2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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西野亮廣氏(以下、西野):ご存知ですよね、矢沢タオルです。一度は見たことありますよね、「E.YAZAWA」って書いてある、あの長―いタオル。永ちゃんタオルって、めっちゃ売ってるんです。たぶん、みなさんが思っている以上にめちゃくちゃ売ってるんです。
ただ、ライブタオルなんて、ミスチルだって出してるわけです。安室ちゃんだってRADWIMPSだってサザンオールスターズだって出してる。でもでもでも、永ちゃんタオルだけは売り上げが1ケタも2ケタも違う。
永ちゃんタオルだけは、べらぼうに売れてるんです。みんなよりも、ぜんぜん、ぜんぜん売れてる。じゃあなぜ、永ちゃんタオルがそんなに売れるのか。
永ちゃんのライブに行かれた方はご存知かもしれないですが、永ちゃんのライブって、クライマックス、ばーって盛り上がって、お客さんも永ちゃんもみんなが、首からぶら下げてる永ちゃんタオルを、盛り上がりの最高潮のときに、一斉に上にぽーんって投げ捨てる演出が入るんです。その瞬間に何人かなくす、ということです。
(会場笑)
すごいですよね! つまり、永ちゃんタオルはその瞬間、消耗品になるんです。他のバンドは使いまわすんですが、永ちゃんタオルは消耗品なので、ライブするたびに売れる。武道館でライブをすれば1万枚売れるのが、永ちゃんタオルなんです。つまり、永ちゃんは、日本一のロックンローラーでありながら、世界一のタオル屋さんでもある。
(会場笑)
タオルの売り上げが、べらぼうなんです。ここがすごく大事です。タオルの売り上げがめちゃくちゃあって、もうそこで生計が立っているから、CDを出すときに、世間に忖度する必要がないんです。
つまり、他のアーティストさんは、CDを出すときに、ミュージックステーションに流してもらわなければいけないから、3~4分に収めたりだとか、ラジオで1分くらいでサビがくるようにしなくてはいけないとか、そういう世間のニーズに忖度しているわけです。
でも永ちゃんは、別にCDで食ってるわけじゃないので、極端な話、1つのCD、1つの曲で、60分の曲とかを作ることができる。つまり、永ちゃんは、タオルの売り上げをめちゃくちゃ上げているから、ロックンロールができるということです。
ここがすごく大事。CDの売り上げで生きていたらロックできないんですよ。でも、永ちゃん、最初に決めたと思うんです。「俺、ロックする」って決めた。そう決めたときに、CDの売り上げではもう無理なんですよ。
要は、俺がやりたいことをやるんだということを決めた。すると、どこか別で収入源を作らなくてはいけない。それがタオルだった。タオルの売り上げがべらぼうにあったから、矢沢永吉は、日本一のロックンローラーになった。ここがすごく大事。
本業以外のところでマネタイズしてしまえば、本業でめちゃくちゃ尖ることができる、天才になることができる。これを僕はすごく参考にしています。
例えば、僕、もう出演ギャラで生きていないんです。テレビの出演ギャラで生きていたら、弱っちゃうと思ったので。
つまり、テレビがどんどんどんどん廃れていってるのに、収入の軸足をテレビに置いていると「これやってください」って言われたものを、ぜんぜんやりたくないなって思ったときに「やりたくねえ」って言えない。テレビで好き勝手できないと思った。
じゃあどうやって生きているかというと、もう完全にオンラインサロン。要は、テレビに対してけっこう交渉ができるということです。ここ最近、キングコング西野がテレビに出るときは、絶対主役でしか出てないんです。
要は『アメトーク』だったら『西野芸人』だし、『ゴッドタウン』だったら『西野街』だし、ミヤネ屋だったら、僕の30分の特集をしてくださるんなら出ますよ、という交渉ができる。テレビに軸足を置いていると、それができないので。意外なところでマネタイズができていたら、その本業で、けっこう尖ることができる。
去年で言ったら、去年の10月くらいに、新潮社とか文春の社長とかが「図書館で本を貸し出すのをやめてくれ」って言ったんです。図書館での本の貸し出しが激しすぎるから、それによって「出版不況が起こってる、本が売れなくなってる」みたいなことを言いやがった。本当に頭悪いな、こいつらバカだな、と思ったんですけど。
世間の人たちが、文春の社長とか新潮社の社長に対してけっこう言ってたから、今さら自分が言う必要はないかと思ったんですが、でも一泡ふかせてやりたいなと思って、何にしようかと考えたときに、ちょうど『革命のファンファーレ』を出したときだったので、初版分の印税をすべて使って『革命のファンファーレ』を買って、全国5,500館の図書館に送ったんです。
