2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小林祐児氏:では2つ目の論点ですね。もう少し的を絞って、まさに脱オフィス、テレワークに移っていきたいと思います。我々はコロナウイルスに対してテレワークの影響を3つに分けて調査してまいりました。
そのデータもお見せしつつですけれども、テレワーク実施率ですね。3ヶ月推移を追いました。3月から4月、そして5月の末ですけれども。3月上旬はまだテレワーク実施者は13パーセント程度でした。それがわずか1ヶ月で2.1倍まですごい速度で増加しました。
それがさらに一旦感染者が落ち着き、全国で緊急事態宣言が解除となった5月末から6月頭にかけて、すでに実施率はマイナス2.2ポイント。もうすでにこのタイミングで落ち始めている。おそらく今ではもう少し落ちているかなと思います。日別に見ても5月29日最後の平日から6月にかけて、7.5ポイントと非常に大きな下落が見られました。
さらにテレワークの企業方針としても非常に問題だなと思いますけれども、「テレワークが推奨されている」「命じられている」、このあたりの数字も5月末にはすでに下がってきたんですが、問題は「とくに案内がない」の多さです。テレワークについて、とくに組織としての方針や企業としての方針みたいなものが示されてないですよ、というのが6割弱ですね。57パーセントにのぼる。
つまり6月、そして7月まで日本で起きていたのは一言で言うと「ノーポリシーのなし崩し出社」だと言うことです。現場判断によりとか、適宜、事業部ごとに、ある種耳障りのいい言葉ですけれども、つまり「会社として何パーセントを目指しますよ」ですとか、「会社として原則テレワークでいきますよ」といった宣言をした企業は一部で、過半数以上がノーポリシーでなし崩し的に出社が増えていた。
なので、若年層はけっこうテレワーク希望が高かったんですけれども、やっぱり全員出社の同調圧力がかかった。不要な出社が増え始めたというのが現状だったかなと思います。
テレワークというのは、過去にはこういうふうに上がったり下がったりを繰り返してきた歴史があります。2008年に神戸で流行った新型インフルエンザ、そして東日本震災、IT国家創造宣言、このあたりが叫ばれると同時に一旦上がるんですが、やはり下がった。
一方で、ポリシーとしてきちんと示した企業は続々出てきてはいるわけですね。原則テレワーク継続、限定的出社緩和、オフィスの撤廃、こうした企業群はきちんとポリシーメイキングされて、それを内外にアピールされている。
そして東京にいると、やはり東京中心のニュースばかりを浴びることになってしまいますけれども、テレワークに関しては都道府県別の偏りが非常に高いです。ちょっと細かい数字ですけれども、6月はじめの段階で東京都はまだ48パーセントの実施率ですが、例えば宮城、鳥取なんかは5パーセント前後。九州のほうも低い傾向です。
こういった感覚のずれというのは、とくに全国で事業をされている企業の方などはやはり頭の片隅には置かないといけない。また、職種別にも二極化傾向が進んでまいりました。
まとめると、テレワークというのは業種、職種によって二極化、そして全体としてはなし崩しの出社というのが全体としては増えていた。ただ、まさにこの1週間ですね。感染者数としては第2波と呼べるくらいの感染者数の増大。1時間ほど前に東京は本日168人というニュースが出ましたけれども。
みんなテレワークから出社へのバックラッシュが起こってきたところにさらにバックラッシュみたいなことが起きている(笑)。非常に揺れ動く慌ただしい現状かなと思っております。
コロナ禍が我々におそらく長く与え続ける課題、それが「まだらテレワーク」だなと考えております。わざわざなんでまだらテレワークと呼んでいるのかと言うと、3月から4月、5月と我々が非常事態宣言の中で過ごしてきたある種特殊な状況、一斉在宅期というものが終わりを告げたことですね。
ほとんどの人がステイホームで、どうしても出なきゃいけない人だけが出社していた。まだらテレワークはそうではありません。一部は出社し、一部はテレワークをし続ける。テレワークをしている人と出社している人が混じり合うチームのマネジメント。これはある種、一斉在宅期よりも難しいマネジメントを我々組織に投げかけてくるわけです。
例えばWeb会議ひとつを取っても、一斉在宅期はこういうふうに画面に並列に皆が並ぶわけですけれども。まだらテレワーク期ではリアルで会議室に数人が集まっていて、数人が遠隔で参加するということになります。
すでにそうした状況が起こっていますけれども、こうなってきたときにやはりテレワークしている人の情報量やコミュニケーション量は減っちゃいますよね。
それはテレワークという客観的な状況が生み出すものではなくて、社会学で「相対剥奪」と言いますけれども、一部が出社して一部がテレワークしているという相対的なポジショニングの変化によって、テレワークしている人の評価不安や孤独感が以前よりも増大する。こういったことがデータからも出てきているわけです。
相対剥奪というのは「自分が〇〇を持っていないけど、ほかの人は持っている。自分もほしいな」という相対的なポジションから発生する剥奪感です。今回で言えば、「遠隔勤務の自分は情報や一体感や雑談が得られてないなと。でも、出社している側はどうやらみんなで楽しそうにやってるな」。
