2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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池原真佐子氏(以下、池原):みなさま、今日はよろしくお願いいたします。
谷本有香氏(以下、谷本):よろしくお願いします。
安藤知子氏(以下、安藤):よろしくお願いします。
池原:この育キャリカレッジは、育児世代のキャリアを支援するためにメンターをマッチングさせる団体です。育児に限らず、ライフイベントや自分の働き方・キャリアは本当に大変な問題といいますか、壁があるなと私自身感じております。
6割以上の世帯が共働きという世のなかで、育児とキャリアを両立をしながらさらに挑戦をしていけるように後押ししたいと思ったことがきっかけで育キャリを始めました。
私には何が必要だったのかというと、それは人のサポートでした。育児には様々なサポートがあると思うのですが、キャリアと両立するためのサポートは見当たりませんでした。そのような中で、視野を広げてくれるメンター的な人が助言をくれたり、伴走してくれるような、そんなサポートが必要だと思い、このような団体を立ち上げました。
育キャリカレッジのスタッフは現在10名以上に増えています。今日来ているスタッフから一言ずつお願いします。
山口あや氏(以下、山口):山口と申します。私は自分の生き方に疑問を持ち、模索しています。立場も年齢も性別も違うかもしれないですが、そんな人たちの言葉を聞いて自分自身の一歩にしたいなと思っています。今日はどうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
山田恵理氏(以下、山田):山田恵理と申します。秋田で育キャリを受講していた者でして、今回の4月よりこちらに来て、スタッフとして関わらせていただいています。今回はすごく楽しみにして参加させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
池原:山田さんはメンターとしても育キャリカレッジに関わっています。キャリアカウンセラーの資格をお持ちで、今は双子の育児をしながら、秋田でさまざまな女性の起業や働き方のサポートをされていた本当にすてきな方です。悩んでいる方はぜひ彼女にキャリアの相談も申し込んでみてください。
池原:(スライドを指して)では、こちらのスライドをご覧ください。この「2年目」という数字は何だと思いますか?
参加者1:育児の2年目?
池原:これはあるデータによるもので、女性が会社に入ってからキャリアへの意欲を一気に失う年数です。学生の時は、男女ともに昇進意欲は変わらないのですが、女性は社会人2年目になると「ああ、私もう無理」って思うそうです。
では次のスライドをお願いします。(スライドを指して)この「36.8パーセント」というこの数字はなにかというと、育児と仕事をちゃんと両立できていると実感している人の割合だそうです。逆に言うと、働くママたちの6割が「私もう無理。両立できない。パンパンだ」という本当にギリギリの状態でいるということです。
(スライドを指して)3つ目は「大きな谷」です。これは、働く女性を実務担当者・リーダークラス・管理職という3つの層に分けた場合、実務担当者の女性は自己肯定感が下がっているらしいです。
でも、いったんリーダーになると女性は逆に自己肯定感が上がると言われています。さらに管理職になると、もっともっとポジティブに「自分にもなにかできる」と自信を得るそうです。つまり、実務担当者からリーダークラスになる間に「大きな谷」があるんですね。リーダー手前でキャリアを諦めていまう人が多いのはもったいないですね。
では次のスライドをお願いします。(スライドを指して)「2/3」。これはあるアメリカの研究者の方が1,300人ぐらいの企業の役員をリサーチしたときに、メンターがついていた割合が3分の2以上だったことを意味する数字です。仕事を続け極めていく人の多くは、自分の生き方や働き方に助言して引き上げてくれたり、話を聞いてくれる存在がいたということです。
最後のスライドをお願いします。(スライドを指して)「100%」。これはその役員の内、女性役員には、100%の割合で全員にメンターがついていました。これもいろんな参考文献から明らかになっています。
池原:先ほど、リーダーになると自己肯定感が上がるという話をしました。一方で、研究によると、女性がリーダーになると、嫉妬されやすくなることもあるそうです。
