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~リモートワークの「悩み」を切る!~ with コロナ時代へのアップデート(全6記事)

今後オフィスはいらなくなる? オフィスのいいところをデジタル化した「仮想オフィス」の実態

新型コロナウイルスによって、私たちの働き方は大きな転換期を迎えています。「リモートワーク(テレワーク)」などを導入する企業が急増する一方で、さまざまな課題や「リモートワーク疲れ」といった言葉も聞かれるようになってきました。官・民それぞれの立場から働き方のアップデートを推進するプロフェッショナルたちが、withコロナ時代の働き方の課題と解決策についてオンラインイベントで意見を交わします。本パートでは、「仮想オフィス(Remotty)」という新たな働く環境について紹介しました。

理想は働く場所がもっと自由になること

松本国一氏(以下、松本):箕浦さんのところは、今「ワーケーション」とかも推進しているじゃないですか。そういったものに行ってもらうためには、やっぱり固定したところで仕事をする環境じゃないほうがいいわけじゃないですか。

箕浦龍一氏(以下、箕浦):そうですね。働く場所がもっと自由に、そのときの都合に応じて選べるというのがたぶん理想的じゃないかと思っています。本当は出張の移動中、新幹線でも仕事をするんですよね。今は建前としてテレワークを許さない環境の会社って、あそこで仕事をしちゃいけないことになっているはずなんですけどね。

松本:なるほど。

箕浦:でも大方のビジネスマンは、けっこうタブレットだったり、パソコンを開いて何か仕事をしているわけですよ。

安達徹也氏(以下、安達):やっていますね。

箕浦:本当にリモートワークを「やっちゃだめ」と言ったら何をやるかと言うと、勤務時間中であっても缶ビールを買うわけですよ。

西舘聖哉氏(以下、西舘):はい。よくいます。

箕浦:そうすると「ワーカーにとっても、組織にとっても、幸せなんですか?」という問題のような気がしますよね。

松本:そうですよね。やっぱり今回の新型ウイルス騒ぎの後、たぶん「アフターコロナ」と言われる時代になると、もっと自由度が上がっていってもいいんじゃないかと思うんですよね。そのためのある意味、布石かなとは思っているんです。

「働く場所の自由」が社員の幸せにつながる

安達:アメリカだとそういう「働く場所の自由」ってけっこうあって、例えばうちで言うと本社はアメリカのシリコンバレーなんですけど、本社のリーガル(法務)の人間も「親の体調が悪いので、これから2ヶ月実家に帰って、実家で仕事します」という感じなんですよ。

それで何も不都合がなくて、周りも「ああ、そうなんだ」「親孝行だよね」みたいな、そんな会話なんですよね。もう当たり前。やっぱり社員からすると、体調が悪い親のそばにいられるってすごくハッピーというか、不幸中の幸いだと思うんですよね。

そういうことが許される環境と許されない環境でいうと、やっぱり許されたほうがいいと思いますよね。「働く場所の自由」は、社員の幸せにつながるなと思っています。

松本:そうですね。やっぱり……。

西舘:コメントから拾わせていただきたいものが1個あります。

松本:どうぞ。

西舘:「倉貫さんと言えば」のキーワードで、やっぱり“ザッソウ(雑談と相談)”のところが気になっている方が、事前質問でも今日のコメントでもありました。

社員同士の関係性のところでも、今日の顔をつきあわせてやるのもそうですし、やっぱり雑談・相談は社員からマネジメント層に対してとか、マネジメント層から(社員に)という部分もそうだと思うんですけど……。

そういうアドバイスというか、「今だからこそ、こうやったほうがいいんじゃないか」というのを、倉貫さんからお話しいただきたいんですけど、少しいいですか?

今後オフィスは不要になるか?

 

倉貫義人氏(以下、倉貫):そうですね。「今だからこそ」って(笑)。

西舘:まあ、「今だからこそ」というわけでもないんですけれども。

松本:まあ、まあ。普通にやっていることですね。

倉貫:大げさな感じ(笑)。

西舘:(笑)。何に気をつけていったらいいですかね? 

倉貫:そうですね。リモートワークを始めたばかりとか、ある程度始めて来られた方がこの1~2週間で増えたなとは思うんです。おそらく家で仕事をするというので、一定の集中ができたりだとか、もしくは逆にお子さんがいて集中できないというのもあると思うんですけれども、家で一人で仕事をするということが始まったなということですね。

おそらく今、本当にテレビ会議のシステムというのはたくさんあるので、問題なく時間を決めて会議ができるというのは、さっきお話ししたとおりです。

次にチャットを導入されるというのは定番ですね。「チャットを導入したら、メールの代わりにもっと早くレスポンスができるね」というところがあります。言ってみたらオフィスでやっていた仕事での会議室はテレビ会議に変わって、メールでやっていた仕事はチャットに変わったということです。席がオフィスじゃなくて自分の家の席ということです。