「けっこう出社者が増えてきたな。私はまだ子どもの世話があるんだけど。テレワークし続けなきゃいけないんだけど。自分も得たいな」。これが相対的な剥奪感を生む。単純なテレワークがただただ継続していること以上の意味を持つということです。
こちらは、職場のテレワーカー比率とテレワークしている人の不安感をグラフ化したものです。数字的にも、職場にテレワーカーがすごく少ないとき、1割程度くらいのときはあまり不安感は高くないです。
コロナの前のテレワーカーの方々が1割くらいだったかなと思いますが、そのときはある種自分は特別なので、ごく一部側に回ったときに期待値自体が低い。そもそもみんなと同率に評価されるべきだという期待値自体がおそらく低いのかなと思います。
逆に6割以上、過半数を超えるようなテレワーカーが生まれているときもやはり不安感は少ない。これはテレワークがもはや「普通」だからですね。みんながしてることだからそんなに不安はなく、相対的な剥奪感は生まれない。
ちょうど一番高くなっているのが2~3割程度がテレワークをしています。我々の今の全般的な状況に近いかなと思いますが、そのときに不安感と孤独感が最も高くなっている。
実際に4月から5月末にかけて、テレワーク勤務時の不安についてアンケートを取りました。そうするとおもしろかったのは、非対面のやりとりで相手の気持ちがわかりにくくて不安とか、仕事に関する不安は下がってきていたんです。
逆に上がったのが評価やキャリアに対する不安。自分はこのままテレワークを続けて、出社し始めた人も出た中でちゃんと評価されるだろうか。ちゃんと今後もこの会社で組織的に評価してくれるだろうか。そういった不安が増加したということですね。
もともと日本の働き方の特徴として、職務範囲や責任範囲が非常にあいまいで、雇用契約で明確に決まっていない。多能工的なホワイトカラーと言ったりしますけれども、いろんなことができる人をある種フレキシブルに業務範囲を調整しながら業務を行う。
なので、同じ時空間の共有というものがやはりフレキシブルな調整のために必要だった。そこではインフォーマルなコミュニケーションによって雑談とか、例えば廊下ですれ違ったときの社内の様子のようなものをうかがうことが、業務上で非常に都合がよかったわけですけれども。やはりそのときに暗黙知ベースになるし、調整ベースになるし、同じ時空間を共有している安心ベースの働き方だった。
成員同士の相互依存性が高くなりますし、ある種フレキシブルに業務を回す組織ではあり、見知った仲間による擬似共同体的な性格を持っている。それが我々は、その働き方自体を変えることなく、いきなりテレワーク時代に突入してしまった。
なので、みなさんが3月からずっと感じていらっしゃると思いますけれども、暗黙知、いわゆるOJTや背中を見せて育てる型の人材開発が難しいなとか、新人さんに教えにくいとか。あとはジョブアサインのフレキシビリティが失われてしまいますので、やっぱり調整が硬直化してしまう。そして安心、同じ時空間を共有するという安心が崩壊してしまう。
それはすべて、組織コンディションの悪化として実際に現れてきています。中原先生のほうでも数字を見せながら説明いただきますけれども、組織の一体感が低くなったものが36パーセント。意欲・やる気は32パーセントが低くなった。全体をしてみれば、やはり負の影響を組織に与え続けている。
もともとテレワークが向く組織はどういうことが言われていたかと言うと、やはり形式知ベース。ルール、やり方が明文化されていて形式知化されている。そして計画的に物事が進む。計画的と言うのはある種硬直的とも言えますけれども、計画に則って誰が何をやる、いつまでに何をやるということが進む。あとは信頼ベースですね。同じ時空間にいることによる安心ベースではなくて、信頼ベースで物事が進む。こういう組織がテレワークがそもそも向く組織。
私のほうはそろそろ終わりにしたいと思いますけれども、今までの私の話で言いたかったことはですね。まず1つ、おそらく我々はAfterコロナ、Beforeコロナという現実をこう認識すべきではない。「ガラッと社会が変わってこういうふうになりますよ!」というある種の煽り言説ですが、我々はそういったものに煽られず、冷静に現実を見なきゃいけない。「Old NormalからNew Normalに移行する」という話だと、だいぶいろんなことが抜け落ちるなと思います。
何がNewで何がOldではなく、それらが入り混じる形になりました。何かを新しくしようというときにOld Normalが常に抵抗する。
つまり、注視すべきはOldとNewの「間」の領域です。このまだらの中間領域こそが、我々が今からしっかりと把握しなきゃいけない領域なのかなと思いますし。実際に起こってくる組織課題も、多くがここにあるのだろうと感じております。まだらテレワークにおける相対剥奪の不安なども、完全にこの領域の課題です。
OldとNewがあいまいに入り混じるおぼろげなNew Normalという世界に対して、我々が組織をどうしていくのか。そういったことを最初の前口上として提出させていただいて、次は中原先生にバトンをお渡ししたいと思います。私からは以上になります。ご清聴ありがとうございました。
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