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優秀な人材採用を実現するための、潮流の読み解き方(全2記事)

1997年のあの時、日本の人事が揺らいだ 転職メディア一筋30年のキャリアから見る「中途採用」の歴史学

2019年5月29日(水)~31日(金)の三日間、人事業界最大級のイベント「第7回HR EXPO」が東京ビッグサイトで開催されました。「労務管理」「教育・研修」「採用支援」「最新のHRテクノロジー」などの人事サービスが出展したほか、ゲスト講師を招いた特別セミナーも多数実施されました。このパートでは、ルーセントドアーズ黒田氏による「優秀な人材採用を実現するための、潮流の読み解き方」の様子をお届けします。

時代の移ろいと採用戦略の変化

嶋﨑真太郎氏(以下、嶋﨑):ディスカッションテーマについてなんですが、「採用戦略はこのままでいいのか」です。時代の変化とか、何をPRとして発信していくのがいいのか、どうやって表現すべきかを黒田さんと一緒に話していきたいなと思います。

その前に、黒田さんから簡単にルーセントドアーズをご紹介していただきたいなと思っております。よろしくお願いします。

黒田真行氏(以下、黒田):今日はよろしくお願いいたします。黒田と申します。私、今ご紹介いただいたとおり、約30年前、1988年にリクルートに入社して、それ以降、転職メディア一筋に仕事をしてきました。

昔はまだインターネットがなかったので『とらばーゆ』とか『ビーイング』という市販の有料メディアの求人広告制作業務からスタートして、その後、求人メディアの編集や企画の業務を担当し、インターネットが登場してからは、リクナビNEXTの編集長などを歴任してきました。

最後の3年はリクルートエージェントという人材紹介部門のマッチングシステムの開発や事業戦略立案を担当しました。ありがたいことに、リクルートで勤務していた27年間、事業部をまたぐ人事異動がなかったこともあり、中途採用・転職領域においては、広告メディアの企画から人材紹介サービスの企画、求職者DBを活用する事業戦略立案まで一通り経験することができました。

5年前にリクルートから独立しまして、現在はミドル層、主に30代後半以上の方々の転職支援サービスで、今日お越しいただいているみなさんと同じような管理部門や営業系の管理職の方々のマッチング事業をメインにしております。

嶋﨑:ありがとうございます。黒田さんとは4~5年前ぐらいに出会いまして、アスタミューゼという会社に中途入社しました。ミドルのそういったマネージャークラスや部長クラスの層の転職支援をしているとご説明いただきました。

ちょうど僕も35歳を過ぎたところだったんで、黒田さんに「日本で一番おもしろい会社を紹介してください」と言った結果、アスタミューゼを紹介してもらいました。今、僕がここにいるのは、実は黒田さんにご紹介してもらったから、という経緯もあったりします(笑)。

黒田さんは人材紹介だけではなくて、やはり過去からずっと求人、とくに中途採用領域において、時代の移り変わりとともにビジネスをやってきた方なので。

すごく時代の変化へのキャッチアップ力は非常に早くて、さらにさまざまなテクノロジーがどんどん発達していく中で、どんなふうに採用戦略であったり、どういうふうに企業のPRを変えていけばいいのかをよくご指導いただいております(笑)。

みなさまにも今回のセミナーにおいて、なにか一つでもきっかけになるようなものを持ち帰っていただければ、と考えております。

1997年を境に中途採用市場に大変革が

嶋﨑:ではさっそく、セッションをスタートさせていきたいなと思っております。まず最初に、時代背景の変化について、黒田さんから少しお話をうかがいたいと思っております。

最近、AIやIoT、フィンテック、ブロックチェーン、ドローンなどもそうですし、センサー技術や生体情報のテクノロジーが発達してきている中で、やはりこの10年の時代の変化が著しいです。テクノロジーの変化、事業の変化、産業構造の変化だけではなくて、人材採用においてもどんな変化や影響があるのかをうかがいたいと思っております。

黒田:ちなみに今日いらっしゃってるみなさんは人事・採用に関わられてる方ですか? 会場の方に、挙手いただきたいんですけども。

(会場挙手)

おぉ。恥ずかしがり屋さんが来てますでしょうか?

(会場笑)

人事以外の方もいらっしゃるみたいなんですけど、基本、採用に関する環境や打ち手について、ヒントになることをお伝えできればと思います。中途採用市場に関して過去30年くらいで最初に起こった大きな変化はちょうど20年前の1997年です。

1997年がどんな年だったか少し振り返ります。1995年前後から登場したインターネットが一般に普及して、携帯電話とともに利用者が浸透していったのが1997年です。ほかに、経済環境で大きな出来事としては、山一証券という会社が自主廃業したり、北海道の拓銀が閉業したりという金融ビッグバンが起こった年でもあります。

この1997年が、雇用や採用に関しても、大きな時代の曲がり角になりました。大きく言うと昨今もニュースになっていた年功序列とか終身雇用の崩壊も、それ以前から話題にはなっていましたが、現実にはこの年前後からスタートしたと言っても過言ではありません。

「終身雇用はこれ以上継続できない」ということを、ついにあのトヨタが言いだしたのか、というのがつい先日のニュースでしたが、中小金融機関や家電メーカーなどで現実に導入がはじまったのは、この時代でした。

