2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:じゃあ、鈴木さんも40代以降の話を少し聞かせていただけますか?
鈴木芳雄氏(以下、鈴木):最後のほうがギザギザになっているのは、そんなに毎日毎日アップダウンしてるわけじゃないんだけど。
サラリーマン、給与所得者じゃないっていうところで、プロジェクトごとに収入が入ったりするので、そこをグラフィックに表してみただけで、毎日毎日落ち込んだり上がったりしてるわけじゃないのね。だから、不安定とか波乱万丈みたいな感じで書いただけなんだけども。
あと、出版社の編集部で雑誌を作ってると、当然若い頃は「君はこの特集を8ページで作れ」「10ページで作れ」って、ページを与えられたら必ず作るし、作ったものは必ず世の中に出るというルールがあった。
でも、フリーになったりいろんな仕事をするようになって驚いたのは……驚くことでもないけど、「こういうプロジェクトがあるから、プレゼンしてください」「こういうことをやろうと思ってるので、お話を聞かせてください、一緒に考えてください」と言われることがあるんだけど、そう言われた仕事が必ずしも完成しないことがあるっていうのが、意外だった。
広告の仕事だと、「コンペで負けました」「結局、クライアントでちょっと予算が削られちゃったんで」ということがあるんだなっていうことを、今さらながら……あまりにも世間知らずですが、そういうこともあってのギザギザです。
40歳ぐらいで下がったのは、なんだっけ? 個人的な幸・不幸はあまり関係ないんだけど、ある会社の話で。その会社だと40歳ぐらいで編集長になるのは早いほうで、当時コンピューターとか、ネット関係の雑誌で、日本版の『WIRED』みたいな雑誌をやるというプロジェクトが社内で進んでいたんです。実際は編集長にはなれなかったんですけど、「いよいよ次は君が編集長だね」とか言われてて。
けどそれがポシャッて、その雑誌は成り立たなかった。そこでググッと下がったんです。人間関係で悩んだりみたいな、そういう頃だったかな。
鈴木:そして上に上がったのは、2回目なんだけど、またBRUTUS編集部というところに戻って、そこでさっき遠山さんが紹介してくれたみたいに、美術の仕事をやるようになった。それでちょっとイケイケな感じです。
その美術特集に関しては、編集長はいたんだけど、全部自分で企画を決めて、何を取材して、どういう企画で作って、どういう部数と、全部編集長みたいにできるようになったので、イケイケなんだよね。
雑誌ビジネスなのにお金をバンバン使ってるし、1年に10回くらいヨーロッパに出張に行ってるみたいな感じもあって。
世界中のいろんなアーティストとも知り合った。僕もそこまで英語ができるわけじゃないけれども、一流のアーティストとか、有名美術館のキュレーターの人たちとかのネットワークも個人的にできたりして、「あっ、これが仕事か」みたいなものを掴んだのが40代だったという感じなんですよ。
別にまとめに入るわけじゃないけど、20代の頃には、さっき言ったみたいに、思ったよりダメだなと思ったけど、その頃に趣味としていた美術が無駄にならず、ここでちゃんと仕事になったなと思って。
トムさんも言ったけど、自分の人生と仕事は切り離せないって、まさにそうだなと思っています。その頃、好きでやってたことが、ここで形になってるなと。
司会者:3人とも共通して、結局、今が一番楽しい。
鈴木:みんな、でもそう。
司会者:それはそれで、すごく素敵なことだなって思います。だから僕も含めて、すごく憧れますし、いいなって思いますよね。
そうなれるかどうかは別として、大人になっていく人に向けて、ぜひ今、こういうことをやっておいたらいいとか、あるいは、こういうことをがんばってねということを一言いただけますか。
遠山正道氏(以下、遠山):たぶん、今が一番いいと思えているのは、自分で選択した状態。だから今が一番楽しいって思えているということだと思うんです。むしろ、そうなるには小さいほうがやりやすいんですよ。そっちのほうが、自分が際立ってくるので。
今のうちから、何か小さなことでもいいから自分の発意で動いてみる。私の例で言うと、さっきの「電子メールのある1日」を思いついて、動いてみる。
