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「一人多職」で生き抜け!今、ビジネスパーソンが知るべき時事キーワード 第3回(全7記事)

懸念点は「副業をやりすぎてクビ」 多職が当たり前になった社会で必要とされる能力

三菱地所株式会社が主催する「『一人多職』で生き抜け!今、ビジネスパーソンが知るべき時事キーワード」が2017年10月17日に開かれました。同イベントのパネルディスカッションでは、博報堂の川下和彦氏、チェンジウェーブ代表の佐々木裕子氏、チェンジウェーブのエグゼクティブパートナー・小安美和氏が登壇。複業を前提とする「多職」の重要性、現代の働き方について語りました。

本業がある場合、どう多職にシフトするのか

小安美和氏(以下、小安):さっきお客様からおうかがいしたんですけれども、ビジネスパーソンとして本業がある場合、どう多職にシフトしていくのか?

実際にやってみてどんなことが壁で、どんなふうに乗り越えてこられたか。あと、これから多職になっていくという方に対してなにかアドバイスがあればお願いします。

川下和彦氏(以下、川下):でも、どうなんだろう? きっと壁ってさまざまですよね。だからどんな壁がある……でも、これは職業にかぎらず、ビジネスもそうかなと思うんですけど、それこそリーンスタートアップじゃないですけど、まず小さくやっていくみたいのってすごく大事な気がしていて。

だから小さく試しながら修正していくことでどんどんよくしていくことができますよね。コツコツ、そこに尽きるかなという気はしましたけどね。

さっきの佐々木さんの話もそうだと思うんですけど、みんな集まれるタイミングがそんなにないとかってなると、遅々として進むとは思うんですけど……。

佐々木裕子氏(以下、佐々木):(笑)。

川下:ねえ? 普通にがーってやるよりは当然ゆっくりいくと思うんですけど。

佐々木:ぜんぜん遅いですよね。

やりたい仕事の円を大きくする

川下:でも、小さくてもコツコツとやっていくと必ずその結果が出てくるというか、だとは思うので。

それで、そこがうまくいくなって踏んだときに、さっきのポートフォリオに書いたんですけど、円の大きさも変えたらいいかなと思っていて。

「この仕事はやりたい仕事で儲かる仕事だから」ってなったらググっと円を大きくして、「これやりたいんだけど、儲からない仕事だな。でも絶対やりたいから」っていったら、それをちょっと小さくして持っておくとか。

なんかそういうことだと思うので、その円をどんどん大きくしていったらいいのかなっていう。

たぶんイメージでいうと、あれが動画になるとしたら、1職しかまずやっていないとしたときに、2職目をやろうってなったら、まずは小さい点ができるんでしょうね。

これが小さいままで、このまま大きくならないなっていうことを受け入れるのも、もしかしたらあるかもしれないし。そういうイメージですね。

小安:一般の会社さんで本当に同じようなことをしようと思ったときに、なんかもっともっと壁があるように思うので、ちょっとそういう「実はやってみたいんだけど壁があって困ってる」みたいなことがあれば、ぜひ、会場の方からおうかがいできればなと思います。

「やりたい!」をやらないまま死にたくない

井上成氏(以下、井上):そもそもあれですよね。今、いわゆる時間管理を結局1社がやらないといけないから、もう1個持ったときに、それやりすぎると36協定(注:時間外・休日労働に関する協定届)とかに引っかかるからとかって、結局メインの会社でいわゆるタイムマネジメントされちゃうから、副業をしようと思っても、そもそも認められていないと思いますけどね。

多職がそもそも制度的にけっこうきついですよね。そこは制度の改善がないとなかなかできないですよね。

川下:そうですよね。あとは、僕の場合はもう完全に「やりたい!」をやらないまま死にたくないと思って、土日の夜とか。

それこそ、そういう時と子どもが小さい時と重なったので。それもあると思うんですよ。3年かかった言い訳ですけど。「なにか書きたいな。でも、昼子どもと遊んでいるから、夜寝る」みたいな。「今日も遅かったです。進みませんでした」みたいのありましたけど(笑)。

だからやっぱり自分時間でテストするみたいなのは必要ですよね。会社にそこの部分まで空けろってやっぱりなかなか言えないかなと思って。

井上:結局サラリーは博報堂1社からもらっているから、社内の中での多職ということになるんでしたっけ? 基本は。

川下:そういう意味でいうと、僕はそうなんです。

「副職したいんです」と社員から言われたら…

川下:だから僕は複属しているので、今、兼務出向というかたちになっているんですけど、だからたぶん正確に言えてないかもしれないですけど、半分半分なんですね。

小安:著作、著述の部分がひとつ、会社以外の時間にやらなきゃいけないということですよね。

川下:そうです、そうです。だから要するにうちの会社的に言うと、僕は100パーセント・100パーセント。100パーセントというか、もう50パーセント・50パーセントで100パーセントになっているという。

