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組織コンディション:コロナで何が変わったのか、これから何をすべきか(全3記事)

中原淳教授、長期戦を覚悟して「いい職場」を作るべき コロナ禍で重要性を増す“組織の健康チェック”

コロナ禍によって、多くの組織で働き方の見直しが行われている中で、組織のコンディションにも変化が起こっています。そこで、パーソル総合研究所が、テレワークの実態と働き方に関する今後の展望や、コロナウイルス感染症によって組織のコンディションがどう変化したかについて調査を行いました。本記事では、データと対話を活用しながら課題を可視化し、職場を変えるためのノウハウについて紹介します。

組織の課題解決を進めるうえで特に大切な3つの要素

中原淳氏:全部話していると、大学院での14回の講義全部になってしまいますので(笑)、今日は特に大切だなと思われる、1番と4番と6番についてお話をしていきたいと思います。なぜこれが大事かというと、最初にみなさんも見ましたよね。

データそのものが現場を変えるわけではなく、データがメンバーに意味づけられたり話し合われたりして、みんながやる気になったときだけ現場は変わるので。今回は、そこに至るところをお話していきたいと思います。

(チャット内のコメントを読み上げて)「アクションプランを考えるのはマネジャーだけで、その場にそもそも社員が入っていません」。なるほど。それだときっとマネジャーだけで組織を変えなきゃならないと思うんだけれども、社員からすると「なぜこれをやるのかわからない」という話になっていくんじゃないですかね。

みなさん、今の現場で起こっていることをチャット内に書いてくださってありがとうございます。「ディスカッションは得意だけど、ダイアログは苦手な人も多い」「対話しようという意欲はあっても、語彙がついてこない人がいる」。「対話ってすごく難しいと思います」。「事前準備が大事」。みなさんが書かれていることは、本当にそのとおりだと思いますね。ちょっとそのあたりのところを、少し見ていきましょう。

組織調査は「ねぎらい」と「感謝」から始める

まず目的と説明。これは、僕は、この本の中で「ねぎらいと感謝から始めましょう」と言っているんですね。

サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】

組織開発のサーベイ、組織調査も、ねぎらいと感謝から始めることがすごく大事です。人によっては、「こんな成績表が出てきたけど、『1』をつけたのは誰だ」という感じで言ってしまう人もいるわけですよ。

あるいは組織調査がポンと出てきたのを、「どうするんだよ、これ?」みたいな。「3点を4点に変えるにはどうすればいいんだよ!」というふうにケンカを売っている人もけっこういるんですね(笑)。そうではなくて、まずはねぎらいと感謝から始める。「忙しいのに、今日は集まってくれてありがとうね」と、マネジャーやリーダーの方がしゃべる。「みなさんのがんばりで、職場にはこんな状況にあるんだけれども、今回のサーベイで、こんな結果が出てきている」。

「Why do?」「Why us?」「Why now?」を説明すべき

次が目的の説明。目的の説明というのは当たり前のことなんですよ。ただ、あえてやっぱり目的と打ち込まないとダメなんですよ。「今日サーベイの結果をみなで見るのは、職場のコミュニケーションや役割分担を円滑にして、職場の成果を高めるためです。忌憚のない話聞かせてくださいね」というようなことです。

私はよく学生に言っているのは、「Why do?」「Why us?」「Why now?」がすごく大事だという点。何をするにしても、なんでやるのか、なんで私たちなのか、なんで今なのか、この3つを外さず言うことがすごく大事だと思います。逆にいうと、組織調査をやったからって、「わかっているはずだろ」と投げていくようなスタンスはたぶん禁物なんですね。

オンラインで行うときにはおそらく、別途時間をとる必要があるんじゃないでしょうか。オンラインコミュニケーションの場合は、例えば何かの会議をしているときは、すごく目的志向的になりやすい。だから、雑談や対話はなかなか失われやすいですし、おそらく普段のオペレーション業務はゴンゴンこなせていても、チームビルディングのためにあえて時間をとることはない。そんな感じになっていると思うんです。

それは30分なのか40分なのかわからないけれども、フィードバックの時間は、やっぱりどこかで必要なんじゃないでしょうか。(チャット内のコメントを読み上げて)「結果を見て一番恐れるのはマネジャーです。意外に部下も上司にねぎらいが必要」。なるほど。上司にねぎらいも必要なのかもしれませんね。マネジャー大変ですからね。ありがとうございます。