1997年以前の大きな事件として、1991年のバブル崩壊があるんですが公共工事への投資など政府の景気維持策もあり、すぐに大きな構造変化が起こったわけではありませんでした。そういう背景もあって、実態を伴って社会が変化しはじめたのが1997年で、潮の変わり目となったのだと考えています。

私の専門領域である中途採用市場領域で言うと、1999年に「人材紹介会社の規制緩和」があり、それまで経営管理者や高度技術者に限定された業界だったものが、「営業や販売職や一般職も、原則自由」になり、それ以降、一気に人材紹介業界の成長がはじまりました。

ハローワーク経由の採用が一番多い

黒田:次のページの資料は、エン・ジャパンさんが人事採用担当者の方に「今検討している採用手法は何ですか」と聞いたアンケート結果なんですが、1位が「インターネットの求人広告」。2位が「人材紹介」、3位が「ハローワーク」となっています。

人材紹介が一般的になったと言っても、まだまだ「求人広告を使う」と答えられてる人事の方が多いというのが現実です。このアンケートの対象企業は、正社員の中でも相対的に、年収がやや高めというかホワイトカラー中心に募集している企業だと思います。

一方で、例えば地方の旅館や弁当工場の社員などは「月給20万円前後」という募集が多く、圧倒的にハローワーク経路での採用が多いのも現実です。

このアンケートは、企業人事の方に聞いた中途採用手法なんですが、実際の中途採用の決定ルート別の決定人数1位は圧倒的にハローワーク経由です。

正社員といっても業種や職種があって、比較的年収が低いゾーン、アルバイト・パートに近いゾーンの雇用者数が多いということと、ローカルでの求人件数が多いことも含めて考えると、日本全国の年間の正社員の中途採用人数が200万人ぐらいだと思うんですが、そのうちの4割ぐらいがハローワークで手法別の第1位になっています。

そして決定人数ベースで第2位にあたる手法が「縁故」です。英語で言うと「referral」ということになりますけど、江戸時代からある採用手法である縁故採用が、日本の中途採用全体のだいたい30パーセントぐらいを占めていると思います。年間の中途採用人数200万人のうちの80万人がハローワーク、60万人が縁故ということになり、これが昔から変わらずツートップです。

第3位にようやく求人サイトなどの「求人広告」が入ってきて、20パーセント程度・40万人ですね。残りが5パーセントずつぐらいで、「人材紹介」が約10万人台です。

人材紹介とほぼ同じ数の「自社ホームページ・その他」には、企業のホームページなどのオウンドメディアリクルーティングや、大学既卒者が出身大学の就職センターに相談に行って採用されるケースなども含まれています。縁故に近いですが、それが10万人ちょっと、というような全体像となっています。

「人材紹介」経由での採用決定数は、20年前はたぶん年間5,000人ぐらいだったものが、今では15万人に迫ろうとしているくらいに急激に伸びています。そのぶん削られてるのが、比較的古くからある「求人広告」ルートの決定数。決定人数ルートの内訳では、まだまだ求人広告が圧倒的ですが、構造は確実に変化してきています。

これが規制緩和やツールやインターネットの進化によって起こっている地盤変化です。マクロの話なので1社1社の採用には直接関係ないように見えますが、ここの採用にも確実に影響は及んでいます。

探し方の多様化とブティック型サービスの台頭

黒田:次のスライドは、求職者の属性バリュエーションを俯瞰したもので、例えば「現在が正社員で、正社員のまま転職しようとしている人」とか、「フリーターから正社員になろうとしてる人」。あるいは転職先の選び方で、「自分が忙しいのでエージェントにできるだけ任せたい」という人もいれば、「自分で検索して探したい」という人もいます。

あと職種ですね。技術、営業、専門事務、一般事務、販売、サービス、技能など、現在職種と希望する職種の差異や、現在年収と希望年収、着地年収など、こういう属性によって、利用するメディアや適正なサービスが変わってくるという見方をします。

嶋﨑:これ、昔はあんまりなかったですよね。最近インディードさんのような求人検索型のような新しいものも生まれている中で、探し方も多様化してるんですよね。

黒田:そうですね、例えば職種ごとにセグメントしたメディアやサービスが出てきたりしていますね。リクナビNEXTやマイナビ転職、エン転職やDODAなどの大手サービスはどちらかというと百貨店型で、総合戦という感じです。

逆に規模は小さいが特化型のサービスは、たとえばアスタミューゼさんのように知財や特許技術者や研究職、開発職、専門職にフォーカスをしたり、医療系に強いエムスリーキャリアやエンジニアに強いギークリーやMS-Japanの管理部門専門の人材紹介なども有名ですね。

そういうセグメントごとのブティック型のサービスがどんどん増えてきたということと、あと探し方の手法ですね。媒体か紹介かの間に、データベースを開放してスカウトを使ってくださいというビジネスも登場しています。人材業界向けにデータベースを開放しているモデルもあれば、一般企業を対象にしたものの2種類があります。

また、職域の細分化とビジネスモデルの掛け算で人材採用支援サービスのバリエーションがどんどん増えてきています。また、採用支援そのものではなく、採用業務代行や、人事評価や人事管理と紐づける機能など、周辺業務のビジネスも多様化しているので、企業人事は自社の課題に合わせて、どのようなサービスを使い、どのようなサービスは使わないのかを見極める目利きも重要になっていると思います。

嶋﨑:そんな中で、採用の手法とか手段もかなり変わってきてると思うんですけど。求職者側が欠点を理解してきていると僕は思っていて。

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