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マーケット視点とキャリア思考から見たスポーツの可能性(全6記事)

転職も事業判断も、好き嫌いでやれ 社会人こそ自己分析を重視すべき理由

2019年2月9日、「SCJ Conference 2019 ~壁を超えて、繋がる~」が開催され、ビジネス界やスポーツ界の枠にとらわれず、多様な分野で活躍する第一人者が一堂に会しました。その中の基調パネル「マーケット視点とキャリア思考から見たスポーツの可能性」では、レオス・キャピタルワークス藤野英人氏、morich森本千賀子氏、スポーツコーチングJapan中竹竜二氏が登壇。本パートでは、藤野氏と森本氏が自らのキャリアを振り返りました。

「一途にがんばること」は美徳なのか?

森本千賀子氏(以下、森本):私、ちょっとスポーツの世界で、これちょっと疑問だなと思うんですけれども……。

中竹竜二氏(以下、中竹):ぜひそういうのを聞きたいです。

森本:いいですか? 日本って、例えばサッカーだったら、ずーっとサッカー一本みたいな。例えば、中学とか高校の部活で、サッカー部3日、野球部2日みたいな、なんでそれができないのかなと思ってたんですよね。

中竹:とくにその課題感も感じつつ、スポーツコーチングJapanを作ったのはありますよね。やっぱり部活動に縛られるというのはすごく……。

藤野英人氏(以下、藤野):今日は部活動がテーマのパネルセッションがありますよね。

中竹:ありましたよね。日本の社会の構図として、なかなかスポーツが地域に根ざせない中で、1個の……文化的な背景で、「一途にがんばること」がやっぱり美とされている文化があったというのはすごく壁なんですね。

森本:本当に、ビジネスパーソンもマルチタスクプレイヤーが価値が高いと言われているので、たぶんスポーツの世界の中でも、使う筋肉が違うスポーツに籍を置くことで、いろいろな視界が学べたりできると思っていて、ぜひ本当に実現してほしいなと。私の息子にはぜひそうあってほしいなと思いますね。

中竹:2つの視点があって、マルチにやるとパフォーマンスが上がるんですね。実はアカデミックな学者もそうで、ノーベル賞などの賞を取れた人たちは、実は分野が4つあるというんですね。かつては3つなのが、4つぐらいに広がっているんですよ。

だから、物理、哲学、言語などを学んだ人たちが今、賞を取り始めてきました。なぜかというと、圧倒的な情報量があることと、俯瞰して見れるからです。

どんな人がやり抜く力を持っているか?

中竹:もう1個……なぜ俯瞰したほうがいいか、サードプレイスを持ったほうがいいか。「グリット(GRIT)」って聞いたことありますか? やり抜く力です。グリットを扱った本がありますけれども。この会場は永田町GRiDですね。

その中で、ウェスト・ポイント……軍隊の中で、モノをやり抜く人たちの傾向を見たときに、さっき言ったサードプレイスの問題もありますけど、実は複数の目的化をすると実はあまりよくないんですよ。

要するに、最終的に自分は幸せになるんだとか、最終目的に応じた選択肢をどれだけ持っているかが大事です。もし、今、森本さんの話を聞いて、「サードプレイスを持とう!」と思って、それが目的化されると、それがうまくいかなかったときに大打撃を受けます。

自分の幸せのために、例えばNPOをやる、この仕事をやる、これをやる。1個潰れても、「あっ、あと2つが残ってるから自分は幸せになれるんだ」と思う。ただ、1個1個を全部最終目的化されると、精神的打撃も多いし、そこでストップするんですね。

大事なのは、今日の藤野さんの視点ですが、俯瞰して「そもそも目的はなんだっけ?」と考え、自分がやってることを選択肢化していくのが非常に大事なんですね。なんとなく今聞いて「場を増やそう」と思っても、それがどっぷり浸かっていくと、同じサイクルの繰り返しなので。