最初のキックオフでコケるとすべてがコケる

次にいきます。目的を説明して、スケジュールを説明して、各人へのメリットも説明していきます。ここで書いてあることを全部は読みません。何が大事かというと、話し合いは最初のキックオフが一番大事なんですよね。ここでコケると、すべてがコケてしまいます。

最初、調査結果を返すときは、相手に同じ船に乗ってもらうようなイメージで、ねぎらいと感謝から始めていきましょうと、まぁ当たり前のことを言っているわけです。でも、この当たり前のことを、現場のマネジャーは必ずしも知らないと思うんですよ。それをしっかり伝えていただくことがすごく大事なのかなと思います。

(チャット内のコメントを読み上げて)「Whyが大事ですよね」と、ありがとうございます。「まず正直になることですね」。誠実であることはリーダーの一番の条件なのかなと思います。

次に「オール(OARR)を握る」と言いますけれども、丁寧な目的説明で、何を目指せばいいのか、どんなスケジュールで進んでいくのか、どんな期待があるのか、そしてルールはどうなのか、そんなことをみなと握っていくわけです。サーベイ結果を返すときは、とにかく最初が大事です。

組織調査に当たるマネジャーに求められるもの

では、サーベイ結果を返していきます。3番のところで返していきます。これについて大事なことは、データに対して、各人が日頃から思っていたことをいかに出してもらうかだと思うんです。

(チャット内のコメント)「部門のトップの方が、まず意見を聞きたいという姿勢を示すのも大事だと思います」。そういうことですよね。「このファシリテーションができるようにマネジャーをトレーニングするのが大事」。そうなんですよ。これが本当に1丁目1番地ですよ。

サーベイ・フィードバックや組織開発がうまくいくかは、それに携わるマネジャーの人々にいかに武器を渡すかです。それで、メンバーの方にはデータに対する解釈をこれから述べていただくんですけど、これはマネジャーに「型」を渡してしまえばいいと思うんですよね。「データが〇〇のように見えるように感じます」「こんなことを感じます」と、率直な感情を語るなど。

そして職場の中で、例えば最近「ギクシャクしているな」と思っていても、なかなか口に出して言えないことがあるかもしれません。しかも、視点が異なれば人によってぜんぜん違うものを見ていることも。

思いっきり余談になりますけど、いろいろな会社に組織開発のご支援に入らせていただいて、例えば40代・50代の方が「いやぁ、うちの会社ってすごく働きやすいんですよね」と言っている。30代・20代はどう思っているかというと、それとはぜんぜん逆のことを思っていたりするんですよ。

1つのデータをそれぞれの視点から語ることによって、「えぇ!!お前そんなこと考えてたんだ」というふうに思ってしまうところがあると思います。いずれにしても、率直な反応を出していきながら、解釈を出していきます。

率直に意見を出し合うための手法

こういったことはやっぱりやりにくいところもあります。私はたまに、「これはムリかな」と思うときは、付箋紙に最初から書いてきてもらう。それを一斉に出してもらいます。そして「同じところ、同じようなことを言っているものが、たぶんたくさんあると思うので」と言って安心させて、「みなでグルーピングしてみましょうよ」と言うときもあります。

シンキングタイムを使って、まず紙に意見を書いてもらって、それを一斉に出してグルーピングしていくと、たいがい自分だけが思っているものばかりではないという点がわかります。たいがいの人は同じようなことを感じているので、グルーピングすることで、このワークのハードルを少し下げることもできるのかなと思います。(チャット内のコメントを読み上げて)「現場のファシリテートに入ったとき、まったく同じ経験がある」。そうですよね、けっこうよく起きますね。そういうことです。

最近だと、このオンライン環境でサーベイ・フィードバックをやらなきゃならないときは、なんのツールを使ってもいいんですよ。僕はGoogleから1円ももらってないので、何を使ってもいいんですけれども。この間、オンラインの付箋紙ツール「Jamboard」というものを使ったんだけど、そういう無料ツールを使って、バーンと出してみようと言って、今の職場の課題などを話し合ったこともありました。

付箋紙を使うのか口頭で言うのかは、別に大事なことじゃない。(チャット内のコメントを見て)「miro」もいいツールだと思いますね、オンラインの付箋紙ツールですよね。いずれにしても大事なことは、「人は、必ず自分の見ているものしか見ない」ということだと思うんですよ。要はお互い相手が何を見ているのか、相手がどんな課題観を持っているのか、何を課題だと感じているかは、必ずしもわかっているわけじゃない。

他人と自分の「ズレ」を見える化するには?

