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組織コンディション:コロナで何が変わったのか、これから何をすべきか(全3記事)

コロナ禍で進む、職場の「ブラックボックス化」 中原淳教授が説く、失敗しない組織調査のコツ

コロナ禍によって、多くの組織で働き方の見直しが行われている中で、組織のコンディションにも変化が起こっています。そこで、パーソル総合研究所が、テレワークの実態と働き方に関する今後の展望や、コロナウイルス感染症によって組織のコンディションがどう変化したかについて調査を行いました。本記事では、立教大学 中原淳教授が組織の課題を見える化する手法「サーベイ・フィードバック」について解説します。

「元に戻ってくれ派」と「元に戻るな派」の分断

中原淳氏:そういうわけで、私が言いたいのは、この『星の王子さま』のセリフなんですよ。サン・テグジュペリの『星の王子様』の中にけっこう有名なセリフがたくさんあるんですけど、私が好きなセリフがこれです。「大切なものは目に見えないんだ」という言葉。

おそらく今の時期は、組織の中の大切なもの、あるいは個人間に生まれるような葛藤とか矛盾、そうしたまだらが見えなくなっている。どんどん見えなくなっている。組織的にはそれを顕在化していく、まだらを顕在化して「見える化」して、対処しなきゃならない。これに対して作戦会議をしなきゃならない状況が今生まれているのかなと思うんですね。

こういうふうに言うと、こういうオッサンが大体出てくるに決まっているんですね。「お前もオッサンだろ」と言われるかもしれませんが(笑)。希望的観測を常に持ち続けるドリーマーなオッサンがいるわけですよ。「なんとかなるべ!」「もうコロナなんて終わったんだ」「経済復活! 我が社も元通り!」みたいな。

昔「もったいないおばけ」ってありましたけど、そんなようなものがね(笑)。実際、職場には「元に戻せおばけ」というのがいて、「元に戻るべ~」と言ってるんですね。

もう一度言いますが、大切なものは今どんどん見えなくなっている。そして私は、これはもうほとんど個人の感想ですけれども、2021年か2022年ぐらいまで、おそらくこの問題は世界規模での長期戦を余儀なくされるんじゃないかなと思います。

(チャット内のコメントを見て)「もうすでに妖怪が出ています」「もう大丈夫でしょ妖怪」とか、みなさんの会社は妖怪ばかり飼ってるんですかね(笑)。いろいろなおばけが出ているようなんですけれども(笑)。あとは「Face to Faceへの絶対信仰をなんとかしてほしい」という方もいらっしゃいますね。

「まだコロナ怖いの?」という態度を取られる方もいる!? それはかなりヤバいですね、みなさんの会社はどういう状態になってるんでしょうか。本当に「元に戻ってくれ派」と「元に戻るな派」の分断が生まれているのかなと思うんですが。

野球に例えると「2回裏のウイルス側の攻撃」

私が言いたいのはこういうことです。今回の戦いは最低、年単位で続くだろうと。「短距離走ではなく長距離走」と山中伸弥先生がおっしゃっています。この間、西浦博先生が「野球に例えれば、今は2回裏のウイルス側の攻撃ですよ」と新聞でおっしゃっていました。僕は腰が抜けましたね。「2回裏なのか……(苦笑)」と。戦いとしてはかなり長いな、という印象を持っています。

ですので、大切なものが目に見えない状態を常にほうっておくと、恐らくかなりしんどくなるのではないか。結局、働く個人や職場、あとは職場間の関係で視界不良になっているものを「見える化」する努力が必要なんじゃないかなと思うわけです。

そこで今日の本題なんですけれども、これはコロナの前からずっと言っていたことなんです。サーベイ、組織調査というものをうまく使いながら、それを使って「見える化」して、職場の課題解決を行っていこうと。組織を「見える化」していきながら課題解決を行っていこうと。もちろんコロナ前もそうだったんですけど、コロナ以降はさらにそういうことをやっていかないと、おそらくどんどん見えなくなっていくよ、という話です。