私の言葉で言うと、「頼まれてもいない仕事」みたいなことを、自分のゼミの中でも、クラブ活動の中でも、家庭の親子関係の中でも試してみて、自分の意思で動くという喜びみたいなことを、今のうちから掴んでおくといいんじゃないかなという気がします。
司会者:ありがとうございます。では、トムさん。
トム・ヴィンセント氏(以下、トム):今、一番楽しいということは、遠山さんの言うとおり、自分が選択していることをやってるから。それが20代でできたかというと、そんなことはないです。
僕の中ではいろいろあったから、ここまで来れて、今は楽しいっていう部分が絶対ある。楽しいというのは、これからも楽しいと思ってるから、今が楽しいんですよ。まだまだ始まったばかりという気持ちがあるんですね。
実際に計算してみると、すごい長生きをしない限り、人生の大半は終わってしまってる。だけど、考えてみると、自分のお父さんの影響がけっこう大きいです。
一番最初に話したように、昔はテレビ会社に勤めてたんだけど、田舎に引っ越して、そこから通ってたんですよ。うちの親父が勤めていた会社は、ロンドンの地元局で、テレ東みたいな会社ですね。50歳くらいで部長レベルだったんだけど、いきなり会社が潰れちゃったんですよ、放送免許がなくなっちゃって。50歳でクビになって、仕事がなくなっちゃったの。
僕はそれを今でも覚えてます。あれは僕がちょうど大人になりかけてる時期だったんだけど、親父はバリバリのテレビマンだったのに、急に農家になったんですよ。
遠山さんも家に来たことがあるけど、羊農家。もうおじいちゃんなので、今は規模が小さいんだけど、昔はもっと大きくて。50歳から羊農家になったんです。
遠山:すごいんですよ、羊がまた(笑)。
トム:そうなんです。親父はテレビを20代から……本当に、テレビが始まった頃、インディペンデントテレビではなくて、コマーシャルが入ってる民放のテレビができる頃からやってるから、本当にテレビと一緒に育っていた。その中で、ずっとサラリーマンだったんですね、うちの親父は。
ニュース番組の技術部長をやっていたんだけど、ニュースは生放送だから、若い頃にスタジオへ一緒に行くと、18時の1時間ニュース番組を生放送でやってる時なんかは、緊張感が半端ではなくて。
制作側がみんな静かに、録音したり、カメラを回したりしてるじゃないですか。毎晩、平日の18時から1時間。そして、19時にコマーシャルが入る時、みんなが拍手する。毎日、これだけの緊張感があった。そんな仕事をやってた親父が、いきなり農家になるんです。
最初はすごく悩んでる親父を見ました。僕は大人になって家から離れながら親父を見てたんだけど、当時はテレビの仕事をずっとやってきてたから不健康ですごく太ってたんだよね。けどそんな親父が急に痩せてきて、笑顔が多くなってきたの。牛と、羊と、鶏に囲まれて。
遠山さんの言う、小さいというか、自分で全部できる仕事……つまり農家は、母と一緒に2人でできるからいいんですよ。自分の飼っている鶏が産んだ卵を、地元の小さなよろず屋に売って、「今日、10パック売れたんだよ」とニコニコしている。10パックだよ。それをお金に換算すると、もうわずかしかないし、そのお金では生活できるわけないんだけど、親父はすごく嬉しそうだった。
これを見てきたから、だいたいみなさんぐらいの歳で「50歳からでもおもしろいことができるな」とわかっていたので、それはけっこう大きいと思うんですね。
遠山:トムさんの実家にお邪魔した時に、お母さんがね、われわれが来てどんなにうれしいかっていうことを話してくださって、自分の生活のことを一生懸命話してくれる。ひとしきり話した後に、私に「次はあなたの話を聞かせておくれ」って言われたわけですよ。
それで、私はこんなことやってるからいろいろ話せる。お父さんが昔のテレビマンだった話なんかは1ミリもなくて、ボランティアや羊の話をすごく楽しそうに話している。その時にね、なんか泣ける感じがあったんですよ。
俺が感じたのが、「あなたの話を聞かせておくれ」って言われた時に、自分の話ができるっていう幸せ。三菱商事の時だったら、会社の話をしてたと思うんです。三菱商事の説明をしちゃってたと思う。そうじゃなくて、今の自分がやってることとか、自分の興味みたいなことをスッと話せるのが幸せって言うんだろうなという感じがしたんです。
トム:楽しかったね。
鈴木:いつ頃に行ったんですか?