嫉妬や、あるいは、両立の困難さにめげず自分を突き通して、自分のありたい道を進み、自分でなにかを作り出し、コントロールしていく。そのために何が必要か、それを、私たちは「少し先を行く先輩の支援や励まし、つまりメンターとの出会い」だと思っています。
日本では育児をしている女性が自分のキャリアに挑戦をしていくと、「母親としてどうなの?」という目を向けられます。いただいている質問の中にも「他者からの批判や罪悪感とどう戦いますか?」といった内容がかなり多くありました。
私にも子どもがいて、夫が海外にいるため、ワンオペ育児をしています。優雅に育児してそうと言われるんですけれども、実際はとても大変です。
産後3週間で仕事に復帰、子どもを抱えて仕事の場に行ったりもしていました。
育児と仕事の両立は大変ですが、メンター的な人のサポートがあり、なんとか仕事を続けられています。
池原:さて、ここから2人の素敵なゲストをお迎えして対談に入っていきたいと思います。まずは谷本様から自己紹介をよろしくお願いいたします。
谷本有香氏(以下、谷本):はじめましての方も、お久しぶりですの方もいらっしゃいますね。谷本有香と申します。『Forbes JAPAN』という経済誌の副編集長とイベントのチーフプロデューサーをしています。
こう言うといかにも正社員だと思われるかもしれませんが、フリーランスとして働いています。
キャリアの最初に証券会社と書いてあるんですが、山一證券という会社におりました。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。3年ぐらい働いたころに自主廃業となりました。
私はどうしても「経済に携わりたい」って思っていたので、いわゆる証券不況に陥った世の中で、どうすれば経済の世界で生きていけるかを模索していました。そのころはまだ経済キャスターという名称はなかったんですが、私は日本で初めての経済キャスターになろうと決めて、それからずっと「企業は信じられない」という思いからフリーランスの人生を送ってきています(笑)。
フォーブスのほかにも跡見学園女子大学で教鞭を執らせていただいたり、いくつかの企業で役員をさせていただいたりと幅広く仕事をしながら活動しています。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
安藤知子氏(以下、安藤):私からも簡単に自己紹介をさせていただきます。あらためまして安藤知子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
今日は20代の方もご参加いただいていますが、その方達にとっては、私はお母さんと同じぐらいの年齢かもしれませんね(笑)
私は長年企業で仕事をしてまいりました。最初は日産自動車で、その次が日本コカ・コーラ、そしてマース・ ジャパン。マースは「m&m’s」や「SNICKERS」といったチョコレート菓子や、ペットケアの「ペディグリー」や「カルカン」などを扱っているアメリカの企業です。直近では日本ロレアルというフランスの化粧品会社で仕事をしてまいりました。
現在は人事のコンサルタントやパーソナル・コーチとして仕事をしています。また、育キャリの考えに共感し、メンターも務めさせていただいています。 今までのキャリアにどういった特徴があったかというと、日本の企業、アメリカの企業、そしてフランスの企業という全く異なる文化背景を持った企業で仕事をする機会に恵まれたということがあります。
また、外資では、一般的にマーケティングならマーケティング、人事なら人事と、ひとつの領域でキャリアを作っていくという考え方が主流ですが、マーケティングというビジネスのフロントラインと、一般的にはバックオフィスと呼ばれる人事の両方を経験できたこともの特徴的なことだったと思います。
こういった話をすると、ものすごくきっちりとキャリアプランを練ってきたのかと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、様々な出会いや巡り合わせっとをその都度積み重ねてきて今日に繋がっている、そのように感じています。
私が大学を卒業したころはまだ雇用機会均等法の前でした。歳がバレてしまいますが(笑)、女子は「3年ぐらい勤めたら結婚して辞めるんでしょ?」というのが世間一般の常識という状態で、キャリアという言葉すら一般的には使われていない時代でした。 今日はいろいろお話ができればと思いますので、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
