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基調講演(全2記事)

小泉進次郎氏「Be the Difference、人と違っていい」 ソーシャルイノベーションフォーラム基調講演

2018年9月7日~17日にかけて、日本財団「SOCIAL INNOVATION FORUM」と、渋谷区で開催した複合カンファレンスイベント「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」が連携し、都市回遊型イベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」が開催されました。本パートでは、日本財団主催による「ソーシャルイノベーションフォーラム2018 基調講演」として、日本財団会長の笹川氏、渋谷区長の長谷部氏、衆議院議員の小泉氏が登壇し、イベント開催に込められた想いや渋谷区の新しいビジョン、日本に必要なソーシャルイノベーションについて語りました。

日本財団会長・笹川陽平氏が登壇

司会者1:それでは、ここで日本財団会長笹川陽平より主催者を代表して開会のご挨拶を申し上げます。

(会場拍手) 

笹川陽平氏(以下、笹川):ようこそ、みなさん。大勢の方にお集まりいただきまして心から感謝申し上げます。司会の日本財団の職員がベラベラ話しまくって、私には持ち時間3分ということで。これが日本財団の下克上でございます。

(会場笑)

したがいまして、会長というのは名だけで、前座を務めさせていただきます。

第3回のイノベーションフォーラムということで、(会場となっている)青山学院大学の堀田理事長は実業家としても名を成した人でございます。新しい大学の在り方を探りたいということで、これだけ学院全体を開放してくれたというのは初めてのケースでございまして、私たちは本当にありがたいことだと思っております。

青山学院は箱根駅伝だけではありませんから! ここは笑ってもらわなきゃいけない。

(会場笑)

1つの欠点は偏差値が高すぎるというところです。これは欠点ではなく長所ですね(笑)。どうかみなさんのお知り合いには、これからぜひ青山学院を受験するように薦めていただきたいと思います。先ほど堀田理事長の話では、この渋谷が今日発展してきたのは、青山学院のおかげだとおっしゃっていました。

(堀田理事長に向かって)どうぞ、ちょっとお立ちになって。

(会場拍手)

本当に感謝していまして、私たちの仕事というのは10年、20年、30年続けるというところに意味がありますので、ぜひこれからも青山学院を使わせていただきたいと思います。

ここには長谷部さんという若い区長さんがいます。大変やり手でいらっしゃいます。私はこれからロンドン、パリ、ニューヨークだけではなくて、その中に渋谷を入れようと。東京ではありませんよ。渋谷を入れる。

ということで、このイノベーションフォーラムを中核にして、街頭も使ってさまざまな文化活動を全般的にウィークとしてできるようにもっていきたいと思っておりますので、どうかみなさん方のご協力をいただきたいと思います。

悲観論を捨てて日本を盛り上げていく

最近、地方の区長さん、あるいは市長さんに大変やり手な若い人たちがたくさん出てきました。大変力強いことで、仕事が早くできるんですね。ところが国会となるといろいろな手順があって、法律や政策を実施するまでになかなか時間がかかるわけでございます。

そういうお忙しい中、今日は小泉進次郎さんにわざわざ出ていただいております。彼は農業改革、国会改革、そして子どもの保険というものをどんどん打ち出してきました。

これを実行していこうという新しいタイプと言いますか、未来志向の新しい政治家がここに存在するわけでございます。彼の話を今日聞けるというのは、大変ありがたいことでございます。

ともすれば、日本社会は常に悲観論が世の中を支配する国でございます。これではいけないわけで、やっぱり明るい日本の未来をどうするかという積極姿勢が大事です。

かつてフィリピンに(コラソン・)アキノ大統領という女性がいて、「笹川さん、フィリピンは明日お金がなくても今日幸せならいいよ、と言って、お金をみんな使っちゃうのよね。 ところが日本は……この前名古屋に行ったときに、105歳まで生きられた金さん・銀さんに、『コマーシャルでいただいたお金はどうするんですか?』と聞いたところ、『老後のために貯金します』とおっしゃっていました」と言っていました。

ここ、笑える話なんですが、今日はまじめなお客さんが多いですね。

(会場笑)

フィリピン人と日本人を足して割ると素晴らしい国民性になるんじゃないかという笑い話をしたことがあります。

この2000年続いてきた我が日本というのは、災害大国です。大阪の地震、岡山、広島、愛媛、そして近々の北海道で、多くの方が亡くなられました。ここは教会堂もございますし、冒頭で、私はみなさんとともに心から弔意を表したいと思っております。(日本は)そういう困難な中で今日まで発展してきた国なんです。