トム:3〜4年前ぐらいですかね。遠山さん、泣きましたね。うちの実家のダイニングで。
司会者:すばらしい時間だったんですね。ありがとうございます。では、鈴木さんも最後に一言お願いします。
鈴木:もう言っちゃったけど……おじさんたちはみんな言うのかもしれないけど、無駄なことって何もないんですよ。今、がむしゃらに「あっ、これだな」って思ってやるのもいいし、「何をやったらいいかわからない」という、さっきのトムさんの話じゃないけど、そういうこともあって。でも、やってることで無駄なことはないから、何かをやるといいと思うよ。
英語でもいい。でも、英語ができると言われても、僕も何年間か面接官をやりましたけど、TOEFLがとか、TOEICがと言っても、「あ、英語できるのね」くらい。別に、それ自体はおもしろいことじゃないから。もちろん、できたほうがいいけれど、それによって何かに勝てるわけでもない。
無駄なことはないから、だから1個だけ……例えば「俺なんか何にもねぇしよぉ」みたいに腐ったりしなければ、無駄なことはないですよ。捨てたり、腐ったり、投げやりにならなければ、何か掴めるとは思う。それでいいんじゃないかなと思いますよ。
あと、人に自慢するために何かに秀でるのはいいと思うよ。例えば、映画を必ず1日に1本は観るとか。それは自慢のためで、別に就職のためじゃなくてもいい。そういうのが、わりといろいろ(社会人になってなにかの形として)出てくると思うんだ。
年間200本の展覧会を見ようでもいい。マンガに関しては俺は……みたいなものでもいい。僕は、そういうオタクっぽいアドバンテージみたいなもので仕事をしたところがあるから、そういうことに興味がある人は、何か目標を立ててやるのもいいと思う。
司会者:ありがとうございます。難しいお題だったりもしたので、散文的になってる部分もあるんですが、お話を受けて……。Webのほうでも質問を投げられましたが、もし直接、個人的に聞きたいことがある方がいらっしゃったら、挙手いただければ、質疑応答とさせていただきます。どなたか質問を……。
質問者1:今、大学の2年生なんですけど、将来どうすればいいのかなというか、何をすればいいかがぜんぜん定まっておらず、いろいろ投げやりになってるところがあります。その上で、焦りを持つこと……自分は焦りを感じてるんですけど、焦りを持つこと自体はいいことなのかというところを(教えてください)。
鈴木:それは、すごくいい質問。僕も若い頃そうだった。20代の頃の上司で、のちに社長になる人なんだけど、マガジンハウスの僕の上司が「なんでお前、そんなに焦ってるんだ?」って言うんです。
自分では焦ってるつもりはなくて、成果みたいなものを出したがってたんだね、きっと。上から見ると焦りみたいに見えて、「もっとじっくり構えろ」とか「もっと長丁場なんだから、今求められてるのはそういうことじゃない」というのはあったね。それで、焦ってるって言われたんです。
だから、上から見るとそれは滑稽だったのかもしれないけど、自分としてはそれでよかったなと思った。焦ってると、やりすぎぐらいまでやるでしょう。でも、やりすぎることって、きっと大事なんだよ。
その上司の人は、きっとバランス感覚がよかった人なんだろうな。社長にもなったし、「今はそうじゃない」みたいに調整ができる人で。その焦りをエネルギーに転換して、過剰に動いてみるっていうのも、1つの手だと思う。
悪い方向に空回りして、それが原因で、さっき言ったみたいに投げやりになったりしなければいいんじゃないかな? エネルギーに転換するといいと思う。
遠山:私も、Soup Stock Tokyoの本を書いた時、1行目にね、「世の中に対する疑問や苛立ちから、Soup Stock Tokyoは生まれました」って書いたんだけど……実は大きく何かを実行する前って、悩むんですよ。悩んだり、焦ったり、あるいは怒りみたいな。普段は怒りみたいなものは感じないような気がするんだけど、そういう感情があるんですよ。
(Soup Stock Tokyoを)やる前の自分は、今の焦りとは質が違うと思うんだけど、なんとなく「ダメじゃん、このままじゃまずいじゃん」みたいな思いがあった。だから、そのマイナスがあると、次にプラスに行くという実感はありますね。
マイナスの時に、ただのほほんとしてたら何にもならない。それこそ、焦りみたいなことから何かが掻き立てられて、いろんなことを検証したり、そこでアンテナに引っかかってきて、「あっ、これかも」みたいなことを探っていく。そういうことのような気がしますね。
だから私は、焦りとか恐怖の後に、いいものが来ると思います。
トム:僕もまったく同感。歳を取れば、少しずつ我慢強くなってくるんですね。自分の焦りが違うかたちの焦りになってくる。あるいは、不安や悩みや苛立ちは、少しは変わってくるけど、なくなることはないと思う。でも歳を重ねるとちょっと変わってきて、経験があるから「このぐらいなら大丈夫だな、俺は」ってわかってくる。