池原:よろしくお願いします。今日は女性の働き方や「わたし」というものをどう今後確立していくかがテーマです。「わたし」がどう働くかということも、今かなり大きく変化しているかなと思います。
そこでおふたりは、これからの時代の働き方はどうなっていくと考えてらっしゃるのか? とくに有香さんは著名人やビジネスでフロントに立つ方々と接していらっしゃると思います。「これから働き方はどうなるか? この先女性はどういう生き方を選んでいくようになるのか?」というかなり抽象的な話となりますが、少しご意見をお聞かせください。
谷本:そうですね、いろんな企業を見てきて思うのは、まず「これから女性の時代が来る」のではないか、ということ。つまり、女性が働きやすい時代になってくるという実感があります。
みなさんもご想像がつくと思うのですが、AIやテクノロジーの台頭によって私たちがやりたくない仕事がなくなっていきます。すべてそれらの技術に置き換わっていくわけですね。
そういう意味において、この先仕事では、本当に好きなことや、自分の得意な部分でしか価値を形成できず、それによってしかお金を稼げないような時代がおそらくやってくるのではないかと思っています。
いわゆるジェネラリスト的な働き方より、その人の得意や好きによって生み出される価値にお金が支払われる、つまり、よりプロフェッショナル的な、よりフリーランス的な働き方をせざるをえない時代に突入していくと思います。
そういったなかで、とくに育児や家事などをしながら働かれている女性の方たちにとって、やらなくてもいいことや、他の人や機械でも代替できるような業務というのは、ただでさえ時間的制限がある中での足かせになっていたわけです。
だからこそ、これからより一層自分の得意や好きな部分だけに時間を費やすことができる時代がやってくるときに、その足かせから解き放たれ、女性たちがイキイキ輝ける時代が眼前に来ているということだと思うんです。
池原:希望が持てますね。先ほど好きなことでとおっしゃっいましたが、私は多くの女性と接する中で「自分の強みがわからない」「好きなことがわからない」という方がとても多いなという印象を持っております。
谷本さんの記事の中であった「自分の強みというものは、『得意』と『好き』と『周りからの評価』の掛け算である」というフレーズが非常に印象的だったのですが、好きをどうやって見つけるか、得意ってどうやったらわかるのかについてなにかありましたらお教えください。
谷本:そうですね、よく言われているのは「もうやめろ」って言われてもずっとやっていることであるとか、どうしてもそこに意識が向かってしまうことが「好き」の根源であると言われていますよね。
ただ、その「好き」を見つけるときにどうやって社会性を持たせるか、仕事的な役割を持たせるかを考えてしまうと「好き」ってなくなっちゃうんですよ。
例えば、自分の子どもがすごくゲームが大好きであるとします。「そんなの好きに入らないよ」と言ってしまうのは間違っています。ゲームの世界の中で得られる「好き」が、結果的にその人の個性や強み、キャリアをつくることにつながる要素がすごく詰まっていたりするわけです。
本来的に自分自身がなににワクワクをするか、これはずっとやっていたいなと思うことはなんなのかにきちんとフォーカスしてあげることが私は重要だと思います。プロフィールに書いたり面接で言うための「好き」ではなく、きちんと向き合うことから始めるということですね。
池原:ありがとうございます。ちなみに安藤さんは、先ほど大学を卒業したのが「雇用機会均等法の前から」とおしゃっていましたが、いかがでしょうか? すいません、そこばかり強調してしまいますが……。
安藤:(笑)。
池原:緊張するので、いつものように安(あん)ちゃんと呼ばせていただいていいですか? 安ちゃんはそのころからずっとキャリアを続けられていて、時代の流れとともに生き方・働き方を選んできたかと思うのですが、その流れに対してご自身はどのようにフィットさせてきた、あるいは乗ってきたのでしょうか?
安藤:…流れにのまれるわけでもなく、逆らうわけでもなくといったところでしょうか。先ほど申し上げたように私は最初から「よし、将来人事部長になるぞ」と思ってキャリアを築いてきたわけではないんですね。色々な出会いの中でベストだと思うチョイスをしてきた結果が今日に繋がっています。
ではベストなチョイスとはなにかということですが、振り返ってみるとキャリアの中での転機には、「自分で選ぶ転機」と「自分で選んでいない転機」の2つがあると思っています。
