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新時代に向けて、働き方本の大ヒット著者たちが語る 「新時代の自分の仕事をつくる術」(全5記事)

楽天・三木谷氏「囲い込みというか、引力なんだよな」 新時代のチームワークを読み解く“銀河系”の法則

2019年6月20日(木)、&Co.代表取締役であり「Tokyo Work Design Week」オーガナイザーの横石崇氏による新著『自己紹介2.0』の刊行記念トークイベント『新時代に向けて、働き方本の大ヒット著者たちが語る「新時代の自分の仕事をつくる術」』が、銀座 蔦屋書店で開催されました。本イベントには、楽天大学学長 仲山進也氏、キャリア・ポートレートコンサルティング 村山昇氏がスピーカーとして登壇。「仕事のモチベーション」「チームワーク」「自分らしさ」を軸に、働くことの未来像について語りました。このパートで語られたのは、「チームワーク」と「自分らしさ」。仲山氏、村山氏ともに共通していたのは、引力や重力という考え方でした。仲山氏が10年前に聞いたという楽天 三木谷浩史氏の言葉とともにお届けします。

本当に美しいチームビルディングとは?

仲山進也氏(以下、仲山):今度はチームワークの話でいいですか?

横石崇氏(以下、横石):そうですね。

仲山:チームワーク1.0は、工場でものをつくっているイメージです。大量の仕事をみんなで役割分担して、それぞれが習熟してレベルを上げ、いっぱいつくれるようになれば成功という、生産性が価値基準になっている時代。分業と統制のチームワークです。そこから進んで、お客さんが喜ぶかどうかが大事なのが2.0の世界観です。

分業をし尽くしていった結果、組織は縦割りになっていきます。分業したときは、ちょうどよく役割分担をしていたはずだと思うんですけど、周りの状況が変わると、「部署と部署の間に隙間が空いているよね」みたいなことが起こり始めます。何かが漏れていったり、ひびが入ったりする。

だから2.0では、もう一度ガラガラポンというかゴチャっと混ぜて、「今いるメンバーと今ある部署で、お互いの強みを持ち寄って組み合わせたら、こんな価値をつくれそうじゃない?」みたいな。価値の再発見、再編集というか、「会社全体をリソースとして見たときに新しいチームとして構成し直して、こんな価値をつくりました」とできると、ブレークするイメージです。

2.0からさらに進んで、会社の枠にとらわれずに共創するのが3.0です。会社が違う人と何かをやるとき、理念が共通していることが接着剤になります。逆に理念がないコラボは脆くなる。ブランド同士のコラボで、お互いが「向こうのファンの人が流れてきてウチで買ってくれたらラッキー」ぐらいに思っていると長続きしなかったり、そもそもうまくいかなかったりします。うまくいかなかったときは責任のなすり合いになったりする。

本当に意味のある、チームビルディング的に美しい共創やコラボというのは、理念が一緒で「この人と一緒にやりたい」という関係性があって「一緒におもしろいことやろうよ」と言って、一緒に考えて手を動かして試行錯誤しているうちにできてしまう、というイメージです。

同業他社ですらチームになれる世界

横石:2.0と3.0の大きな違いでいうと?

仲山:「会社」という枠の概念があるかないか。

横石:会社の閉じられてた部分をもう少し開いていくということですか?

仲山:「会社の中だけで完結させて考える必要ってなんでしたっけ?」みたいな。たとえば楽天市場には日本酒のお店がたくさんあるんですけど、みんな仲がいいんです。同業他店舗を敵視してパイの奪い合いをして勝ったとしても、そもそも国内の日本酒市場が縮小してるから誰も幸せにならない。

だったら同業者で集まって、「どうやったら日本酒業界が盛り上がるか」「日本酒を飲んでない人に飲んでもらうには何をやったらおもしろがってもらえるか」ということを考えて、実践したほうがいいわけです。だから楽天の日本酒店の店長さんたちは、リアルで集まるイベントのときに一緒に飲みに行って、アイディアを出し合ったりしています。自分のところに問い合わせがあった商品が欠品していたら、「あそこの店ではまだ売ってます」とメールを返すなどの関係性も自然に生まれているんです。

