2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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石川聡彦氏(以下、石川):いいですか? 今どういうことを考えているのか、仕事の中でなにを意識しているのかという点なのですが、20年後とか30年後にどうなっているのかって、やっぱりぜんぜんわからないんですよね。
機械学習の研究者であってもそうですが、例えば30年後にはその仮説さえ立てなくてもいいんじゃないかという話もありますし、実際そうなるかもしれない。ただ、どうなるかはやっぱりわからないので、この1〜2年で自分自身の生活をどう変えていくのかが、僕は大事だなと思っているんです。
そういった中でハッと思ったことがあって、以前社員から「石川さんのような経営者の仕事はクリエイティブですよね。自分しかできないことをやられているようで、うらやましいです」みたいなことを言われたんですよ。
そこで「今日、仕事でなにをしたかな」と考えてみたんですが、メールチェックを30分、Twitterをやって、その後にご飯を食べに行って、またTwitterして、メールチェックをして……。ただの資料作成みたいなことに時間を投資することが多かったんです。よく考えたら95パーセントくらいの仕事はつまらないというか、単純作業なんですよね。
それはたぶん僕もそうだし、みなさんもおそらく新卒で会社に入られるとなると「今自分がやっているこの仕事に意味はあるのかな」と考えることがあると思うんですよね。
でも僕は、そういった日々のルーチンワークの積み重ねで、自分のキャリア作りやおもしろい仕事ができるんじゃないかなと思っているんです。自分ができる業務の範囲内で、自分のITスキルを使ってみたり、機械学習のスキルを適用したりしてみるとおもしろいかなと思います。
石川:例えば僕、最近テレビをつけるのが面倒くさかったことから、Slackに「テレビ」と打つとテレビがつけられるという画期的なアプリを作ったんですよ。
(会場笑)
これ、便利なんですよ。僕はそういった日々の仕事をどんどん変えていくという、細かい改良の積み重ねの上に次のキャリアがあるんじゃないかと考えているんです。さらに最近作ったアプリには、自分の顔写真をアップすると塩顔かしょうゆ顔かソース顔かが判別できるというものがあります。
「自分は果たしてソース顔なのか?」ということを定量的に採ってみようかと、そういう課題を考えて作ったんですよ。
北野唯我氏(以下、北野):結果はどうだったんですか?
石川:ソース顔でした(笑)。
北野:1つ言っていいですか? それ、やる前からわかってましたよね?
(一同・会場笑)
斉藤賢爾氏(以下、斉藤):(あくまでも)定量的に表すんですね。
石川:それを見せれば、みんな「そうか、そうか」と納得しますし。そういった、自分が感じている課題を少しずつ解決していくことが大事なんじゃないかなと最近感じています。
前田:非常に自由な課題ですね(笑)。
(会場笑)
前田:(斉藤氏はなにか)ありますか?
斉藤:ちょっとキャンプの話をすると、「アカデミーキャンプ夏2018年『オッケーグーグル、宿題やっといて!』」というものがありました。4泊5日のキャンプだったんですけれど、なにしろ宿題そのものについては自動化するので、あっという間に終わっちゃうんですよ。
(会場笑)
残りの時間でなにをやるかという企画で、最終的にやってもらったのは、(参加者の小中学生に)「2030年に向かって、みなさんのゴールを数を使ってあらわしてください」ということをやりました。何年後になにをどのくらいやるかを考えてもらったんです。
ちょっと時間があまりないと思いますが、みなさんも10秒くらいで、2030年までの間、何年までになにをやるか、ちょっと頭の中で思い浮かべてください。
「オッケーグーグル、宿題やっといて!」というキャンプは、Googleからは非常に困惑されてしまいまして……。
「そういうことを言わないでくれ」と。テレビコマーシャルでも、いろんなことをGoogleホーム(Googleアシスタント)がやってくれるんですけれど、「宿題やって」と言ったら、「それは自分でやりましょう」と返されるんです。なので、Googleの公式なサポートは得られていなかったんですよ。
