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VUCA labo #001 佐宗邦威さん「激動で予測不可能な時代へと旅立つ前に準備するものとは!?」(全5記事)

「外に興味を持つ人」が2~3割いれば組織は変われる 社内アーリーアダプターの役割

先が見えないVUCAの時代に、私たちは何を考え、どうやって新たな道を切り拓いていくべきなのでしょうか。VUCA Laboが主催するイベントでは、「激動で予測不可能な時代へと旅立つ前に準備するものとは!?」と題し、戦略デザインファームBIOTOPEの代表取締役であり、『直感と論理をつなぐ思考法』や『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』などの著者である佐宗邦威氏が登壇。本パートでは、 イベント参加者から寄せられた質問に答えました(今回はオンライン配信での開催となります)。

個人とビジョンの関係はどうなっていくか

新井宏征氏(以下、新井):(Slidoを指しながら)画面に映っている質問にも触れていきたいと思うんです。個人のビジョンみたいなものの輪郭がだいぶ見えてきたときに、(Slidoの)真ん中のところに書かれているような……。

まず、真ん中の質問の「自律分散の場合、真ん中にミッションがありますけれども、個人のビジョンとの関係は?」というところに、佐宗さんから答えていただいていいですか? 佐宗さんのスライドに書いてあったところに対する質問ですね。

佐宗邦威氏(以下、佐宗):そうですよね。どうしましょう。(スライドを)見ながらお話したほうがいいかもしれないので、一旦もらいましょうかね。たぶんこれだと思うんですけれども。

僕のイメージで言うと、例えばこのVUCA laboという場がありますよね。ここは新井さんと阿部さんのどちらが最初かはともかくとして、2人が「VUCAの時代をどう生きていくか」ということで、考えていくとか、学んでいく場所を作りたいと思った。

なのでミッションは「VUCAの時代をより生きられる人が増える」という感じだと思うんです。実際にVUCAというものに対する捉え方とか、それを学ぶことが大事だという理由って、人によってぜんぜん違うと思うんですね。今日集まっていらっしゃる40人とか50人の方は、それぞれが何かしら持っていらっしゃるんだと思うんですけれどもね。

多様性が広がるほど普遍的なミッションになっていく

佐宗:この最初のミッションは、ある種ミッションが大きければ大きいほど、広ければ広いほど、個人のミッションを包含できるものなんだと思います。それが最初から大きいかどうかはどちらでもよくて、例えば阿部さんがこれから議論をしていく中で、「未来はこれしかない。この道であれば、なんとかなるんだ」という流派の人が入ってきたときに、「これはこの世界に含めるのか、含めないのか。それはなぜだろう」ということを哲学的に考えるわけですよね。

「最終的に、こういうのも入るかもしれない」と思って考えていくと、さらにもっと上位レイヤーのところにミッションがいきます。多様性を広げれば広げるほど、どんどん普遍的なミッションになっていくというのが、このミッションと個人のビジョンの関係だと思っています。数人でやっているうちはすごく具体的で、ある種イメージが一様なミッションだと思うんですけど、それが広がれば広がるほど、どんどん普遍的なものになっていく。

例えばそれができているのがキリスト教とかだと思うんですよね。最初はイエスだったり、その周りにいるパウロなどの弟子たちが作ったミッションです。そういうストーリーは一応バイブルとして残っているけれども、その派生みたいなものが、どんどん生まれてきたりする。

そういう意味で考えたときに、このミッションというのはどんどん大きくなって広がっていって、普遍的になっていく。そのプロセスの中に、個人のミッションと組織のミッションのぶつかり合いが存在するというイメージです。お答えになっていますかね?

新井:すると、ミッションってどんどん進化していくようなところもあると思うんです。先ほどの「人がいて、場があって、意志があって、創造していく」という感じのときに、「この場はおもしろいな」と思って入っていったけれども、だんだん「違うなぁ……」みたいなことも起きてきたりするわけですよね。

どうしてもコミュニティとかになってくると、そう思って離れていく人もいれば、なんとなく「馴れ合い」になっていっちゃう感じもあると思うんです。コミュニティを作っていく難しさはいろいろあると思っているんですが、そういう「馴れ合い」というか、キリスト教みたいな感じにいく手前で、だんだんなし崩し的になっていっちゃう。そういうものに対して、佐宗さんはどういうアプローチや助言をされたりしますか?

