2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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青木耕平氏(以下、青木):僕は、幸せかどうかは人が決めてくれればいい、って言ってるんですよ。要するに、自分で自分が幸せかどうか、わからないから。周りの人が見て「ああ、幸せそうだな」って言うなら、じゃあ幸せなんでしょって。
だけど「幸せなの?」って聞かれたら、うーんって考えこんじゃうんですよね。46歳にもなれば、幸せかって聞かれて、うーん……ってなっちゃうというね。
小野裕之氏(以下、小野):(笑)。
青木:だから、決めてくれればいいと思ってるというところがあるとすれば、例えば(今日のイベントに出るときも)「今日は嫌われるぞ」でもなく、「今日は絶対、みんなの気持ちをつかんで帰るぞ」というような心意気もなく、やってきちゃうような。
逆に「これでいいんだろうか」とは思っていますよ。みなさんがたぶん今日、お金を支払って来てくださってるという話を聞いてるので、それにはすごく応えたいっていう。
質問者1:なるほど(笑)。
青木:価値あるものにしたい、とは思ってるんですけど。ただ、そういうものがないようなところはあると思いますね。それは別にいいとか悪いとかじゃなくて、やっぱり世代的に、いろいろな情報がもう残ってる時代じゃないですか。アーカイブされている時代だから。
各世代の実験の結果が、全部残ってるんですよね。こういうふうに見せてみた。それで、逆に振れてみた。中間をやってみた、とか。要するに、コンセプチュアルに自分を表現するということに関しては、すでにファッションのアーカイブみたいなもので、もういっぱいいろいろな事例があって。
それで「もう、これ無駄じゃね?」って、なってきてるんだと思うんですよね。コンセプチュアルに、すごく破天荒っぽく見せる人って、けっこう団塊の世代に多いじゃないですか。それでわかった、ってなっちゃう。「すごいなー」というよりは、「そういう人、よくいる」みたいな感じになっちゃう。「いやー、いるよね」という。
逆にそうじゃなく、今の若い人とかであるとしたら、「過剰に下から来るマン」みたいな人もいるんですよね。
小倉ヒラク氏(以下、小倉):過剰に下から来るのは、わかる。
青木:わかるでしょ。そこまで下から来ると、それはガードポジションに引き込もうとしてる、としか思えないんだよなって。そういうのもいたりとかね。だから、思惑がありすぎることのトゥーマッチさみたいなことが、アーカイブに触れてきている人たちは、たぶんある程度なんとなくわかっちゃってるから。
どちらかというと、なんだか変に恣意的に自分をコンセプチュアルに提示したくないなという気はある、というコンセプトになっちゃってる。
(会場笑)
質問者1:なるほど(笑)。それもまた、みたいな感じですね。
小倉:高橋源一郎さんと、翻訳者の柴田元幸さんが、現代日本小説とは何か、日本文学とは何かというような本を書いてるんだけど。最終的に、すごく綿矢りささんを褒める、という展開になってるんだよね。
綿矢りささんの小説って、読んだことある人はわかるけど、普通の青春小説なの。それで、その二人の褒め方は、「いや、綿矢りささんの小説はいいんですよ」「風景描写がすごくよくて、心理描写がすごくよくて。青春って感じで、ぐっと来るんですよ」という、何周か回って普通っていう。
(会場笑)
小倉:日本文学というのはそういう意味で、普通にエモいものをいかに外すか、というね。だから、ストーリーの語り口調を全部破壊してみたり。ある種、奇をてらうことをずっとやっていった先に、やっぱり「夕焼けの描写とか、ぐっと来るよね」という話になっているということが、なかなか示唆的だなと思っています。
高橋源一郎さんと柴田元幸さんという、さんざんもっぱら現代小説と現代文学の現場にいる人が、もうね、なんて言うんだろう。マニエリスム(様式主義)に飽きてるんだよね。それは、わりと「平熱でいいじゃん」という話にもなるんで。
だから、僕らで共通しているのはたぶん、奇をてらうというか、なにかしら「自分はこういう存在であるという名乗りを上げて、何か事をなす」ということをしないと結果を出せない。そういうものに対して、異議を唱えたい気持ちは2ミリぐらいはある。
小野:(笑)。
青木:あるかも。そこはあるね(笑)。わかる。なんだかマッチョな建付けに対して、「弱くても勝てます」と言いたいような気はある。
小野:それはあるでしょうね。
質問者1:それは、どこらへんから来ている気持ちなんですかね?
