2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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井口恵氏(以下、井口):みなさんありがとうございました。では、さっそくパネルディスカッションに移らせていただければと思います。(小木曽様の)ご経歴のお話のなかで、「世界銀行」というワードが出た際に「すごーい!」という言葉が会場中から聞こえました。
そんな小木曽様にご質問させていただきたいと思います。グローバルにご活躍されている小木曽さんが(一番大きな問題と)感じておられ、低い点数に評価されている、日本のジェンダーの状況をどのように見ておられますか?
小木曽麻里氏(以下、小木曽):そうですね。やっぱりもうみなさんも感じておられると思います。日本の見られ方は、日本以外のところに出た時に「あっ、あなた(のように)、日本で仕事している女性たちは大変だね」とみんなに言われてしまうような状況はあると思います。
ご存じのとおり、世界経済フォーラムがジェンダーのランキングを出しております。日本は今年、149ヶ国中で114位ということで、G7の国の中で段トツで一番下になっています。
これをさらにブレイクダウンして、どうやってこの順位を決めているのかを見ますと、保険・教育・経済・政治分野で女性がどの程度活躍しているか、または女性の生活水準がどれくらいか、というところで評価しています。日本はなんと、教育と保険は世界1位なんですね。それぐらい日本の女性は恵まれているんです。ところが、経済参加と政治参加であまりにも遅れているので、結果的にはG7の国で段トツ(で一番)下になってしまっています。
ですから、とくに経済と政治の状況をどうやって変えていくかが、今後とっても大事なことなんじゃないかなと思います。一方、他のアジアの国はどうかというと、韓国や中国も日本よりちょっと上か下を行ったり来たりしているような状況なんですね。
じゃあ、そんなにひどくないじゃないかという意見もあるのですけれど、やっぱり日本の特徴というのは、家庭内では女性がすごく主導権を握っていますし、休日にレストランなどに行くと、高いランチを食べるのは女性ですよね。
小木曽:日本は、世界にたぶんほとんどない、旦那さんが給料袋を奥さんに渡す国なんですよね。これって世界的に日本ぐらいしかないのではないかというぐらい、旦那さんが奥さんにちゃんとお金をそのまま渡してお小遣いをもらうという国なんですね。
女性が虐げられていたり、女性への体罰や暴力が今いろいろと問題になっているなか、そういう意味では日本は非常に良いのですけれども、どうしてこれだけ経済や政治参加が進まないかというところが、すごく大きな問題だと思っています。
これはもう答えがないのですけれども、個人的には、高度成長期に男性が外に出て働いて、女性が中にいるということが染み付いてしまった(と思っています)。その前の江戸時代を見ると、日本は農耕民族なので、そんなに分かれていなかったんですよね。
ところが、やっぱり高度成長期以降に、この家と外の違いができてしまって、女性の経済参加や政治参加が非常に少なくなってしまったことは、非常に残念だなと。日本は島国なので、わりと頑固なソーシャルノーム(社会規範)に関して、そういうものだと思うと「そういうもの」でいってしまう国民性なので、一度そうなってしまうと、なかなか是正し難いというバックグラウンドがあるのかなと思います。
ただこれは、国際的にも、日本にとっては大きな問題です。企業のおじさまの方々に「なんで女性の進出がないとだめなの?」と言われるんですけれども、やっぱり今非常に言われている多様性・イノベーションは、世の中が大きく変わる時には、ものすごく大事なんですね。
逆に世の中が変わらない時って、同じような人が同じような職場にいて、同じような意思決定をしているのが一番いいんですよ。日本の高度成長期ってある意味、そこでバタバタだったんですけれども、今はもう本当に時代が変わってくる中で、多様性を出していかないといけないということです。やっぱり女性進出というものが、今後の競争力のなかで非常に大事になってくるんじゃないかなと思っています。
井口:貴重なお話をありがとうございます。私も監査法人で働いていたので、8割が男性という職場でした。男性もたぶん8割が女性だと働きにくいとは思うのですけれども(笑)。そういう経験はしていたので、すごく共感いたしました。
では、次の質問にまいりたいと思います。今グローバルな視点で、海外と日本というお話をしていただきました。ちょっと視点を変えて、業界の違いというお話をしていただきたいと思います。保科様、テクノロジー分野でのジェンダー平等について、お話をしていただけますでしょうか?
