2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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森川亮氏(以下、森川):そろそろね、ちょっと全体討議ということなので。ここで質問を受けたいと思いますが、質問したい方? じゃあ、まずこちらのほうから質問どうぞ。
質問者1:お話ありがとうございました。〇〇といいます。フロリダのディズニーで働いていて、なんか感動というところが、すごい自分を重ね合わせられるなという場面がありました。
お話を聞いていて、「みなさんが今までで1番感動した瞬間ってどこなのかな?」をすごい聞きたくて。先ほどいろいろ分析されていましたけれど、(その背景というか)なんで自分が感動したのかまで、お聞きできたらいいなと思っています。
森川:はい。じゃあちょっとまとめて聞きます。じゃあ次の方、どうぞ。
質問者2:松井将浩と申します。シェルフィーという建築×ITのスタートアップをやっているんですけれども、とくに遠山さんにちょっとお聞きしたくて。
言葉にすると安っぽくなることって、けっこうあると思うんですね。スマイルズさんのやっている事業って、言語化できないようなものが多いなと思ってて。そういったものを社員の方々がボトムアップで発信しやすい組織文化とか、なにか、上がちゃんと拾い上げられるように意識していることがあったら、ぜひ教えていただきたいです。
森川:じゃあもう1人、はい、お願いします。
質問者3:どうも。〇〇と申します。たぶん、とくに為末さんに当てはまる質問だと思うんですけど。僕はスポーツとか芸術にすごい興味があって、感動がどうやってお金になるかというところを、みなさんにお答えいただきたいです。
というのは、Jリーグや野球など、一部の男性の人気のスポーツはお金を生みやすい構造になっていると思ってるんですけど。例えばなでしこジャパンとかって、(選手の)みなさんが会社員をやりながら練習して、世界1位で金メダルを獲っても、今の生活がどう変わったのかというと、わかんないんですけど、たぶんあまり変わっていないとかいうので。
つまり今、感動って消費されて、僕たちは対価を払わなくても感動できるような状況に生きてると思っていて。そういうときに、どうやって対価をちゃんと払うような文化とか……。人気という部分だけでお金が左右されていて、そこに参加する側としては、すごい生きにくい土壌になっていると思ってて、そこをどう改善していったらいいのかなというのが僕の質問です。
森川:ちょっと質問がたくさんあるので、まず最初の「今までに感動した経験」をみなさん全員に、はい。じゃあ前田さんからいいですか?
前田裕二氏(以下、前田):一番ですか……?
森川:一番ですよね。
前田:もし、もうすでに思いついている方がいたら。
遠山正道氏(以下、遠山):先に言っちゃいましょうか。感動したのは、娘が小学生ぐらいの時のトライアスロンで、プールで一生懸命にこんな蛇行をしながら最後尾で泳いでいる。なんでかはわからないけど、まぁそれですね。
それから、先ほどの質問(事業における言語化できないもの)は、最近は「メニューに表れない価値」なんて言ってます。メニューって、材料とか値段とかコースだとか、だいたい必要なことが書いてある。だけど、メニューに書かれていないおいしさとかね、おもてなしとか、そういうのは当たり前に、本来は大事じゃないですか。
だけど、仕事をやってると、どうしてもこっちの数字になっちゃったり、変に言葉になっちゃうものに目が行きがちなので。目に見えないおいしさとか、そっちのほうをちゃんと考えようねと言ってる。
あとは、‟ひとりごと”ということをずっと言っていて、「一人ひとりが自分で自分の仕事を見つけてやっていくんだよ」ということをやっています。
為末大氏(以下、為末):僕は両方(の質問に答えます)。感動したのは、2000年のシドニー(オリンピック)の時のキャシー・フリーマン。当時のオーストラリアが、アボリジニという現地人の方と移民の方たちがみんなで合わさって、「One Australiaを作るんだ」というのがオリンピックのコンセプト。それで、彼女は現地の方の象徴だったんですね。名前もフリーマン。
すっごい期待がかかってるなかで、400(メートル)で最後に優勝して、その瞬間に普通、選手はガッツポーズするんですけど、彼女が3分か4分ぐらい天を見上げて放心状態に入るんですよ。それを見ながらみんな熱狂してるんだけど、真ん中の彼女だけはもぬけの殻になってて。そして、彼女はその後まったく走れなくなって引退するんですね。
僕はああなりたい、というのがずっと自分の人生のテーマで。まぁなれなかったんですけど、『あしたのジョー』みたいな終わり方なんですよ。最高の終わり方だなと思うんですけど。
為末:もう1個の質問のほうは、『ピカソは本当に偉いのか』という本があるんです。ピカソが描いた絵は、よくわからない絵が多いじゃないですか。でも、彼は生きてる間に、めっちゃ金持ちになるんですよ。それはなぜかということを書いていて。