サーベイ・フィードバック。サーベイで組織を「見える化」して、その知見をしっかり現場に返していきながら、現場の課題解決をしていこう、ということになります。

組織の課題を可視化する「サーベイ・フィードバック」

さて、このサーベイ・フィードバックなんですけれども、「サーベイ・フィードバックって何?」という話ですよね。繰り返しになりますが、surveyはもともと「見渡す」という意味です。みなさんの会社でもES調査や、従業員満足度調査をやっていると思います。そのサーベイを通じて、職場に、あるいは組織に何が起こっているのかを「見える化」する。これが1番のステップです。

2番はそれを現場の人にしっかり返していく。それによって、組織の課題解決ができたり、メンバー間の関係を良好にしたり、コミュニケーションを円滑にできたり、創造性を高めることができると。今日はそんなに話しませんけれども、これは分野的には組織開発、ODというところの知見です。

要するに、組織の課題を「見える化」していきながら、現場の課題解決をしていくということです。もともと(サーベイ・フィードバックの)歴史は古いんですけど、やっぱりこの時期にはすごく大事だと思っています。

先ほどから言っていますとおり、リモートワークで相手が見えないんですよ。あとは今、組織では勝手に分断が生まれ、まだらテレワーク病が進行しているわけですね。今は本当にそういう状況が生まれていて、とくにこのコロナ禍だから大事なのではないでしょうか。

データだけでは組織は変わらない

ただ、大事なことはもう1つあります。この組織調査はやって終わり、やりっぱなしというものが多くないですか。これは大学の中でもたくさんの調査があるんですが、自戒を込めて申し上げます。「組織調査をしただけでなんか終わっちゃった感満載なんだけど……」、あるいは「組織調査をやったから、組織は変わったはずだよね。ハハハ……」というものが、けっこう多くないでしょうか。

勘のいいみなさんならもうおわかりであるように、組織調査をしただけでは組織は変わらない。データだけでは組織は変わらないということなんですね。私は、組織調査の結果は直接現場を変えることはないんだと思います。現場を変えることはない。むしろ組織調査の結果が出て、それによって現場の人がやる気になったときのみ、おそらく現場の変革を導く。

だから、「見える化」することも大事なんですけれども、それがフィードバックされなければならないんですね。(チャット内のコメントを読み上げて)「コロナ以上にサーベイを怖がっているマネージャーの意識変革が必要」。そのとおりですよね。怖いですよね、とみんなが思っているんですよね(笑)。なんだか自分が批判されるんじゃないかとか、自分の評価につながっちゃうんじゃないかという不安があるのかもしれません。

(チャット内のコメントを読み上げて)「やりっぱなし。やることが目的になっていて、組織調査のあとはなにもしてない」。「サーベイしただけじゃ1ミリも変わらない。やることが目的になってしまうと元も子もない」。本当にそうなんです。

みなさんもたぶん頭の中ではわかっているし、僕もそうだと思うけれども、実際に組織の中でいろいろ行われている調査が、どれだけ組織で活かされているのという話になってくると、参加者さんがおっしゃるように「怖いからオープンにしないで、マネージャーの中で共有される」とか。あるいはマネージャーの机の中の肥やしにされちゃったりしてね。そのフィードバックの結果は、30年ぐらい誰も見ないということがけっこう起こる。

対話なきサーベイ・フィードバックはやるだけムダ

でも、これは50年も前から「対話のないサーベイ・フィードバックは効果が薄々だよ」と、いや、薄々とは言っていない。デービッド・G・バウアーという人の有名な研究で、薄々とまでは言わないまでも「効果は少ないよ」とは言われているんですね。

こちらに「Data Handback」と書いてありますけれども、「対話なし」のサーベイ・フィードバックの効果を示しています。こちらが「対話あり」のサーベイ・フィードバックの効果で、組織変化とか管理者の変化とか同僚の関係がどう変わるのか、職場はどう変わるのかを示している。