(会場笑)
斉藤:ところが、Googleがその内側でやっていることはとても参考になって、どうやってイノベーションを起こすかという方法論の中に、「目標は10倍にしよう」とあったんですよ。なので、今みなさんが思い浮かべた数は、小さいほうがいい数です。例えば「何年までにやるか」という数は10分の1にしてくださいね。
大きいほうがいい数は10倍にします。そうすると、小中学生にもやったのですが、小学生は「9年後に大学生になる」とか自動的に起こるようなことを書いてくるんです。ところが突然、それが「0.9年後に大学生になる」に変わる。
(会場笑)
「へっ!?」となる(笑)。「え、それ、できるんですか?」みたいになるんです。そうなると、日本ではできないかもしれないけれど、できるようにするにはどうするかとか、どこの国ではできるとか、突然頭脳がフル回転するような話になるんです。
私もそれを自分に対して適用したので、30年後にこの世からお金を消し去るということは、3年後にお金を消し去ることだという目標で動いてるんです。突然頭脳をフル回転しなきゃいけない状況に自分を置いてみるというのは、なかなかいいかなと思いました。
みなさんも今感じていらっしゃることかもしれないですけれど、そういうことをキャンプでやってみました。
前田:そういう話が、たしか北野さんの著書にもあった気がします。「いきなり外す」みたいな話ですよね。目標設定を一気にぶち壊して、そこから自分の新しいキャリアを作っていくという文脈があったかと思うんです。
北野:ありましたっけ? ちょっとわからないです(笑)。ちなみに『転職の思考法』を読んだ人ってどれくらいらっしゃいますか?
(会場挙手)
意外と少ないんですね(笑)。
前田:申し訳ございません。
(会場笑)
北野:『転職の思考法』、絶対読んだ方がいいですよ。セミナーに参加するより、『転職の思考法』読んだ方がみなさんのキャリアが開かれると思いますよ。ぜひ本屋さんで買ってください。
今後どうしていきたいか、みたいな話ですよね? エモーショナルな部分と、システムチックな部分で両方あるんですけれど、システムマチックな部分は「WEEKLY OCHIAI」という番組に出てお話ししたので、それをぜひ見てください。
そこで日本の労働マーケットの課題みたいなものを解説しています。それはぜひ本で読んでから見ていただきたいなと思っています。
北野:エモーショナルな部分でいうと、結局システム側がやるべきことはシンプルで、働いている人たちが楽しいと思えるとか、そういう世界を作っていくことだと思うんです。
そのために一番ボトルネックになるというか、破壊しないといけないと思っているのが、人の可能性を阻害するものです。それをぶち壊したいというのが僕のミッションです。
そのためにいろんな活動をするのが僕の役割だと思っているんですね。誰かが挑戦しようとしているときや新しいことをしようとしたときに、足を引っ張ったり、その人のせいじゃないのに、なにかしら邪魔されたりすることがいっぱいあるじゃないですか。
僕は小さい頃からそういうものにめちゃくちゃむかついていて、これをぶち壊したいと思うタイプの人間なんです。
『転職の思考法』も実はそうなんです。この本では別に転職を勧めてはないんですよ。ただ人が「転職しよう」「新しいチャレンジをしよう」としたときに、「転職は裏切り者がするものだよね」とか「今このタイミングで転職しても、お前ぜったいうまくいかないよ」とか言われますよね。
その一言がどれだけその人の可能性を阻害していることか。それに対して僕はすごく怒りを持っているんです。自分の大切な人や仲間が挑戦するのであれば、「だったらこういうことをした方がいいんじゃない?」と背中を押してあげる。そういう世界の方がいいじゃないか、みたいな本なんですよ。
北野:振り返ってみると、僕の人生はけっこうそうなんです。先ほど志の話があったと思うんですけれど、僕は「夢」と「志」は違うと思っているんです。「夢」というものは、「自分はこうありたい」とか「お金持ちになりたい」とかのことだと思うんですね。
「志」というものはもっと大きくて、「世の中がこうあってほしい」とか「世の中はこうあった方がいい」みたいなものだと思うんですね。僕がいつも言っているのは、「好きと怒りをつなぐものが、得意なことである」ということです。
