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~リモートワークの「悩み」を切る!~ with コロナ時代へのアップデート(全6記事)

中国ではホワイトカラーの約8割がテレワークに対応 海外で進む働き方の変化

新型コロナウイルスによって、私たちの働き方は大きな転換期を迎えています。「リモートワーク(テレワーク)」などを導入する企業が急増する一方で、さまざまな課題や「リモートワーク疲れ」といった言葉も聞かれるようになってきました。官・民それぞれの立場から働き方のアップデートを推進するプロフェッショナルたちが、withコロナ時代の働き方の課題と解決策についてオンラインイベントで意見を交わします。本パートでは、テレワークで表面化する働き方の課題や、中国でのリモートワーク事情について語りました。

テレワークで浮き彫りになったコミュニケーションの課題

松本国一氏(以下、松本):やはりテレワークになった時点で、私は上司と部下という関係とか、仲間内の関係の距離感をもう1回ちゃんと整理したほうがいいと思っていて。要は、雑談がしやすい環境がどういう相手かというと対等な相手じゃないですか。

例えば自分の趣味が合う人もそうだし、話しやすい相手でもそうですが、私はオンライン上がメインになってくると、なんとなく上の人だという意識をわざわざ持たせないように、コミュニケーション誘導をかけていくことが重要になってくるなと思っているんですよ。そうしないと相談しづらいじゃないですか。

倉貫義人氏(以下、倉貫):それは別にオフィスのときもそうしたらよかったんじゃないかというだけなんですよ。

松本:結局そういう話なんですよ。

倉貫:オフィスでも話しかけられない上司って、ただ切ないだけなので。

(一同笑)

僕はあちこちで言っていますけど、その関係性を崩さなきゃいけないというのは、あまりテレワーク、リモートワーク関係なくて。

箕浦龍一氏(以下、箕浦):関係ないですね。

倉貫:「コミュニケーションがしっかり取れるような組織にしましょう」とか、さぼっている、さぼっていないかを気にせずに、安心して信頼して仕事してもらうとか。

西舘聖哉氏(以下、西舘):信頼関係が大事ですね。

倉貫:マネジメントにおいてはもう当たり前のことなので。

安達徹也氏(以下、安達):そうですよね。

倉貫:取り立てて「リモートワークだからね」と、こぞって今、言わないほうがいいんじゃないかなと思うんですよね。

安達:会議で最初に「会議の目的を言いましょう」って、別にテレワーク関係ないですもんね。

箕浦:関係ないですね。

倉貫:最初からすればよかったですね。

日本のマネジメントは数十年アップデートされていない

西舘:そういう意味で言うと、今がこんな情勢だから「テレワークの課題」という感じで押し込められちゃっているんですね。

松本:だと思いますよ。

倉貫:だいたいのテレワークの課題は、オフィスでも課題だったものがテレワークで見えるようになって、それで「やはりテレワークはよくないね」とみなさんが言ってしまうんですね。僕は、それが本当にもったいないことだなと思ってはいて。

テレワークもオフィスワークも関係なく良いことは良いので、むしろ今せっかくあぶり出されて本質的な仕事をするチャンスだと思っています。この機会を「一時的にテレワークって大変だったね」と言って、また無駄な働き方に戻すのは非常にもったいなくて。

安達:もったいない。

倉貫:失われた10年、20年と言われた日本の生産性が低い状態って、まさしく30年40年前のマネジメントのやり方を現代のマネジメントに当てはめようとして、それができていないということなので、ここで一気にキャッチアップできるチャンスだと思って取り組んでほしいなと思いますね。

オンライン化を認めない上司や会社にどう働きかけるか?

西舘:これに続くかたちで、松本さん、ちょっと挟んでいいですか? 質問時間にちょっと拾おうと思っていたコメントが1個ありまして、「社員側としては、テレワークやオンライン化をしたいんですけど、それを認めない上司・会社では、誰にどう働きかければいいですか」という質問がコメントに来ていて。

松本:(笑)。

西舘:そこ、持論をちょっとお聞かせいただいてもいいですか?

松本:誰に?