その辺のフィジカルな問題って、ある程度は解決できるんです。「じゃあオフィスはいらなかったのかな?」という話をしたときに、オフィスでやっていたのは何だったのか(と考えてみます)。

オフィスがある意味は「雑談と相談」のしやすさ

倉貫:僕は「ちょっとした雑談」ってよく言うんですけど、雑談と相談ってあまり区別がつかないなと思っています。ふだんから相談するには雑談していたほうがいいし、雑談している人には相談しやすくなるから、合わせて“ザッソウ”と呼んでいるんですけどね。

ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」

オフィスで起きていた“ザッソウ”が「ちょっといいですか」という話だと思うんですけど、「ちょっといい?」というのが消えてしまうというのが、在宅勤務の一番の課題かなと思っています。例えば1日をスケジュールしたときに、会議が入っていないとしたら「誰ともしゃべらない1日」がある、みたいな。

西舘:ありますね。

倉貫:口を開かない、みたいな。それってオフィスに行っていたらありえるかというと、ありえない話です。もしありえるとしたら、本当に人間関係がないオフィスなので、それはやばいオフィスだなと思います。

つまり何かしらの、ちょっとしたコミュニケーションが取れなくなっているというのがあるので、そこを逆に意識していかなきゃいけないなというところはあるんだろうなと思いますね。それぞれのチーム毎だと思うんですけど、「ちょっといいですか」というのをどうやって工夫するかが、これから大事なポイントになると思いますね。

安達:うちはSlackを使っているんですけど、コロナ以降Slackの中での雑談が劇的に増えましたね。あらゆるところで雑談が走っていて、むしろ「雑談をしかけるやつ、いいじゃん!」みたいな感じになってきているんですよね。

西舘:そこも文化ですよね。

対面コミュニケーションなしでも、雑談と相談ができるカルチャー

安達:倉貫さん。ちょっと、おうかがいしたいんですけど。

西舘:いいですよ。倉貫さんに。

安達:(発言をゆずるかたちで)箕浦さん、どうぞ。

箕浦:“ザッソウ”が大事ってすごく共感できるんですけど、倉貫さんにぜひお聞きしたいなと思っていたのは、ソニックガーデンさんの場合って先ほどの新入社員とか、(オフィス勤務でスタートする)僕らだとベースにあるはずの「対面のコミュニケーション」がほとんどないところからのスタートになるじゃないですか。

そういう中で、“ザッソウ”みたいなことを組織のカルチャーとして定着させていくってなかなか難しいと思うし、対面のコミュニケーションのベースがない中で、オンライン前提でチームが動いていくというのは、それなりに難しいことじゃないかなと思うんです。それを実現されているのは、どういった工夫やコツがあるんでしょうか? 

倉貫:そうですね。まず、どこからお話しするかと言うと、環境面とカルチャーと両方あるなと思っていますね。雑談やコミュニケーションすることを是としているカルチャーではあります。

「仕事以外の会話をしてはいけない」とか、言ってたらオフィスにいたとしても「雑談してんなよ!」「ちゃんと手を動かせ!!」というカルチャーだと、やっぱり雑談がしにくくなるんですよね。

西舘:あります、あります。

「仮想オフィス」を導入

倉貫:それってどういう仕事だったのかと言うと、昔はおそらく本当に「手を動かすこと」が仕事だった時代があって、それが戦後まもなくとか、大量生産とか、工場だとかという日本の製造業の文化というところは、たぶんある程度、手を動かさないと成果が出ない。なので「雑談は休憩であって、手を動かすところが仕事です」という発想だった。

ただ現代社会において、本当にただ手を動かすだけの仕事というのがかなり減ってきていて。おそらく誰かとコミュニケーションしたりして難しい問題を解決する仕事が増えてきたので、そうしたときに一人きりで考えて手を動かすだけでは解決できないわけですね。

誰かと話して解決できるというふうに仕事が変化したので、コミュニケーションすることが大事だと感じています。

それであれば、「雑談はだめだけど、仕事ではコミュニケーションしなさい」と人間に言っても「これ……どこを話していいのかな?」とか、「話しちゃいけないのかな?」となってしまうので難しいと思いますね。

だとしたら「コミュニケーションの多いほうに倒しきるというふうにしましょうね」というのが会社全体の方向性。「そうすることで生産性が上がるよ」というふうに、トップの私自身がそこを考えて発信しているというのが、大前提のカルチャーです。

その上で対面がないので、どうやって気軽に話しかけるのかということですが、僕らはすごくシンプルな話で、昔はオフィスがあったので、オフィスではそれができていたんですね。オフィスで「コミュニケーションをするカルチャーはいいね」としたのでできていたんですけど、オフィスがなくなったのでどうしようかというところですよね。

会議室がテレビ会議に変わって、メールがチャットに変わった。同じように「じゃあ、オフィスの代わりは、仮想的にオフィスを作ろう」と言うことで、バーチャルに仮想オフィス(Remotty:リモティ)を作ったんですね。

これはインターネット上に出社して、みんながそこで働くというものなんですけど、そこに出社して働くと……。これはせっかくのYouTube配信なので、実際の画面をご覧いただきましょう。

安達:いいですね! 