細かい点は見なくていいんですが、「対話あり」の数字のほうが割と大きいというのがわかりますかね。対話のないサーベイ・フィードバックは、たぶんやるだけ時間のムダなのかなと思うわけです。だからこそ、いかに現場にフィードバックしていくか。そして、対話が大事だということになるのかなと思います。

自分たちの職場の未来は自分たちで決める

ここまでをまとめると、たぶんみなさんがやられている組織調査の中には「見える化」に使われているもの、使われていないものがあるでしょう。「フィードバックは「見せる化」が大事」だということで、現場にとってメリットがあることはわかっていても、「見える化」に使われていないものもありますよね。

あと「ストレスチェックが形骸化している」というご意見もあります。(チャット内のコメントを読み上げて)「ストレスチェックは見る側の教育が必要ですね」。確かにおっしゃるとおりですね。

「見える化」はサーベイでけっこう行われているのだけれども、「対話やフィードバックは本当に行われてるんかいな?」というふうになっていくと、その調査の意義は微妙というのがたいがいのパターンではないでしょうか。そしてくどいようですが、50年前からその効果は、対話ありのほうが高いとわかっているんです。

というわけで、コロナ禍において、対応は難しいのはわかっているんだけれども、やっぱりこの問題を放置しておくと、おそらくいろいろな不具合が組織の中に生まれてくるのではないかと思うわけです。そういう意味で、サーベイのフィードバックをきちんとやらなきゃならないんじゃないでしょうか、というのが私の主張です。だから、やっぱり、組織の「見える化」と、対話をサーベイ・フィードバックによって実現していかなきゃならないんじゃないかなと思います。

そして、サーベイ・フィードバックについて、「逆U字」を描きます。こちらは「シャバワールド」、こちらは「物事を俯瞰的に見るモード」。これを別の言葉で言うと、リフレクションすることですね。チームでリフレクションすること。

「職場やチームで今何が起こってるのかな」と。シャバではいろいろなことが起こっています。それをサーベイというものを使っていきながら数字化し、要約していく。その結果を解釈することで、なんとか話し合いながら「それでどうするの?」というふうに、自分たちの職場の未来を自分たちで決めると。

自分たちの職場の未来は自分たちで決めること、これがサーベイ・フィードバックの眼目なんだと思います。それは1回、シャバワールドで起こったことを考えてみて、上に立って考えてみて、もう1回具体的な行動として落としていくことです。こういう逆U字がサーベイ・フィードバックということだと思うんです。

失敗しないサーベイ・フィードバックの進め方

みなさん「そんなことはわかっている」とおっしゃると思うんですが、ここからは「じゃあ具体的にどうやっていけばいいの」という話を少しだけしていきましょう。

どんなふうに話せばいいのか。まず目的を設定すること、フィードバック・ミーティングですね。サーベイでいろいろわかってきたことは、先ほども言いましたように、マネジャーだけが知っていてもダメなんです。

マネジャーも知っていていいんですけれども、それ以上に何をやっていくのかをみんなで話し合って決める、アイデアを出していく。それで、職場のメンバーの人たちに、自分たちの船に、同じ船に乗ってもらわなきゃダメだと思うんです。

そういう意味でいうと、私は『サーベイ・フィードバック入門』という本で、「ミーティングはこんなプロセスではどうでしょうか」ということを書いているんです。

サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】

まず目的を説明すること、グラウンドルールを提示すること、データを提示すること、データに対する解釈を行うこと、未来に向けた話し合いをすること。そして、アクションプランづくりをすること。こんな感じです。

細かいことはここに書いてありますけれども、まずミーティングをするときは、きちんと目標を握りましょうね、と。最初にルールを決めましょうね。先ほどもどなたかが「心理的安全のないところでは、そんな対話できないよ」とチャット内にコメントされていましたが、本当におっしゃるとおりで、その心理的安全を実現するために、グラウンドルールを提示すること。

そしてデータを見ていただいて、それに対する解釈を述べ、話し合って、最後は自分たちでできることを自分たちで決めるということです。

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