これはでも、あんまり声大きく言うとあれですけど、だいたい複属とかなると、50パーセント・50パーセントにならないので、もっと多くなったりしますけど。

小安:例えば佐々木さんが経営者として、「副職したいんです」とか「別のことやりたいんです」と言われたときに、どんなふうにそれを受け取って、どんなふうにマネージしているかというのをちょっとお聞かせいただければ。

佐々木:うちはもう実証実験みたいな会社なので、どういう副職をやってるのかということは明確にしてもらって、その収入を個人に入れるのか、それも会社としてやりたいのかを聞いて、それで会社のお給料を決めて。

「だいたい何パーセントぐらいだよね」と、「100パーセントのうち、会社でやるのは何パーセントぐらいだよね」というのを明確にした上で、「じゃあそのキャパでやれるプロジェクトだとこういう感じかな」というのをすり合わせて、プロジェクトのアサインをするということをやる感じです。

だから基本的にはデザインをしてもらっていて。難しそうになったら、またすり合わせという感じで、1回決めたらそれでずっとということではなくて。

やり始めてみると「やっぱり時間足りませんでした」とかもうちょっと、「やっぱりこれは個人に入れることにしたいです」とか気持ちが変わってくることもあるので、それは毎月ぐらいのタイミングでお互いに話するみたいなことをやっていますね。

なので、週2社員とかもいますし、「副業でこういうことやりたいです」って事業を立ち上げてる人もいますし。でも、それはみんな普通なので、そういうふうにやっています。

小安:そもそもが多様な働き方を認めている、かなり多様な集団なので成り立つということが言えるのかなと思いますよね。

佐々木:そうですね。

副業をしている参加者の懸念点

小安:(参加者に対して)一般の会社さんの中で、これからどうやってそこを広げていくのかというところは課題かと思いますが、いかがでしょうか?

質問者1:私は今、企業に勤務をしていて、副業で別の仕事をしています。私が勤めている会社は副業の申請制度がありまして、自分の上司の承認を得て、かつ人事部の承認を得ると、副業が可能ということになっています。

ただ、この制度自体があることを、おそらく社員のほとんどは知らないのではないかなと思っています。

2年ぐらい前に制度として立ち上がったんですけれども、それ以前から私は、たぶん5年ぐらい前から、「法律的には副業って認められていると思うんですけれども、なぜうちの会社はそれを認めていないんですか?」みたいなことを言ったんです。

人事からしたら問題児だとかなり思われてるかもしれないですけど、2、3度問い合わせをしていて、やっとこういう変化の時代だったので会社として認めますというふうになった時に申請をあげました。

正直、私ももっと堂々としてればいいと思うんですけれども、自分が副業してるということをあまり会社の人には伝えていません。

活動は土日だけですので、もともと勤めている企業が月~金ですので、会社の人には自分がやっていることを正直に話したりはできないというのが1つと。

あと先ほど何度もお話に出てたんですけれども、本業で成果を出す、ここができてこそ次に行けるというのがあるんですけれども、いま私は営業部門にいて、なかなか今年は成績が出せていないので、かつ、なおさら上司は私のことをどう思っているのかなという余計な心配をしながら今副業をしているところです。

自分自身へのマネジメント力が必要

佐々木:まず、私、自分自身のマネージをするってすごく大事な気がしてまして。それは自分自身がいくつかやってるときもそうだし、うちの副業している社員の人たちを見ててもそうだと思うんですけど、誰も「何時から何時までなにをやってください」みたいなことを言わないんですよね。

「この結果を出すのに自分は今どれぐらいの時間かかるのか」ということも自分で見積もらなきゃいけないし、じゃあそれを3ヶ月の単位とか半年の単位で主軸の結果をどういうふうに出していくのか?