自分の感情の中で大事にしないといけないものは、好きと怒りだと思っていて。僕にとって人の可能性という話は、怒りとか憤りに近いものだと思っているんです。その憤りは、世の中に対して、「こうあるべき」とか「なんでこうならないんだろう?」みたいなものです。
(自分の得意なものは)そこに紐付いていることがけっこうあります。もちろん「好き」もかなり大事なんだけれど、もしみなさんが感情の中に、憤りや怒りを持っていたとしたら、その先には夢じゃなくて、さらに大きい志みたいなものがあるんじゃないかなと僕は思っているんです。
僕にとってのそれは、「人の可能性を阻害するものをぶち壊したい」という思いなんです。僕はキャリアだけ見せると、けっこう「キラキラしてる」と言われるんですね。最初は博報堂に入って、そこで経営企画をやりました。
次はブロック経済の仕事をして、それから海外に行って、日本に戻ってきてからはBCGで、そしてベンチャーのスタートアップに入ったので、キャリアがキラキラしてると言われるんです。
北野:でも、そんなことはぜんぜんなくて。僕、20代で年収が2回半分になっているんです。1回は0円にもなっているんです。そういう生活をしているときに、BCGからワンキャリアというベンチャーに入ったんです。当時は5〜6人くらいの小規模なイベント会社だったんですよ。
そのときに、「なんで北野はそんなよくわからないベンチャーに行くの?」とけっこう聞かれたんですよ。「もったいなくない?」みたいなことを散々言われたんです。確かに僕も迷いはすごくあったけれど、最後に意思決定できたのは一緒に働く仲間のためでした。
創業期のメンバーの1人なんですが、彼は家庭の事情というか出生の事情でいろいろあって、小さい頃にいじめを受けてきたんです。でも中学のときにすごくいい先生に出会って、人生が変わって、そこから一生懸命勉強して、いい大学に行った。
そして大企業に入って、そのあとすぐに辞めてワンキャリアという会社に入ったんですけれど、僕はなんだか「こいつと一緒に船に乗って沈んだとしても、こいつとなら僕は絶対に後悔しないな」と思ったんです。
それはなぜかというと、彼は国籍とか、職業とか、本人のせいじゃないもので足を引っ張られてきた。僕はそういう世界やシステムに対してすごく憤りを感じて、「だったらこいつのためにがんばって、こいつを絶対に一人前のビジネスパーソンに育てる」と思ったんです。そのためなら俺は魂をかけられるなと思って、このフィールド、今の会社に入ったんです。
北野:なにが言いたいかというと、みなさんの中にも「好き」という感情はあると思います。でもどこかのタイミングで「憤り」や「怒り」みたいなものを感じたとしたら、その気持ちをすごく大事にしてもらいたいんです。
それはすぐにはお金になりませんが、「得意なこと」でそれをマネタイズするというか、お金にしていくことができるんです。すなわち『転職の思考法』でいうところの「技術資産」です。20代や30代で、ぜひそういうものを見つけていってほしいと思います。長くてすみません。
前田:(深く頭を下げて)ありがとうございます。序盤にいろんな技術の話が出てきて、「お金はいらない」みたいな話からスタートして、そこから「データを溜めることが大事だね」「どう作業をなくしていくか」という話がありました。
「じゃあ、そういう環境下で、どういうポジションをとればいいのか」みたいな話が序盤にあったと思います。結局その働き方に対しては、先ほどの斉藤さんのワークショップの話を、言葉を変えるのであれば「志」というものがすごく重要なキーワードになってきそうですね。
どうやらそれは、みなさんのご経験の中の憤りや、ご自身の中でどうしても譲れないものなどがヒントになりそうです。それに従ってミッションベースで動けば、そんなに考えなくても、それはちゃんと仕事になってマネタイズされていくんじゃないか、というようなことをご提案いただいたように感じます。
本当に短い時間で大変恐縮ですけれども、みなさまから働き方に関する軸で、いろんなご見識を賜りました。本当にどうもありがとうございました。改めて拍手をよろしくお願いします。
(会場拍手)
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