ですから、悲観論を日本人が捨てて、これからの明るい未来をどうするか、ということについて……全国に本当に素晴らしい若者がたくさんいらっしゃる。そういう方々がこれからこういうイノベーションフォーラムの場を使って相互に連絡を取り合いながら、日本全体を盛り上げる。

日本は、今や世界に尊敬される国なんですよ。さらにそれを豊かなものにする。そしてここがみなさん方の気づきの場所になってほしいというのが私どもの願いでございます。

私は前座でございますので、あまりしゃべりませんが、次はがんばり屋の長谷部さんに登場してもらいましょう。

(会場拍手)

地方自治体の政策の根幹になる「基本構想」の改定

長谷部健氏(以下、長谷部):みなさん、おはようございます。

参加者一同:おはようございます。

長谷部:ご紹介いただきました。渋谷区長の長谷部健です。ソーシャルイノベーションウィークの開催が今日からスタートということで、誠におめでとうございます。そして、ここは渋谷区ですから、この街でこういったイベントが行われることが、渋谷区長として大変嬉しく、心強く思っております。

先ほど笹川会長からもお話がありましたが、渋谷区は今、前に向かっていろんなことにチャレンジしております。ちょうど私は就任して4年目、任期の最終年に入ります。この4年間、とにかく渋谷を前に進めようということでがんばってまいりました。

何を前に進めるかということで、当然さまざまなことがあるんですが、まず最初に取り掛かったことは、渋谷区の基本構想を改定いたしました。

「基本構想」という言葉を初めて耳にする方がたぶんたくさんいるんじゃないかなと思います。地方自治体は必ず(基本構想を)持っていまして、その地域によっては基本計画と呼ぶところもあります。

政策の最上位ラインにおける1番重要なものになります。おおげさなことを言えば、国で言う憲法みたいなものに当てはまるのかな、と思います。

僕ら地方自治体は、その基本構想をもとに10ヶ年、5ヶ年、単年と、すべての政策をそこに紐付けて考えております。ですので、この基本構想というものは渋谷区にとっては大変重要なものです。

渋谷区の基本構想は、私が就任するちょうど20年くらい前に作られていました。「自然と文化とやすらぎのまち、渋谷」ということが大きなテーマになっていました。

これ自体も非常にいい基本構想なんですが、当時は人口がそのあと減ってくるという前提で作られていたり、2020年のオリンピック・パラリンピックについても当然見据えられていませんでした。さらには、今はこれだけITが発展しておりますけれども、そういったことも織り込まれてません。

ですので、そういったことを踏まえたうえで次の20年を見据えようということで、新しく基本構想を改定したわけです。1年かけて審議会を作って、いろんな方から意見をいただきながら基本構想を作りました。

基本構想というのは、基本的には最大公約数を取っていくものです。だから、どこもそんなに代わり映えがしないと言ったら言い過ぎかもしれませんが(笑)、文化を継承しよう、国際化を図ろう、自然を大切にしよう、というところで、たぶんそんなに変わらないんです。

20年先のビジョン「ちがいをちからに変える街、渋谷」

ですが、ここにもう少し渋谷らしさを加えたいということで、大きなテーマとしては多様性、ダイバーシティ、インクルージョンといったものを織り込んだ基本構想にしたいということを私から審議会に投げかけて、それぞれの中で揉んでいただいて。

シンクタンク系のところでこれを考えてくれるんです。渋谷区の場合ももちろんシンクタンクなんですが、今回ポイントだったのは、そこにあえてコピーライターを入れました。

全部の審議会に参加してもらって、みなさんの言葉をやわらかく、みんなにわかるように紐解いてほしい。要するに多くの人に知ってもらって意見をもらいたい。 基本構想は政策が紐付くもとになります。(基本構想に)紐付いた提案であれば我々は受けやすいので、多くの区民に親しんでもらいたいということで、基本構想の制作にコピーライターを入れました。

決まった1番目のワードとして「ちがいをちからに変える街、渋谷」というのが20年先のビジョンになりました。その下に教育や福祉や災害といういろんなのカテゴリーが7つ用意してあって。 例えば健康・スポーツという分野は「思わず身体を動かしたくなる街」というテーマのもと、渋谷区を15平方キロメートルの運動場と見立てて、健康・スポーツを考える。

