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トークセッション2部(全2記事)

嘘だ、騙された、虚業だ 幾多の修羅場をくぐり稀代のリーダーへーーサイバー日高副社長が「藤田晋論」を熱弁

2019年7月21日、就活生向けキャリアイベント「PRESIDENT ~最強のNo.2が語る平成のトップリーダー~」がサイバーエージェント本社で開催されました。同イベントにはソフトバンクグループ 元社長室長の嶋聡氏と、サイバーエージェント取締役副社長の日高裕介が登壇。稀代の経営者を間近に見てきた両名が、リーダーに必要な素養やこれからのリーダー論などを語り尽くしました。この記事では、日高氏とCyberBull代表の中田大樹氏(モデレーター)によるトークセッション2部の模様をお届けします。起業当時から藤田晋社長とともに困難を乗り越えてきた日高氏は、藤田社長のリーダーシップをどう分析しているのでしょうか。

藤田社長が飛躍できたのは、修羅場を経験できたから

中田大樹氏(以下、中田):日高さんから見て藤田社長がリーダーとしての成長や飛躍したと思えるポイントはあるんですか? 

日高裕介氏(以下、日高):そうですね、社長もいくつか本を書いているので、自分が大事だったポイントを本に書いてると思うんですけど、やっぱりたくさんの修羅場を経験することができたことですね。先ほどあったドットコムバブルみたいな。2000年がサイバーエージェントが上場した年で、1998年に会社を作って、その後すぐにインターネットがすごいと言って、株式が盛り上がって私たちが上場できた。

その半年後くらいにドットコムバブルが終わって、インターネットなんか嘘だと、騙されたみたいな話になっていって、株主を騙したみたいな。その虚業を見せて株価を釣り上げたということが言われて。もちろんそんなつもりはないです。だけどそういうことがあって、僕らは自分たちの考えているビジネスを証明したいというか、一生懸命なんとか大きな会社にしようとやってきた反骨心みたいものにはなっています。

そういったところを社長として乗り切っていってるし、アメーバのようなメディア事業を立ち上げたのも、インターネット広告事業の一本槍でやってきたところで、株主市場から期待される高い利益率であるとか、伸びるビジネスを考えたときには、広告代理事業というその粗利の決まったビジネスだけでは考えているようなスケール、大きさにはならないという理由があるんですよね。

メディア事業って、それまで営業しかいなかった会社にアメーバというブログを作ってそれから自分でビジネスをゼロからやって、自分で陣取ってやった。サイバーエージェントって、今でこそエンタメの会社とかメディアの会社とか、ものづくりの会社というイメージがついていますけど、それはもう藤田の意思で大きく変えたというところがあります。

サイバーエージェントが1番大きくなった理由というのは、やはりインターネット産業がすごい大きくなったから。これに尽きるんですよ。その外部要因がすごく大きい。そこの波乗りがよくできたということは忘れちゃいけなくて、自分たちがなにかすべてうまくやったということでは全然ないんですよね。

そういった中での割り振りで、この20数年サイバーエージェントが残っている。こういった活躍がちゃんとできているのは、そういった舵取りの判断をしっかりとしてきたからで藤田がやったことによって藤田自身が成長したというのは見ていても感じます。

大きな投資のタイミングを読み切ってやり切るのがリーダー

中田:すごく大きい意思決定を幾度かされていると思うんですけど、冒頭であまり議論するようなことなかったよみたいな話があったと思います。なんかそいういう意思決定の時って、日高さんが入るというか一緒に相談になってくるんですか? それともあんまりそういうのも話さないんですか。

日高:どんな感じだったかな、もわもわっと始まったかな(笑)。なんとなくもぞもぞ始まってなんかやりだしたな、みたいなのがあるんですけど。やっぱりトップの人間だけが見えている組織の行く先みたいなのがあるから、振り返ってみるとそれはやっておくべきだったなみたいなことになるんですよね。例えばアメーバをやっている時も、難易度は高い。

世の中的にもそうだし、社内的にもそうだし、(藤田社長の著作である)『起業家』って本を読めば分かりますが、社内的にも社長を止めてくださいというような機運があったりとかね。そういうこともあったりするくらい……藤田の中ではアメーバが正解かどうかわからないけど、メディア事業は会社として立ち上げないといけないと思ってたんですよね。例えば今はAbemaTVに注力をしているけれども、立ち上げたタイミングは広告代理事業もゲーム事業も調子がいいとき。