まだ大学2年生ぐらいで、自分が大丈夫かどうかはわからないじゃないですか。当時の自分もそうだったから、すごく不安になってくるんだけど、でも乗り越えてるし。今でも不安になっても、自分の中で「一番不安な時は、すぐ後に何かいいことがある」とわかってるんですよ。
その理屈はなぜかはわからない。例えば、さっきの鈴木さんの言っていたとおり、僕も、仕事取れるか取れないか……もしかして、本当にほしい仕事が他社に負けてしまうかもしれない、違う会社に取られちゃうかもしれないって不安になります。
不安になってきても、自分がこのぐらいのちょっとしたドキドキ感であれば、「解決策が近づいてきたな」とわかってくるんですよ。「このぐらい不安になると、そろそろ答えが出るね」と。それはダメになるかもしれないけれど、でもそれでもいいんです。
鈴木:つらい時やネガティブな時は、成長してるんだと思うんだよね。むしろね、いい時っていうのは天狗になってるから、やばいですよ。だから、悪い後にいいことがあって、いい時の後はもう、悪いことが来るかもしれないよね。だから、焦ることは悪くない。いい方向に持っていけるかどうかの問題です。
トム:でも、いい方向に持っていけなくても、ぜんぜん大丈夫ですよ。まだまだ時間はあるし、1回失敗しても、2回失敗しても、自分がバカなことをしてもね。後で「あー、なんで俺はそんなことした」って、絶対いっぱいあるけど、でもそれで人生が終わるわけでもない。だから焦るだろうけど、本当はそんなに焦る必要はないという気がするね。
遠山:ちょっとかっこいい言い方かもしれないけど、何かに悩んで次に行動する時は、よく「困難なほうを選べ」とか言うじゃないですか。
要するに、ぬるい選択をしてうまくいかないと「目的は何だっけな?」みたいになる。うちもビジネスをやっていて、「ここは1回、売っておこう」みたいに考えて「売れるはずだから、ちょっと1回やっとこう」みたいなことをしたりすると、売れない時になって「あれ、なにやってるんだっけ?」ってなっちゃうんですよね。失敗のし甲斐がないというか。
挑戦して、それでダメだった時は、納得できるんですよね。気持ちもスッキリする。だから困難なほう……困難だったらいいっていうわけじゃないけど、チャレンジングなほうを選ぶのはいいと思う。ちょっと背伸びをして。悩んだ時に、悩んで悩んで、次はどうしようかという時に、背伸びしたほうを選ぶ。
質問者1:それは、先ほどおっしゃってた「依存」というところにも近いのかなと思います。今まで成功体験があると、そのとおりにすれば、またうまくいくというふうに、経験に依存するのではなく、また別のことにチャレンジして、難しいほうを選んでみるといったことですか?
遠山:そうだと思います。
鈴木:出版社でも、1つの成功体験が10個の失敗を生むみたいなところがある。1個うまくいくと、それがうまくいったと思って逆に失敗を招いちゃった、というのはずいぶん見てきた。だから、あんまり成功体験よりは、チャレンジのほうが大切かな。
鈴木:雑誌で楽だったのはね、挽回が早かった。月刊誌だったら、今回失敗したら、次に取り返せばいい。月2回の雑誌だったら、もっと(挽回が)楽ですよ。
そういう意味で、結果も早く出るし、取り返しも早いというので、すごくいいビジネスだったなと思いますけどね。
質問者1:ありがとうございました。
司会者:本当はもう少し、質疑応答をやりたかったんですけど、1つの質問にがっちり答えちゃったので、質疑応答の時間はここで区切りたいと思います。かなりいろんな方向に話が行きながら進めてきましたが、一旦ここで、今日は終わりにさせていただきたいなと思います。
司会者:一番最初に、MFCというもの自体のご紹介をさせていただきました。でも、やっぱり答えのないことなので、僕らもすごく難しい……みんなにどういう機会を提供してあげたらいいのか、日夜悩んでいます。
正解みたいなものがない中で、だからこそ、いろんな機会に顔を出してみるとか、いろんなことをやってみてほしいです。少なからず、自分の中で納得できる答えに近づけることを、たくさんやってもらえたらすごくいいんじゃないのかなと思っています。
また違う機会も作れればと思いますし、そういったものを活用していただいて……あるいは、今日のお話も自分の中で咀嚼して、吸収してもらえたらありがたいなと思っています。
鈴木:SNS(の紹介をしましょう)。遠山さんは、インスタが一番多い?
遠山:はい、インスタです。
鈴木:僕はTwitterをやっています。トムさんはFacebook? みんな違うんだけどさ(笑)、興味があったらフォローしてもらえれば、引き続き(何か)アドバイスとかあるかな。
司会者:個別で投げかけてもいいですか?
鈴木:うん、それもありだしね。
トム:みんなFacebookやってないでしょ? インスタが一番でしょ。
司会者:ありがとうございました。今日もこのあと、個別でお話できる機会がありますので、ぜひ利用していただければなと思います。長くなりましたが、いったんここで終わりにさせていただきます。
(会場拍手)
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