コミュニティは「生態系」であると考える

佐宗:コミュニティというのは生態系なので、「生態系が強くなっているというのはどういう条件か」を考えればいいと思うんですね。生態系が強くなる条件は、ある程度エネルギーが外から出ていることです。

例えば太陽だったりとか、エサがあったりとか、そのあたりはある程度どこにいるかによって変わってきちゃいます。なので、まずは「エネルギーがある場所にいる」ということです。例えばそれは、時代で言うと「時代の先を行っている、筋のいいところにいる」という話が1つ目でしょうかね。

2つ目が開かれていて異種が入ってくるというのと、異種が入ってきたのをある程度見て、変なものは弾きだすという仕組みがあること。要は免疫のシステムですね。異種を完全に排除すると弱くなるんですが、それが「馴れ合い」という状態です。

ある程度の多様性があるもので、そこそこ入れては出しているということを繰り返していると、だんだんそれに対する復旧力、レジリエンスが上がっていくという意味です。ある程度の回転率があって、でもしっかりと出ていってもらっているということ。そこなんじゃないかなと思っています。

新井:確かに。そうですね。建設的な、意見の食い違いみたいなものを恐れないというところですよね。ありがとうございます。

新しい環境に出て行くことで鍛えられるもの

新井:(Slidoを指しながら)もう1つ。質問をいただいている、上から2番目。

「ヒエラルキー型の本職はほどほどで、本当にやりたいと感じることへ動こうとしています。別の場に出るときに、何か気をつけることはあったりしますか?」。何かありますか?

佐宗:この方がすでに別の場にけっこう出られている方なのか、ぜんぜん出られてないかによって答えが変わる気がするんですが、あんまり出られていないと仮定すると、相手の言葉と自分の言葉の違いを意識するということだと思います。

いろんな分野に行けば行くほど、ある種、伝わらない……ある「方言」が伝わらないということが起こるんです。その「方言」が伝わらないときに「英語」をしゃべれるようになると、これが一気に進むんですよね。

この「英語」というのはメタファーと言うか比喩で、「どんな分野にも通用する言葉のしゃべり方」みたいなものがあって、いろんな勉強会とかに行っているとだんだんそういうしゃべり方がうまくなってくるところがあるんです。

最初はやっぱり、田舎から都会に出てきて、すぐに友達はできないです。だけど、言葉とかお作法を覚えちゃうとすごく簡単というのが、ある種、阿部さんとかもよくやられているようなこういう業界を越えた活動だと思っています。

自分がしゃべっている言葉の変化に気付くとか、伝わってないときにどうやったら伝わるのかを考えるのがおすすめです。自分が行ってないところに行けば行くほど、そういうのは鍛えられるんじゃないかと思います。

新井:そうですね。よく言われることですけど、組織の名刺じゃないところで自分がどういうような場、フィードバックをもらうような場に出るかというのは、第一歩としてすごく大事ですよね。ありがとうございます。

外の世界に興味を持つ人が2~3割いれば組織は変われる

新井:時間もだんだん残り少なくなってきたので、質問を受けていきます。(Slidoを指しながら)下の部分ですね。

「日本の大企業では、与えられることを期待する大多数と、彼らの期待に合わせて与え続けることに強固な使命感を持つ優秀層も一定数います。期待に合うものは経験知から見た違和感を嫌うため、変化に即応する施策に対して強い拒否反応を示します。彼らの意識を社外にオープンにするにはどういうコミュニケーション戦略が考えられるでしょうか?」。

佐宗さんの本の中に出てくるような「研究開発の人とかが持ち寄って……」というお話がとても印象に残っていたんですけれども……。

佐宗:違和感を嫌う……。うーん、そうですねぇ。こういうのって、とくに研究開発でよくあるんですよね。ある種の「クローズドシステム」で回っているところ、例えば車業界でも完全に系列で回っているようなシステムであればあるほどそういうのになりやすくて、水平分業が起こっているほどそういうのがないという傾向はあるんです。

切り口になり得るのはやっぱり「自分たちのシステムの中だけでは一番いいものはできないかもしれない」ということに気付いている人が、2~3割くらいいるかどうかです。どんな組織でも、1割くらいの人は外を見ているんですよね。半分(5割)が見ていたら完全に業界が変わっているので、ポイントは2~3割だと思っています。

2割くらいの人が外に興味を持っているときは、そういうアーリーアダプターを使って外の人と何かをやろうという企画が通りやすくなるんですね。そういうところはいきなり外に開きすぎると失敗するので自分で社内の勉強会などをやって、そういう人たちを2.5割くらい、4分の1くらいまで少し外部免疫をつけて、満を持して外に開く。

新井:そうですよね。免疫の話で言うと、強すぎる感じになっちゃいますもんね。

佐宗:刺激が強すぎると、それはそれでショックを受けて、逆に引っ込んで終わっちゃうみたいなことも、けっこうありますよね。

変化に適応できるかどうかを分けるもの

新井:ありますね。自分がシナリオプランニングとかをやっているときも、やっぱり社内で小さく勉強会みたいな感じで始めて、「あいつら、何かおもしろいことやっているな」みたいな感じで、まずはおもしろさを社内の中で広めていく。「あれは、何をやっているの?」という感じのところを作っていきます。

今アーリーアダプターの話がありましたけど、「少しずつ伝染させていく」みたいなのって、地味ですけれどもやっぱり大事な取り組みですよね。

佐宗:大きな環境の変化のきっかけは、最終的には外から生まれるものだと思うんですね。例えば今回、いきなりリモートワークをやらなきゃいけない状態になったとき、全社で適応できた会社とできない会社とがありました。あれって、一部でもいいから事前にどのくらいシミュレーションしていたかという差ですよね。