結局、結論としては、アメリカがすごい経済的に成功した時の投機対象の代名詞がピカソになったという。本当かどうかはよくわからないんだけど、一応分析としては、そう結論づけられているんです。なので、感動とお金が入るかどうかは、実はたいして関係のない、仕組みの話じゃないかと僕は思っています。
最近、僕が周りで見てて、実はスポーツ界で歴史的にお金を回すのが一番うまくいってるのは相撲界です。もうタニマチになりたい人が大量にいて、支えたいという人がいる世界なんですね。これは人気だけでいくと、たぶんサッカーとか野球のほうが人気かもしれないけど、もう「相撲を支えたい」という人が列をなしているみたいな状態で。
ちなみに、相撲部屋は「自分たちで野菜や米を買ったらおしまいよ」って言われてるんですよ。全部捧げられたもので食っていかなきゃいけないという。しかも、みんな大量に食べるので。
あの世界ってすごくて。すいません、ちょっと長くなって。僕は、引退した選手の断髪式を見に行ったんですけど。だいたいみんな、言われてないんだけど、包みにいくんですね。僕はケチなので3万円ぐらいだったんですけど、たぶん横の人のちょっと見てると、「これ10万円とか30万円ぐらいが相場かな」みたいな。周りを見渡したら、1,500~2,000人ぐらいが列を成してるんですよ。それが終わったあとに、下にパーティに行ってみんなで食べると。
たぶん、あの日に1億円ぐらい動いたんじゃないかと思うんですけど、あれはやっぱりシステムだったんですね。断髪するなんていうのは、みなさんが知らない世界だと思います。
だから、みんなが広く知っていることとお金が儲かることは別だということを前提として、なにか仕組みを。ちょっと僕も考えながら、日々、わからないんですけど。それを作れると、マイナー競技でもちゃんとそれなりにやっていける仕組みができるんじゃないかと思っています。
森川:はい。じゃあ、福武さん。
福武英明氏(以下、福武):最近感動したこと。最近というか、理由がわからないんですけど、僕は小学校の記憶がけっこうなくて。「あれ?」と思って。勝手にいじめられて別人格を作ってたのかわからないんですけど。とにかく記憶がないだけなのかわからないんですけど、ないんですよ。これすごいなと思って。
あとは、意図的に多重人格になれたら、すごい人生楽しいだろうなというので、高校ぐらいにちょっと人格を変えて。
森川:アップデートをした。
福武:そうそう。それを定期的にやってるんですよ。僕だって、けっこう多重人格。うちの嫁さんとか「そんな人と結婚したつもりない」って言われてるんですけど(笑)。
森川:変わっちゃったんですね(笑)。
福武:そうそう。でも、それができるというのはなんかすごい感動して。「こんなふうに変われるんだ」みたいな。それはもうなりきるだけなんですけど。
さっきのアートとかでいうと、アート好きじゃないけど、「好きなんです」って決めたら、もうあとはそういう振りして水面下でバタバタと足を必死にやる(動かす)というので、なんとなく(好きに)なってくるという。まぁ人生長いのでいろいろやっていきたいなというのと。
あと、ちょっとさっきのピカソの話で1個思いだした。僕もそれ最近、感動というか、知らなかったんですけど。ピカソって駄作がめっちゃ多いんですよね。とにかく作品はめちゃくちゃ作ってるけど、どうでもいい作品もけっこうあって。やっぱりそういう意味では、そのぐらいチャレンジしていかないといけないんだろうなみたいのと、数万円で買える作品もあるので。だいぶ前ですけど、知らなかったというのもあって、そういう意味ではけっこう。
森川:はい。ありがとうございます。
前田:2つあってですね。SHOWROOMを立ち上げた直後なんですけど、当日の売上が1円だったんですよ。その時のほうが、投資銀行の時に10億円のオーダーを取ったときよりも感動の度合いが大きかったことに感動したんですよ。それって、なんか不思議じゃないですか。
森川:そうですよね。お金は関係ないと。
前田:「なんなんだろう?」と思ったんですけど。やっぱりそこに代替不可能性を感じたというか。別に自分じゃなくても、投資銀行において10億円のオーダーは取れてたんですよね。でも、新しく自分が作ったこの仕組みの中で立った1円の売上は、自分がこの世に存在してなかったら生まれなかったなと思うと、自分の成長をちょっと感じたというのがあって。
最近、自分……そう、だからそういう意味では、5年前ぐらいまでは自分の成長や代替不可能性を感じる瞬間に感動してたんですけど、最近はすごい違うな。2つ目なんですけども、僕は、他者の成長を感じる瞬間にすごい感動を覚えてるんですけれども。
小学校2年からの同級生を採用したんですよ。小・中学校が同じやつを。小学校の時、そいつにすごい算数を教えてたので、地頭が悪いイメージがあったから、すごいビクビクしながら採ったんですけれども、彼は入社した最初の日に「すいません、PDFってなんですか?」って言ってて。
森川:ちょっと怖いですね(笑)。
前田:というやつが、2ヶ月後ぐらいに会社で一番の売上を立てたんですよ。
森川:おお、すごいですね。
前田:もう爆発的に成長して。その2ヶ月間、彼は本当にトイレにも立たないぐらい。トイレに立たない社員ってすごくないですか?