「自分で選ぶ転機」というのは、なにか機会が与えられて、自分でそれをやるかどうかを選ぶということ。逆に言えば、どれかを自分で選ばなければいけない状態。もう1つの「自分で選んでいない転機」は、想定外のタイミングで訪れ、自分には選択権のない転機ですね。
安藤: まずは「自分で選ぶ転機」についてですが、自分で決められる状況では色々な角度から考え抜いて選択をしてきました。例えば、息子がまだ2歳だった時に転職の話があったのですが、子どもが2歳という状況で転職するべきかどうかはとても悩みました。理屈や理性で考えて、考えて考えて考え抜いて、最後は直感で選ぶ。そんな選び方をしてきたと思っています。
ただ、どのようなときにも自分の中に軸のようなものを持っていました。それはなにかというと、道が2つある場合には可能性が将来に向かってより広がっている道を選ぶということです。
言葉を変えるならば、大変な道を選ぶということかもしれません。そちらを選ぶとちょっと背伸びもしてストレッチもしなければいけないからきっと大変なんだろうなって思いつつも、あえてその道を選んできたのかなと思います。
もう一つの「自分で選ばなかった転機」のほうですが、企業で仕事をしている方はもご経験があると思いますが、自分が想定していなかった異動やプロジェクトなどいろいろ直面しますよね。 そのようなときって、まずはびっくりしますよね。
自分がやりたいことではなかった場合には「なんで私が?」って感じるでしょうし、「なんて私は運が悪いんだろう。不幸だ」って思うこともあると思います。私にもそのような巡り合わせはありましたが、そのようなときにも「まず、やってみる」ということを大切にしてきました。
おもしろいもので、振り返ってみると、そういう自分が意図しなかったものが、長い目で見たときに自分にとっての大きな肥やしになっていることが多いのですね。
自分がやりたいことだけやっていると、幅が広がらない可能性もあるわけです。自分が想定していなかったことに向き合わざるを得なくなったときこそが、自分の幅を広げる機会につながっていたことが多いなと感じています。
池原:ありがとうございます。安藤さんのお話の中でお子様が2歳の時に転職を決意されたというお話がありましたが、有香さんはお子様が小さいときに北京大学に学び直しに行かれていると伺いました。それはどのような決意を持ってされたのか? そして、お仕事もされていたかと思うのですが、どのようにやりくりをしながら勉学と両立をされていたのでしょうか?
谷本:子どもが1歳のとき、EMBAというExecutive MBAを取得するために北京大学に行きました。1ヶ月の内、週末だけ行けばいいというプログラムだったんです。週末なので家族が子どもの面倒をみることができたこともあり、クラスメイトはほとんど中国に住んでいる方ばかりの中で、私は通うという選択をしていました。
なんで子どもが1歳のときに敢えて行くんだと、実はまわりからは非難轟々でした。しかも、私はその時点で育児だけじゃなく重篤な介護もしていたんですね。
ますます時間がないじゃないかと言われると思いますが、自分のアイデンティティ探しが理由だったんです。そうでもしないと潰れてしまいそうで。正直なところ精神的にも肉体的にも追い詰められる日々で、毎日死にたいと思ってしまうくらいつらい時期だったんです。
そんな中、私のアイデンティティはどこにあるんだろうと考えたときに、やっぱり私はジャーナリストとして生きていきたいと思いました。その頃は金融経済の専門のジャーナリストで「自分が今までやりたかったことってなんだろう?」って胸に当てて聞いてみたら、これからの経済において重要な中国の情報が本当に取れなかったことに思い当たりました。
であれば、自分自身が現地に赴いて要人とつながることも大事になりますし、中国語を読めるようになるということはもちろん、自分の目で見て感じた空気感を頭に焼き付けたいと思ったんです。
かといって、育児と介護を放棄してるかというとそんなことはなく、できる限り、やってきたという思いはあります。「私」という存在のバランスを取っていくために、その時期に行ったという言い方が正解かもしれないですね。
池原:学びの教えというのは、大人になってからは学生のときと違うニュアンスがあるのかなと、今お伺いしていて思いました。私も30才頃で大学院に通い直したときに、学生とは違う自分のアイデンティティの確立があったように思います。有香さんはその三足の草鞋を履かれた生活において、今振り返ると改めてどういう時間だったと考えていますか?