横石:そういう意味で、3.0には、コミュニティづくりやプロジェクトベース、フリーエージェントといったキーワードが出ているということですかね。

仲山:同業者同士のコミュニティはまさにそんなイメージですね。そのまわりに共感したお客さんたちも集まってくる。プロジェクトというのは、たとえば「日本酒の価値を再編集するプロジェクト」だとしたら、日本酒屋さんはみんなで一緒にやろうと思えるお題目、理念なわけですよね。そういう理念があると「同業他社ですらチームになれるよね」みたいな世界観が3.0かなと。

石垣からレンガブロック、そして銀河系へ

横石:なるほど。ここで村山さんにバトンタッチして「チームワーク」についてお話を聞いてみましましょうか。

村山昇氏(以下、村山):私も行き過ぎた分業からまた寄り戻しが来ているような感じで捉えています。チームワークということですけど、もう少し大きな意味で捉えて、タレントの集合離散をどうしていくかをみていただければと思います。

昔は石垣型だったんですね。いろいろ違うかたちの石をうまく組み合わせて家をつくるということです。昔の会社は、個性をいろいろ活かして、何か一つのことを成し遂げていた。「あいつはこれが得意だから」と目利きの棟梁みたいな人がいて、それをうまく組み合わせてなんとなくやっていた時代だったんです。

ところが時代が下ってきますと、レンガブロック型の人材活用、タレントの組み合わせが一気に進みましたね。これはどういうことかというと、社員一人ひとりの個々が持っている個性をある程度殺して、角を丸めて標準化し、採寸に合わせたレンガブロックに人材をつくり変えちゃうんです。

今の大企業ですと、等級制度、職能資格制度があります。 A1からA5まで等級を付けて、A1は新入社員から2年目ぐらいで「こういうスキルがあってこういうことができる状態」と定義する。A2は入社3年目から5年目ぐらい。「こういうスキルを取得してこういうことができるようになりなさい」みたいな。人材スペックと言うんですかね。要件があって、みんなそれができるようにがんばっていって、職能や等級などを上げていって給料も上がっていくわけですよね。

ある意味、大企業というのは何万人という人材を(抱えていて)、それをそのまま生のまま扱うとやりづらいわけですよ。ですからレンガブロックのように標準したレンガの大きさにそぎ落とした方がいい。しかもレンガって組み合わせ自由ですから、何か大きな建造物をつくるときにすごく便利ですよね。ですからシステマチックに人材を没個性的にしてしまうというのが、分業の最たる効率化です。

人材を「抱え込む」から「引き寄せる」への転換を

仲山さんのトークでもあった通り、分業しすぎるとダメなんだ。分業から統業へと寄り戻しがきて、今度はこっちになるわけです。やっぱり個は個で、きら星と輝く、個性を活かしたまま何かやりたいんですけど、もう石垣には戻れない。石垣のように融通の利かないことじゃなくて、個々が理念とかプロジェクトの使命とかを中心に、恒星の周りを回る惑星のように、銀河系を形成するように自由に回るということです。

それが組織に雇われる人雇われない人関わりなく、社内の人社外の人関わりなく、そこを中心に回って一つの銀河系を成していくというチームワーク系が、今後主流になってくるのかな。あくまで中心に強力な理念とか使命感だったりがないと、ここはうまく回っていかないんですが。

逆にそこが強力であればあるほど、いろんな人材が寄ってきて誰も頼みもしないのに人が集まってきちゃう。

これから企業はどれだけ人材を抱え込むか。鎖を付けて、報酬を年収1,000万円、年収1億円やるからと囲うというやり方じゃなくて、どれだけ魅力的なプロジェクトを発信して、どれだけ魅力的な人を社内外でネットワークできるかという(ほうが重要)。人材を抱え込むんじゃなくて、人材を引き寄せて磁石のようになれるか、そこに長けた企業が強くなってくるんじゃないかという気がします。企業という単位、チームという単位、大小ありますけど一緒じゃないかなと思いますね。

