと思っていて。というのも、今日彼女が話してくれることは「私たちはどのように異なったアプローチで社会を見ているか」だからです。社会はシステムであり、もちろんどのシステムもハック可能である。実際、その部分に対して、オードリーさんは何年も実践されています。
中でも私が強調しておきたいのは、次のスライドです。おそらく、日本でもっとも有名な台湾人はオードリーさん、あなただと思います(笑)。特に新型コロナウイルスへの対応と、情報テクノロジーにおける取り組みは、大いに注目されています。これがいわゆる日本での主流な「オードリー・タンへの目線」だと思いますが、あなたの取り組みはもっと奥が深いものでしょうし、長い歴史があると思います。
ですから今日は、最近の新型コロナウイルス関連だけでなく「あなたのルーツや、今日までに培ってきたさまざまなこと」についてお聞かせいただければと思います。それが今回の目的です。
オードリー:わかりました。
田中:ですが、まず「なぜ台湾はマスク問題を解決できたか」について少しお話しいただければと思います。
日本では安倍元総理が全世帯にマスクを送ろうとして3~4ヶ月以上かかり、初期ロットはほとんど不良品で回収しなければならず、スムーズにはいきませんでした。
でも、台湾は非常にいい形で解決したわけです。各国が答えを出せない中、実際何が起こって、どうして解決できたのか? 少しお話しいただけますか。
オードリー:はい、ただ1つ私がお話ししたいのは、あなたが見せてくださっているアプリケーションも含めて「どれも私が作ったものではない」ということです。私はアプリケーションの一覧を作成しただけで、これはすべてのアプリケーションのポータルのようなものです。
そしてなぜ、こんなに民間の技術者が流通に関わっているか。これはパンデミックとなった最初の時点で、台湾においてマスクは単純に「洗っていない自分の手から身を守る物」だったからです。
これは非常に記憶に残りやすく「マスクから石鹸へ、手洗いへ、パニックにならず落ち着いて行動しよう!」ということとつながっていたため、マスクを目にしても慌てて買ったり、買い占めたりするものとしては映らず、ただ「洗っていない自分の手から身を守れるもの」だったんですね。
「あらゆるイノベーションは、とてもシンプルな前提があって成長できる」のだと思います。今日はマスクの話ではないので、これだけにとどめておきますね。
田中:つまりこのシステムは「多種多様な開発者、ハッカーの努力の結晶」という。
オードリー:「数百、数百人もの民間の技術者たち」ですね。
田中:台湾政府にはオープンデータポリシーのようなものはあるんでしょうか? なんといいますか、パブリックデータを提供して、人々が何かに使用することを許可している政府もあるじゃないですか。
オードリー:はい、オープンAPIポリシーがあります。オープンAPIはオープンデータよりも優れています。なぜなら、オープンデータを行うというのは、本質的にはデイリーまたはウィークリーで公開することになるからです。
しかしリアルタイムデータ。つまり分散台帳の観点からいいますと、私たちがマスクマップでやったように、30秒ごとに公開しなければなりません。さもなければ人々は政府を盲信するしかなくなり、うまくいかなければ政府を非難することになります。
でももし、国民健康保険証を持って、大人なら9枚、子どもなら10枚の医療用マスクを入手するため、2週間に1回列に並ぶとしたら、自分が購入したあとに表示される数が9枚分減ると思いますよね。
ですから、あなたの前に並んでいる人を誠実な人として見ることができるわけです。あなたが購入を終えて、薬局のマスクの在庫数が減っているのではなく、むしろ増えているのを後ろに並んでいる人が見れば、その場ですぐに1922(注:台湾の無料伝染病予防ホットライン)に電話するでしょう。そしてこれはオープンAPIでのみ実現可能で、日次公開のオープンデータではできないんです。
田中:実際にはオープンデータではなく、オープンAPIによってリアルタイムに利用できる情報だったんですね。
オードリー:その通りです。韓国でもオープンAPIを選び、自国の政府に「なぜ台湾ではオープンAPIの公開ができて韓国ではできないのか?」と請願して、私たちの1ヶ月後に実際可能となりました。それが3月下旬のことだったと思います。
韓国でまず稼働したマップの背景には、Finjon Kiang(フィンジョン・キアン)氏をはじめ台南出身の方々。Kiang氏は韓国語が話せなくても、JavaScriptとオープンAPIで会話したんだそうです(笑)。大事なのはそこですね。これが国際的な連帯を、ほとんど即座に築き上げたんです。
田中:国の言語ではなくJavaScriptが公用語だったわけですね。それで……。
オードリー:あとJSON。JSONがとても重要です。
田中:ここまで非常にいい感じでお話いただけています。ところで、視聴者のみなさんにも少し質問したいと思いますが「オードリーさんをマスク(問題)の文脈で知っていた」という方は、どのくらいいらっしゃいますか?
彼女のマスクに関する貢献や、IT大臣、デジタル大臣として行動された話を日本のニュースで見たことある人がいましたら、Slackチャンネルで「見たことあるよ」「イエス」など書いていただけますでしょうか。
みなさんは、オードリーさんの行動をすでに見たことがあるようですね。ではこれから、オードリーさんの過去の話に移りたいと思います。おそらく日本のみなさんがまだ知らない部分だと思います。
(スライドを指して)これはニュースアーカイブで見つけたと思うんですが、2014年3月の台北です。当時の台湾では、国会を長期間占領する学生運動があったのですが、実はオードリーさんはこの中心人物だったんですね。
その人が今、台湾のデジタル大臣をやっているんです。これはたぶん、日本では考えられないことだと思うんですが、この辺も含めてオードリーさんに実際何が起きていたのかを聞いてみたいと思います。
オードリーさん、ニュースアーカイブでこれを見つけたんですが、2014年3月のものだと思います。
オードリー:ええ。
田中:これは台湾の「ひまわり学生運動」ですよね?
