2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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阿部広太郎氏(以下、阿部):(スライドを指して)仕事というのは、このように縦軸と横軸で、左が不自由で右が自由で、上が予算が大きくて下が予算が小さいと分けていくとするならば、ちょっと不自由で予算が大きい仕事は当然ながらある。
それはやらなければならない義務の仕事で、調整に始まり調整に終わるような仕事もあったりします。でも、それは予算がついているから、やり遂げなければならないようなものだったりします。
次に、予算が大きくて自由もある仕事。阿部さんの自由にしてください、みたいなものです。それは、やっぱり社内でも名前が売れている人に相談がいくと思うんですよ。「あの人に頼んだらいいんじゃないか」というふうになって、大御所に話がいっちゃいます。
次に、不自由で予算も小さい仕事。やらなくちゃいけない、でも予算がないというものです。けっこう「毒」ですが、「毒を食らわば皿まで」ではないですけど、毒の耐性をつける、ワクチンみたいな効果もあると思います。
「目をつけるべきはここだよ」と先輩から教えてもらったのが、予算が少ないけど、自由な仕事。おもしろいことをやっているところに飛び込んで、仕事をしていくと、けっこうおもしろいことができるんじゃないかと。この部分がチャンスだということで、待っていたらダメだ、行動しようと。
このゾーンにいる人たちに知られに行くというか、自分からその人に会いに行くしかないんですよね。人に会いに行くことによって、何が生まれるかというと、例えば自分が不自由なところにいたとしても、足で稼いで動いたことで、いきなり右上にはいけないかもしれないけど、予算が小さくて自由な仕事は飛び込んでいけるんだよ、と。行動することで自由を獲得できると思っています。
チャンスに会いに行くということで、何をするかというと、誰に頼まれたわけでもないのに、企画書を書いて送るんですよ。企画書は、ラブレターと言われたりするんですが、自分発信で送るんです。
本当にこういうことができるんだなと思ったことがあって。Facebookで自分から企画書を送ったことがあります。僕がここまで来られている企画にまつわる原体験だと思うんで、話しますね。
Facebookを見ていたら、居酒屋の甘太郎さんの広告があるとき突然、目に飛び込んできたんです。繋がっている方が「いいね!」をしていたからだと思うんです。居酒屋の甘太郎は、日本の太郎さんを応援していて、太郎という友達を求めているということでした。それで、名前に太郎の付く人にサービスしますということでした。
僕、名前が広太郎というんですけど、これは俺のことかと思って(笑)、自分の名前で「いいね!」と言われたことは1度もなかったんですけど、なんか得したというか、「俺じゃん!」と、呼びかけてもらったような感じがしたんですよ。
あとから知ったんですけど、世界で最も心地よく響く呪文は自分の名前という言い伝えがあるらしいのですが、まさしく名前を呼んでもらえたみたいなかたちで、心が躍ったんですね。ただ、あのクリエイティブはめちゃくちゃもったいないなって思ったんです。
たぶん、パワーポイントでよくある字体でつくったものなんですけど、すごくもったいないって思って。僕はうれしかったけど、もっと響くものがあるんじゃないかと思って、「じゃあ誰がやる?」「俺じゃないか?」と。阿部広太郎の「広」は「広告」の「広」じゃないかということで、甘太郎を広告するのは俺だって思ったんですね。
人生は、やっぱり伏線だと思っていて、回収できてくるとすごくおもしろくなります。過去にやったことや、自分がやった出来事などを、あの時ああだったから、こうだよね、となってくるとすごくおもしろくて、勝手に運命を感じるというのがすごく大事だと思っています。運命を感じて、コピーを書いて、デザインのできる友人に、こういうことを思っていますとメールしました。
彼は代々木上原に住んでいたんですけど、夜な夜な会社が終わってから彼の家に集合して、秘密基地でワクワクすることを考えるように、こうしたらおもしろくなるよねといったことをお互いに出し合って、ラブレターみたいな企画書を書いて、甘太郎さんのFacebookアカウントにメッセージを送ったんですよ。
FacebookはPDFとかが添付できるじゃないですか。それで、「甘太郎さまへ。はじめまして、コピーライターをしております阿部広太郎です」とメッセージを送りました。もっと多くの人に知ってもらいたいと思いました、って。
そのときに意識したのが、なぜ割引するのかをちゃんと言葉にする必要があるということです。大義名分をいつも言葉にしていくのが大事だと思っていて、たくさんの人を巻き込んでいくためには、そうした意義が明示されている必要がある。
シンプルに「甘太郎は、太郎に甘い」という、この一言じゃないかなというところにたどり着いて、お手紙を書いて、「甘太郎は、太郎に甘い」と、こんなポスターをつくって、せめて店頭にポスターを飾りませんかとか……コピーを書く手が止まらなかったので、いっぱい考えました。
当時は石原慎太郎さんが都知事だったので、「都知事、密会もお安く」とか、いろんなコピーを書いたんです。なんとしても実現したかったので、Facebookのカバーページみたいなところまで提案して、よろしければ感想をいただきたいです、とメッセージを送りました。
企画書はひとり歩きすると言われていますけど、本当にひとり歩きして、役員の方にまで届いて、全国キャンペーンにしましょうとなって、「やります!」となりました。
このときに、ウェブサイトのキャンペーンができたんですけど、コピーがコンテンツになると思いますと話をして、下にスクロールをすると、たくさんコピーがでてくるようにしました。