要するに、代々木公園などのように、今大きなグラウンドを作ったり体育館を作るのはなかなか難しい。でも、例えば僕ら(が子ども)の頃は、住宅街の道路(で)もキャッチボールをしていました。区全体をフィールドとして考えて、子どもたちがそういうことができるような場所を作っていこう、工夫してやっていこう、というようなことを基本構想に織り込んでいます。

ちょっと基本構想の話が長くなりましたが、ダイバーシティ、多様性を多分に織り込んだ基本構想をこれから大切にして進んでいきたい。そこに紐付けていろんな政策を前に進めてきました。話すときりがないので、個別の政策についてはホームページを読んでいただいたり、別の機会にしようと思います。

ソーシャルイノベーションウィークに込められた思い

そういった想いの渋谷区と日本財団さんの想いが1つになって、今年からこの渋谷でソーシャルイノベーションウィークというかたちになりました。昨年までは、実は渋谷区ではダイバーシティサミットをやっていたり、日本財団さんは丸の内でソーシャルイノベーションフォーラムをやっていたりしました。

こういった両者の力を1つに結集して、多様性が1番呼び込まれて、これから発信されていくこの街から、このフォーラム、このウィークを開催できるという運びになりました。

笹川会長をはじめ、多くの関係者のみなさまに感謝を申し上げ、ここから約1週間、こういった機運がこの街から東京だけではなく日本、世界へ広がるように渋谷区としても精一杯応援していきたいと思います。そして、お集まりのみなさまがその気持ちを持って、この街でさらにアクティブに活動していただければと思います。

ご挨拶が長くなって恐縮です。ぜひみなさまと一緒にこの街を盛り上げていきたいと思いますので、渋谷区政府に力を貸していただけばありがたいと思います。 そこのポイントは基本構想。よかったら1度読んでいただいて、そこに紐付いたご提案なりをいただけると大変ありがたいなということを最後に宣伝させていただきました。

このあとは、いよいよお待ちかねの小泉進次郎さんの基調講演になります。ちょうど世代としてはほぼ一緒……僕のほうがちょっと上なんですけれども、思わず向こうのほうが先輩じゃないかというくらいに、私もいろいろ学ばせていただいております。

ぜひ小泉さんの話を聞いていただいて、今日はこのあとも素敵な時間をお過ごしいただければと思います。本日は本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

Be the Difference、人と違っていい

小泉進次郎氏(以下、小泉):おはようございます。

参加者一同:おはようございます。

小泉:まずは2年連続お招きをいただきまして、日本財団の笹川会長、ありがとうございます。

先ほどの笹川会長から、渋谷に対する強い誇り―ニューヨーク、ロンドン、パリ、そして渋谷。そう言われる街にするんだ、という熱い想いを語られましたが、横須賀じゃないのかなと。私は横須賀だという想いでがんばっていきたいなと思いながら(笑)。

(会場笑)

実は長谷部区長とは昨年もこちらで一緒に登壇させていただいて。私の地元横須賀と長谷部区長の地元渋谷は、渋谷はハチ公、横須賀はタマ公という犬のつながりがあるから、この戌年になにか盛り上げようという話をしながら、昨年は渋谷オリジナルのスカジャンを私がいただいてここに来た、というのを思い出します。

昨年と比べて違うのはこの会場です。(会場に)青山学院の堀田理事長がいらっしゃいます。今、私がここに着けているこのピンバッチが青山学院の新しいスローガンを表しています。

Be the Difference―違っていい。違いであれ。人と違っていいんだ、という。日本はどちらかと言うと、空気として人と違うことを恐れる傾向がすごく強い国です。でも、堀田理事長の掲げるBe the Difference、違っていいというこの想いに先ほど控え室で強く共鳴して、「私、今日はそれを着けますね」と言って着けさせていただきました。

そのBe the Differenceというのも、ソーシャルイノベーションフォーラムに通ずる1つのテーマだと思います。今日私はこれから笹川会長と長谷部区長と鼎談というかたちでいろんなお話をしますが、そのテーマと。

また今日明日と続くソーシャルイノベーションフォーラムの参加者のみなさんになにかヒントになればという想いで、今日は少しスライドを用意してきました。それをみなさんと一緒に見ながら、短い時間ですけれど、共有できたらいいなと思いますので、スライドをお願いします。

「ないものはない」島を変えた海士町の教育改革

昨年ソーシャルイノベーションフォーラムに参加をした方々なら、この景色を覚えているかもしれません。これは昨年のソーシャルイノベーションフォーラムの最後、ソーシャルイノベーションの大賞が決まったときですね。

