2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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青野慶久氏(以下、青野):おもしろいです。ありがとうございます。残り20分くらいとなってまいりました。あといくつか拾えればと思います。次は人を招き入れる、採用するといったあたりの質問もいくつか来てます。
「そういう組織に新たに人を入れていくとき、何を見ればいいんでしょうか?」「ティール組織だとか、みなさんの組織の中ではどこを見ておられるんでしょうか?」というご質問があります。いかがでしょうか?
塚越さんは50倍の倍率の中から厳選されると。
塚越寛氏(以下、塚越):正直言ってわかりませんよね。
青野:わからないですか(笑)。
塚越:20分や30分面接したってそんなのわかるわけがないので、私はいつも面接するときにその方に申し訳ないと謝ってるんです。だけどまあフィーリング、相性はあるんですよね。みなさんだって、自分の女房を選ぶとか旦那を選ぶときにはそういうフィーリングでやってると思うんですよね。相性ですね。
相性って大事だと思うんですよ。相性があるからこれだけたくさんの人口がいてもみんなちゃんとカップルを作ってらっしゃる。相性というのは何かと理屈っぽく言う人は血液型だとかいろいろ言う人もいます。種の保存からいって、そういうのも満更でもないと思うんですよ。
塚越:先ほどもちょっと控え室で話してた、種の保存というのはすごく大事だと私は思うの。人間という種が保存されるためには何が必要か。動物の世界だったら力の強い動物同士が争って種の保存をしていきますよね。ただ人間はそうはいかない。じゃあ頭がいいかといったらそうでもないと。
種の保存のためには、例の2:6:2の法則がとても大事だと思うんです。どんな優秀な人を集めても2割は優秀で、6割が普通で、2割がダメになる。このダメな2割を取り除いても、また残ってる人たちが2:6:2に分かれるという法則ですね。
これはやっぱり法則でしょうね。そうでしょ? というのが種の保存上必要なんですよね。そうしないと差がわからない。差がわかるのが大事なことで、そういう意味では平等にしようという社会主義はダメなんですね。種の保存の原理が効かない。
ということで、私は人を大事にするからお前は社会主義者かというとそうではない。私はやはりある種の競争がなけりゃダメで、種の保存が効かないと思ってるわけね。
種の保存上2:6:2という、つまり優秀な人がいて普通の人がいてダメな人がいるけど、この2割を除外するとまた残ってる人が分かれるんだから。除外することを考えずに2:6:2の法則でその比率を持ったまま、全体のレベルを上げりゃいいと思うんですよね。それが教育なんだと思うわけです。
青野:なるほど。そうすると入れるときはフィーリングだけで見て、この人一番下の2だぞと思っても切り捨てることなく……。
塚越:最後の面接に残ってくるのはだいたいレベルが揃ってますね。とくに優秀なのには嫌味を言うんですよ。「あんたうちに来なくてもこっちの会社行け」とかたまに言うわけ。
青野:そうですか。おもしろい。岡田さんは採用するときにどういうところを見られるんですか?
岡田武史氏(以下、岡田):うちも人気があるんですよ。1人の執行役員の募集に960名来た。
青野:すごい!(笑)。
岡田:そんなもん選べるわけないやろうと。僕も(塚越氏と)一緒ですわ。30分なんて面接したってわからんと。ある……名前言っちゃっていいかな。ビズリーチで執行役員を1人募集したら900何十名来ちゃった。「お前らで絞ってこい。最後10名くらいになったら面接しよう」と。
ビズリーチの執行役員のやつと、やる前に「岡田さん今まで面接で失敗したことありますか?」「ない!」「じゃあもう岡田さんの直感で全部!」となった。僕面接って10分くらいしかせぇへんわけ。「岡田さん、もうちょっとなんか聞いてくださいよ!」と言われるんだけど、「聞いたってわからんもん」と言ってる。