事業の調子がいいからそのままでいいじゃんって思う人もいるかもしれないけど、でもサイバーエージェントがほんとに大きくなる会社として考えたときに、やはり大きなメディアを、数年掛けて立ち上げていかなければいけないと思ったので、ほかの事業が調子がいい時に大きな投資ができるタイミングという、その読みをちゃんと立ててやっているわけなので、そういったものをやり切ろうとするのが、やっぱりリーダーかなと思いますね。

サイバーエージェントの当事者として見据える未来

中田:このまま最後のテーマにいきたいと思っているんですが、ちょうど1ヶ月前に藤田社長ともこのテーマをここで学生相手に喋った内容です。

どのスパンでもいいのですが、サイバーエージェントがこの先こうなったらいいなとか、こうしていくべきだ、という会社の未来像って、なにか具現化されているものとかってあったりするんですか?

日高:これは難しくて、21世紀を代表する会社がなにかというと、サイバーエージェントは創業した時からベンチャーとしてやっていると。

僕のなかでも定義がけっこう難しくて、曖昧だったりもするんですけど、若い人たちが成長して自分たちで市場を作っていく。社会的な役割もあるというようなものを、自分たちでやりたいとすごく思っているんですね。

誰かにやれと言われたような仕事はやりたくないし、大企業には絶対入りたくないって。といったところからスタートしてるというか、そういうものが自分の中ですごく大事なものとしてあって。

「サイバーエージェントさんも大企業だよ」と言われればそうなんですけど。大企業というか、大企業病的なものが嫌いだったんですよね。「サイバーエージェント、こういうものだよね」「こういうふうに動かなきゃね」「じゃあまず自分で学んで」みたいなことではなくて、やっぱりサイバーエージェントの当事者として、いろんな若い人たちが自分でこれをやりたい、この市場を作ってやろうと思いやるのがいい。

1万人とか2万人と、会社がどれだけ大きくなっても、21世紀を目指すサイバーエージェントというものがあったときに、自分はどの高いレベルのものを目指しているか。じゃあ1番大きな動画サービスを作ろうでもいいし、世の中で1番役に立つようなサービスを作ろうでもいいし、なんでもそれはよくて。

そのレベルがすごく高いかどうかと。個人が持ってるもの、組織が持っているもののレベルが高いか。(会社が)大きくなったらできるかどうかというのも、少し不安ではあったんですが、今はできていると思うし、これを会社の文化として続けていくことが大事なことかなと。

企業規模が大きくなっても“超”ベンチャー

中田:さっきの嶋さんの話でも志というものがビジネスにおいて、リーダーにとっても経営陣においてもすごく重要という話があったと思うんですけど。そういうところにも、通ずるところがあるんじゃないかなと思っています。サイバーエージェントって、けっこう大手っぽく見られると思うんですけど。

この間Twitterでも書いたんですけど、中で当事者としてやっている身からすると、本当に華々しい仕事ってほぼなくて。泥臭くやっているし。みんなが思っているほど甘くない部分(があって)、もちろん自分も甘くないと思ってやっているし。ビジネスってそういうものだし、仕組みがあってその中に入って、なにか回していくという感じではなくてですね。

なので、勘違いしないでほしいのは、うちはメガベンチャーだし、サイズも大きい会社になってきているし、フェーズでいくと大手企業と言われるかもしれないけど、中で働いてる僕たちもそうだし組織の中というのは超ベンチャーというか、超ドベンチャーだと思ってるし、挑戦してやろうと思ってるし、いつかもっとでかい会社を作ろうとかというのを思ってみんなやっているメンバーが(多い)。

というのは、僕の話なんですけど個人的に思ってることなので、みなさんに伝えておきたいなと思っています。

自己分析には何の意味もない

中田:最後、あとたぶん3分ぐらいなんですけど、会社の未来の話と通じて、どういう人に入ってきてほしいかみたいな話を、日高さんに聞きたいと思っていまして。

今21世紀を代表する会社を創るという話があったと思うんですけど、そういう中で求める人材の層って、当時から変わってないのか。これからの話とこういうスキルもほしいよとか、こういうマインドセットが欲しいよ、みたいなのとかってあったりするんですか?

