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自分を動かす 〜自分もチームも瞬時に動かすスゴイ方法〜(全5記事)

伊藤羊一氏、篠田真貴子氏らと考える、同僚に自分の「好き」を理解してもらうコツ

2019年で開催7年目を迎える「Tokyo Work Design Week」は、“働き方の祭典”として、のべ2万人が参加。今回は渋谷をはじめ、横浜・大阪・韓国などで開催されました。本セッションには、『0秒で動け』著者で、Yahoo!アカデミア 学長・伊藤羊一氏、篠田真貴子氏、ONE JAPAN・濱松誠氏、Tokyo Work Design Weekオーガナイザー・横石崇氏の4名が登壇。「自分を動かす 〜自分もチームも瞬時に動かすスゴイ方法〜」のパネルディスカッションのパートをお送りします。

自分の「好き」を出せる環境をどうやってつくるか?

横石崇氏(以下、横石):いったんここでシェアタイムを取りたいなと思っております。みなさん、またノートやパソコンを出してもらって申し訳ないんですが、一度立ち上がっていただいていいですか? 

篠田真貴子氏(以下、篠田):濱松さんも立ち上がってください。

横石:濱松さんも立ち上がってください(笑)。じゃあ、また同じペアにしましょう。同じペアになっていただいて、今ちょっとお話を聞いて自分が思ったことをシェアしてみましょうか。また30秒ずついきましょう。

3人でお仲間を作っていただければと思います。次は眼鏡が似合いそうな方。眼鏡をかけている方じゃないですよ。眼鏡が似合いそうな方からスタートしてください。

(30秒経過)

はい、みなさんありがとうございます。拍手で終わりましょうか。

(会場拍手)

すごい盛り上がりですね。お座りいただきましょうか。ちょっとここで「こういうことを話したぞ」とか、質問のある方についても聞いていきたいと思います。(参加者を指して)ここのペアがすごく盛り上がっているみたいなので、どういう話をされたのかちょっと教えてください。

参加者1:僕は、「そもそもから考えるのは僕も好きだ」という話をしました。言葉に出会ったり漢字を見たりしたときに、その語源や成り立ちに立ち返ると、実際に自分が考えていることに行き着くと思ったので、その事例をお話ししていました。「なぜ?」を問うよりは、そもそもを問うことがすごく大事だなと改めて思いました。

横石:ありがとうございます。

参加者2:ちょっとうまく言葉にまとまらなかったんですけど、先ほど篠田さんのお話であった、「周りの期待に合わせて、自分は『これが好き』『これが嫌』を出せない」という人が多いと思うんですよね。

そういう考え方をしてきている人たちの中では、それができると思うんですけど、今の社会だと、もともとの教育では「自分の好きを出していいよね」とか、そういう考えがなかった。

そういう考えがなくて育ってきた方たちの年齢が上で、しかもそれが強い。そういう方の意見が強い環境がたくさんあると思うので、その中で一人ひとりが自分の「好き」を出して、「それ、いいよね」と受け止め合える環境にしていくためにはどうしたらいいんでしょうか。

横石:篠田さんにご質問ですね。うかがってみましょうか。

参加者2:お聞きしたかったので。ありがとうございます。

周りに期待するのではなく、自身を変えていくのが大前提

篠田:私ががんばってお答えしてみます。この後のセッションは「人を動かす」というテーマなんですけれども、私は、周りの人が変わるのを期待することは無理だと思ってるんですよ。結果的に、変わることはあるかもしれないんですが、周りに期待するのではなく、自分と自分の内面を変えていくしかないことが大前提です。

今の話でいくと、方法の幅はあると思うんです。そうは言っても、年上の方でも会話が成り立つ相手であれば、違いは解消しないんだけれども、そこに関するお互いの考えをじっくり聞き合うのは、私にとっては意外と有効です。

その方は変わらないんだけど、「なるほど、こういう経緯なんですね」「こういう人生やキャリアを送ってこられたから、この方は『やるべき』をすごく大事にされているんだな」とわかるだけで、相手を少し受け入れられるんですよね。