谷本:職業柄かもしれないですけれども、苦労や困難、課題に面したときに初めて見えてくる真実ってあると思うんです。
そのときは毎日死にたいって思っていましたが、今思えばあんなに「学び」という意味において充実した時間はなかったのかもしれないと。あの経験がなかったら、今ある洞察や困難を抱えていらっしゃる方の心への配慮もなかったと思うので、与えられてよかった時間だったなと感じています。
ただ、あの頃は本当につらかった。本当にきつかったんですよ。常に意識が朦朧としている感じだったんですが、どうやって乗り越えたかには1つのTipsがあります。
ある日、母親が突然難病に罹ったんですね。首から下が一切動かなくなりました。自分で排泄もできないので、摘便してもらわないといけません。母自身も突然のことに心身ともに対応できていない。父も介護うつになって倒れてしまうという、もうとんでもない状況です。
私も恐らく、介護うつになっている状態で、もがき苦しむ中で、いろんな医学書を読みました。介護してる人に取材をしたりして、なにか今の私を救う言葉や方法を探してたんです。
でも、なかなか見つからなかった。ただ、唯一見つかったのが、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』だったんです。私の中ですごくピンときたのは、アウシュビッツの中で生き残ったユダヤ人収容者の共通点です。愛する対象がいるということ自身が生きる糧となる。また、自分を捕虜として見るのではなく、精神科医として心理学的観察をする中で、自身の精神の拠り所を探していきます。それを見て、これなら私にもできる、と思いました。
つまり、ジャーナリストとして「なるほど、介護業界はこうなっているのか」「ここに改善すべきポイントがあるのか」と、ジャーナリスティックに見ていくわけですね。そうしたら、徐々に死にたい気持ちがなくなりました。困難なときだからこそ、メタ認知というか、俯瞰する力というのはとても重要だと思いましたね。
池原:ありがとうございます。みなさんの中にも仕事をされながら介護をしている方もいると伺っています。本当につらいことがあるなかで、当事者ではなくもう1人の自分、例えばジャーナリストとしての自分のように他者として見たときにそこから学びがないか。構図を見つめ直すことがヒントになるということですね。
ちなみに安ちゃんもつらい時期がたくさんあったと思うんですが、そういうときにどうやって乗り越え、どんなことが学びになったでしょうか?
安藤:物理的にも精神的にも大変なことといえば、子育て、両親のこと、仕事といろいろありました。メタ認知という呼び方はしていなかったですが、自分を客観視するという今のお話はすごく共感しました。
「人生に無駄なことはなに1つない」という言葉が私の座右の銘です。先ほど自分にとって想定外のことが起きた時のお話をしましたが、そのときは「貧乏くじ引いたな」「なんでこんなことになっちゃったんだろう」などと思うことでも、「これは人生が私に与えているなにかなんだろうな」と見るようにいつも心がけていました。
そうしないとやってられないじゃないですか? 「目の前にあることにしっかりと向き合っていればきっと道は開ける」という、根拠のない信念みたいなものをいつも持っていたように思います。
池原:今2人の話を聞いて感じたのが、「覚悟」と「客観」についてです。両方必要な気がしますね。覚悟がないと、たぶん客観視もできません。ただ、巻き込まれている中にいるとなかなか「自分がここを進んでいくんだ」「ここしかないんだ」と見えにくいんですが、1回腹をくくって受け止めれば、また違う自分や新しい選択肢が見えてくるんだなと今感じました。
池原:次のトピックに行きたいと思います。つらいときもそうですし、道を切り開いていくときにどのようなマインドセットやスキル、あるいはネットワークが必要かという点について。
とくにネットワークについては、みなさん子どもが生まれてからは偏りがちになったり広げにくくなったりすると思うんですけれども、どういうネットワークがあれば自分らしいキャリアが開けていくと思いますか?
谷本:うーん……難しいですね。
池原:例えば私であれば、起業して半年間は行き詰まっていて本当につらい時期で10キロも痩せたんですね。そんな自分を引き上げてくれたのは、仕事と関係のない友人のひと言だったりお誘いだったりでした。
そこを全部シャットダウンしなかったことで今の自分があると思っています。キャリアを切り拓いていくときに、なにかしらのネットワーク・情報がヒントになるのかなと感じたのでこの質問を入れさせていただきました。
安藤:じゃあお先に言いますね。ちゃんと答えになっているかわからないんだけれども。
池原:質問がちょっと難しかったでしょうか。
安藤:いや、大丈夫、大丈夫(笑)。まずはマインドセットですね。いろいろありますけど、やっぱり私は「自分で決める」ということが、シンプルですがすごく大切だと思っています。
今日のテーマも「自分とはなにか?」となっていますけれども、長い間子育てをしながら仕事をしていくなかで、自分の中にいつも3つの軸というのを持っていて、それが自分という存在を捉える基礎になっていましたね。
