2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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西村創一朗氏:みなさまこんにちは。ただいまご紹介いただきました、株式会社HARES・複業研究家の西村創一朗と申します。今日は「副業JAM」ということで、副業をテーマにしたイベントです。今年一番の寒さのなか、雪が降るんじゃないかという予報があるにもかかわらず、これだけたくさんの方にいらしていただきました。改めて、副業というテーマに関する関心の高さを肌で感じています。
今日、いろんな講演があるなかでも、トップバッターです。僕のパートは副業トレンドということで、2018年の1年を振り返りながら、「今年は副業がどうなっていくか」、あるいは「副業を考えていくうえで何から始めていけばいいのか」のヒントとなるようなお話ができればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
まずはじめに、簡単に自己紹介をさせてください。僕自身は、今は独立して複業研究家ということでやっています。2011年4月、震災があった翌月にリクルートキャリアという会社に新卒で入社いたしました。当初は営業としてバリバリ仕事をしていたんですが、もともと営業だけではなく、事業を作る新規事業の仕事がしたいなと思っていました。
営業の経験を積んでいるだけでは、自分がやりたい新規事業の仕事はなかなか難しいということで、入社3年目の時に転職などの選択肢も考えました。しかし、会社を辞めずに営業の仕事をしっかりやりながら、会社の外で新規事業につながる経験を積めないかと考えて、入社3年目の2013年5月に、僕自身でブログメディアを始めるというかたちで副業をスタートしました。
その甲斐もあり、念願叶って新規事業の部門に移ることができました。自分自身が副業を始めたことで、キャリアを変えるという成功体験ができた一方で、当時、2013年頃は副業禁止が当たり前でした。
僕は、リクルートという副業OKな会社にたまたまいたから、会社を辞めずに、転職というリスクを冒すことなく、自分がやりたいことにチャレンジをするということで、副業という選択ができました。けれども、まだまだ世の中はそうじゃないなかで、副業という働き方をもっともっと多くの会社に広めていきたいと考えて、当時、個人事業主で始めた自分の活動を法人にしました。
その法人が、株式会社HARESです。これは「うさぎ」という意味の英単語の複数形なんですが、「二兎を追って一兎も得ずではない」と(いうことを意味しています)。「会社員たるもの、会社の仕事だけに専念すべし」というのが副業禁止(の理由)だとするならば、本業は会社員として仕事をやりながらも、プライベートな時間を使って自分がやりたいことをやる。
そうすれば、副業という選択肢を持てる。二兎を追って二兎を得るといったことができる世の中を作りたいと考えて、会社員を続けながら法人化して、しばらくは会社員兼経営者というかたちで活動していました。
そこからも縁と機会があって、独立したのが2年前の1月になります。実は、純粋に経営者だった、フリーランスだった時代というのが、半年もありません。2017年6月からフリーランス支援を行うランサーズという会社に、週2日働く正社員というかたちでジョインして、半分会社員、半分経営者という働き方をしています。
もともと、採用中心に人事領域でずっと仕事をしているので、専門領域としては人事コンサルタントをやっています。複業研究家ということで、複業の学校をやったり、あるいは副業解禁を検討している企業に対して、副業解禁の支援や働き方改革の支援をするといった仕事をしています。
働き方改革の専門家ということで、メディアに出させていただいたり、あるいは経産省の研究会の委員をさせていただいたりと、今まで複業研究家として活動してきたなかで、延べ500人以上の副業の支援をして得たノウハウを『複業の教科書』というかたちでまとめて、去年12月に出版しました。
おかげさまで、(Amazonの)キャリアカテゴリーで1位になったり、たくさんの方に手に取っていただいています。おかげさまで1月に重版がかかって、より多くの方に読んでいただいています。
今日は、去年1年間を振り返りながら、今年、副業がどうなるのかというトレンドについてお話しできればと思います。
まず初めに、この「88パーセント」という副業にまつわる数字は、何だと思いますかね。