日高:スキルみたいなものは、自分の目的がしっかりあれば身に付く。それはいつからでも身に付く。社会人になってからでも全然身に付くと思うので、僕個人的にいうと、自分の中になにがあるかをよく見てほしいなというか。

サイバーエージェントは成長を続けてきていて、目立った会社になってきているというところもある中で、自分だったらなにをしていきたいかということをよく考えてみてほしい。それは具体的なことじゃなくてもいいと思うんですよ。僕ももともとビジネスがしたかったわけではないというか、お金儲け=悪いことみたいなイメージがしばらくあって。

就活の時とか社会人になった当初もそういうのがあってすごい苦労したので。なので、そういったものを乗り越えて、高いレベルで仕事を自分でとらえることができるようになるまで、自分はなにがしたいかということを考え続けるといいのかなと思いますね。

中田:ありがとうございます。

日高:あと、僕らの当時というのは企業の実態を把握するのはとても難しかった。

すごくいい会社だよと、こういう会社だよと言えば、それで一旦なんとかなる。学生も当時、いわゆる自己分析みたいなのが流行ってて、企業にどうよく見せるかを悩んでたんですよ。これって、なんの意味もないと思っているんですね。

なので、例えばサイバーエージェントを知ろうと思ったら、ネットを検索してもらっても、藤田のインタビューとかいろんなものを見ても、社員のそのつぶやきもね、見ればたくさん出てくるんですよ。

まさかこんなに続けるとは思わなかった

これは嘘をつくのはすごく難しい状態というか、会社のことはよく理解できる。なので、そういったものを見て疑問に思ったこととか、ここは自分がもしかしたら働く場所として合っているやこういう人と働きたいというのがもしあったら、積極的に社員とも話してもらって。共感できるかどうかということが、就活していくにあたっては大事かなと。

なにがしたいか具体的なものもあるし、それは話せばいくらでもあるんですけども。働くというものは、自分の中にすごく大事な……僕も20何年間もサイバーエージェントをやってますが、まさかこんなに続けるとは思わなかった。大変なんだけど。でもやらなければいけないというか、やるとすごく楽しいし、自分の中ですごく大きな意味を持ってくるので。

そういったものになれるような働き方が、サイバーエージェントに限らず、変な話お金を稼げるとか、流行ってることができるとか。そういったものを乗り越えたその中に、自分が働くとはなにか(を問い続け)、(やりたいことを)見つけられる、自分の中にある(という状態を作る)。それを人にどう説明するかは置いといて、自分がよく理解しとかないと周りに流されちゃうから。

「これ流行ってるよ」とか、「この企業がいいよ」みたいなものに流されちゃう。今、情報がいくらでも取れるんでね。そういった自分をよく知るというのは大事なことかなと思ってます。

ひとつの失敗で会社は死なない

司会者:日高さん、中田さん、ありがとうございます。

日高:質問いっていいですか?

司会者:どうぞどうぞ。大丈夫です。

日高:ごめんなさいね。

中田:すみません、じゃあちょっと2個くらいピックアップしたいんですが。(学生の質問リストを見ながら)あ、これ、聞きたい。(スライドを差して)ちょっと上に行ってもらってもいいですか。「大きな失敗したときに本人や周りを含めどのような対応をされるか?」。これってリーダーとしてというスタンスもけっこう求められる場面だと思っているんですけど、なにか日高さん的に考えているスタンスとかってあるんですか?

日高:この場合はリーダーが?

中田:リーダーがですね。

日高:自分が?

中田:自分がですね。

日高:自分の失敗というのは、仕事でいうと自分が若い時でスキルが少ないときとかだと、その影響は、世の中、会社でもあまりなくて、それやったら会社が潰れるかどうか、会社が大きく傾くかみたいなのって、これは藤田も言っているからいいと思うんですけど、AbemaTVがうまくいかなかったところで会社は潰れないんですよ。

赤字幅は年間200億と、とても大きなものなんですね。だから本当に神経を注いでやっているというものなんですけども、じゃあリーダーとしてなにを見ておかなきゃいけないのか。要はこけたら死んじゃうというのはだめなんですよ。企業としてリーダーとして絶対に譲れない。

なので、僕が例えば若いリーダーになにかを任せる、中堅のリーダーになにかを任せるという時も、こけたものは会社にとってすごく大きな損になったとしても、会社が死なないという自分なりの算段はつけておかなきゃいけない。それが責任だと思っているので。なので何でも任せているわけじゃない。範囲はある程度決まっている。

