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VUCA labo #001 佐宗邦威さん「激動で予測不可能な時代へと旅立つ前に準備するものとは!?」(全5記事)

コロナが変えた人々の意識 “資本主義がいったん止まる”ことで見えた新たな潮流

先が見えないVUCAの時代に、私たちは何を考え、どうやって新たな道を切り拓いていくべきなのでしょうか。VUCA Laboが主催するイベントでは、「激動で予測不可能な時代へと旅立つ前に準備するものとは!?」と題し、戦略デザインファームBIOTOPEの代表取締役であり、『直感と論理をつなぐ思考法』や『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』などの著者である佐宗邦威氏が登壇。VUCA時代を生きるための3つのルールについて解説しました。(今回はオンライン配信での開催となります)。

PDCAを捨ててOODAのループに入る

佐宗邦威氏(以下、佐宗):まず1つ目を話しますね。不確実な状況においての生き方というところ。

これは『直感と論理をつなぐ思考法』で書いている内容になるんですが、今回VUCAがテーマですね。VUCAに対してどういうふうに生きていくかという考え方で「センスメイキング理論(不確実性の高い事象に対して、メンバーやステークホルダーの納得のいく意味付けを行うことで状況を好転させる循環プロセス)」という理論があります。

直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN

VUCAは基本的には軍隊用語で、とくに敵がどこにいるかわからないし、どういう環境かもわからないようなゲリラ的な状況でどう戦うのか、という考え方から来ているんですね。

基本的には外部環境を感じるスキャニング。それに対して自分なりに解釈をしてみる。そして仮説を立てて実行してみる。その環境に対してフィードバックしてみて、そのフィードバックをもとにもう1回、感じる・解釈する・実行する。これを繰り返すのが基本的なセンスメイキング理論の考え方です。ポイントは、「感じる・解釈する・実行する」というサイクルで回り続けることです。

よくPDCAという言葉がありますけど、ある計画を立てて実行して、チェックして、それに対してアクションするというサイクル。再現可能な環境で回っていくのはこういうサイクルなんです。

それに対して、OODA(Observe:観察、Orient:状況判断・方向づけ、Decide:意思決定、Act:行動)という言葉があります。これはセンスメイキングと同じような考え方で、まず環境をオブザーブして方向性を出してみる。やってみて、アクションする。これを繰り返す。簡単に言うと、VUCAの時代においてはPDCAを捨ててOODAのループに入っていくというのが重要です。

私の本で書いたのは、これを自分自身の内面にある妄想から始め、妄想と外部環境を知覚して、自分自身が現状起こっていることと、将来起こるであろうことのギャップの解像度を上げていく。

それに対して自分なりの新しい見立てや切り口を考えてみて、それを実際に表現することによって、フィードバックをもらって自分の妄想をアップデートしていく。自分の内発的な直感・感覚を駆動力にして動いていくような生き方をしたらどうか、というのがこの本でご紹介した内容です。

自分なりの概念を見出すためのプロセス

この内容を4象限に分類しますと、左側がビジョンドリブンに対して(右側が)イシュードリブン。やりたいこと、自分の内発性からスタートするもの。外部にある環境からスタートするというのが左側と右側ですね。上下が0→1。0から1を作り出すのに対して、あるものを最大化すると。

そういう切り口で考えたときに、より0→1を作り出す。しかも、それが自分の内発からスタートする環境にいることが不確実になったときに、「こういうことをしたい」という意思を持って世の中に働きかけることで、自分自身がそれを学んでいくと。こういう考え方が非常に重要なのではないかと思っています。

そのために重要な考え方がこの「体感覚・視覚・聴覚」という考え方です。よくわからない状態なので、いきなり考えても答えはでないと。だから逆にいうと、最初はまず体感覚で感じる。具体的にいうと「なんだか違和感があるな」「なんだか違うな」という、体で感じることにまず意識を向けるということです。

そこに対して自分なりに考えたときに、新しい概念は最初はなかなか言葉にならないので、まずは絵にして考えてみる。なんだか違う。でも本当は自分はこうしたいはずだ。だったら、どんなかたちだったらいいんだろう。どんな未来だったらいいんだろう、というのを絵にして考える。スケッチにして考えてみる。