「岡田さんが今まで失敗したことがないと言うならそれで」と。いや、失敗したことがないというのは、俺はヘボなこいつが来ても必要だからうちに来た。これは失敗じゃなくて、こいつはなんかの縁があってうちに来た。それはこいつが必要なんだと思ってる。
岡田:さっきもちょっと裏で話してて、ワールドカップの代表選手を23人選ぶとき、上から優秀なやつを23人選んだらチームになるかといったら絶対ならないわけ。ワールドカップの決勝までいっても、1試合も出ないようなやつが出てくるわけよ。そこにどういうやつを入れるかというのは、ものすごく大きなポイントなわけ。
例えば僕は2010年のワールドカップのときに、最後に川口能活を入れた。僕があいつを代表から外したら、動揺して大怪我した。1年間、1回もプレーしてないの。でも見に行ったらプレーができるようになってたから、俺は能活を代表チームに入れた。
それはなにかといったら第3キーパーなの。第3キーパーといったら、よっぽどのことがない限り試合に出ない。でもその能活が、1試合も試合に出ないのに残り組の練習を必死になってやってる。後片付けからいろんなことを全部率先してやってる。
若いやつらもふてくされられない。みんなが「能活さんがあそこまでやってるのに」と、ぐっとまとまる。それで僕は入れた。そこをどうやって選ぶか。上から全部選べばいいんじゃない。
面接で俺が直感的に「こいつだ!」と言ったやつがダメだったと。「外れましたね」じゃない。これは当たりや。こいつがいるおかげでいろんなことに気づくかもしれん。だから俺は外したことないと言っただけやねん。
(会場笑)
青野:失敗したことがないというのは、ある意味誰が来ても受け入れられるということですね。オンボーディングの強さみたいなことかなと思います。
崔真淑氏(以下、崔):ちょっと質問いいですか? さっきのどう集めるか、いい採用って話でした。一般の社員の方を公募するというのはすごくわかるんですけど、岡田さんだったらたぶんいろんな優秀な人を人づてにパッと集めてこれるのに執行役員をあえて公募した。そういう人だったら自分もたくさん情報を知ってるし、早いと思うんですよ。でもそれをあえて手間もかかる公募にしたというのはなぜだったんですか?
岡田:それは条件が低いから。俺の友達で優秀なやつを、給料3分の1で来てくれって、なんか俺負い目感じなきゃいけない(笑)。そしたら最後に残った10名くらい、だいたい今の給料の3分の1くらいなんだよね。給料のことは書いてあった。
最終的に実はそこから1人も採れなかった。みんな「まさかここへ残れると思いませんでした。給料3分の1は、ちょっと家族も……」って、ここに書いてあるやん!
(会場笑)
どうしてもみんな優秀な人を残しちゃうじゃん。そしたら優秀すぎて誰も来てくれへん。最初から絶対これと言って、それに合うもうちょっと下のやつを選んでたら来てもらえたのに、結局そこは1人も採れなかった。違うポジションでは採った。
今回はもうちょっと考え方を変えてやったら、3人の募集のところに今度は280名くらい来てくれた。今度は、さっき裏でおっしゃってたように、テストみたいに応募した人が質問をバーっと答えるのかな。
それでAIが分類してくるわけ。僕らがどういうイメージの社員を採りたいというのを役員クラス全員にヒアリングじゃなくて、質問されるわけ。それでAIがマッチングしてきたら、けっこう俺の勘よりぜんぜん正しいんちゃうかと(笑)。そんな感じ。
(会場笑)
青野:おもしろい。
塚越:「優秀」の定義が大事なんですよね。うちのは協調性というのが優秀の条件の1番。人間の社会というのはミツバチの社会ですよ。みんなで協力して生きていく。ミツバチは1匹じゃ生きられないからね。人間だって1人で生きられる人は誰もいない。どうやってみんながお互いに協調して勤められるか。協調性を大事にするわけね。
協調性が育つようないろんなことをやるんですよ。社員旅行もそうですよ。すべてそう考えてるわけ。だからそれは無駄じゃなくて、必要な経費。実はいかに助け合うかという雰囲気を出すために、いろんな工夫をしているのは確かなんですよ。
みんなで助け合えば、3人寄れば文殊の知恵とかいろいろ言うじゃないですか。人間もミツバチもみんなで協調する動物だと思うんですよね。
青野:ティール組織の採用の特徴とかあるんですか?
