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ミレニアル世代の「働く」を考える ―誰がためにミレニアルズは働く?―(全7記事)

やりたい仕事を周囲に反対されたらどうするか? 好きを仕事にするためのロジック

2019年2月13日、WASEDA NEOにて、「ミレニアル世代の『働く』を考える -誰がためにミレニアルズは働く?-」が開催されました。本イベントでは、ミレニアルズの“枠にはまらない働き方”を代表するトップランナー3名に、いかに「好き」を積み上げ、会社や社会に認められる自分をつくっていくのか、これからのキャリアをどう創り上げていくべきなのかなどをテーマに語ってもらいます。今回は、仕事が好きになる考え方や、好きなことを仕事にする方法など、三者三様の仕事との向き合い方を紹介しました。

無駄な会議と有意義な会議の違い

木村和貴氏(以下、木村):中郡さんは、会社に属してずっと長くというよりは、逆にそうじゃない道からのアプローチで会社と接していたと思いますが。

中郡暖菜氏(以下、中郡):会社に属していたことが人生で8ヶ月ぐらいしかないので(笑)。

木村:どうですか? 会社のあり方のようなところで、こういう会社であれば入りたいなど。もしくは、会社はいらないよという話。

中郡:そもそも「組織に属したい」という気持ちがないので、入りたい会社という概念がありません。大きな仕事をするとなったときに、代理店やコンサルティング会社のプロジェクトに入ることもあるのですが、そういうのはすごくおもしろいですよ。めっちゃおもしろいですよ。何でこんなにおもしろいんだろう。

プロジェクトの会議の時間が1時間や2時間あったとすると、すごく有意義な時間だし。その会議が終わって帰って、その後、出版社の会議に参加すると……この会議は何のために行われているんだろう? なんていうのが待っていたりもする。

その違いはなにかというと、1つのわかりやすい目標に対して、みんながぜんぜん違う畑から集められて自分の得意なことだけをやっているからこそ、すごく話し合いも楽しいし、その会議がすごく意味があるものだったりするんです。

井上一鷹氏(以下、井上):一般的に人事というヤツは、人に仕事を当てるのではなく、仕事に人を当てるんじゃないかと。なんとなくそのオーシャンズイレブンが集まったときに、11分の1である自分はこういうことを求められていて、ここにみんなが期待しているという感じがお互いに持てるというのが最高で。会社に所属していると、なんとなく「来期からこれやってくれない?」というようなことが起きるから、辛いですよね。

それはちゃんと期待をされて、わかりやすい目標であることが大事なんでしょうが。こうなるとうれしいし、みんなで円陣組もうよということが見きれていて、ちゃんとコンプライアンスなどが集まっているのが最高ですよね。

「とりあえず集まりました」は時間の無駄

中郡:会議のアジェンダがちゃんと決まっていなくて、ふんわり始まるやつがあるじゃないですか。あれはマジで時間の無駄だなと(笑)。

(会場笑)

中郡:ちゃんとこの会議によって、何を解決したいのかということを決めたほうがいい。何かクリアしなければいけない問題があるからこそ打ち合わせをしたり会議をしたりするわけじゃないですか。

それで全員が全員で「自分ができること」を発表したり、そこで議論をしたりといったことをすればすごく意味があると思いますが、「とりあえず集まりました」というようなことは意味がないなと思います。

井上:そういうのはよくあるやつですよ(笑)。握っておかなきゃというようなものは、ぜんぜんありますよ。

木村:ありますね。といったような会社の愚痴がこぼれたところで、最後のテーマに移りたいと思います。「好きを仕事にする方法」ということで、今日来ているみなさんは登壇者の方々から、何かを持ち帰りたいと。

自分の今のキャリアをどう変えていくかというところのアドバイスであったり、もしくはヒントになるような情報がすごく欲しいのではないかと思います。自由に費やしたいことをやっているお二人なので、そういったところを聞いていきたいと思うのですが。ズバリ井上さん、「好き」を仕事にする方法は?

井上:僕は先ほど、ほぼ言ってしまったんですが。例えばこの3人にとって、ここに座らせていただいて、今日のテーマでお話をした。この行為自体が、仕事を好きにする方法だと僕は思っているんです。

畑違いの人に仕事の話をすると、本当の意義が見つかる

井上:何かというと、みなさんにとっては知りもしないメガネ屋が、急にここに座って勝手に話しているじゃないですか。そうすると、「自分の仕事はこんな意味があるんだ」と一生懸命しゃべるじゃないですか。この行為が、やっぱり普通に自分の仕事はおもしろいんだな、と思い直すきっかけになる。

少なくとも仕事になっている以上、お金が発生しているので、誰かを幸せにしているのは確実なはずで。だとしたら、その幸せにしている人がどう幸せなのかということを具体的に言葉にしていくことで、自分の仕事に誇りを持てる。

