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「宇宙兄弟」から学ぶ−強みを活かし、自分に合う働き方を見つける方法−(全4記事)

『宇宙兄弟』×ストレス理論で読み解く、リモートワークが合わない人の特徴

すべての人には強みがあり、自分らしさを仕事や人間関係に活かしていくことが、その人らしいライフキャリアを歩む道につながります。本記事では、「自分らしさ」を知り活かすためのヒントとして、『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』著者の古野俊幸氏と、株式会社MYコンパス代表の岩橋ひかり氏による対談の模様をお届けします。本パートでは、ストレス理論をベースにした「FFS(Five Factors&Stress)理論」について紹介しました。

リモートワークがストレスになりやすい人の特徴

岩橋ひかり氏(以下、岩橋):それでは、今日のゲストの古野さんです。

古野俊幸氏(以下、古野):どうも初めまして、古野です。よろしくお願いします。ヒューマンロジックの代表をしています。この本(『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』)の著者です。FFSというのはFive Factors&Stressということで、ストレス理論をベースにした理論です。

(注:ストレスと性格の研究において開発された理論で、人が恣意的、無意識的に考え、行動するパターンを5因子で計量し、ストレス値においてポジティブな反応か、ネガティブな反応かを分析することで、その人が保有している潜在的な強みが客観的に分かるとする)。

宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み【自己診断ID付き】

今、コロナ禍でリモートワークをしていて、非常にストレスを溜めてる人がいますね。実際データも出てきているし、いろんな企業から相談も受けてるんですけれども。なぜかというと、日本人の平均であったり最頻値で言うと、「受容性」の因子が高い人と「保全性」の因子が高い人が一番多いのです。

受容性の因子は「誰かの役に立っておきたい」という因子ですから、一人でぽつんと、仕事の関係者となかなか会えないとなったときに、自分の貢献とか役割度が具体的にわからないということは、すごくストレッサー(ストレスを引き起こす外部からの刺激)になります。これが1つ。

それから次に、保全性でしょう。保全性も「先行きが見えない」という不安はストレッサーになるんですね。だから「いつ終わるの、このリモートワークは」とか「アフターコロナとしてどうするの」ということが具体的に見えてくると、自分なりに計画が立てられるんですけれども。先が見えない、計画ができないと、ますます不安になっていく。

この保全性は情動性で、気質に由来しているんですけども、コミュニケーションで言うと、わりとノンバーバル(非言語)コミュニケーション。気配とか、周りの相手の表情・仕草を読み取る力が強い。そうすると、やっぱりリモートってなかなか、それができないでしょう。

岩橋:そうですね。

古野:言葉で伝えていくしかない。そうすると、なんとなく会議をしている相手の表情が読めないということは、「今言っていいんだろうか、言っちゃダメなんだろうか」とついつい逡巡をする。そうすると、結果的に言いたいことが言えずに、ますます距離を感じてしまう。それで実は、非常にストレスが高くなるわけです。そういうことも今日、ご理解していただければいいかなと思っています。

大人気マンガ『宇宙兄弟』×ストレス理論の本

岩橋:はい。では今日はそんなテーマでお話をしていきたいと思います。今回は出版記念のセミナーで、今もめちゃくちゃ売れていて、もう印刷が……?

古野:4刷りまできました。

岩橋:すごいですね。発売してすぐそんな状況で、すでに売れてますけど。それをもっともっとたくさんの方に知っていただくために、今回、私たちは「拡散応援団」で。(性質が)拡散性な私たちで、SNS拡散をしていきたいと思いますので……くだらない感じになりましたが(笑)。

今、もしよければ、Twitterができる方は「#宇宙兄弟FFS本」というすでに使われているハッシュタグがありますので、そちらで発信・拡散していただけたらと思います。

「Twitterやってないよ」という方は、このセミナーで学んだことや本のことを、ぜひご自身のブログやFacebookなどに書いてもらったり。お友達や知人に紹介していただけると、うれしいなと思いますので。そんな記者会見みたいな感じで見ていただくといいですね(笑)。