オードリー:そうです。ざっくりいうと、占拠された国会に私がいるときの写真ですね。
田中:えっ! 中にいたんですか!
オードリー:はい、しばらく中にいました。Twitterをチェックしていただければ、350メートルくらいのとても長いC85かC86ケーブルを、私が中に持ち込んだ全プロセスが見られます。国会にブロードバンドがなかったんですよ。ブロードバンドはもちろん人権ですから、みんなをサポートしなければならなかったんです(笑)。
田中:(笑)。
オードリー:なにはともあれ問題だったのは、国会を占拠した学生たちが有力なメディアに「暴動を起こすためにそこにいる」と描写されていたことです。でも、学生たちが国会を占拠する前から放送を支持していたことによって、これが非暴力であることを容易に理解してもらえました。警察もいませんでしたし、闘争もありませんでした。
占拠された国会の中をリアルタイムで外にいる人たちに見られるようにしたのは、学生たちが両岸サービス貿易協定(CSSTA)のさまざまな条項を熟考している中に、まるで実際にそこにいるかのようでした。
正当性を構築し、人々がパニックに陥らないようにするのはとても大切です。繰り返しますが、マスク供給問題の時と同様、参加型の説明責任が最も重要です。インターネット接続の設定を手伝った後は、もちろん外から安全にライブストリームを見ていました。
田中:なるほど。「ブロードバンド接続」を自分の行動の中心に置いたわけですね。
オードリー:まさにそうです、これがインターネットサービスプロバイダの、狂信的なコミットです(笑)。
田中:(笑)。さて、日本の人たちは「ひまわり学生運動」を知っているかもしれませんし、知らないかもしれません。ほんの少しだけ説明してもらえますか?
オードリー:もちろんです。当時の国会はブラックボックスでした。つまり、外部の人には、どうして日本との貿易協定に署名する時には審議を行うのに、両岸サービス貿易協定の時はそれを省略したのかさっぱり分からなかったんです。
すべての利害関係者によって、一行ごとに細かく審議が行われますが、その時点では「北京は台湾の都市である」と考えられていたのか、一行一行の審議をする必要はなく、(台湾は中国)国内として扱えるため政府の監督も省略したのでしょう。憲法的にはよく分かりませんが。
ですから「国会議員がストライキをしている」と人々は国会を占拠したんです。「私たちが彼らの仕事をするしかない」と。私たちが選んだ人たちが働くことを拒否していたので「彼らの仕事を、彼らのオフィスでやる」と。そう、国会で審議をするってことです。
およそ20のNGOが参加し、そのライブストリーミングのセッティングや諸々を手伝いました。すべて非暴力でです。50万人ほどが路上で。それ以上の人々がオンラインで約20ものNGOもラフコンセンサスを毎日とりました。
そして最後の3週間には4つの要求を固め、1つも欠かせないものですが、これらに院長は合意したんです。つまり、占拠は成功に終わりました。
具体例として、あるNGOのラフコンセンサスは「中華人民共和国(PRC)政府の部品を、当時建設していた4Gインフラに使用しない」というものでした。いわゆる「4Gクリーンパス」です。その時点では、それを行っているのは我々だけだと思っていましたが、現在より多くの管轄区域が5Gクリーンパスに参加するようになってうれしく思っています。
田中:これは実際には学生運動ですが、連携したNGOの運動でもあったということですね。鍵となったのは、当時政府はプロセスを明かさずに決定を行っていて、おそらくそれを隠そうとしていたのではないか? と思いますが、あなたたちが入って明らかにしたということですね。
オードリー:そうです。そして、街を行き交う人々が「何が審議されているかを正確に知っているか」を確認し、事実を明らかにすることで、噂よりも早く事実が広がるようにしています。
田中:実は、私はこの最中に台北にいて、YouTubeのライブストリーミングを見ていたんです。
たくさんの学生たちがガバメントエリアの外にいて、演奏をしているバンドもいくつか見かけました。サッとその周辺を歩き回ったんですが、すごく平和な運動で、秩序があって、とても安全に思ったんですよね。
オードリー:夜市があって、屋台も出ていて、講義をしている人たちもいましたね。学生は運動に行くために学校を休んでいて、彼らの教授たちもそこへ行くので、道端で教え始めるんです。
田中:はい、それから医療スタッフのようなボランティア団体も見かけました。
オードリー:彼らは通称「スリー・ニュートラルズ」と呼ばれていて、どちらを支持しているかに関係なく、人々をサポートするグループが3つあるんです。無償で人々の健康を守る医療従事者たちと、無償で人々の人権を守るリーガルワーカーたちもいます。それから私たちg0v(ゴブゼロ)は、人々が自由なコミュニケーションとブロードバンドをどこにいても楽しめているかを確認している人たちです。
田中:それから、小さなスケールではごみ袋のようなものを抱えた学生が本当にたくさんいて、ごみが落ちていないか確認していたのがものすごく驚きでした。
オードリー:それが「サーキュラー・エコノミー」です。非常に重要ですね。
田中:実際、今まで行ったロックコンサートやEDMの野外フェスよりもきれいで、塵ひとつなかったので本当にびっくりしました(笑)。
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