青木:なんですかねー? 要するに、普通の物語って……。
小野:モデレータ、こっち(質問者)になっちゃってる(笑)。
(会場笑)
質問者1:すみません(笑)。
小野:いや、いいです、いいです(笑)。
小倉:さすが、ラジオ会社の方で。今の完璧(笑)。
青木:要するに、弱かったやつががんばって強くなって勝つというのは、なんだか物語として普通じゃないですか。僕も含めた世の中のマジョリティって、まず「弱い」というところは、けっこう共感できる。だけど、がんばるという時点で、ごそっと共感が落ちるわけじゃないですか。「いやいや、そんながんばれる?」って。
例えば、すごく弱いやつが謎の特訓をして、めっちゃ強くなって勝つような。まずそれ自体が話としておもしろいものって、めちゃくちゃマイノリティだから。その珍しさがおもしろいのであって、そこに共感はあんまりないですよね。
質問者1:自分が乗るという感じじゃないですよね。
青木:乗るという感じがしないじゃないですか。だから、マッチョにがんばるということ以外に、本当に「この山を登る方法ってないんだっけ?」という。山の向こう側に行ったら、普通にエレベーターがあったよ、という話があるかもしれなくない? 話としては、たぶんそっちの方が今はおもしろい。
つまり、普通の物語はもうさんざん語り尽くされてきてるから「がんばらない、でも、できちゃった」というような話の方が。別にそれが尊いとも思わないし、いいとも思わないんだけれども。
話として見たときに、今、どっちの話がおもしろいですかと言ったら、たぶん、がんばって勝つ話よりは、よくわかんないけど、なんかうまく行っちゃった話の方が、物語の流通の中では希少だから。そういうことを考えると、おもしろい方が実在することを証明したい、と、ちょっと思っちゃうところがあります。
質問者1:2ミリぐらい(笑)。
青木:2ミリぐらい(そういう気持ちがあります)。
小野:けっこうあります、けっこうあります。
小倉:2センチぐらい。
小野:2センチぐらいあると思う。「普通のままでいたいな」ということは、いつもすごく思います。「これ、どや!」ということを繰り返さないと仕事にならないのも辛いな、と思うので。だから、確かにアウトプットを工夫してはいるけれども、こちらとしてはまあまあ簡単にやっている。
それで、ちゃんと一定の経済圏がそこに発生していて、みんなが食えている。別に拡大しなければいいいとまでは思わないけれども、それで変な感じになっちゃうぐらいだったら、今のままでいいじゃん、というところで。
またタイミングが来たら、そういう時が来るし、というところを。たぶん、普通に全員マイペースでいいと思うんですよ。なんかもう、「何かにならねばならぬ」という情報が多すぎるじゃないですか。僕らも、よっぽどいろいろなキーワードを使っていますけど。
キーワードを使ったら「それがいいですよね」という感じで、キーワードに自分がフィットするかどうかもわからず、とりあえず試してみる。それで、傷つくということを繰り返すじゃないですか。
小倉:小野っち、傷ついてるよね。
小野:だいぶね。ソーシャル? わかんないけど(笑)。
(会場笑)
小倉:ソーシャル傷つき、すごいですよね。
小野:僕はもう、絶えずソーシャルで傷ついておりますので。まあ、greenzってソーシャル最前線みたいなところがありますけど。僕は仕事はすごく大好きなんですけれども、ソーシャルと呼ばれる人たちの中には、仕事自体に対するアレルギーというか、経済に対するアレルギーのようなものを持ってる人がけっこういます。
だから、やる前には気づかなかったんですけれど。なんだかわりと「どんな仕事でも嫌だという人がいるんだな」という気づきがあって。なんだか、一緒に仕事するのはかなり難しいな、ということもけっこうあったり。
今はそれはそれとして尊重できるようになりましたけれど、昔は、「いやいや、そんなことしたら食えないじゃん」とか言っちゃってましたよね(笑)。そうするとやっぱり、いざこざに繋がってしまうので。「いろいろな流派があるんだね」という感じで、今はわりとすんなり行くようになってますけど(笑)。
なんかちょっと、キーワードに。みんな本当になにが自分のマイペースかを考えて主張してほしいと思いますよね。マイペースさを極めることと、それを人に伝えることの努力が、最低限必要かなと。
何を考えてるかわからないやつなんだけれども、「ただ活躍したい」という欲求では、やっぱりおかしすぎる気がするので。変人といわれる人には、それが多すぎる気がしています(笑)。
自分が感じることは説明できるじゃん、という。「何が楽しくて、何が楽しくないか」「こうするのがよくて、こうするのはいやだよ」というのは、最低限は説明しようというふうに思っています。極論、みんながマイペースで成果を出せたら、絶対にそれがサステイナブルだと思うので。
小倉:みなさん、わかりますか。他人に足掛かりを作ってもらった時の、このおじさんの饒舌さ。
(会場笑)
青木:また、回転の良さがこういうイベントの良さだから。いったんこれでね。どうも、ありがとうございました!
質問者1:ありがとうございました。
青木:拍手を、拍手を!
(会場拍手)
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