保科仁紅氏(以下、保科):さきほどの自己紹介の時にもお伝えしたように、とくに技術者や理系の分野に、まずそもそも女性が少ないということが、けっこう大きいところです。少ないというだけで、いないわけではないので、技術者でも女性の方はいらっしゃいます。その女性の活躍がキーになってくるのかなということは、すごく感じております。
それというのも、やはり女性のほうが想像力が豊かな人がかなり多いと思っています。先ほど仲田さんもおっしゃっていたように、女性ならではの観点という部分を、技術を交えて実現していく。
それは、ITやAIが進んでいくこれからの社会のなかでは、すごく大事になってくるのかなと感じています。未来技術推進協会自体も、女性が増えていることによって、今までぜんぜんなかった視点が増えてきております。
働き方もそうですし、あとは、そもそも活気が溢れるというか、女性が輝いて動けるところは、やっぱりかなり人が集まって来やすいなと感じています。協会自体の取り組みでも、アイデアソンやハッカソンなど、いろいろと講演会などもしております。
以前も女子部のイベントのディスカッションで小木曽さんにもお越しいただきまして、女性ならではの話もしていただきました。基本的に女子部のイベントは女子限定でやっているのですけれども、その時は男性も参加OKにしまして、男性側からもかなり高評価をいただいておりました。
井口:どれぐらい男性が参加されたのですか?
保科:あの時は、参加者の3分の1から半分ぐらいは男性だったかと。
井口:そんなにいらっしゃったんですね。
保科:いろいろと女性に興味があるのかなと思ったんですけど(笑)。
(会場笑)
保科:まあ、いろいろな意味で(笑)。
井口:それは間違いないかと(笑)。そうですよね。私は前の職場で、男性ばかりの職場よりも、女性が1人いるだけですごくイメージが変わると言っていただくこともよくありました。
保科:それは、まさにそうなんですよね。私は今フリーランスで働いていて、出向に行っているところも、ITの部門でやはり女性が少なくて、女性がいるだけで活気が出るというので、女性の事務サポートを募集しているという話も、人材の方から聞いたりしています。感覚的な話ですけれど、そういうところでも、ぜんぜん違うのかなということをすごく思いました。
井口:そうですね。ありがとうございます。では、どんどん次の質問に移らせていただきます。続きまして仲田様、先ほどの自己紹介のなかで、日本の文化を世界に発信する活動をされているとお話しいただきました。そちらの活動とジェンダー平等がどのように結びついているかをご説明いただいてもよろしいですか?