そのとき、昨年のソーシャルイノベーター最優秀賞に決まったのが岩本悠さん。この岩本悠さんと言えば、私と私のとなりに立っている方が、岩本さんの地元の島根県海士町(あまちょう)で当時町長だった、山内町長です。

この海士町の教育改革。そして島留学という離島に対して全国から、中には海外から東京ではなく日本の離島へ留学に来る。高校を中心としたまちづくりをやることで島全体の活気を高めるという取り組みをやっているのがこの岩本さん。

私も海士町に行きましたが、すごく感動したのが、島に船を寄せると、港に町のポスターがいっぱい貼ってあるんです。そのポスターのスローガンが「ないものはない」という、逆転の発想でね。

「ないものはない」という言葉の裏には、「実は都会にあるものはないけれど、都会にないものは全部ある」という思いが込められています。

この海士町の取り組みは、今は国会、霞が関で地方創生を語るときに、海士町の例を語らない人はいないくらい、1つの象徴的な存在になりました。

そして今、実は私は自民党の地方創生の実行本部の事務局長をやっているので、岩本さんに来てもらって海士町で何をやったのかという話をしてもらって、これからの新しい地方創生の取り組みの方向がそこで出てきました。

それがこれです。「まち・ひと・しごと+まなび」。今までの地方創生は、町を興していくにはその町の発展、そこに暮らす人、そしてそこに雇用を生まなければいけない。そういうかたちで、「まち・ひと・しごと」という表現をしてきました。

それに加えて、学びという……まさに岩本さんがやっている高校のような教育機関を中心としたまちづくりは意外と見落とされていた部分で、今まで過小評価されていたところでもあったので、今回改めてこういったかたちで1つのテーマと設定した結果、とうとう国として予算を投入して、この事業を進めていくことが決まりました。

国の政策や予算をも動かすアイデアが生まれている

政治では、来年の予算を仕組んでいく時期が8月から9月という今なんです。その来年の予算のために各省庁が財務省に対して「来年これがやりたいから、これをいくら付けてほしい」ということをやるのが概算要求と言います。

岩本さんの話など海士町の取り組みを受けて、全国で高校などを中心としたまちづくりをやりたいという地域から手が挙がった場合に、それを支援したまちづくりをやろうということで、今回文科省からこの『地域との協働による高等学校教育改革推進事業』に4億円予算が欲しいというかたちで、予算要求をされるところまでいきました。

昨年、このソーシャルイノベーションフォーラムで最優秀賞を取った岩本さんがやっていることが、まさに政治の中に政策、予算として形となってきた1つの証拠だと思います。

なので、今回2018年のソーシャルイノベーションフォーラムでまたみなさんのアイデアがどのような国の政策につながっていくか、私は今からとても楽しみです。

しかし、ソーシャルイノベーションを振り返れば、最近の大きなきっかけは東日本大震災だと思います。2011年3月11日に、世の中が大きく変わった。 そして我々の意識として、「本当に今までの日本の在り方でいいのだろうか」「考え直さなければいけないことがあるのではないか」という思いがさまざまなセクターに広がったのがこの日ではなかったでしょうか。

新しいことが生まれました。昨年もお話ししましたが、被災したあと、東京霞が関から財務官僚の若手が釜石市に副市長として行きました。それがものすごく評価され……彼はいい意味で官僚らしくなかった。汗をかいて走り回って地域のためにがんばりました。

東日本大震災があるまでは、東京の財務省の官僚が地方の小さな町に副市長で行く、副町長で行く、といったことは、ほとんど考えられませんでした。それが今回歴史的にもない事態だと。国とどうやって連携をしてということを考えて生まれた。

その取り組みを私は当時復興政務官、地方創生政務官として見ていて、いい取り組みなので、この取り組みを被災地だけにとどめておくことはもったいないと思いました。 全国の地方だって国がどういう政策をやっているのか、そのつながりやネットワーク、そして情報、これを求めているところはあるのではないか、ということで実際に生まれたのが、地方創生人材支援制度という制度です。

全国で基本的には5万人の人口のところまでの町から手が挙がった場合、民間・国から人材を派遣する。そして一緒にまちづくりをやるということが始まったのも、まさにこのときでありました。