一つ目の軸は、「プロフェッショナルとしての自分」というのがあります。職業に就いている自分ですね。
二つ目の軸は、母親であり、妻であり、親から見れば娘といった社会的な役割を担っている自分という軸。
三つ目はそのどちらでもない自分というもの。母親でもないし、妻でもないし、会社で仕事してる自分でもない、私という一個人です。この3つの軸でいつも考えてきたように思います。
安藤:子育てで忙しいときは一つ目と二つ目の軸がメインにならざるを得ないことが多いと思います。「三つ目の『私個人』なんて考えている暇ないわよ」みたいな状況ももちろんあり、客観的に見たら私は相当悲惨な生活をしているように見えたかもしれません(笑)。
皆さんもご経験があるかもしれませんが、子どもを寝かしつけている間に自分もうっかり寝てしまい、夜中に目を覚めして布団から這い出してもう1回パソコンを開けることもありました。
子どもを保育園に送って駅に向かうまでの時間に歩きながらなにかをかじるのが朝食だったりしました。会社に向かう電車に乗っている間だけが自分の時間だけれども、その日の新聞読まなきゃとかね。
もう自分個人なんてゼロじゃないかと思う時期もたしかにあったのですが、そこで自分を支えてきたのは、ある意味、「まぁ数年間はいいや」と自分自身で割り切ったこと。「一つ目と二つ目の軸を今は大切にしよう」「人生は長いから、自分という三つ目の軸はその時がきたらまた膨らませばいいじゃないか」と自分で決めたわけです。
結果的に、仕方なく育児と仕事だけの毎日になっちゃっていますということと、自分で決めてそうしましたというのは、見た目は似ているしバタバタしてるのも同じなんですけれど、自分のマインドセットとして「自分が決めたこと」、つまり誰かに言われて仕方なくやってることじゃないという考え方は自分を支えてくれました。
自分で決めたことであるなら、何か違うと思ったら自分で変えればいいだけの話ですから。
安藤:もう1つはネットワークでしたっけ? ごめんね、いっぱいしゃべっちゃって。
池原:いえいえ(笑)。
安藤:もちろんネットワークは大切ですが、量より質で選ぶべきかと考えています。
「ネットワーク」という言葉一つとっても、私が社会人になった直後から今までのこの30年の間に……あら、嫌だ。30年も経ってるのね。
池原:(笑)。
安藤:この30年の間にものすごく大きく変化をしました。
昔のネットワークは「誰に年賀状出してるの?」みたいな話じゃないですか。でも今はFacebookとかLINEとかいろんなネットワークがあって、しかもそれが全部見える化されているというまったく違う価値観の世の中になりました。
「ネットワークとはなにか?」と考えるだけでも深い話で、これからのネットワークとどう自分が向き合っていくのか、実際私も自分なり自問自答しているところです。
まず、とても便利なものであることは事実です。FacebookのようなSNSもすばらしいツールですが、ネットワークにコントロールされるのではなく、使い方は自分で決めるというスタンスは貫きたいなと思っています。最終的には、量より質が大切だと思っています。
池原:ありがとうございます。マインドセットについては自分で覚悟を決めて選んだということ、ネットワークはどういうつながりを自分が持つかという質の部分と、どうやって自分がそれをコントロールしていくのかというところですね。
池原:私が安ちゃんと初めて出会ったのは10年ぐらい前なんですけれども、Facebook経由で近況はお互い知っていました。昨年再会して「育キャリカレッジを手伝って欲しい」とお願いをして引きずり込んで、今ではすっかり(笑)。しばらく会わなくても「この人と会いたい。また話したい」という強烈なものが私にはあって、たぶん安ちゃんも同じように思ってくれていた。
だから量よりも人が大事ですね。人というと品定めしているみたいですが、そうではなく自分のBeingというか「自分が人としてどうありたいか」を相手に伝えてもらうというところがネットワークのやりとりで必要なんだなと思いました。
有香さんはいかがでしょうか?
谷本:マインドセットに関しては、困難や辛い状況を再定義するということが大切かと思うんです。たとえば、「いま充実しているな」とか「自分が成長する段階に来ているな」というようにです。
人って死に直面をすると、些細なことが大切って思えてくるんです。だから、どん底を見ることによって、自身の感情のプラス面や幸せの振れ幅が大きくなるって本当だと思います。なので、あえて、苦しさや困難に逃げず直面するということは、結果的に幸福感を得ることにつながるような気がしているんです。
ネットワークに関しては、自分のアイデンティティがどこにあるかが重要だと思うんです。たとえば、辛かった当時、私は社会との接点を見出すことによって、自身のアイデンティティを感じてきた。だから、私にとって大切なネットワークは私に仕事をもたらしてくれたり、私が社会的価値を生み出すことを手伝ってくれる人たちだったんです。
大切なのは、自分だけがTAKEしないこと。互いにGIVEできる関係性を作れるネットワークが自分を成長させたり、安心をもたらしてくれるような気がしています。
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