仲田光雄氏(以下、仲田):雑誌の編集長時代に、世界各国の政府観光局から招待いただいて、例えば、イスラエル、フランス、マレーシアなど、いろいろなところに行ってきました。ディズニーからも招待いただいて、マイアミのディズニーワールドも行ったりしました。
「さすがディズニーだ!」ということで、往復の航空チケットがビジネスクラスで、向こうに行った時も、実際のホテルも1棟借り切りで、部屋の中にはミッキーマウスやミニーのデザインのトイレットペーパーまで……そんなかたちで、ちょっとおもしろい体験をさせていただきました。そういう現場を世界各国でいろいろと見てきましたが、女性がかなり活躍しているのを目にしました。
仲田:その時の雑誌は、海外のおもしろいところ、良いところを日本に紹介するというスタンスで、各国を回っていました。でも、それらの国をよく見ると、実は日本文化がけっこういろいろなところに浸透していて、やっぱり日本文化はかなり尊敬されているというか。例えば侍や生け花について、よく聞かれるんですね。
それで雑誌の時代は終わって、YouTubeは実際に日本語と英語で立ち上げました。日本の良いところ・文化を世界にあまりPRできていないというのは、実は英語を使っていないからなんですよ。日本語でダラダラ流していても、誰も見ないよと。
だいたいYouTubeなどは3分から5分で終わりますけど、当時はまだYouTuberというのも、みなさんが知らない時代でした。実はGoogleの役員と話していて、YouTubeはGoogleが買い取るということで、「今後は検索エンジンはYahoo!ではなくて、Googleの次にYouTubeが来る」という話を聞いたんです。
それで私はニコニコ動画ではなくて、YouTubeで始めました。その時に雑誌のスタンスを真似して、私が編集長というかたちで入って、MCは実際にハリウッドで活躍しているネイティブの女優を使って、音楽などもこちらで全部作りました。出てもらったアーティストも、ロックアーティストのKISSに出てもらったり、アッキーナの独占だったり、プロレスラーの蝶野さんといった大勢の著名人の方々に出てもらいました。
逆に言うと、YouTuberのようなかたちで、自分たちの楽しいことをやって発信するのではなくて、例えばKISSの場合は、書道との出会いというかたちで、英語と日本語で発信をさせていただきました。
そのような私の活動をTEDの方が見られていて、いきなり『TEDxWasedaU』から、スピーカーとして出ませんかというお話をいただいたのが、TEDに出たきっかけです。そういうかたちで文化をどう発信していくかなど、いろいろと考えながら動いていました。
仲田:実は、葛飾応為(かつしかおうい)という北斎の3番目の娘が、最近けっこう注目されるようになりました。彼女は北斎よりも美人画が上手いと言われています。実際に北斎の絵のなかの美人画は、実は葛飾応為が描いているのではないのかなというものがけっこうあったりするんですね。
でも、彼女自身の名前はほとんど出ていなくて、作品もそんなに世に出ていないです。今の時代だったら、逆に彼女がおもしろいことができたのではないかなということもあって、今活躍している女性を世界に広めたいな、紹介したいなというのも、実は北斎プロジェクト協会のコンセプトの1つです。みなさん、(現代アーティストの)小松美羽さんってご存知ですか?
私も大英博物館に招待された時に、日本館に現代アートの旗手のようなかたちで彼女の作品があったり、彼女の動きをずっと見ていました。かなりおもしろい動きをしていることもあって、けっこう注目していました。今は実際に中華圏を中心にものすごく大人気で、もう2~3年先の予約まで埋まっているような。狛犬を中心とした絵なんですが、どちらかというと大和の心がそこに入っているようなかたちです。そういう34歳の若手の女性が今出てきています。
ある意味、その状況はちょっとおもしろいなと思っています。日本の文化を外から見ると、どうしても「かわいい(kawaii)」だとかロリコン的な、日本人女性がそう見られるのはちょっと違うのかなということがあります。
それが、小松美羽のような女性が出てきて、正々堂々と世界で戦っていける。そのような状況になってきていることが、すごくおもしろいなと思っています。拡散方法に関しても、実はWebだとか、いろいろSNSを使って拡散していっています。それが新しい今の時代のやり方ではないかなと。
だから例えば日本画などに関して、古い伝統プラスそういうものを組み合わせていくと、これはかなりおもしろいことができるぞというのが、実は私が今思っているところです。『Tokyo voice TV』もそういう観点で作っていますので、よかったらぜひ一度見てみてください。
井口:はい、ありがとうございます。お話の幅広さと人脈の広さが本当にすごいなと思いました。
仲田:実は(今日のイベントは)小松美羽さんのプロデューサーの方や、会社の社長もみえているんです。
井口:あっ、そうなんですね。ぜひこの後の懇親会で、みなさまにお話しいただければと思います。はい、ありがとうございます。
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