西舘:倉貫さんに聞きたいと書いてありました。まさに今の流れで。

倉貫:そうですね。

西舘:現場側と言えばいいんですかね。どう働きかけていけばいいかなというのが、けっこうみなさん悩まれるところだと思うんですよね。

倉貫:これは難しい話ですよね。これもテレワーク、リモートワークの話とは関係ないんですよね。「上司や会社にどうやって働きかけたら良いですか?」という話だと思っていて。例えば、大きな会社で「新規事業やりたいんです」というときに、「でも、うちの会社で新規事業をやらせてくれないんですよ。どうやって働きかけたらいいですか?」と質問されたらどう答えるか、という話だと思うんですけどね。

西舘:たしかに同じような話ですね。

倉貫:つまり、「会社や体制をなんとかせねばならない」というふうに思い込んではいるし、そこにエネルギーを注ぎこむことが、本当にその人の人生にとっても人類にとっても、エネルギーの損失なのではないかというふうに思っていて。わかんないけど、今、このご時世で在宅勤務がしたいけどしちゃダメだという会社って、たぶんない気がするんですね。

(一同笑)

自主的に在宅勤務をするようにやってもいいと思うんですね。誰かに許可を得ないとやれないということはないという気がしていて。自主的に環境を整えて、ネットワークなり仕事のやり方を見直して、「こういうふうにやったらできるし、やりますね」と言って、それでも上司がダメだと言うのかどうか。

つまり、許可を得てから準備を始めるんじゃなくて、できる環境まで自分の仕事ぶりやマネジメントを変えた上でやってみてもいいし、やってダメだったら怒られてもいいんですけど、やってから確認すれば良いので。よく「許可を求めるな謝罪せよ」という話があります。

西舘:はい、はい、はい、ありますね。

「許可を求めるな謝罪せよ」

倉貫:あるんですけど、許可を取りに行ったら絶対「ダメ」と言われるので。

西舘:そうですよね。

倉貫:やっちゃってもいいんじゃないかなと思いますし、やって本当に生産性が上がて成果が出せたとしたら、文句言えなくなるんじゃないかなと思うので、やったら良いんじゃないかなと。

もちろん業種・業態があるし、出社して働くことに価値がある(ような仕事もあります)。例えば、医療や物流や小売など、今の社会の最前線で働いてくださっている方はありがたいことですし、それは絶対やらなきゃいけないと思いますけど。

そうじゃなくて、別にリモートワークができる仕事なのに、環境まできちんと構築して、それを会社側が許可しないということになったと。それを「どうしますか?」と言われたら、「その会社を選んだのは誰ですか?」という話なんですよね。

松本:おお、なるほど。

倉貫:その会社を選んだのは自分自身なので、僕は選び直せばいいだけなんじゃないかなと思っていて。でも、今の政府にも一生懸命がんばっていらっしゃる総務省の方がいるのであれなんですけど(笑)。

(一同笑)

箕浦:言いたいことを言っちゃってください。

倉貫:これは、言ってみたら国がやっていることも、みなさんが批判をされるんだけれど。

西舘:最近よく見ますね。

倉貫:その政治家を選んだのは誰ですか? という話であって。今所属している会社も、誰かに言われて働いているわけではなくて、自分で選んだということは、選挙と違って何がいいって、いつでも選び直せることなんですよ。政治家は次の選挙まで待たなきゃいけませんけど、会社は選び直せるので。

安達:例えは、テレワークを認めない上司や会社は、テレワークさえ認めたら最高の上司だったり会社だったりするのかと言うと。

(一同笑)

きっとそんなことないんじゃないって。

西舘:きっとそんなことはなさそうですね!

安達:そう思ったときに、「その会社に居続ける理由ってなんでしたっけ?」という。それでもいる理由があればいればいいし、いる理由がないんだったらもっといい会社を探してもいいかなって。なんだかすみません。外資系っぽい発言かもしれないですけど、私もそういう感覚ですね。

中国ではホワイトカラー4億人の6割が完全在宅勤務

倉貫:これが平時だったら、「外資のやつが言っているな」とか、「IT企業の社長が言っているな」という感じだと思うんですけど、今このタイミングで出社しなくてもできる仕事の環境を作った上で成果を出しているのに、それでも「お前は会社に来い」と言われる会社って、本当に今の社会から見ても良くない会社になってしまう。そう思われても仕方ないので、本当に(転職する道を)考えられたほうがよい。

これも本質は同じで、言ってみれば戦時みたいな状況の中で、いい会社も悪い会社もあぶり出されているところは多少あるのかなという気はしますね。

箕浦:おっしゃるとおりですね。

松本:さっき、倉貫さんから「失われた25年」という話もありました。結局、今回テレワークに切り替えられるかどうかというところが、この先その会社がどこに行けるかの違いになってくるんじゃないかなと個人的には思っていて。

つまり、ここでうまくテレワークに移行できたら、たぶん今までやっていたいいことが見えてくるし、悪かったことはやめるという選択肢に行ける。そういった判断がきっちりできるはずなんですよね。