古野:記者会見ね、わかりました(笑)。

岩橋:みなさんに取材をしていただく感じで。今日は190人の取材陣にご参加いただいていますので。

古野:なるほど。じゃあがんばって滑舌よくしゃべります(笑)。

岩橋:ですね、滑舌よく、わかりやすく話していきたいなと思います。昼休みなので楽しく、カジュアルにいきたいなと思ってます。

FFS理論では、性差よりも個人差が大きく影響

岩橋:まず最初は、「自分に合う働き方のカギは、自分の強み」というあたりを話していきたいですね。

古野:そうですね。今日の参加者は女性が多いということなんですが、実はFFS(Five Factors&Stress)のデータを見ていくと、男性・女性という性差はほとんどないんですよ。

岩橋:あっ、そうなんですね。

古野:個人差のほうが大きいんですね。ですから例えば、言葉で言うと「男のおばさん」みたいな人もいれば「女のおじさん」みたいな人もいますよね、と。

岩橋:いますね。

古野:いるでしょ。以前一緒に対談をした本田君という後輩がいるんですけれども、彼は受容性と拡散なんですよ。だから、男なんだけどおばさんみたいで、関西弁で言うと「めっちゃ世話焼きやね」みたいな。

彼は「日本中を長屋にしたい」と言って、昔ながらの長屋でみんなが子どもを育てていくようなことをしたいというのが、まさにおばちゃんみたいでしょ。そういうことを考えていくと、男性や女性という性差よりも、その人個人をちゃんと見たほうがいい。

岩橋:なるほど。

古野:彼は結局、岩橋さんと同じような仕事で、キャリアコンサルタントをしてますね。

年齢や性差にとらわれず、個性を活かした働き方を広めていく

岩橋:へぇー、なるほど。じゃあ一般的に「男性と女性の違い」とか「女性は一般的にこうだよね」とよく言われているものは違うんですか?

古野:FFS理論はあくまで(凝縮性・受容性・弁別性・拡散性・保全性の)5つ。いわゆる脳の基底核、大脳辺縁系、新皮質の中で、どの脳を一番使っていますか、というのがFive Factorsなんです。男性・女性による違いはないよというのが主張です。

実はこのFFSを広めるために26年前に会社を作ったんですね。そのときの会社の社長は、同級生の女性なんです。新しい組織や最適なチームを広めていくために、このFFSを広げる会社を作ろうということで、ヒューマンロジックの会社を作ったときに、誰が社長がいいかなと。

もちろん一番資本を入れたんですけども、やっぱり「女性が社長なのがいいよ」となりました。それで、当時一番年配だった人に副社長になってもらって。でも、この人は実は60歳まで働いたことがないという慶応ボーイなわけですよ。

岩橋:そういう方もいらっしゃるんですね。

古野:それで僕は3番目で。全員役員ですけど、僕は営業を担当しましょうと。そうすると、3人でいろんなお客さんの所に訪問すると、相手は最初にそのおじちゃんに名刺交換をしに来るわけですよ(笑)。

岩橋:あぁー、見た目の印象から。

古野:そうそう、見た目でね。それで、2番目に僕のところに来るんです。そして、彼女のところに3番目に来る。名刺を見て、みんなびっくりするんです。「あなたが社長でしたか!」と。

つまり今までは、性差とか年齢が、それぐらい相手を見る基準だったかもしれないんだけども。僕らが見たら、あんまり意味なくて。やっぱり一人ひとりの個性を見て、個性を活かすような働き方をしましょうねと。

働き方を考えるベースは「自分の強み」とは何か?

古野:ですから、うちの会社のメンバーは全員、名刺の中にFFSの数字を印刷しています。こういうかたちでZoomで講演をするときも、全部名前の横に因子を書いています。僕の場合はD(拡散性)、C(弁別性)、A(凝縮性)なんですよ。それを見ればわかる。

「〇〇さんはCが高かったですよね」とか「〇〇さんはAが高かったですね」というやり取りをすることで、より相手を理解した上での会話、コミュニケーションの取り方ができるようになります。

岩橋:なるほどね。本当に一般的に、例えば「女性は管理職になりたがらない」とか「女性型リーダーシップのスタイルとは」というのがいろいろあったりもしますけど。私も女性をたくさん見ていて、女性といっても私みたいな人がいるし(笑)、ぜんぜん違うので。