今日、こんなに寒いなか、これだけ多くの方にいらしていただいていることからもわかるように、これは、副業に興味のある人の割合なんですね。3,000人の会社員に「副業に興味はありますか?」と聞くと、88パーセントもの人が「副業に興味があります」と答えているんですね。2018年を振り返って、これはもう、完全なる副業ブームだったなと思います。
せっかくなので、ここにいらしている方に聞いてみたいと思います。副業に興味がある人、どれぐらいいますか? ここに足を運んできて、興味ありませんという人がいたら、今日はここに何しに来ているんだという話になるので。じゃあ、もう1個、聞きますね。現在、副業をやっていますという方、どれくらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
そうですよね。全体の約2割もいないくらいのイメージでした。実際にそうなんです。副業に興味がある人は非常にたくさんいる一方で、副業を実際にやっているという人は、まだまだ少ないんですね。理由はシンプルです。個人の意識が変わったのに、企業の意識がまだ追いついていないところがあるからなんです。
ただ、この2、3年で大きく変わりました。毎日のように、副業解禁というニュースがメディアの見出しに踊るぐらい、急速にこの2、3年で日本の副業解禁は進んでいきました。
実際に、僕がかつて副業を始めた時は、副業禁止の会社がほとんどで、3年前は14.7パーセント(の会社)しか副業を認めていなかった。でも、直近の2018年の調査では、副業OKな会社が約3割というところまで広がっていて、たった3年で副業OKな会社が約2倍に増えました。
去年は副業解禁元年と言われた1年でしたから、さらに副業OKな会社というのは増えました。僕が直接、副業解禁のお手伝いをした会社もあります。
副業解禁がちょうど1年前の1月。厚生労働省の「モデル就業規則」という、企業が定める就業規則のテンプレートのようなものがあるのですが、それまではモデル就業規則では副業禁止が定められていたんです。
原則禁止から原則容認に変わったのに合わせて、「兼業・副業ガイドライン」というものを厚生労働省がまとめました。それにならって、2018年4月のタイミングで、大手企業が一斉に……メーカーだとユニチャームさん、サービス業だとHISさん、そして、これまで副業OKは考えられなかった金融では新生銀行さん、証券業界ではカブドットコムさんなど(が副業を解禁しました)。
ちょっと前までは、私の前職のリクルートみたいな、ある意味で「クレイジーな会社」やIT企業だけが副業OKだった。メーカーや金融など、割と歴史の長い業界では副業禁止が当たり前だったのが、大きく変わってきていて、全業界・全業種で副業解禁という流れが進んでいます。
2018年1月、モデル就業規則が改正されて、4月にすぐ(副業解禁に)踏み切った会社というのは、ごく一部でした。じゃあ、それ以外の会社がこの1年間、何をやっていたかというと、副業解禁に向けたパイロットテストをやったり、社内で検討を進めたりしていました。
2019年4月以降、副業解禁ビックバンなんていうことを言ったりしているわけですが、2018年は副業解禁元年で、今年はというと、一気にその流れが加速しています。副業禁止の会社がまだまだ大多数というところが、2020年頃には副業禁止の会社が少数になっていくだろうと考えています。
今はある種、副業ブームと呼べるような熱気を帯びています。単なる一時的なブームではなく、本格的なムーブメント……1億総副業化時代とまではいきませんが、誰もが副業を1つの選択肢として考えられる時代が当たり前になってくる、そのきっかけとなる1年になるんじゃないかなと思っています。
ただ、副業OKと言われたとしても、みなさんはどうしますかね。とある会社では、こんなことがありました。「副業を解禁しました」とは言ったものの、なぜ副業解禁したのかをとくに何も言わずにいたところ、従業員が一斉にスマホを開いて、求人情報サイトで、平日の早朝・深夜や土日祝日でもできるアルバイトを探し始めたというんです。
ある意味では、これも副業といえば副業なんですが、これが本当の副業のあるべきかたちなのかということですよね。みなさん、副業OKですよと言われたとして、何から始めたらいいのかわからないと思うんです。それこそ、副業というものをGoogleで検索したりすると、副業というキーワードで広告が出てくるのですが、(スライドを指して)こんなものが多かったりします。
例えば、アンケートモニター。「アンケートに答えていただければポイントを差し上げます」といったものや、「このアプリをダウンロードしたらポイントを差し上げます」みたいなポイントサイトだったりが、副業といえば副業なんですが、例えば1時間かけて必死にアンケートに回答して、それで5,000円、10,000円も稼げますかというと、なかなか難しいですよね。すきま時間のお小遣い稼ぎにしかならないです。