災害の日は基本的に全員テレワークでいい

2018年9月6日に北海道の地震が起きました。今も停電が一部続いていて、人命救助もまだ続いています。そんな中、私はNHKのニュースを見ていて、こういうシーンにしばらく考えさせられました。 サラリーマンのような方が街角インタビューで「インフラが止まっているから1時間かけて職場まで歩いてきました」というコメントをされていたんですね。

もちろん絶対に職場へ行かなければいけない方もいるでしょう。そこまでどうにかしてでも行かなければいけないというケースや立場の方がいることは重々承知しています。ただそのうえで、私はそれを見ながらこう思ったんです。

仕事は職場でなくてもできる。今本当に職場に行かなければできない仕事とは何だ? そして本当にそこに行かなくてもできるツールがテクノロジーとしていっぱい出てきているのに、それに気づかずにがんばっている。これも日本的です。どんな手段を使ってでも職場にたどり着いた者は偉い、よくがんばった。しかし、本当にそうなんだろうかと、私はこの街角インタビューに、今回非常に考えさせられました。

そして、今親しく一緒に仕事をしている小林議員が総務省の政務官をやっているので、8月下旬に私は総務省に行って。総務省は今働き方改革でテレワークの推進、職場改革、ペーパーレスといったいろんなことに取り組んでいる。省庁の中でテレワークを利用した職員の割合は、総務省がぶっちぎりなんです。2人に1人はテレワークを経験している。

この総務省の改革を視察に行って、テレワークを体験したり、いろいろやったんです。そこで私が言ったのは、「今度台風や災害があって、東京のインフラが少し乱れたりしたら、働き方改革のチャンスだと思って、災害の日は基本的に全員テレワークでいいということにすれば、災害のときがソーシャルイノベーションのチャンスになる」と。

私は、今回もこの北海道のことに、いろんな世の中を前に動かしていく、社会を革新していくヒントが多く詰まっているのではないかと思います。我々政治家だけではできません。シェアリングエコノミー、そしてまさにソーシャルアントレプレナー、いろんな方々が出てきました。

そのみなさんの力を一緒になって結集すれば、日本の歴史のように、災害のたびに日本は強くなる。そういう国が必ずできると思います。つまり、今回のソーシャルイノベーションフォーラムにかけて言えば、日本の災害の歴史はソーシャルイノベーションの歴史とも言えると私は思います。

大阪でも地震があったので、私は現地へ行きました。小さいことかもしれませんが、今でも忘れない景色があったのでそれを紹介して、次の鼎談にいきたいと思います。

災害を経験した地域からの心配り

(スライドを指して)これ、何だと思いますか? 子どもたちのメッセージが書いてあります。これ実は土嚢袋なんです。

(私の)となりに立っているのが大阪高槻の大隈議員という自民党のよく一緒に仕事をしている議員です。彼の地元だったので(大阪へ)行って、ボランティアセンターへ行ったんですね。

そうしたら、この土嚢袋が全国から届いて。私が見た限りでとくに多かったのは、茨城県の常総……ここは水害もあったところでした。そういった災害の経験をしたところから、新たな被災地にさまざまな支援や人が送られてきます。

この土嚢袋に「お大事に」「がんばってください」「おつかれさま」といったことが書いてあって、街中で使われている土嚢袋が色とりどりで華やかなんです。

現地のボランティアセンターの方も言ってました。「ただの土嚢袋よりも、こういった土嚢袋があるだけで、ちょっと疲れたなと思うときに心が和やかになるんです」と。ものすごく小さなことかもしれません。予算もそんなにかかりません。だけど、私はこれもいい意味で日本的な細やかな心配りだなと。

そしてボランティアや草の根や、いろんな人に対する目配りの表れが、大阪で見た土嚢袋ではないかなと。私はいろんな被災地、東日本大震災、熊本、そして大阪と行っていますが、今回新しく発見した1つがこれでした。私はこの土嚢袋も立派なソーシャルイノベーションの1つだと思います。

話は変わります。(スライドを指して)これ、私が最近まで行っていたニュージーランドの写真です。後ろにいっぱい牛がいるのが見えると思います。ちなみに、今あちらは冬なのでけっこう寒くて、ダウンを着ています。

私が行っていたのは牛を1,000頭飼っている農家さん。ニュージーランドは大変酪農王国です。96パーセントは輸出、国内で回しているのは4パーセントだけという中で学ぶべきことはあるということで、農業改革の参考になればと行ってきました。