古野:そうそう、ぜんぜん違うでしょう。だから、やっぱり年齢・性差で決めずに、一人ひとりに注目する。もちろん管理職になりたくないという人もいますけど、これは女性に限ったわけではなくて、男性でもいますよね。

岩橋:そうですよね。

古野:そうそう。たまたま今、少ないだけですよ。もちろんメーカーなどでいくと、女性の管理職は圧倒的に少ないですよね。そういう事実はあります。だからといって、今で言うと最近のIT系のベンチャーは、半分近くが女性が社長かもしれない。

岩橋:確かに、ぜんぜん珍しくないですね。

古野:ぜんぜん珍しくないです。そういう意味で、働き方などを考えるベースは、やっぱり「自分の強みって何?」ということが原点だと思います。

「保全性」が高いと診断された人の特徴

岩橋:なるほど。その強みというものが、FFSでかなり精度高く理解できるわけですが。たぶん、今回(事前にFFSを)受けてくださって参加されている方も多いと思うので、そういう前提で話をしようと思うんですけど。

うちのメンバーはみなさん、うちの講座でFFSを受けてもらっているんですけど、よくあるのが「保全性で拡散性に憧れる」というか。(タイプとしては)保全性である自分を「これは違います、私は拡散性なので」というふうに思うことは、たぶんよくあるパターンだと思うんですけど。

古野:あぁ、一番よくありますね。

岩橋:保全性の人はそういうふうにおっしゃるという話を、よく聞くんですよね。

古野:拡散性と保全性というのは気質なんですね。それぞれ強みがまったく違うと思ってください。保全性というものは、狩猟か農耕かでいうと農耕的なんですけれども。きちっと枠組みを作りながら、その中で試行錯誤して、安心安全を確保する。それで、さらに枠組みをどんどん広げていく。ですから経験知が高い人とか、体系化している人。

枠組みがすごく大きいんですよ。その大きな枠組みの中で動くから、非常に自由であったり「好きなことをやってるよ」と言うんですが、それはあくまでも枠組みを作ったから。枠組みの外に飛び出ていくことに対しては、やっぱり不安であったり、ちょっと慎重になって準備をしたりします。その差があります。

ここ数年の新卒は保全性が高い傾向がある

古野:でも、拡散性というのは狩猟的で、おもしろいことがあると瞬間的に動くんです。その違いはみなさん、わかるはずなんです。だから例えば、診断では保全性と出ていて「私、拡散性かもしれません」という人に、「あなたは体系化された大きな枠組みの中で非常に自由に動いていたり、興味のあることに積極的に動いてるんじゃないですか。でも、本当に初めてのものに出くわしたときは、ちょっと考えて情報を集めたりしませんか」と言うと、「そうです」と。

岩橋:なるほど。

古野:だからそういう意味では、枠組みが広く仕上がった保全性の人というのは、やっぱり優秀な人なんですよね。それで、拡散性は逆に言うと「おもしろい、やりたい」と思った瞬間にもう、経験がなくても一歩前に出ているんです。その違い。だから雑だったりしますよね。

岩橋:雑(笑)。そうですね。なるほど。

古野:そういう意味で言うと、ここ数年で新卒で入ってくる人たちの保全性が高いのは明らかなんですが、三種の神器じゃないですけど、この人たちに少し共通してきているのが……学生時代に海外留学をしてるんですね。NPOやNGOの理事とか、そういう活動をしていました。それで、3つ目はやっぱり生徒会。サークルであるとか、もしくは体育会を含めて代表しているとか。この3つが多いんですね。すごくアクティブだし。

岩橋:拡散性の人みたい。

古野:でしょう? でも、実際は保全性なんです。「なんで?」って聞いていくと、やっぱりいい意味で準備されている。

慎重な人でも挑戦しやすい時代へと変化している

岩橋:どういうことですか?