森本:そうですね。「計画的偶発性理論」みたいなものがあって、ある意味、キャリアは偶然のようで必然の選択をしています。

その先に、中竹さんがおっしゃるように、幸せかどうかがすごく大事で、そのためにもじゃあどうしたらいいかというのを私もいつも聞かれて、自分なりにやってるトレーニングがあります。

まず、たぶんみなさん、自分たちがどういう状態だったら幸せか。どういう環境だったり、どういう人といることが楽しくてエキサイティングでワクワクするか。いわゆる「自分を知る」ということが本当に大事だなと思っています。

たぶん、大学生は就職活動で自己分析するんですけれども、社会人になってそうやって自己分析する機会が実はあんまりなくて。なので、本当に自分が幸せな状態というんですかね。シチュエーションをイメージをして、それをちゃんと意識をしておくと、計画的偶発性理論が重要になるんです。

直感で選んでいるようで、自分の幸せの方向に向かってるという。それを意識しておくかどうかが非常に大事だなと思います。

自分の好き嫌いを大切にすべき

藤野:けっこう、自分の好き嫌いを大切にしない人が多いですよね。というのは、むしろ、「好き嫌いで選ぶことはよくない」という教育をされてたりしませんか? 「人事も好き嫌いで選んじゃいけません」「会社も好き嫌いで選んじゃいけません」と。ただ、「好き嫌いじゃなかったらなんですか?」と思いますよね。損得ですかね、正義・不正義ですかね。

好き嫌いというのはすごく大事で、けっこう自分の「好き」がわからなくなってる人がすごく多いような気がしますよね。だから、何がハッピーなのか、ワクワクとか……「あなたは何が好きですか?」「5年後、何がしたいですか?」という質問をすると絶句する人が多いです。

みなさんはどうですか? 5年後やりたいこと、今後やりたいことありますか? 今、何をするとワクワクして、自分がこれが好きだということで、これをやると寝食を忘れるものが何だろうという。そういうことはすごく大切ですよね。

森本:本当にそう思います。

中竹:けど、本当に藤野さんが言うように、好き嫌いで選んじゃいけない雰囲気ありますよね。

藤野:そうなんです。だから、投資に関しては、僕はチーフの人にいつも「好き嫌いでやれ」と言ってるんですよ。だから、最終的に儲かるか儲からないかを聞かないんですよ。「君はこの会社好きか?」「本当に好きか?」って聞くんです。そこで「うん」となるか。「うん」となるならやらせてあげたほうがいいですね。

例えば僕、人を採用するときに、よくやることがあるんです。何をやるかというと、元会社の社員さんとかに電話をかけて、「あの人はどんな人ですか?」質問するんです。必ずこの質問するんです。「あの人のことを好き?」。すごく聞きたかった質問です。

森本:ちょっと(笑)。

中竹:ドキっとしますよね。

藤野:その質問に「うーん、仕事ができるよ」って答えたら、たぶん嫌なヤツなんです。

(会場笑)

森本:ですね、だいたいそうです。

藤野:「いいやつだよ」って答えたら、仕事できないんですよ。

(会場笑)

だから、「好き?」って言ったときに、「好き」と即答される人を採用するとほとんど間違いないですね。だって、「あの人が好き」という時は、「仕事ができて、いいヤツ」と同義語なんですよ。だから、そういう意味でも好き嫌いはすごい大切。

経営者は好き嫌いで事業判断している

中竹:みなさんあるかもしれませんが、好きはトレーニングしないと成果が本当に上がんないんですよ。

森本:そうですよね、確かに。

藤野:確かに。

中竹:だから僕自身はずーっと好き嫌いにこだわっているので、嫌いな仕事はやらないのと、あと嫌いな人と会わないというのを徹底してますので。

藤野:大事、大事。

森本:たぶん、会わないというよりも、寄せ付けないんじゃないですか?

中竹:まぁそうですね。

森本:その、受け入れのタイミングだったり……。

中竹:僕は社長なので、うちのメンバーからいつも怒られて。「社会人として仕事してるわけだから……」ってよく言われるんですけど(笑)。

(会場笑)

森本:たぶん寄せ付けてないと思います。

藤野:そうでしょうね。

森本:そういう、自分の好きがわかってる人は……。

藤野:(嫌いな人を)寄せ付けてないでしょ?