西舘:お願いします。倉貫さんたちの仕事風景ですね。

倉貫:……と思って、さっき見たんですけど、今20時じゃないですか。弊社はホワイト企業なので、みんなもう……。

安達:(笑)。なるほど。

松本:ホワイト企業だ。

倉貫:退勤しているので、昼間の動画をちょっと撮ってあるので……。

西舘:準備がいい! さすがです。

倉貫:それをご覧いただくのがいいかなと思います。

(動画再生) 

西舘:見えています。

箕浦:おもしろい。

リモートワークの心理的なハードルを下げる方法

倉貫:これが今、昼間の僕らの様子ですね。見ていただくとおりで、いっぱい顔が映っているんですけど、これはみんなの仕事中の様子ですね。これはリアルタイムの写真というか、パソコンのカメラで、テレビ会議で使うとき用のカメラと同じもので撮っているので、ほぼリアルタイムで動いています。アイコンじゃないので、けっこう油断した顔をしていますね。

(一同笑)

あとは、(仮想オフィスでは)席を見たら居ないというのがわかるんですね。基本的によく「話しかけにくい」という理由として、「居るか居ないかわからない」ということがあります。いろんなチャットツールはとてもいいんですけど、相手が居るか居ないかわからないというところがあって、話しかけにくいんです。「じゃあ、ぱっと見でわかるようにしましょう」ということで、撮影してやっています。

そういうことで、朝にみなさん「おはようございます」と言って(仮想オフィスに)出社するんですよ。仕事中はみんなずっとこういうふうに入っていて、コミュニケーションを取っています。何かあったらすぐに「ちょっといいですか」と言って、こういうふうに話をしたりとか、相談したりだとかしています。

(仮想オフィス上に)自分の席があるのでいろんなことを、(例えば)スケジュールを書いたりだとか、これは副社長の席なので、副社長の席と書いたりとかできます。

そこで会話をする。人のところに行って、会話する。独り言を書くと(仮想オフィス画面の)右側に流れるんですけど、右側に流れても通知はいかないんですね。チャットだといっぱい通知がいっちゃうので書きにくいんですけど、通知がいかないので気軽に書いていいんですね。だから「こんにちは」という感じでみんな書いています。「こんにちは」「やりますか」……。

安達:本当だ。つぶやきが書いてありますね。

倉貫:これは、この人たち同士で会話して、オペレーション、リリース作業をやっているんですね。これも場所が離れた人たちでやっていますね。「ちょっと話せますか?」って書いてありますけど、「ちょっと話せますか?」ということも普通にやっています。これって、「ちょっと10分ぐらい話したいです」みたいなオフィスの風景ですよね? それでテレビ会議が始まるということを、よくやっています。

こういう感じでやるので、先ほどの話で言うと新入社員には「毎朝9時になったらここに出社してね」と言って、別に僕らはスーツは着ないんですけど「出社するときはちゃんと出社する格好で、パジャマとかじゃなくて出社してね」と言うんです。

新入社員はここに出社して「おはようございます」って言って、1日仕事をして、「お疲れ様でした」と言って終わるという働き方をしているという感じですね。

箕浦:なるほど。ありがとうございました。

オフィスの“いいところ”をデジタル化したツール

松本:これはやっぱり社員間同士の距離感というか、情報量も含めて、「限りなくオフィスのいいところをデジタル化したら、こうなるよね」という方向に行っているじゃないですか。

倉貫:そうですよね。機能的には本当にオフィスの代わりになる感じですね。

安達:プラスアルファもある気がしています。雑談って、オフィスだと直接会話するので同期型のコミュニケーションになるじゃないですか。でも、これ(仮想オフィス)だと独り言をしてしばらくたってから反応が返ってくるとか、そういう非同期の雑談みたいなのも発生しますよね。これは、デジタルのいいところかなと思います。

倉貫:そうですね。デジタルになって(仮想オフィスの画面で)右側を見ていくと、社員たちがコミュニケーションを取っているのが見えるんですよね。

テレビ会議が始まっちゃうと中身は当然聞けないんですけど、さっきも見たように「誰かさんと誰かさんが相談し合っているな」とか、「誰かと誰かが作業をしているな」というのが見えるだけで、これはマネジメントしている立場からすると、非常に安心感がある。一緒に働いてくれているだけで、すごく安心感が持てますよね。

松本:やっぱり、マネージャー層が不安に思っているじゃないですかね。テレワークを始めるとみんなが見えなくなるから、どんな仕事をしているのかというのを知りたいという人たちも多いんですよね。これはまさにそれらの「見える化」がきっちりとされていて、ものすごくいいツールだと思います。

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