自分はともかく、「この人と仕事をしている限り、それを尊重しようかな」という気持ちになるのが1個です。この反対は「もうやってられないよ」と言って、自分の個人的な思いが歓迎されるような環境を探しに行くことです。この間の組み合わせだなとは思います。

横石:伊藤さんはどうですか。

伊藤羊一氏(以下、伊藤):前者のほうですね。人は案外コミュニケーションしていないんですよね。なんとなく勝手に想像するとか、観察結果だけで判断していたりする。「きっとこうに違いない」みたいに思い込んでいるところがあるので、そこは少なくとも対話によって「なんでそういうふうに考えているんだろう」というのがわかれば、受け止めてみるみたいな。

そこが変わればいいし、変わらなくても「あ、そうか」と。まさに篠田さんがおっしゃっているように、「だからこうなのね」と理解するだけでもちょっと違うんですよ。対話ですよね。

ヤフーに来て1on1をするようになって改めてわかったんですが、みんなは1対1のコミュニケーションを案外していないんですよ。なんとなくしているふうなんですけど、真正面で向き合わないところがあって。

篠田:聞いてないんですよ。言いっぱなしで。

伊藤:そう。だからちゃんと対話するのが大事。

オフィスを「プラプラ回って雑談」する意義

横石:よく対話という話になったときに、「上司と1対1で飲みに行かなきゃいけないの?」と思う人もいると思うんですよ。

伊藤:飲みに行く必要はないですよ。飲みに行って2時間もしゃべっているのは大変だから、飲まなくてもいい。例えばヤフーでやっているのは、上司・部下だけじゃなくても気軽に1on1するんですけれども、1回約30分です。

1回しゃべるだけで、ずいぶん違うんですよね。もっとしたければ1ヶ月に1回でもいいし、もっと頻度が高ければ1週間に1回でもいいし。1対1の場を作ることはすごく大事だと思うんですよね。

横石:そうなったときに、さっき篠田さんがおっしゃっていた、その人の人生や人となり、それこそさっきのライフチャートみたいに羊一さんが出してくれれば、その人の人生がわかる。それで少し把握できると思うんですが、職場だとそういう「人生とは」みたいなトークはなかなかしづらいじゃないですか。

伊藤:1対1で部屋に入ってしゃべると「別に」みたいな感じになっちゃうのはあるんだけれど、それはその前の段階で勝負が決まっていると思っていて。

要するに、前の段階でMBWA(Management By Walking Around)がある。英語で言うとそれっぽいんだけれども、要はプラプラしながら雑談ですよ。プラプラしながら雑談で「うわー、その赤いシャツ素敵だね」「あれ、先週〇〇に行くって言っていたよね」とか。

そんな話をいろいろ投げることで、気軽な話ができる環境を1on1の前に作っておかないとだめですよね。それはもうMBWAですよ。

横石:かっこよく言いますね(笑)。

伊藤:プラプラ回って雑談ですが。

Mustへの「拒絶」をどう解消するか

横石:ありがとうございます。じゃあここで質問とか、もう少しここを深掘りしたいとか、聞いてみたいと思うことがある方がいらっしゃいましたら、挙手いただけるとありがたいなと思います。

(会場挙手)

参加者3:Must・Can・Willの考え方は、私は26~35歳の時代は過ぎて、まさにそういうものだなと思っていました。でもMustという「〇〇をやらなきゃいけない」という言葉は、結局どんな大人になるかによってぜんぜん違う。

あと、やらなきゃいけないこともぜんぜん違うんですね。だからMustという言葉というか、「やらなきゃいけない」という言葉にはたぶん拒絶感が出てきちゃうので、なにか別にいい言葉がないかなと思いまして。

伊藤:「使命」じゃないですか?