古野:先輩たちがそういう仕組みを作っているので、その仕組みに対して応募したり、一緒に経験するから、保全性の人も行動できるわけです。

岩橋:あぁ。

古野:10年前だったらそんなルートはなかったから、拡散性の人が道なき道を自ら出向いていって。例えばアフリカのある所に道を作ってきましたよ、と。でも、今はその道をたどっていけば行けるわけでしょう。

岩橋:確かに。

古野:この前、アフリカに半年くらい行ったという人に話を聞いたわけですよ。「寂しくなかった?」って。「いや、みんなでTwitterでつながってたので、ぜんぜん寂しくなかったですよ」。いや、それって拡散性じゃないよね、という話ですよね(笑)。

岩橋:確かに。今は時代的に挑戦することがカジュアル化してるというか。

古野:そうそう。

岩橋:挑戦する道がけっこう増えている。しかも、それがSNSなどで調べやすくもなっていて。

古野:うん。調べやすくなっているし、いわゆるエントリーバリアみたいなものが低くなってるから、挑戦がしやすくなって。逆に言うと、みんながやり始めたら拡散性の人はおもしろくないから、やらなくなっていくわけですよ。

岩橋:前に(古野さんが)おっしゃっていて「なるほど」と思ったことが、「挑戦します」と言って挑戦している人はだいたい保全性で。拡散性の人は、「挑戦します」とかいちいち言っていないですよね。

古野:うん、「おもしろいからやっちゃいました」。だから「やっちゃいました」だし。失敗しても「まあいいか」だし。うまくいったからといって、それはあんまり自慢にならない。だから保全性の人ってやっぱり、語るときに自分の成功体験ベースで語りやすいんですよ。「こんなことしてきました」って。だから、積み上げていくことがすごく重要です。

自分の強みを把握する重要性

古野:うちにも保全第一のスタッフがいますけれども、彼女はやっぱり周りから「できない人」と思われるのがすごくイヤなんです。だから、できるようになりたかった。できるようになりたいから、いろんな人の話を聞いたり情報を集めて、自分で少しずつやってみて。

粘り強いしすごく丁寧だから、実際に目標を立てたらできるようになるんです。もちろん最初は時間がかかりますよ。それが繰り返し繰り返しやってると、少しずつスピードは速くなりますよね。それってすごい魅力なわけですよ、強みだし。

岩橋:確かに。

古野:でも、それを「私は挑戦が大好きで、積極的な人間です」と。結果的にできるかもしれないんだけども、ただそれをポンと言っちゃうと、「じゃあ、これをやってごらん」と初めてのことに出くわしたときに、ちょっと不安になっていくわけですよ。

それよりも「何か先行するモデルがあれば、私はそれをベースに改善しながら、すごく精度の高いものを仕上げますよ」と言ったほうが、その人の強みだし武器になります。

岩橋:なるほど。診断結果に対して「これは違うと思う」という話は、拡散性の人からは1回も聞いたことないですもんね。

古野:拡散性は診断結果をおもしろがるけど、それだけ。細かいところはどうでもいいから(笑)。

岩橋:どうでもいい(笑)。雑ですね。

古野:「あ、そうなんだ」ということもあるし、「そうそう、当たってる、当たってる」「でもまあいいか」となりやすいんですよ。

行動の根本となる部分を診断することで、一人ひとりの性質を活かす

岩橋:いや、この質問は私も本当によく聞きます。新しいことに挑戦することを保全する、という。

古野:そうそう。それとやっぱり今は、世の中から挑戦することが求められていますよね。例えば企業の採用担当者に聞くと、「変革できる人材」とか「挑戦できる人材」とか「リーダーシップを発揮できる人」って必ず言うんですよ。

岩橋:言いますね。

古野:そこで、みんながそういう人でありたいんと思うんです。ただ、拡散性だとちょっとあまのじゃくなところがあるから。逆に「いや、僕は違います」と言うかもしれない(笑)。

岩橋:(笑)。

古野:いわゆる行動だけを見ていくような性格診断もありますが、それは結果が変わることがあるわけです。でもFFSで診断するのは因子という「ファクター」で、行動の元になるところを見ているのです。しかも、ストレス論がベースになるので、生理学のジャンルになります。

だから、保全性が高い人がストレス状態になったとき、どういう病気になりやすいかということもわかっているし、拡散性の人がどういう病気になるかもわかっていますよね。そういうことはまさに生理的なものなので、そう変わらない。だから活かそう、それを武器にしようね、というのがFFSの考え方なんです。

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