三木谷氏「囲い込みというか、引力なんだよな」

横石:2.0のレンガブロックから、いきなり3.0の銀河系。ギャラクシーにぶっ飛んでいるのは相当違いがありそうです。

村山:これ一足飛びに100社あるうちの100社が、全部こっち(3.0)に移行できるとは限らない。100社あるうちの1、2社がこっちにようやく行けて、残りはまだここ(2.0)でやっているという感じだと思いますよ。

横石:仲山さんみたいな人たちが集まっている会社は、3.0に移行しやすいと思います。先に人が突っ走ってというか、エネルギーを発してしまっている人がいっぱいいるような会社のことなんですが。

仲山:今の村山さんの話を聞きながら、10年以上前に三木谷さんが「囲い込みというか引力なんだよな」と言ったことを思い出しました。事業が提供する価値のことですね。「囲い込んでいくような策ばかりを考えていないで、魅力をつくれ」という話を朝会のときに言っていた記憶があって。それがまさに銀河系、真ん中に恒星があって、引力があって、周りを惑星が回ってていろんな星が寄ってきて(という図式です)。

あとこれを見て思ったのは、さっき振り子の話がありましたけど、振り子が螺旋になって、戻ってくるときは一周上がっているというイメージで考えるのが好きなんですが、村山さんの見立ては螺旋にあてはまるなと思いました。石垣型はそれぞれの個性は活かされ、矯正せずに使っている。レンガブロック型は全部規格を合わせます。銀河系型は凸と凹を、そのまま活かして魅力を使うので、石垣型と銀河系型は似ていますよね。螺旋を上から見たときに、同じ位置に戻ってきた感じ。

村山:振り子でこうきているので......。

仲山:それでいて石垣にはない「引力」が生まれて一段上がっているから、まさに螺旋だなと思ってこのスライドを見ていました。

他者に規定される「自分らしさ」からの脱却

横石:時間も少ないので、先に進めます。チームワークについてお互いの考え方を見ていただいたんですけど、3つ目の柱として、個の力があると思います。それを考えるうえで自分らしさをテーマに掲げています。ここに関しては、1.0から2.0というところで村山さんに挙げてもらっています。

村山:3段階バージョンから2段階バージョンへ変化。「これから働く人たちの自分らしさはどうなのかな」という過去と未来みたいな感じです。今までの働く人たちは自分らしさをどう考えていたかというと、相対的な差異化ということだと思うんですね。

自分というものを表現するときに軸があって、年収が誰より高いとか多いとか、自分は日立に勤めているけど、あの人はパナソニックでみたいなことを考える。常に自分と他人の定量的な物差しを使って「自分の位置はここだよね」(と認識する)。自分のアイデンティティーを自分でつくるというよりは、外から矢印がきていますよね。

昔から言われてますけど、日本人は自分のアイデンティティーや輪郭を、自分でつくっているのではなくて他人からの視線や他人からどう見られているかでつくっているんですよね。「自分は何々大学を出てどう見られているんだろう?」とか、「自分はどこどこ株式会社で」とか、全部他人の目から輪郭をつくってきたわけですよね。なおかつ相対的に自分がどこの位置にいるのかと気にしながら、自分らしさってどういうのかなと考えてきた。

それに対し、これからの自分らしさというのは、他人の目や比較相対を取っ払って、自分独自の悟りによって形成されるものになると思います。自分の内側に理念や哲学、使命など自分の何かやりたいものがあって、内側から矢印が出る。この理念、使命感、働く意味を満たすために自分は「こういう能力を持っている」「こういう意志で動いている」という内側から輪郭を規定し、膨らんでいく。そして、ようやく自分のかたちが見えてくるというところに移ってくるんじゃないのかなと思っています。

横石:膨らむということはもう少し具体的にうかがうとどういう......?