そうやって誇りが持てない仕事はほぼないはずなので、そこを一生懸命、できるだけ遠い人や会ったことがない人に話しまくって、それでも仕事を好きになれるストーリーが描けなかったら、マジで辞めたほうがいい。それだけのような気がしますね。僕が思っているのはわりとそういうことです。

このメガネ(JINS MEME)の話をすると、スマートフォンとつながっていて、集中が測れます。一番遠い人に超近い人……遠いタイプなんだけど近い人という、うちの母親ですが。母親にこの話をしたら、「誰がこんなもの欲しいの?」と。「誰も測りたくないわ、そんなもの」と言われるわけですよ。

必死に「いや、こういう理由で、こういうオフィスに置いて、こういうニーズがあってね」というように。ごめんなさい、母親にはぜんぜんイメージが入ってこないので、本当に言われるんですね。そういった、まったく関係のない世界の人に自分の仕事の意義を語ろうとすると、必死になって本質的なところが見つかってくるんですよ。

親しい人だとわかってくれてしまうから「自分の仕事というのは、なんとなくこのへんが正しいよね」「やんわりでもいいわ」と思ってしまうのですが、遠い厳しい人に話すと「わけがわからないわ」と言われてしまうので、この経験を作ること。

できるだけ遠く厳しい人に、自分の仕事の話をする。この経験を積み重ねれば、普通にいい仕事だなと思えるストーリーが見つかるので、それが一番だと思いますね。今日は、みなさんのおかげで、僕は仕事をさらに好きになって帰るんです(笑)。

木村:なるほど。いい循環ですね。

井上:そう思いますよ。本当に。

共感できない相手と仕事の話をするのはストレス

中郡:井上さんの話を聞いていて、自分も考えてみると、親戚などに自分の仕事の説明をすることがすごく苦手なんですよ。親戚だから、自分の作ったものを買っていてくれたりする。会いに行くと置いてあったりして「今回の表紙いいね!」というようなことを言われるじゃないですか。それが耐えきれなくて(笑)。

(会場笑)

井上:えっ!? 耐えきれなかったんですか? 今の流れで(笑)。

(会場笑)

中郡:だって、私はターゲットにしてませんし。たぶんよかれと思って「こういうページがよかった」と言ってくれますが、私は真顔で「フン!」としています(笑)。

木村:職人肌で、かなりこだわりがある。

井上:逆にこの人に対しては、わかってもらうべきではないけど話すと、自分の中で大事にしていることは見つかるんでしょうね。親戚の人にわかってもらう必要もないですもんね。

中郡:そうなんですよね。無言で真顔になってしまうくらいには、嫌なんですよね。それぐらい自分にとっては仕事が大事ということでもあると思うんですよ。絶対に共感できない相手と、自分の大事な仕事の話をあまりしたくないというか。

井上:ああ、なるほど。たぶん僕はわりと弱い人間なので、どこかで共感を得たいんですよ。仕事をしている内容について「これってよくない?」というような。「ああ、そうだね」と言ってもらえると安心するタイプなんですが。

そうではなく、たぶんこの内容は好きというのがはっきりしている方だから、それについての共感を得ることに別に喜びはなくて、共感が得られることのゾーンの人が強烈に共感していれば、それでいいんですもんね。

中郡:歳がけっこう上の方だと、もう感覚がぜんぜん違うじゃないですか。まず「女性はそんなに働かないだろう」みたいな考えがベースにあったりするから、一切話が交わらなかったりするので、その上に自分の仕事やクリエイティブの説明をすること自体が、すごくストレスになってしまうから。

やりたい仕事を親に反対されたらどうするか

木村:アーティスト的な発想というか、わかる人にわかってもらえば、そうではない人がどうこう言っても、それは関係ないというか。

中郡:その大部分は、誰に何と言われようと自分の好きを突き通すという、最初の話になるんですけど。私はもともと、親から編集者になるのを反対されていたんですよ。「絶対に反対」と言われて、応援をしてもらえず。

音大に行ったので音楽の道に進むと親は思っていたらしいのですが、まったく関係ない出版社に入ったから、それでもくじけない強い心がないと、自己表現をすることなんて無理だと思うんですよね。「親が嫌だと言っていることでもやるぞ!」というような強い意思を自分の中に見つけられたからこそ、本当にその仕事が好きだと気づけたと思うので。

木村:なるほど。強い意志を持ってやりきることで、好きなことを仕事にできるという。

中郡:周りの人が、「この仕事がいい」「この会社がいい」と言っていることで判断しないほうが、絶対にいいと思うんですよね。

井上:すごいですね。うちの母も、JINSに入るときに「あなたをメガネ屋にするために育てたんじゃないの」って言ったんですよ。「なぜここに入るのか」とやっぱりわかってほしいから、僕はやっぱり、あのお母ちゃんが納得するロジックを勝手に作るんですよ。自分の中でもそのロジックに納得をするんですが、それ(強い意志)を失っているものがありますね。