みなさん、右の写真は何に見えますかね? チャットに書いてみてください。うん、「おばあさん」ね。おばあさんが見えている人もいれば、「若い女性」が見えている人もいる。これは有名なゲシュタルト心理学というところでよく使われる図なんですけれども、大事なことは、片方が見えると片方が見えないということなんです。両方が見えている人もいるみたいなんですけど、なかなか両方を同時に見ることは難しいんです(笑)。

こちらの絵はルビンの壺というもので、顔が見える人と、たぶん壺が見える人がいる。これはなかなか、同時にというのは難しい。人間はあるものを見たときに、そこで見えたものしか見ない。固定化して見えなくなる。他のものは見えなくなってしまうんですね。そういったものは世の中にたくさんあるので、なるべく他者の見え方を出してもらう。そこで他人と自分のズレに気づいていくということです。

それで、最終的にはシンプルなんですよ。要は「実は〇〇だよね」「実はこう思ってたんだよね」というものがなるべく出ればいい。たいがい、職場の課題や組織の課題はみんなが薄々感じているんです。「なんか最近ギスギスしてるな」と。その手のことはみんなが感じている。「実は前からこんなこと感じてました」というものがなるべく出るようにすると、いい感じなんじゃないかなと思います。

そこまで出てしまえば、あとはアクションプランです。アクションプランというのを、私の言葉で言えば「翌週月曜日からできること」。翌週月曜日からやることを決めていけばいい。

最後はねぎらいで終わることが大事なんじゃないでしょうか。ステップとして、あんまり難しいことをアクションプランに掲げてもすぐにはできないので、最初はベビーステップと言いますが、小さい課題かもしれないけれども、必ず効果が出るようなことから始めていければいいのかなと思うわけです。

自分たちで職場の健康チェックをしながら未来を作る

ざっとフィードバック・ミーティングのことを話しましたけれども、どうでしょう。私が言いたいのは、サーベイで「見える化」することも大事だけれども、こうしたミーティングの機会を30分でも1時間でも持って、自分たちの職場の健康チェックを自分たちで行い、自分たちの職場の未来は自分たちで作ってほしいということです。

そして、マネジャーやリーダーであるならば、そういうミーティングをオーガナイズしたり動かせたりする人になってほしいなと。それがたぶん、職場成果を高めるために、あるいは離職やメンタルの問題を減らす上で、ものすごく大事になってくるんじゃないかなと思います。

くどいようですが、私はコロナ前から大事だと言っていました。だけど、おそらくコロナになった今、なおさら、この問題が大事になっていくのかなと思います。

さて、駆け足になりましたが、こんな感じです。まとめに入ります。まだらテレワーク期は、個人が揺さぶられる不安や不満など、いろいろな感情が生まれてきます。組織も揺さぶられます。コミュニケーション不全や、あるいは求心力の低下などの問題が起こります。

(チャット内のコメントを読み上げて)「サーベイの実施は短期間のパルスサーベイがいいんでしょうか」。パルスでも別にかまわないと思います。パルスでもどんなツールでもいいんですけれども、相手に対してフィードバックを行い、必ず対話を行うこと。

パルスサーベイは使ってもぜんぜんかまわないと思いますが、ともすれば、けっこう「取っているだけ」になりやすい。マンネリ化。けっこう高頻度で取られるじゃないですか。だから、その頻度も適切なものが大事だと思いますし、何で「見える化」するかよりも、いかに返すかに気を配ってやっていただければいいと。

今日の話は、組織の中でいろいろと生まれるまだらや、そうしたものをサーベイとして「見える化」していきながら対話を行い、長期戦を覚悟していい職場を作っていくことが、結果として組織や職場にいい活力を生むのではないかな、ということでした。

私に与えられた時間はもうそろそろ終わりなので、最後に少しだけ宣伝して終わります(笑)。「人づくり・組織づくりの大学院」が始まっています。金曜日・土曜日の完全オンラインで修士(経営学)取得。社会人大学院で、今年20名ぐらいの方が学んでいます。

今日はOD(組織開発)の観点から、ODの知識みたいなことを、本当に凝縮オブ凝縮オブ凝縮オブ凝縮、ぐらいで話しました。もし、みなさんの中にそういうところにご興味がある方がいらっしゃったらぜひ。「プロフェッショナルになってみよう!」と思う方がいたら、学んでください。ODとHRDの知識について学び、プロフェッショナルになるような人材開発をしています。

今日は短い間でしたけれども、本当にありがとうございました。いかがでしたでしょうか。また質疑でご意見お聞かせください、よろしくお願いします。ありがとうございました。

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