要は、図書館に、僕の本を貸し出し用として送ったんです。読んでくださいって。結局、そのほうが売り上げが上がりますからと。事実、売り上げも上がったんですが、それって実は、売り上げが上がらなくても問題ないということです。
『革命のファンファーレ』の売り上げが上がらなくても問題ない。でも、そういうちょっとおもしろそうなアクションを起こせば、オンラインサロンの人数が増える。人数がばーって増えれば、そこでマネタイズできる。
印税ですらも生きていないということです。印税なんて、おもしろいことにしか使ってない。印税で生きようと思ったら、あのアクションはできないです。そういうふうに、とにかくずらす。本業からとにかくマネタイズをずらすことが、本業をより鋭くさせる。
最後に、一番いい例として出しているのは、僕、2月の頭に、五反田に「キャンディ」っていうスナックを作ったんですが、そのときの話です。まったくそのやり方で、本業でマネタイズしないって決めたんです。
スナックって、飲食店ですよね。まず決めたのは、飲食無料にしたんです。飲食店なんですが、1回、飲食無料にしてみた。
やばいじゃないですか。どこかで、家賃払わないといけないし、スタッフのお給料も払わないといけない。どうしようかなって、そこから考えるんです。まず、飲食無料という極端な環境を与えてしまって、どうしたものかな、って考える。
まず思いついたのは、ファンクラブです。スナックのファンクラブ。スナックの住所を非公開にして、ファンクラブの人だけは住所を教えてもらえるっていう特典を付ける。
他にもいろいろ、例えば、地方でオンライン飲み会ができる。つまり、鹿児島で1人で飲んでる人や、北海道で1人で飲んでる人が、オンラインでつなげば、スナックで飲んでいる人とつながる。
あと、スナック「キャンディ」を運営する株式会社スナックっていう会社を作ったんですが、その運営に口を出せるという3つの特典をつけてやったところ、ファンクラブに800人集まったんです。
会費は月500円です。月500円で800人集まって、「やったぞ! これで店を回せる!」と思ったんですが、でも、500円×800人で40万円なんです。
サイトの手数料とかもろもろ抜かれていって、入ってくるのが33万円なんです。家賃が25万円なんです。やばいんですよ。五反田なので、家賃高かったんです。でも33万円しかないんです。そこから飲食無料でしょ。飲食代がめっちゃかかる。
要は、材料費がめっちゃかかる。スタッフさんのお給料も払わないといけないですよね。お金がぜんぜん足りないことがわかった。やべえ、8万円じゃぜんぜん足りねえじゃん。だめですよ、死ぬんですよ、もう、やばい。
スナック「キャンディ」が抱えている問題は、実はもう1つあったんです。何かっていうと、飲食無料なので、みんなばかすかお酒飲むんです。飲み放題のように飲むんです。げろ吐きやがるんです。
(会場笑)
すごい確率で、げろ吐くんです。最低じゃないですか。スナックで、あの狭い空間で、げろ吐かれたら、もう終わりじゃないですか。吐いたやつ、もう悪者になりますよね。あの空間も地獄になる。最悪なんですよ。
スナック「キャンディ」が抱えている問題は、大きく2つ。1つは、お金が圧倒的に足りていない問題、そして2つ目は、げろ問題。この圧倒的な、地獄的な問題を、どうしたものかと考えて、考えて。
800人のファンクラブの人と一生懸命、考えて、考えて、考えた結果、この2つの、げろ問題、そして、お金が足りてない問題を一気に解決するスーパーアイディアが出たんです。それは一体何かというと、1げろ罰金10万円。
(会場笑)
げろを吐かれた瞬間、支援になる。げろを吐いたやつがヒーローになる。げろ吐いたやつが、ありがとうございます、と言われるわけです。みんなが喜ぶ、みんなが幸せになれる。つまり、スナック「キャンディ」は地球で初めて、げろの売り上げで回しているスナック。
(会場笑)
なんでこのアイディアが出たかというと、いきなり考え出したわけじゃないんです。飲食を無料にして、経営を追い込んで、極端な環境を与えてしまって、その中でスナック「キャンディ」が生きようとした結果、1げろ罰金10万円っていうアイディアが、ポンって出てきた。
つまり、ここからの時代、生き延びようと思うのであれば、天才になるしかないんだから、まず、やらなくてはいけないことは、考えることではなくて、極端な環境を自分に与えてしまうことだと思います。というわけで、お時間です。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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