それをやりながら、副業でいくつかやるのだとしたら、そのプロジェクトの時間軸はどうするのかみたいのって、もう本人しかたぶん決められないし、マネージできないんですよね。

そうなったときにけっこう冷静に、あまり見積もりを甘くせずに、きちっと冷静に優先順位をつけたり、「それはちょっとできません」ということを言ったりとかするガバナンスというか、自分自身へのマネジメント力がけっこういるなという気がしてて。

それが副業になった瞬間にそのマネージ力の筋トレがいるなというのは、私よく思っています。新しい会社を立ち上げるというケースもそうですね。

川下:そうですよね。だから今から、副業、副業って国も言い始めたりとか、多職な人が増えてくる一方で、そのリテラシーじゃないですけど、自分マネジメント力みたいなものも持っておかないと、たぶん各所で事故が起きるみたいなのはありますよね。

佐々木:各所で事故が起きますよね。

川下:だから副業やりすぎてクビみたいな事件も出てくる。

佐々木:クビとか、あとなぜか過労になってしまうとか。

川下:ありますよね。ぜんぜんあると思いますね。

マネージする側もいかにコミュニケーションをとるか

川下:だから、その過労になっている理由は自分が副業のほうというか、第2職を膨らませすぎたからみたいのもあるかもしれないですよね。そういうのは起きますよね。

小安:そうですよね。副業は多職をする本人自身のマネジメントというのが必要だということと、あとそれをマネージする側、管理側もどういうふうにマネージしていくのかとか、どうコミュニケーションを取るのかというところはけっこうこれから求められていくんじゃないかなという気がします。

川下:そうですよね。

佐々木:でもたぶんね、わからないじゃないですか。その人のもう片方の業務がどんな感じになっていくかってすごくわからないから、たぶんこちら側がマネージするのはどんどん難しくなるんだと思うんですよね。

小安:それでも個人にとって多職がいいよって話は川下さんからあったと思うんですけれども、経営側、企業側としてもそのことを推進することはいいんじゃないかなと思いますか?

佐々木:思いますね。

小安:どんなポイントで?

佐々木:だってぜんぜん知らないネットワークとか、ぜんぜん知らない情報が会社の中に入ってくるので、すごくおもしろい変化を生みうるじゃないですか。人脈もそうだし視点もそうだと思うんですよね。

それって普通にしてると日常には来ない、まして取りに行かなきゃいけないんだけど、自然にして、自然にそこにあるということ自体が、とくにこれから新しいものを生み出さなきゃいけないとか、けっこう人脈をいろいろ使っていかないとものが生まれないという時代になってくると、財産ではありますよね。

うちもいろんなこと、新しいことやるんですけど、やっぱりその人が副業で持ってる人脈にけっこう助けられて、プラットフォームができたり、いろんなゲストを呼べたりというのがすごくあるので。

そういう意味でいうと、いいことはたくさんあるなと。ただ、その方のマネージ力と、こちら側のコミュニケーションの頻度をちゃんと増やさないとお互いWin-Winにならないので、そこのメンテが必要かなと。

小安:そうですね。川下さんいかがでしょう?

予防医学者・石川善樹氏の知見

川下:まさにそこだと思うんですけど、やっぱり知識・技術・ネットワークというのが、極論すると2個やってたら2倍になるわけだし、3個やったら3倍、単純にそういう計算にならないと思うんですけど、まあ比率が違うと。

だけど、そういう可能性はあるわけじゃないですか。だからそこの、その人がなにかできることも増えたりするし、なにか困ってるときにその人のネットワークで第1業、第2業のものを還元できたりするのもあるし。

あとは、佐々木さんおっしゃられていたみたいな視点ですよね。やっぱり硬直化しちゃうので。同じタイプの人が同じことを考えていると、イノベーションが生まれにくかったりするから。

なにか新しいことやろうとすると、外で見てきた視点、見聞録を持ってくることができたりというのがあるかなと。

1個おもしろいのが、正しく言ってるどうかわからないですけど、予防医学者の石川善樹さんという方が、けっこうメディアとかにも出られているんですけど。

彼が1個教えてくれたのが、人間は頭の中に基本的にギブ(give)するDNAを彫り込まれていると。ギブというのは「なにかしてあげたい」と思うと。

なんでかというと、1人だったらギブできないんですよね。だから誰かに出会いに行くんですって。だからギブの本能が移動を生むらしいんですよ。

移動を生んだらなにが起きるかというと、自分と違う視点を持ってる人と出会うと。要するに、1つの場所にこもってると視点が同じ人としか会わなくなっちゃうんだけど、他所に行くと別の視点の人に会えて、それがイノベーションのきっかけになるので。

なんで人間はイノベーションを起こさないといけないかというと、どんどん進化していかないと時代の変化に適用しない。恐竜と一緒ですよね。だから進化のためのイノベーションを起こすというのがあって、そのために自分と違う人たちに会いに行くみたいのがあるらしい。

ちょっとえらい原始的な話ですけど、そういう要素は現業やっててすごいあるなと思っています。

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