参加者3:いや、使命は重いなあ(笑)。

伊藤:どうすればいいんですか、じゃあ!(笑)。

参加者3:例えばゲームで言うミッションというか、タスクもちょっと重いですけど。たぶん、「やらなきゃいけないこと」という言葉で潰れちゃうんですよね。

篠田:私は、そこは「約束」だと思っています。Mustは、自分の中で約束にしていて。「一方的にやられた」と思うと、重さやしんどさがあるのはおっしゃるとおりです。でも、どこかで自分も本当に嫌だったら「嫌です」と言っていたと思うので、無言でも受けたことは約束をしているんですよね。

なので、それは自分でも約束したと思うようにしています。それで「しまった」と思っちゃったらどうするか。

うちの子どもたちにしている話をしてもいいですか? 小学生の低学年の頃だと、よく「宿題が嫌だ」とか言って家で泣いたりするんですよね。

そのとき、子どもたちには「いや、今日の宿題は先生が『これ、宿題』と言ったときに『はい』と言ってきちゃったんだから」「それは約束しちゃったんだから、とにかく人として約束は絶対に守らないとだめ」と。そういう意味では、Mustは「約束を守る」だと思っているんです。

だけど、明日先生が「宿題」と言ったときに嫌だと思ったら、「『嫌だ』と言ってよし」と。「嫌だ」と言う自由は小学1年生にもあるわけです。そのうえで先生に「とはいえ、やってください」と言われたらしょうがないんだけど。我々は奴隷じゃないんだから、本当はMustに一方的な義務はないんですよ。

Mustの「重荷」は成長のために必要

参加者3:その言葉が人によって意味を持つと思うんです。

篠田:それはその方ごとに意味を考えればいいという話ですかね。

参加者3:学ぶのはMustかもしれないんですが、それをやるかはその人の選択肢だと思うんです。でもMustと言われちゃうと、やるまでそういうふうに感じちゃう。だから学びだけMustで、「やるのは選択です」を表すいい言葉がないかなと思いました。

伊藤:なるほどね。ただ、ちょっと話がそれるかもしれないんだけど、「やる」「やらない」「やらなきゃいけない」も、全部自分の選択になってくるんですよね。その言葉は確かにそのとおりで、ちょっと話がずれます。

昨今、それをなぜ差し込もうとするかというと、「やりたいことをやりましょう」「自分の選択」という話があまりに強くて。それをやっていると、なんにもやらない人が出てきたりするんですよね。

おっしゃっていることがわかったうえで「そうだよね」と思いつつも、「けっこう修羅場をくぐることで人は成長するよね」と言いたいところもあります。でも、そこはいつも言わないで、悶々とするわけです。「いや、修羅場をくぐらないと無理じゃん」みたいにね。

おっしゃっているところがわかったうえで、僕は「そこの重荷みたいなものは、実は成長のためにけっこう重要じゃない?」みたいな思いも一方ではあるんですよね。

「人を動かす」は難しい

参加者3:おっしゃっているところはわかります。「やりたいことをやりましょう」とか、Willの前にやることがあることは、通り過ぎた人間はわかっているんですけれども、Mustや「やらなきゃいけない」となると、絶対に拒否感が出るんですよ。

伊藤:そうですね。約束はどうですか?

参加者3:約束もだめですね。

伊藤:(笑)。

参加者3:そう思います(笑)。人によっては違うかもしれないんですけれども、つまり、やるのは選択権があることを含む言葉があればいいなと思っています。選択の結果、やらなくてWillが完成しないなら、それはそれでいいんですけれども。

篠田:今おっしゃっているのは、他者に働きかけるときにMustという言葉を使うと、その相手が動きづらいという状況ですか? 

参加者3:相手です。私は言われて鍛えられてきたから、しょうがないなと思っています。でも、この時代の人間と、今の時代の人間はちょっと違うので。

篠田:相手であれば、それはすみません。さきほどの約束の話は自分に対して言っちゃいました。さっきの繰り返しになるんですけど、人を動かすのは私は無理だと思っています。相手がそれを受けたくないと言うんだったら「あ、そう」「以上」という感じになります。

横石:そこにWill・Canは必要ない? 

篠田:そこには入れないですね。

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