311もそうですけど、こういう大きな変化によって突然スピードが早まることは、歴史上何度もありました。そのときにまったく準備していないか、ある程度は備えられているかどうかで、もうぜんぜんそれに対する変化適応性が変わります。

理にかなったコミュニティの広げ方

佐宗:逆に言うと、新しいものや外の環境と比べて明らかにoutdatedだなと思うのだとしたら、「いいタイミング」が来るまでに2~3割くらいまでちゃんと作っておけるかどうかですね。それで世論というか、後々になって「天の時」が来たときに、どれだけベースとなる……ウイルスで言うとクラスターですね(笑)。クラスターの数がどのくらいあるかで、スピードって変わるじゃないですか。たぶん同じことかなと思います。

新井:ある意味、社内コミュニティじゃないですけど、何かそういうものを作っていくような取り組みをやっていくところですよね。きっとね。

佐宗:そうですね。そういう意味で言うと、おすすめなのはゲリラ戦。これって要はメインストリームに対してのゲリラ戦です。人間に対してのウイルスと同じなんですけど、基本的には遍在しているのがいい。

最初はどちらかと言うといろんな事業とかいろんな部署とか、いろんなレイヤーのところに種が遍在していて、発芽させるタイミングでは、いくつかのクラスターみたいな場所に、集中的に熱を込める。

そこが熱くなってつながりはじめると、あとはバーっと広がっていくような感じです。なので、最初の「仲間作り」の初手は、できるだけ部署、会社で言えば会社の事業の多様性、あとは部署の多様性、階級の多様性が多いコミュニティを作る。

次に「これを攻めるのはここだ」と、例えば「R&Dのここだ」とか、「デジタルトランスフォーメーションのここだ」という感じになったら、そこに一気集中して、一気に広げて、そこを橋頭堡にして広げていく。過去にやっている上では、コミュニティの広げ方としてはそういうやり方が理にかなっているなという気がしますね。

会社を辞めるかどうかで悩んだときのヒント

新井:ありがとうございます。(Slidoを指しながら)そういう中で、上から2番目の新しくいただいた質問です。

「多くの日本企業が与える・与えられるの共依存の関係で成り立っているけれども、そういうときに共創的な思考を高めていきたい場合は組織を飛び出して新しい場を見つけに行くべきでしょうか?」とあります。

佐宗:ここはたぶん、すごく悩むところだと思います。僕も最後は2年くらい、辞めるか辞めないか悩みました。

(会社に留まると)たぶんダラダラできるし、ある程度のところで快適になります。なので快適な中で自由にやっていると気持ちよくなってくると思うんですけど、もしモヤモヤ感がある場合は何かしらぶつけてみるというアクションをしてみるといいと思います。

自分の中でやりたいことを、ぶつけてみる。それってある意味、自分ができる状態だったらぶつけることに対して、ある程度、受け入れられる可能性が高くなるじゃないですか。もしそれでうまくいったら、それはたぶん会社の中で評価されるきっかけになる。ダメって言われたらたぶんその程度の会社だということなので、安心して辞められるんじゃないかと思っています(笑)。

ダラダラ付き合っている彼氏・彼女が、ちょっと(相手を)試してみるような(笑)。もしモヤモヤがなくならないんだったら、そういうきっかけを作ってみるのは個人的におすすめです。

会社を試す心持ちを持つ

新井:そうですよね。(Slidoを指しながら)今画面に映っている下のところの、「黒船が来ているのにこの期に及んでも『変わらない』と言う人は放っておいてアクションするのがいいか?」ということですけれども……。

自分も独立する前の大きなきっかけとなったものとして、「仕事に関連する海外のイベントへ行きたいけれども、予算の都合とかで会社としては行けない」ということがありました。そういうときに、そのとき何度か仕事をご一緒していた出版社の人に「取材して原稿を書くから、フライト代を出してくれ」というふうにやったことがありました。

「どうしても自分はやりたいんだけれども、それが叶わなかったとき」が、もしかしたら1つの分水嶺というか、きっかけになるのかもしれないですね。

佐宗:そこって、けっこうリスクを取らないと見えてこないところですね。でも、そこは自分が大事なもののほうが、そのリスクって大きくなるんですよね。だからたぶん思い切りも必要だし、時間も必要なんです。

そこで、「自分が大事なもの」を問うてみることを諦めないというか、テストしてみるようなことです。発想で言うと、自分が大事なものを会社に対して試してみる。「会社を試してみる」ような心持ちがいい気がしますね。

新井:そのサイクルを回してみて、動くきっかけを考えるって感じですね。

佐宗:いざそれで自分が試して組織が動くようなサイクルになったら、逆に言うと惰性になります。「こいつがやることは、会社は基本的に止めない」ってモードに入ると無双モードに入るので、どっちにとってもいいシナリオになるんじゃないかなって思いますね。

新井:なるほど。おもしろい。

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