諸石真吾氏(以下、諸石):すみません。「今日は阿部さんの独演会にします、僕はしゃべらないようにします」と言っていたんですけど、しゃべりたくなっちゃって、しゃべります。この前のスライドの「どうしよう、元カレが太郎だ。」のコピーがすごく好きで。
阿部:ありがとうございます。そうですね。割引のニュースで元カレを思い出して心が揺れるみたいな(笑)。
諸石:当時受け手として、甘太郎の広告を見て、これは超おもしろいなと思っていました。阿部さんは普通に「これやろう!」という気持ちですぐ行動する方だと思うんですけど、さっきみたいにFacebookで見つけて、ピャーッと企画書を送るじゃないですか。さっきのメール、めちゃくちゃ人柄が伝わるメールなんですよ。なんか、「ドキドキします」みたいな。
本当に、パッションだけで動いているな、みたいな……あれはね、阿部さんの人柄もすごくあるんだろうなと思いながら読んでいました。やっぱり、こいつは打算で動いているなと思われたら、変わって来ますからね。
阿部:本当に裸の気持ちで、気持ちを込めて、丁寧に書く。すごく抽象的なことなんですけど、精一杯の気持ちで、真剣な言葉で書いたら絶対なんとかなるし、気持ちは返ってくる。そういうふうに実現していって。(甘太郎の広告のコピーを画面に映して)一応最後に「二郎が嫉妬した。」というコピーもつけて(笑)。そのとき、「いいね!」が一万数千もついたんですよ。
当時の自分では驚くぐらいの手ごたえがあって、政治家の河野太郎さんが反応してくれたり、本当に全国の太郎仲間に届いたんです。
諸石:世の中に、あんなに太郎がいるのかというくらい。
阿部:届くんだなと思いましたもん。おもしろいなと思ったのが、働くってなんか大変なことだと思っていたけど、自分がうれしいことで相手が喜んでくれるという実感があるなと思いました。
阿部:やっぱり、小さなところからかなと思いましたけど、自分で働きかけていくと、けっこうおもしろいじゃんと思って。最近よく、貯金より貯信だと言われたりするじゃないですか。そのとおりだと思うんですよ。
信頼関係というのは、いずれ仕事を生み出して換金されるというふうに思っています。遠くの大御所より近くの熱いヤツということをすごく思っていて、近くで一生懸命なヤツがいたら、頼んでみたくなるという心理は、絶対にあると思います。
その後、ここでできた関係性から、阿部さんと仕事をしたいと仰ってくださって、新聞15段の仕事や、忘年会、新年会のキャンペーンの仕事が入ってきたんです。僕が太郎だからこの奇跡が起こったのかな、では終わらせたくなくて、こんなときこそ自問自答しないといけないなと思いました。
提案するときに心がけている3つのことがあります。(スライドを指して)この①②③について。「①あなたは本気?」「②相手は喜ぶ?」「③ほんとにできる?」と、シンプルにこの3つだと思うんです。ちょっと駆け足で説明すると、一言一句にどれだけ思いを込めて伝えられるか。強制ではなく、本気になって書いていたら……本当にイキイキと書いていたら、相手の人だってリアクションせざるを得なくなるなと思います。
2つ目は、それを受け取ったときに、愛があるのはいいんですけど、相手が喜んでくれないと、企画書だってひとり歩きしないわけです。3つ目が、本当にできるかということです。
企画した内容を、責任を持って成功させることができるかという部分がめちゃくちゃ大事です。できもしないことを書いちゃうと、夢物語だけで終わって、「全然できないじゃん、あいつ」みたいになっちゃうので、それはもったいない話だと思います。
とにかく企画書をつくって会いに行く日々で、その企画書があることによって、人生が良い方に狂っていくといいなと思います。自分の使命感ですね。
これは僕の趣味ですね……カラオケとか、サーフィンとか、サウナとかと一緒です。僕はただ単に喜んでくれるのが好きなんで、自分の趣味で企画書をつくって、送って、実現してます。
阿部:時代が、お金じゃなくて関係性の大小だとみんなが考えていくようになってきています。それを僕は「関係主義」と言っていたんですけど、目先の見返りですぐにお金が、ということよりも、自分で自分に発注して、「俺がやりたいからやるんだ」という気持ちを強く持っていたら、それはやっちゃえばいいんじゃないかなと思っています。信頼関係をつくって、その関係性があるからこそ、次に仕事に繋がって、それが徐々に大きな仕事に繋がると思ってやっていました。
大量生産、大量消費の時代なんですけど、そのサイクルで自分が何かをやっていくというよりは、夢中になれることというか、夢中で生み出して、夢中になって、それを相手と共有していけるような活動ができたらいいなと、思っていました。
そのときに大事なのは、何をするかよりも、誰とするか。それがすごく大事だということに気づいて、同じ気持ちを持っている人と夢中になれると気持ちいいよな、と。シンプルなんですけど、そう思いました。
僕は常々思っているんですけど、人は、偶然に人と出会うわけじゃなくて、ここの場にいるのも、「このデジマ下剋上イベントに行こう」と思ってみなさんが出会っているわけで、同じ選択をしたから出会った。つまり、出会いから仕事が生まれるんです。
(スライドを指して)僕は、ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズが、若かりし頃から友人関係であり、ライバルであり、同志だったということがわかるこの写真がすごく好きで。このイベントにいらっしゃっているどなたかとどなたかが、10年後にどこかの舞台に一緒にいることだって全然あり得ますから、出会いは大事だなと思っています。
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