僕は自分の中でストーリーをしっかり書いて共感を得たいから、たぶん、これがしっくりくるよというのはわりと人に合わせて、自分の中の根幹になるストーリーを作ってしまっているから。

例えば(中郡さんのように)1つのプロダクトを尖らせて、ものすごく尖ったサービスを作るといった仕事には若干向かない発想で物事を考えてしまっていて。そのぐらい怒りをちゃんと感じて生きていこうと思うし。

中郡:仕事の種類にもよりますよね。女性ファッション誌を創刊するというのは、かなり尖らないといけないことが多いと思うのですが、もっとバランスをとってやるほうがいい仕事などもありますしね。

井上:内容によって、手段も違うんですね。

やりたい仕事は、結果を出しながら手繰り寄せる

木村:ここで自分の話をすると、1点突破型であったり、自分がやっていることを好きな仕事だと認識していくという話だったと思いますが、僕はじわりじわりと手繰り寄せるタイプ。

もともと興味がある仕事を始めたのですが、その中であれがやりたいこれがやりたいと思ったときに、なまじ全部好きなので、全部ちょいちょいできると、結局できる人が足りていないところや、Excelなどが得意だとそういうことをやらされるんですよ。

それも嫌いではないので、けっこうワクワクしてやってはいるのですが、本当はもっとクリエイティブなことをやってみたい。そういうときに、なまじ他のことができてしまうとそちらを任されがちなので。どうやってやりたいことを引き寄せるか考えて、任された範囲外の時間や自分の時間を使って、そうしたチャレンジをいっぱいしていく。

たとえば広告業界のプレイヤーだった時の話だと、コピーライターの講座に通ったり、公募の賞に出してみたりする。そういった賞に応募して賞が獲れたら「ああ、お前はあれを獲ったから、今度はこれをやってみて」というような感じで、1歩踏み出して外でやりたいことをやってみると、今度は結果がついてくる。

それ以降はその結果が目について、そうした仕事を任されるようになって、気付けばだんだんだんだんやりたいことに近づいていけるようになっていたということが、わりとありましたね。

ですから、新規事業にも興味があったのですが、1年目の頃からずっとビジコンに出してずっと手を挙げているうちに、気付いたら任されていたという感じです。自分が今、ゼロから自分の好きなメディアを立ち上げられたのは、その延長にあったかと思っているので。

手繰り寄せる派の人は、ぜひ外でやりたいことをどんどんやっていって、そこでちょっとずつ結果を積み重ねていくと、じわりじわりと引き寄せられるのではないかと思いました。

器用貧乏でも損をしないための工夫

井上:それは……言葉がよくないですけど、いわゆる器用貧乏の人は、確かに日本では損するじゃないですか。

木村:そうなんですよ。

井上:仕事ができるやつに仕事が降ってくるから、能力が広がっても、結局やらされる仕事が増えて、分母と分子が同じだけ増えていくような。だからやりたいことができないというように。そこに対して木村さん的に、どこかでその時間をどう自分のやりたいことに向けていくのか、何か工夫のようなものがあるんですか?

木村:そもそもが、まず昭和の考えではありませんが、メンタルですね……。先ほどのExcelの話ですと、「新規事業チームに行くか、Excelで作業をするチームか」というときが、1、2年目ぐらいだったんです。そのときの後輩的なメンバーが、Excelが超苦手だったんですよ。

でも、新規のほうは興味があるというような。僕は新規にめっちゃ興味があるけど、Excelもできちゃうよと言ったときに、僕がそっちのExcelのほうに入って、もう1人が新規のほうに入ってとなった。

そのときに一瞬「なんだよ」と思ったのですが、そこで性善説じゃありませんが、「でも、いいことをやっていれば絶対に返ってくる」と思い、こっちはさぼらずExcelのほうでもしっかり結果を残して、それ以上に外でどう成果を作って見せていくかというのを……もうメンタルですね。そういう駆け引きをやるんだみたいな。

井上:そのメンタルは、どこで鍛えられたんですか? お父さんですか?

木村:父ですね。子どもの頃、車に乗っているときに「お前、いいか。自分のためだけに生きるようなつまらない男になるなよ。社会のために生きろ」ということを言われて育った。

井上:運転しながら。すごい親ですね。

木村:そうなんですよ。そういうところから来ているのではないかと。だから、真っすぐ漫画の主人公のように戦っていきたいタイプですね。

中郡:木村さんみたいな方がいてくださったら、すごく助かりますね(笑)。

井上:周りはすごく助かりますよね。

木村:そういった感じでやっています。ですから、ちょっと遠回りもありつつ、気付いたら自分のやりたいところにどんどん向かっているということも……もともと根本の発想が、外回りをしていることもぜんぜん好きなので、かなりずっと楽しく過ごしているということ。その2つはありますね。だから、本当に嫌なことであれば、やめる決断は逆に早いというか。そもそもの場としての環境を変えるか、同じ環境を自分がどう変えるかというような二択になると思うので。

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