森本:ははは(笑)。

藤野:嫌いな人には強烈なフィルターをつけてますよね。

森本:私、本当に「嫌いな人いないですよね」って言われていて、本当にいないんです。だけど、なんでかというと、どんな指向性の方が好みで、心地よいのかという好きなタイプがわかってるから、無意識の中で直感で選択できているんだと思っています。なので、私はいかに直感を磨くかだと思うんですよ。

中竹:これは本当はトレーニングしないとダメなんですよ。僕は経営学者の楠木建先生とすごい親しいんですね。先生は『「好き嫌い」と経営』という本を出しました。

「好き嫌い」と経営

別に投資家視点ではないですけど、経営がうまくいくかどうかを見るときには、経営者が好き嫌いで事業判断してるというのは明らかですよね。今日本で活躍している会社のほとんどの経営者は好き嫌いで判断している。でも多くの人は好き嫌いで判断できないです。

「好き」を共有した組織が見た景色

中竹:おもしろいのは、僕自身、早稲田の監督の後、日本代表の20歳以下の監督を数年やったんですけれども、その時に僕は好き嫌いにこだわらせたんですね。選手はお互いをそんなに知らないので、自己紹介させたんですよ。それを好き嫌いで答えさせたんですね。

意外に僕も知らなかったんですけど、例えばすごいボール持ってトライして抜くのが得意なやつに、「お前、何好きなの?」って聞いたら、「俺、実はこんなプレーが好きなんです」って。「へぇ〜、意外だね!」みたいな。それで、なんか僕らが見ている選手のいいところと、ぜんぜん違うところで彼らがこだわってる好きがあって。

森本:そうですよね、はい。

中竹:実はそれを全員で共有した翌日から、めちゃくちゃチームワークがよくなったんですね。要するに、こだわりが見えたら、「あっ、こいつはそういえばこれが好きなんだ」「じゃあこれを、ちょっと譲ろうかな」みたいな。だから、そういう意味では、組織の中で好き嫌いを言語化して共有するというのは、非常に大事だと思いますね。

藤野:たぶん全員に共通してると思うんですけど、「好き嫌い」と「公正さ、公平さ」を両立させるとややこしいので、何事にもフェアであろうとすることと、好き嫌いを重視するという、一見矛盾した2つのことが回ってることがわりと大事ですけどね。公平・公正であるという。

中竹:そうですね。そこのバランスはけっこう難しいですよね。

森本:好きというのは、要はワクワクするとか……。

藤野:ワクワクするとかね。

森本:ハッピーだということですよね。私、実は毎晩必ずやっている行事がありまして(笑)。

中竹:行事?

森本:ルーティーンがありまして。息子がいるんですけれども、日本の小学校って、なんでこうやって反省させるんだろうと思うんですね。もしかして息子だけかもしれないんですけれども。反省文みたいなのを毎日毎晩書かせるんですよ。

中竹:それ、絶対よくないですね。

森本:絶対よくないですよね! それが毎日の宿題なんですけど。だから、寝る前に何をやるかというと、「今日、本当に楽しかったこと、めちゃくちゃうれしかったこと、ワクワクしたことは何?」「3つ教えて」って聞いて、それを引き出して寝るようにしているんですね。私自身も、今日自分に褒めてあげるということだったりですかね。

それを、夜寝る前に、「あっ、しまったな」「あれを失敗したな」「もうここでやめとこう」じゃなくて、ネガティブな気持ちじゃなくて、ポジティブな気持ちで眠りに就く。1日の1%の時間、いわゆる15分を使ってます。

藤野:眠りがよくなりますね。

森本:はい。そうだし、目覚めもいい。これ、NLPの理論とも……。

中竹:そうですね、あと2つ、感謝することを付け加えるといいと言いますね。

藤野:あぁ〜。

森本:そうですよね。

中竹:今日1日に感謝すること。これすごく、手法としてもいいという。

森本:そうすると、自分のWillがなんとなく見えてくるんじゃないかなと思います。

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