藤田社長がよく話す「事業のこけ方」

日高:ただその失敗においては、じゃあAbemaTVが失敗したとして、じゃあ次なにを大きな取り組み(として)、どのタイミングでやるか。その時期にあるのか、その時期になければそれまでちゃんと力を蓄えて、また大きな取り組みをやるだけなので。どこかで失敗したものというのはいい経験をしたと思うので。

良い経験になったかどうかはその人がどれほどコミットしてやりきったかということにもよるんですけど。なので、その自分の中での俯瞰したこのサイズの失敗は、会社がつぶれない、自分の事業はつぶれないという見極めは、年齢とともにスキルをつけないといけないところがあるのかなと。

中田:これは僕らに対しても、藤田社長がよく話してくれることで、こけ方みたいな話なんですけど。新しい新規事業をやるのはいいけど、その新規事業がこけても、何度も日高さんがおっしゃった会社がつぶれないように責任を設計をしとかないといけないみたいな話は、すごく社長もよく言ってるよなって、日高さんだけじゃなくて。

麻雀の読みに通ずる、藤田社長の仕事術

日高:そういう意味では藤田のタイプとしては、ベンチャー企業とかいわゆる企業の社長とかでもイケイケに見えるんですけど、そうじゃないところがすごくある。今いろんな事業、社長がアドバイスや戦略会議とかやってるんですけど、ある事業についてはもっと行かなきゃなと言うんだけど、その事業は見込みが大きくなることはないから、無駄な投資をして消耗するよりも、このまま機会を図ったほうがいいというようなこともよく言っているんですね。

それはその見極めをしないといけない。だからなんでもイケイケというわけではない。その見極めは市場とか自分たちの自信とか、その企業とか事業の体力とかで変わってくる。それが経験というか。藤田って麻雀みたいに場を読みながらここはいく、ここは待つ、ここは降りるというように、仕事のやり方を見ていると、麻雀っぽくやっているというのを常に感じましたね。

中田:たしかにあえて意思決定をしないというか、無理矢理決めてっていうのはあるなと思っていて。その話も社長もそうだし、僕の上司の岡本といううちの専務なんですけど、岡本もよく言ってるなと。そういうのがたぶんベースとして提示の中にあるのかなと思ったんです。ありがとうございます。

日高:もう終わり?

中田:終わりですね。

司会者:もう1問だけ。

自分がナンバーワンになりたいという考えはない

中田:さっき嶋さんとのセッションにもあったんですけど、ナンバー2であり続ける、ナンバー2というのは日高さんのキャリアとか人生の中の話でもあるんですけど。それは、自分はそこでやり続けようと思ってきたし、これからも思っているのか、いつかそうじゃない、ナンバー1のポジションに……。

日高:それも時々聞かれるんだけど、いろんな意味があると思っていて。やっぱり僕は藤田をずっと見てきているので、藤田は本当に大きなことを成し遂げようと思っているし、世の中から叩かれたりとか(もしている)。個人的に起業家を目指したいとか、社長を目指したいとか、自分で会社を作りたいという人はたくさんいると思うけど、ほんとにやりたい人がいたらぜひやってほしい。

俺は無理だな。あとは前に出るのが得意じゃないというのもあるし(笑)。あとはサイバーエージェントをやってきて、もう20年ぐらいやってきて、かなり神経注いで一生懸命やっていて、じゃあこれを別のとこでやれっていっても無理だなと(笑)。

そんな自分では持てないなというのが、自分でなにか新しいことやりたいというような、自分でナンバー1としてやりたいというのは頭にない。このサイバーエージェントの内部の中で新しいことをやるとか、そういったことはあるかもしれないですけど、トップになってなにかやりたいとかいう気はあんまりないと思いますね。

中田:ありがとうございます。じゃあ時間がもう終わりですね。

司会者:日高さん、中田さん、ありがとうございました。本当に日高さん、こうやって前に出ていろいろお話ししていただく機会って本当に少ないので。今日はみなさんいろいろメモを持って帰っていただいて、いろいろ活かしていただけたらなと思っています。改めまして、本当に日高さん中田さんありがとうございました。

中田:ありがとうございました。

司会者:大きな拍手でお送りください。

(会場拍手)

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