そのニュージーランドで私が今回お会いしたのは、この真ん中にいる(ジャシンダ・)アーダーン首相。今のニュージーランドの新しい首相です。今回、首相からの招待プログラムということで、私と首相のとなりに立っているのが今法務政務官の山下(貴司)議員で、あと複数と行きまして、首相とお会いしてきました。

ニュージーランドの首相との会話や私が見たことによって、日本はまだまだソーシャルイノベーションが足りない。まだまだできる。そしてまだまだやったら、もっともっと日本はいい国になると確信しました。

ニュージーランド訪問で実感した日本との違い

1つ言うと、本当に女性の参加率が高い。今回私たちが視察に行きましたこの部屋は、私と山下議員以外が全員女性です。アーダーン首相は私と1つ違いで38歳です。そして最近、首相在任中に産休を取得したということで、世界中でニュースになりました。なおかつアーダーン首相は結婚ではなく、パートーナーを持っているわけです。

このことを含めてもそうですし、よく見ると机の上にいろんな袋があったりカップがあって、部屋に入って、まずアーダーン首相が自分でカップを持ってきて、紅茶を私たちに入れてくれるんです。そういったことを含めて、いろんなことを感じました。

このニュージーランドでは結婚の在り方もさまざまです。日本では「結婚」の1つだけですが、ニュージーランドでは「結婚」「パートナーシップ」「シビル・ユニオン」の3つの形態があります。最近では同性婚も法制化されて、アーダーン首相が組織している内部には同性婚をした大臣がいます。

そういったことを含めて、世の中の在り様、これからの多様な生き方、一人ひとりの価値観や生き方、そういったことに対して、日本がどのような社会を作っていかなければいけないのかを、私はニュージーランドから学ぼうと。日本はまだ変われていないところ、これからまだまだできることがあると(確信し)、すごく印象的な時間になりました。

これは途中から参加した福田(達夫)議員、小渕(優子)議員と一緒にニュージーランドの党首討論の傍聴に行って、党首討論の前に議長から「今日日本から来ている議員のみなさんだ」と紹介されたときの写真です。

この党首討論に日本の国会から行ったのは初めてだと思います。先ほど笹川会長が一言触れてくださったように、日本のイノベーションが必要となっているのは国会だから、その国会をなんとか少しでも国民のみなさんに誇れるような国会にしたいという思いで、今回行きました。

国会内部が動いてきました。与野党が集まって100人以上の超党派の衆議院を改革する、その会が立ち上がった様子です。そしてこの前の国会の最後の日には超党派の会で議院運営委員会の委員長に提言を渡して、それがすぐに1つかたちになりました。

霞が関では異例の「マイナス要求」

国会改革が行われるためには、どこが動かなければいけないのか。それは議院運営委員会という、通称議運と呼ばれる会です。そこに対してペーパーレスやIT化をもっとやればコストも下がる。そして霞が関のみなさんの働き方も楽になる。意思決定の速度も速くなる。こういったことをやるべきだと言って、今回議運が動いてくれて来年度の予算要求では、本当にめずらしいことに、なんと4,500万円のマイナス要求という。

普通霞が関では今年の予算よりも1億円でも上乗せをすることがその局やその部署の評価基準なんです。だからどんどん予算は膨れていく。それをどうやって切るかを考えるのが財務省。その中で今回議運は衆議院のほうは、4500万円のマイナス要求をやったんです。

これはペーパーレスを一部実行するだけで、みなさんが送り届けている国会議員が働く国会のコストが4,500万円下がるんです。これはまだまだ序の口です。まだまだいっぱいありますから、こういったことを一つひとつ積み上げていって、動かないと思われている国会改革を平成のうちに必ず動かしていきたいと考えています。

自民党も動き出しました。自民党が政策を作るところは政務調査会、略して政調と言います。私はこの政調の改革の事務局長もやっていまして、これはあまりニュースになっていませんが、ものすごく大きな改革の一歩を踏み出しました。これ(について)は提言を岸田政調会長に渡したところですが、何が決まったか。

それは、2020年までに自民党における政調の会議資料について完全ペーパーレス化ということを決めました。おそらく来月くらいから始まるであろう次の国会から早速ペーパーレスをやるということが決まりました。みなさんがソーシャルイノベーションを生み出すように、私もみなさんに負けないように政治の世界でのイノベーションを生み出していけるようにがんばっていきたいと思います。

長くなりましたけれども、残りの時間は3人で少し話を広げられればと思います。今日明日みなさん、どうかがんばってください。ありがとうございました。

(会場拍手)

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