嘉村賢州氏(以下、嘉村):10社あればぜんぜん違うんですけど、わりと特徴はあるかなと思います。オレンジはわりとスキルで採用するというところがありますよね。機械の部品としての採用が多い。
そうするとみんなそれが果たせなくなったらクビになるかもしれないというのをずっと抱えながらやっていくので、安心・安全じゃないかたちになるので、そういうかたちはしないんです。
もう1つの特徴として、現場が採用するということが多いですね。グリーンまでのパラダイムでどういうことが起こるかというと、採用専門の人事部かなにかが人を内定するのか決めます。
4月1日に職場に配属されると、そこで「はじめまして」が起こる。そうすると新入社員にとっても緊張ですよね。この部署で馴染めるかなというのもそうです。現場からすると人事が選んできたやつが活躍しなかったら「また人事も見る目ないな~」となる。「はじめまして」の人と仕事を始めるというのは、先輩からしても少し遠いわけですね。
4月1日から緊張関係でスタートするというのが今までの考え方で、ティールの場合は全員が持っている決定権の1つで、誰と働くかという決定権を持っています。
そのチームがこの人が必要ということで採用に乗り出して、チームメンバー全員が会って、この人と一緒に職場でがんばっていこうという決意でやっていく。社長が選んできたのを充てがわれてなんとかやっていかないと、「社長のお気に入りだけど俺たちにとってはな……」みたいな話が起こらないかたちでやっていくパターンが多い。
もう1つはわりと試用期間が、Zapposなんかも3ヶ月くらい経って合わなかったらすごく高い退職金をプレゼントして「ぜんぜん出て行っていただいていいです」と。
それは別に才能がなかったとかじゃなくて、合う合わないは絶対人間はあるわけです。それで会わなかったら違う人生を歩むということは当然。それに対しては応援したいから高い退職金をあげるということでやってるという。入り方も馴染み方も少し個性があるのかなと思います。
青野:おもしろいですね~。採用のところでも主体性を引き出していくというね。ティールっぽいなと思いました。
青野:すみません、まだまだお聞きしたいことがあると思いますけれども、ちょっと95問くらい無視させていただきます(笑)。
(会場笑)
ぜひなんらかのかたちでお答えを返していければなと思います。残り時間、みなさまから一言ずつくらい1、2分でご感想をいただければと思います。
まあ本当に多岐に渡りましたね! 印象に残ったのは死生観を持つ大事さ。追い込まれたときになにか悟りがあって、それが軸になる。これをどうやって自分で作っていけばいいのか、もしくは自分たちのトップに持ってもらえばいいのかちょっと悩ましいですね。こんなお話を聞かせていただいたりしました。
あとモチベーションの話もおもしろかったですね。主体的に出てくるモチベーションを引き出していくか。またそうやって集まって来た人たちを、切り捨てるのではなくて組み合わせていく。こういうビジョンを教えていただいたように思います。
それでは塚越さんからお願いしてよろしいですか? 今日のご感想などをいただければと思います。
塚越:感想ですか。まずみなさん熱心に聞いていただいて、とても感謝です。やっぱり最後まで真剣に聞いてくださったということは、人間っていつでもなにか向上したいものを持ってるんでしょうね。これが人間じゃないでしょうか。
向上というのは技術とかそういうのじゃなくて、やっぱりハピネスにみんななりたいんじゃないですか? 会社が利益を上げるのも順調にいくのも、みんな自分も含めてハピネスになりたいと。ハピネス・幸せを大事にする。
やっぱり幸せということが、すべてに1番大事なキーワードじゃないでしょうか。私はそう思いました。今日真剣に聞いてくださった方たちは、だからこそ真剣に聞いてくださったんじゃないかと思っております。感謝します。
青野:ありがとうございました。
(会場拍手)
青野:(岡田さんに)お願いします。
岡田:まずは株主総会の前に余裕をかましている社長さんってすごいなと。よっぽど業績に自信があるのかなと。たいしたもんですね。
(会場笑)
今日はありがとうございました。本当にいろいろ勉強させていただきました。先ほど企業理念を言いましたように、自分の行動というか活動の原点というのはやっぱりそういうものです。
自分も3人の子どもがいて孫もいます。自分は高度成長期という最高の時代を生きて、戦争も70年ない時代を生きて、子どもたちにどういう時代を残すのか。
今は1000兆円を超える財政赤字を子どもたちに引き継ぐ。これ借金ですよね。年金崩壊危機、隣国との緊張、環境破壊。僕は環境保護活動も40年くらいやっています。倉本聰さんと富良野で環境教育をやってて、今治にも自然塾というのを作ったんです。