村山:やることがどんどん湧いてくるイメージです。「こういうことに自分は使命感を感じています」「こんな働く意味を感じています」といった内発的動機に満たされた状態だと、「このプロジェクトでは自分はこういう役割を進んで担おう」「こういう活躍をしよう」「こういう貢献をしよう」といったように、具体的な行動アイディアがどんどん湧いてくるということです。

横石:楽天の社員なのに、その会社の別部署でエア社員やってみたり(笑)。

仲山:エアで膨らんでいる感じ(笑)。

村山:仲山さんの最初の話でモチベーションの1.0は命令だったわけですよね、他由だったわけですよ。上司や組織から「あなたはこういう役割でこういう仕事をやりなさい」と振られて、受動的にやらされる感じだったのが、自発的にやりたいことがどんどん湧いてくる。それが膨らむというニュアンスで書いてますね。

横石:エア社員をやって膨らみっぱなしの仲山さんも2.0のほうかもしれないですね。同じように仲山さんにもスライドをご用意していただいてます。

「働く」を分解すると見えてくるもの

仲山:自分らしさのテーマなので『自己紹介2.0』に寄せて2段階にしようかと思ったんですけど、空気を読まずに3段階にしてしまいました。

村山:小分けで(笑)。

横石:1.0から見ていきましょうか?

仲山:漢字を分解するのも好みな作業でして、「働」は「人が重いものを力でうごかす」と分解できます。工場で働いている感じですよね。今村山さんも言われてましたけど、「どこの会社で働いています」とか「何をつくっています」というのがアイデンティティーを示す。それが1.0。次に、「人のために動く」というのが、お客さん中心である2.0の世界観のときの働き方です。

横石:うまくわけましたね(笑)。

仲山:働くことの意味として「傍を楽にする」というのは昔から言われていますけど、「誰のためにやるか」が大事です。というのは「お客さん中心」という表現は、「お客さんは神様です」というニュアンスも含まれるような表現かもしれないけど、こちらでお客さんを選んでいいと思っているんですよね。どういうお客さんに喜んでもらいたいかを考えながら、いいお客さんと一緒に商売させてもらう。トム・ピーターズの『ブランド人になれ!』という本が大好きなんですけど、「私のことを知りたければ私のお客さんを見てください」というフレーズがあるんです。「自分にとっていいお客さんと思える人を選んでいくと、お客さんを見てもらえれば私がわかるようになる」というのは理想の状態だなと。

「自分がお客さんに喜んでもらうためにどんなことができるのか」と、「自分の提供する価値を享受したお客さんがビフォーアフターでどうハッピーになるのか」がポイントになります。「あなたはお客さんをどうハッピーに変えられるんですか?」ということが、自分らしさとは何かの1つの視点になるのかなと。

「人を重力で引き寄せる」

仲山:3つ目が重力です。

横石:またうまいこと言いますね。「働」は、魅力的な活動をして「人を重力で引き寄せる」。

仲山:「仕事を遊ぶ」と書いてあるんですけど、他人が楽しそうにしていると気になりますよね。好みの遊びをやっている人を見つけたら、「入れて」と寄っていきたくなる。そんな仕事ができている人が活躍できるのが、3.0の世界だろうなと思います。重要なのは一緒に遊ぶ相手によって、おもしろかったりつまらなかったりする。同じ鬼ごっこでも、好きな友達とやっていれば延々とできる。

「なぜやるか」は、自分にとって意義があると思えているから、です。「どこの会社で何をやるか」よりも「誰となんのためにやっているのか」が大事になると思います。ほかに儲かりそうな仕事がいっぱいあるのはわかるけれども、たまたま一緒に遊びたい人がこういう人なので、お互いの強みを掛け合わせて、おもしろくて意味のある遊びをやる。そうするとみんな「入れて」と言って寄ってきやすそうだよねというイメージです。

横石:お二人とも言葉の違いはあれど、引力と重力という同じ方向を向いておられる。

村山:僕も大企業を経験しましたけど、人を権力で引きつけることが多いんですよね。部長でござい本部長でござい社長でございといったような権力の位置エネルギーで人を無理やり引きつける時代は終息していくというか、それで組織は永続しないでしょう。

仲山:権力で人を動かすのは1.0の世界。重いもの、やる気のない人、従業員を権力で動かすイメージですね。

横石:労働1.0ですね。

仲山:マネジメント1.0という感じですね。

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