森川:すごいですよね。
前田:「なんでずっと座ってるんですか?」って聞いたら、「僕はまだトイレにいくほど付加価値が出せてない」と。
森川:すごい気合入ってますね。すごいですね。
前田:それはすごすぎだろと思って、「トイレは行ってください」ということなんですけど。
森川:(笑)。
前田:そいつが2ヶ月間でもう本当に成長して、お客さんから電話かかってくるようになったんですよ。「〇〇さんが本当に自分たちのことをすごい思いやって(仕事を)やってくれて感謝してます」みたいな電話が、人からかかってくるようになって。
その時に、自分の成長以上にそいつの成長がうれしくて。最近は、けっこうそれがモチベーションという感じ。自分の中の感動のスイッチですね。
森川:すばらしい。なるほど。わかりました。ありがとうございます。じゃあちょっと時間がなくなってきたので、じゃあそちら側から3人、手短かに。
質問者4:自分ごと化と(一方的な)価値の押しつけというか、まぁ2軸あると思うんですけど。どれだけ時代が、「マスは自分ごと化」という方向性にいくとしても、現にプロとしてかなりバンドをうまくやっている人は、けっこう矛盾や葛藤を抱えると思うんですよ。そういうところを踏まえた上で、これからのプロフェッショナルの定義はどうなっていくんだろうなというところは……。
森川:誰かじゃあ、時間がないので1人だけに。すいません、1人に絞っていただいて。どなた?
質問者4:スポーツとアートっていろいろ価値が異なると思うので、為末さんと……。
為末:はい。わかりました。
森川:じゃあ、ちょっと考えて。じゃあ次。
質問者 5:〇〇と申します。前田さんに質問なんですけど、24時間テレビとディズニー作品とアイスバケツチャレンジってあるじゃないですか。あれ、僕の中で感動の種類がそれぞれ違うと思うんですけど、他人の物語と自分の物語のそのフレームワーク的にはどういう位置づけになるのか、みたいなのがちょっと気になります。
前田:24時間とアイスとなんでしたっけ?
質問者5:アイスバケツチャレンジとディズニー作品と24時間テレビです。
森川:じゃあ、あともう1人だけ。
遠山:いや、もう無理でしょ(笑)。
福武:1分だよ。
森川:無理かな。無理? じゃあこれぐらいにしておきましょう。最初の質問はお2人。為末さん。
為末:なんでしたっけ? あ、プロですね。二極化でいいんじゃないかなという気がします。その代わり、プロはもう1人ぐらいしか許されないぐらいになっていくんじゃないかと思うので、だから『アメリカン・アイドル』の方向か、たった1人を選ぶ戦いか、AKBかという世界になっていくんじゃないかと思います。
森川:じゃあ、2問目、前田さん。
前田:ざっくり分けると、最初の2つがたぶん他者の物語消費パターンですね。最後のアイスバケツチャレンジは自分の物語型だと思ってて。
24時間のところだけちょっと難しいんですけど。マラソンって、最後になんか感動する雰囲気を作り出すじゃないですか。でも、あれって「なんで無理やり100キロ走らせてんの?」って話だと思ってて。元も子もないことを言ったんですけど、「走らなきゃいいじゃん。じゃあ」という。「100キロ走ることで本当に誰かが勇気をもらうんだっけ?」というのがあると思うんです。
それはある種、作り出された他者の物語を、一方的にぶつけられているのとけっこう近いんですよね。別にそこに自分が介在してるわけじゃないので。他者の物語を消費するなかでも、かなり自分を介在させる余地を残してるという意味では、そっち(自分の物語型)に寄ってるんですけど、大枠で分けると他者の物語型かなと思ってて。
そういう意味では、もっと自分が介在できる、感動できるコンテンツが増えていくと、かなりそっちに持っていかれるだろうなという感じがすごいしています。
ディズニーは、もう完全にクオリティを高めていって、その作品のクオリティでもって人を感動させるものなので、他者の物語消費パターンですし。
アイスバケツチャレンジは、誰かの(氷水を)かぶっている姿を見るというよりも、自分自身もその輪の中に入っていって感動を共有するものなので、自分の物語型かなと思いますね。
森川:ありがとうございます。ちょうど時間も来たので終わりたいと思います。じゃあパネリストのみなさんに拍手をお願いします。みなさんお疲れ様でした。
(会場拍手)
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