あるいは、(スライドを指して)株式投資、FX、仮想通貨などがありますよね。これも副業と考えられなくもないですが……副業は「業」がついているのでビジネスなんですが、(株式投資などは)どちらかというと資産運用に近いですよね。今までも、副業禁止の会社でも株式運用・資産運用は禁じられていなかったので、副業解禁で考えられる副業とはちょっと違うのかなと思います。
この本のタイトル『複業の教科書』の「複」という字を使っています。つまり、サブ(という意味)の「副業」ではなく、パラレルの「複業」ですね。「副業せずに複業せよ」ということを伝えています。2019年は、このサブの副業ではなくパラレルの複業を、より真剣に考える1年になるんじゃないかなと思っています。
何が違うのかというと、サブの副業はその名のとおり、あくまでサブ的なもので、副収入やお小遣いを稼ぐことが主目的になります。先ほどのアンケートモニターやポイントサイトみたいな、どちらかというと仕事・ビジネスというよりは作業(が該当します)。サブの作業ですね。
本来あるべき複業……「こう考えたいよね」という複業が、(スライドを指して)こうだと思っています。
もちろん、お小遣いを稼ぐ、副収入を得るということは、副業にとってはとても大事なポイントですよね。ですが、お金というのはよくよく考えると、誰かの役に立った対価としていただく結果なんですよね。あくまで結果であって目的ではないというのが、大きなポイントかなと思っています。
目的は何なのかを考えると、いろんなメリットがあります。本業だけでは得られないスキルが得られたり、ノウハウが得られるといったような自己成長であったり、の看板に頼らず自分の腕一つで誰かの役に立つという価値貢献。自己成長と価値貢献ですね。その価値貢献の結果、お金が得られるというのが、パラレルの複業かなと思っています。
改めて、副業のメリットは何なのかということをまとめます。大きいのは、例えば本業では営業の仕事をやっているんだけれども、実はWebサービスを作るような仕事がしたいということで、プライベートの時間を使ってプログラミングの勉強をして、自分でアプリを作ってみる。あるいは、友達の会社のWebサービスの開発を手伝ってみるなど、本業だけでは得られないスキルが得られるという「スキルアップ複業」があります。
2つ目が、例えば、本業は会社員として仕事をしているんだけれども、コーヒーが好きでカフェの経営をプライベートでやっています、みたいなことがあったりします。会社ではできない、やりたいことに挑戦できるので、モチベーションが上がるということで、複業のメリットとしては大きいかなと思います。
3つ目は、本業だけでは得られないスキルが得られて、(例えば)営業だけをやっている人にはない市場価値が発揮できること。スキルアップすることによって市場価値が高まった結果、収入源が増えるということで、複業で得たスキルを本業で生かして、社内異動を実現したり、転職をして年収アップを果たしたという方も、なかにはいらっしゃいます。
4つ目は、複業によって、家でもない、会社でもない、サードプレイスやサードコミュニティができるので、価値観が共通している仲間とのつながりができる。あるいは、会社の外で通用するんだという自信が身につくことによって、「こうなんじゃないか」「こんなアイデアどうですか」ということを、会社に忖度せずに、依存せずに主張できるようになるというのは、大きなメリットとしてあります。
副業を始めるということを考えたときに、どうやってお金を稼ごうかなということを考えるのももちろん大事なのですが、そもそも自分は複業によって何を得たいのか……お金以外で得たいものは何なのかということで、本業だけでは得られないスキルを得たいのか、あるいはつながりを得たいのかということを、自分のなかで目的をしっかり考えることが大事かなと思います。
自分のすきま時間を切り売りするようなサブの副業ではなくて、価値貢献型のパラレルの複業を考えて、単に時間を消費してしまうのではなく、自分の時間を、自分のスキルやキャリアに対して投資していくようなイメージで複業を捉えていくというのがよいと思います。
本業と切り離して、どうやってお金を稼ごうかなと考えるのではなくて、本業も含めて今の自分の次のキャリアを考えたときに、どんなスキル・経験が積めれば、より本業の選択肢が増えるのか、あるいは本業とはぜんぜん違う、趣味でやっていることを仕事にできないかを考えたりというかたちで、複業を捉えていただけるといいかなと思います。
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