それに自分なりの名前を付ける。そういう体で考え、絵にして、それを最後に自分で概念にする。これが今までにない世の中で、自分なりの概念化をしていくうえで大事な認知プロセスです。普通は言葉で考えて、聞いて、話して、言葉で全部整理すると思うんですけど。これを体と絵、ビジュアルを入れるというのがポイントですね。

「過度なもの」に対するリバランスが起きる

2つ目。こういう思考法なんですけれども、その中で何に対してアクションしていったらいいのかというところ。いろいろな分野があると思いますが、僕がアフターコロナの環境で、すごく大事だなと思っているのは、キーワードとして「循環型と地方分散型」。都市集中に対する地方分散型。このキーワードが掛け算された部分です。

ちょうど今日18時にWIREDでDEPOTというテーマがあって、パンデミック後のカルチャーとテクノロジーをテーマに寄稿させていただいたんですね。ここでも僕は「過度さに対するリバランス」というキーワードを出しました。

例えば、速すぎる資本主義に対するリバランス。もうちょっとスピードを緩める。例えば、今回コロナによって結果的に北京の空はPM2.5が少なくなった、という話もありました。そういう経済活動のスピードをちょっと緩めることによって起こる、環境に対するエコロジティブなインパクトだったりとか。

あとは例えば、働きすぎ。働きすぎな状況に対する家庭の時間のバランスとかですね。このあたりは組織においても、組織のためにやっているものと自分の時間のバランスとか、いろんなバランスが出てくると思います。

外のために、ずっとぐるぐるハムスターのように動くために動いていたのが今の資本主義だとしたら、いったん止まることで、自分たちの最適なタイミング・時間感覚を持ったという気づきが、これからたぶん社会に起こっていくんじゃないかと思っています。

人々は持続可能な自分の生活を意識し始める

そういうことが起こっていく段階で、とくにどういう分野が大事になるかというと、これは実は『直感と論理をつなぐ思考法』のあとがきで書いているテーマなんですが、あまり資源を使いすぎず、自分で楽しむ方法。例えば、デザイン、アート、工作、農業、料理、スポーツ、文化的な営みが大事になる、ということを僕はここで書いていて。

ブランドの服を買ったり、パッケージ化されたプロダクトを購入したりするのは、資源を使う楽しみ方で持続可能にはならない。こういう作りながら自己表現するものは、資源を使わないエコな取り組みになる、ということを書いているんですね。

みなさん、今ソーシャルディスタンシングになって、料理に凝り始めた人とか多いんじゃないかなとか。スポーツはさすがにやりにくいですけど、ランニングをしてる人は多いでしょうとか。あとは自分なりにZoomの背景を工夫してみたりとか。MOMAの無料講座をちょっとやってみたりとか。そういう方ってけっこう増えてきてると思うんですね。

このあたりってある種、今までの社会が過度に外の人に対する富の多寡みたいなものに価値を出していく時代だとしたら、それが少し見直されていて、自分なりに日々の楽しみ方を変えていく。そういう生き方ができるようにもなっていたし、それはそれで意外とバランスとしては悪くないんじゃないか、と思う人が増えてきているんじゃないかなと思います。

もちろん今回のコロナの結果、できなくなったことはロスとしてはものすごく大きなことで、それ自体は多少戻っていくとは思うんですけれども。その中でも自分というものに目が向き、その中で持続可能な自分の生活を意識し始める、という大きな流れはあるんじゃないかなと思っています。

こういうモデルの中で、さっきちょっと循環型という話をしました。より使いすぎないことが普通になっていく。例えばそれを都市集中ではないかたちで考えていくと、いろんな地方に自分なりのライフスタイルを作っていくことがよりやりやすくなってくると思いますし。

どこでも働きやすくなる環境にリモートワークが実現すると、極端な話だと東京に住んでいる必要は本当になくなるので。自分のライフスタイルを中心に、地方から新しい循環型のライフスタイルを構築していくことは、これからあらゆる地域で可能性があると思っています。

とはいえ、これ1人でやるのかというと、それはすごく難しいと思います。1人の妄想に仲間を作りながらかたちにしていくアプローチが有効、というのが3つ目ですね。ちょっとここは飛ばしますが。