その1つのプログラムに、「46億年・地球の道」というのがあるんですよ。46億年の地球の歴史を460メートルに置き換えて、僕らインストラクターが460メートル歩きながら説明していくんですね。
46億年前、地球は今の10分の1の大きさで、ドロドロに溶けたマグマオーシャンの時代。原始海洋ができ、全球凍結でコチンコチンに凍ってるとき。海の温度が45度、お風呂より熱いとき。カンブリア紀で生物が華やかになって、恐竜時代を経て、460メートルの最後の2センチでホモ・サピエンスが生まれるんですね。
温暖化、産業革命って0.02ミリなんですよ。地球が危ないって、地球はぜんぜん大丈夫なんですよ。生物、それも人間が(危ないけど)、それも我々の時代はまだ大丈夫なんですよ。我々の子どもたち、孫たちの時代が大変なことになるかもしれない。
最後に石碑を先生が築いて、ネイティブアメリカン、アメリカインディアンに今でも伝わる言葉を書いてるんです。「地球は子孫から借りているもの」と。地球はご先祖様から受け継いだものじゃなくて、未来に生きる子どもたちから借りているものだと。借りてるものは壊したり汚したり傷つけてはいけない。
これをアメリカインディアンが今でも伝えている。それなのに文明人という我々は今日の株価、今の経済……。すべての生物は命をつなぐために生きているけど、人間だけがひょっとしたら自分のために生きてるのかもしれない。それをなにか変えたいという想いで、ああいう企業理念を作ってやってます。
FC今治はネームプレートというのを3万円から売っております。ファンクラブは3000円で入れます。もしスポンサー様でしたら30万からございます。
(会場笑)
よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
崔:岡田さんのいい話のあとに最後の言葉というのはなかなか難しいところがあります。今日は私すごく反省したことがあるんですよ。なにかと言うと、経済学というものは人をどうインセンティブで律するのかということを考える学問だと。
私は組織にもいたことはあって、どちらかというとモラルというのをあんまり信じてなかったんですね。モラルとインセンティブだったらインセンティブだと。インセンティブで考えるとわかりやすいじゃないかと思ってずっときてるし、今は研究もそういうことをしている。
でも今日のみなさまのお話を伺ったときに「モラルって大事だな」というのと、モラルを守ろうとする組織って作れるんだということがすごく勉強になったんですよ。ちょっと人にも地球にも優しくなれたのかもしれません。今日は本当に貴重な機会をありがとうございました。
(会場拍手)
青野:嘉村さん、お願いできますでしょうか。
嘉村:ありがとうございました。ティールってふわっとしている概念なのでどう説明しようかなとすごく悩むことが多いんです。最近こういうのどうかなと思い始めたのが、植物の時代に次は動物だと言ってるようなものかなと思い始めているんですね。
動物っていろいろあるじゃないですか。鳥とか狼とか人間とか、そのときに鳥になる可能性を秘めた組織に「狼になりなさい」と言ったら絶対にうまくいかないですよね。それくらい動物って多様性があるように、組織というのも本当は多様性がある。僕たちは安全に組織を作ろうとすると、海外の方法論を学んで同じようにやろうとする。
ようやく、ビジョンとか集まっているメンバーに耳をすまして、オリジナルの動物のかたちの組織になっていくんだろうなという時代に入っている気がしていて。今日はそんな多様性をいっぱい知る機会だったなと思いました。
先ほど紹介したZapposのトニー・シェイが「都会は人が集まれば集まるほど楽しくなる。おもしろい人も集まるしお金も集まるしチャンスも集まるけれども、組織というのは人が集まれば集まるほどおもしろくなくなるのはなんでなんだ」と。そういう問題意識を持っているということですね。
やっぱり1度限りの人生の中で、今マネージャーは評価をするときに部下から嫌われないようにすごくエネルギーを使いながら査定をしているわけですね。部下は部下で同じときに入社した仲間となぜ金額が違うのかというので、それに対して認めてもらえないというところにエネルギーを使っている。こんなことにエネルギーを使うことを人類はしてていいのかという想いがあります。
先ほど岡田さんがおっしゃっていただいたように、世界に対してエネルギーを注ぐために組織に振り回されていてはいけないなという感じがあります。そんなときになにかヒントになるような探求をこれから続けていきたいです。今日もすごく示唆が深くて楽しかったなと思っております。ありがとうございました。
(会場拍手)
青野:以上でパネルディスカッションを終わりとさせていただきたいと思います。最後にもう1度大きな拍手をゲストのみなさんにお送りください。ありがとうございました!
(会場拍手)
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