すると、例えばずっとテレワークをさせずに出社させることにこだわった企業と、この機会にテレワークをちゃんと導入して、しっかりとやり方を変えた企業となると、たぶん平時に戻ったとしても25年分のギャップが出てくるんじゃないかと思うんですよね。

例えば中国在住のFIND ASIAの加藤さんと会話していた際に言っていたんですけど、中国って今、ホワイトカラーが4億人いるらしいんですよ。

西舘:4億人。

松本:そのうちの2.5億人が、もう完全在宅勤務に切り替わっています。6割。部分在宅勤務まで含めると、8割を超える人がテレワークができていると言っているんです。日本がどうかと言うと、未だに27パーセントくらいというのが今の結論ですよね。

だとすると、彼ら(中国のホワイトカラーの人々)は2ヶ月間くらいかな。自宅軟禁じゃないけど、強制的に外に出られない世界になった時点で、そこまで浸透したんですよね。その次に何が起きるかと言ったら、彼らはそのスピード感や無駄なことを全部削ぎ落とした仕事のやり方で、どんどんどんどん日本の先に行ってしまいますよ。

日本で今回そこに追従するとしたら、やはりテレワークというものをしっかりとやって、彼らと同じようなパフォーマンスが出せるようにならなきゃいけない。もしそうなれずに、ずっと満員電車で1時間半とかかけてオフィスに出社させるんだとすると、私はもしかしたら差が生まれて淘汰されていくんじゃないかなという気がするんですよね。何も変われないから。チャンスではあり、逆に変われないとなると、ものすごい(リスクにもなり得る)......。

安達:チャンスですよね。

日本が変われるかどうかの試金石

松本:変われないとすると、やはりつらいところに行きますよという話ですよね。(この状況でも会社が)変われなくて自分が納得できないなら辞めればいいという話があったと思うんですけど。要は、変われなくてどんどん落ちていく可能性のある企業にずっとしがみついて行くんですか? 

それとも、やはり変われて失われた25年分のギャップを埋めて、中国みたいに完全テレワークを6割以上がやっているのが当たり前のところと競争して「日本ってまだまだ強いよね」という企業に行くんですか? どっちなんですか? という話になっちゃうんじゃないかなと思っているんですよね。

安達:経営戦略上のフレームワークで、SWOTってあるじゃないですか。強み、弱み、市場の機会、脅威とか分析の中で、市場の機会と脅威って表裏一体で、結局、市場の変化が起きたときに、それを脅威と捉えることもできるし、機会と捉えることができるし、それはもう本人次第なんですよね。

どう考えても機会と捉えたほうが得に決まっているので、どうしたらそれを機会に捉えられるかというふうに、頭を切り替えたほうがいいですよね。

松本:今回はチャンスですよね。みんなテレワークで生きるという状態になっているし、国も推してくれているわけじゃないですか。オンライン化しなさいと言ってくれているわけなので、私はここまで背中を押されてやらないという選択肢はないと思っているんですよね。

安達:西舘さん、おもしろい質問を拾いましたね。

省庁のオンライン化はどこまで推進されているか?

西舘:そういう意味で言うと、中央省庁は今、総務省の中でもいいんですけど、周りを見て推進している動きはあるんですかね。実はあまりそういうイメージがないんですが、箕浦さん、どんな感じでしょうか。

箕浦:進みつつはあると思うんですけど、やはりまだ今までやってきたことは当たり前というふうに思うところから若干抜け出せていない気がして。

例えば、議会などは集まって会議することから抜け出せていない。これは先例やいろいろなルールがあるので難しい面があるんですけど、例えば国会でも一部では「オンラインで審議ができないか」ということを言い出している先生方もいて、少しずつ意識が変わり始めているのかなという気がします。

あと、もう1つは官邸などが感染を防ぐために「記者会見の頻度を減らします」というアプローチをしようとするんですけど、本当は会見だってオンラインでできるんだよねというところに、まだ頭が至っていない。そういう意識やまだ古い世界観が残っているような気はします。

一方で今、まだセキュリティを理由にテレワークをためらっている会社や部門が残っている気がするんですけども、それを見て僕が強く感じることがあります。セキュリティというのは、たぶん会社が持っている情報をどう守るかということなんですけど。

西舘:はい、はい、ありますよね。

箕浦:実は今もっと気にしなくちゃいけないセキュリティって、職員の健康と安全の職員のセキュリティだと思うんですよね。自分の会社の情報セキュリティももちろん大事ではあるんだけれども、自分の会社のために汗水流して働いてくれるワーカーたちのセキュリティが守れない会社だったということに、今まさに多くの組織が直面している。そこで真剣に悩んで変わろうとしている組織がかなり多いことは、実感として感じています。

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