これからの時代の主流は自律分散型の組織

こちらは『直感と論理をつなぐ思考法』で書いていて、今までの組織は、誰かが決めたビジョンを全員が一丸となって実現していくという。これをヒエラルキー型の組織といいますけれども、こういうような組織だとしたら。

今、自分のやりたいことだったり、自分自身がやるべきこと、ミッションのようなものを中心にしながら、自分のビジョンを語っていけば、ほうっておいても仲間ができて、それでやりたいことを実現できる。もともとかたちにしていったり、集合的にしていくことがインターネットでやりやすくなっていました。

これが実際に今回ソーシャルディスタンシングが起こることで、ある種会社というのは同じ場所を共有する濃いブートキャンプみたいなものですが、それが完全に離れちゃったわけですよね。

そうなると僕は「宗教モデル」と呼んでいるんですけれども、在家信者がいる中で、その在家信者もうまく巻き込みながら、あるミッションを達成していくという大きな物語を語っていく。そういう自律分散型の組織がこれからの時代の主流になってくるはずだし。これをいかに作っていくか、というのが課題になっていくんじゃないかと思っています。

ここでこのモデルを生産する組織と創造する組織というふうに、あえて『ひとりの妄想で未来は変わる』で分類しているんですけれども。

同じ環境のもとでゴールを設定してインセンティブを設計すれば、ぐるぐる回していけるという効率を最大化する機械型の組織に対して、これからは生き物型の創造する組織。いわゆるミッション・ビジョンみたいなものを共同の土台にしながら、内発的動機を持った人が相互に創発していくボトムアップ型の組織が大事になってくると思います。

「求心力を持った場」が生まれるステップ

これを具体的にやっていくうえで大事な要素は4つあると思っていて。1つ目が人ですね。まず1人では大きなことは成し遂げられない。でも、同じ志を持った仲間を濃く作っていくことによって、人はより大きな存在になっていくと。

ただバラバラな(状態では)人はなかなか共通のものを作りにくいので、共通の言語、土台として場が必要になります。そこはあるコンセプトを共有しながら、いろいろなバックグラウンドの人がいる。外に開かれた多様な人が出入りする場を作ることが必要になる。

このような人がバラバラに集まってきたときに、なんとなく見えてくる「こういう方向に行きたい」という集合的な意志は、最初は無理やり作る必要はないんですけれども、だんだん見えてくる。それを明確にかたちにして外に発信したときに、その場は求心力を持ちます。

最終的には個人個人がいろいろな創造をしていく中で、外の人とも関わりながら創造していくことで、新たな価値がどんどん生まれてくる。新しいものがどんどん生まれてくるところには、人がさらに集まってくるので、結果的には求心力が上がっていく。

もともとインターネットはこういう世界で、コロナがある前までは会社の中でこのような場を作ることで、ネットワークとして新しい創造ができる場と、ある種のヒエラルキーがある場を両立させられないか、ということを僕は提案してきました。

今回こういう環境になってしまったことで、どこに自分は住んで、誰とどういうものを作るのかということを、より積極的に選ばないといけない時代になってきているので。いかに自分で誰とやりたいかという仲間を選んで、どういうことをやりたいか、どんな場を作っていくか、というふうにやっていくことは、非常に大事なステップだと思っています。

ある種、阿部さんと新井さんが今回こういう場を作ってやられることは、象徴的なファーストアクションなんじゃないかなと思います。この本の後半には、これを具体的にやっていくステップの話も書いているんですけれども、長くなってしまうので、このあたりで終わりにしまして。

最後に1個だけ宣伝です。最近「Udemy」というところで、オンラインによる創造的な思考のコツの講座を公開しています。よりオンラインでスキルのベースを共有しながら、同じスキルを持った人が一緒に作り合う。そういう環境が今まで以上に必要だと思っていて。

今までであれば企業の集合研修みたいなところで、デザイン思考をやることができたんですけれども、今は「スキルは自分で学べ」と。逆にいうと、その上でやるプロジェクトを(仲間と)集まってやろう。そういう時代なんじゃないかなというのがあるので。もしこういう創造的な生き方に興味がある人は、ぜひ見ていただけたらなと思っております。

ということで若干5分くらいオーバーしてしまいましたが、私からのインプットはいったん以上にしたいと思います。

新井宏征氏:ありがとうございます。

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