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経営者対談(全4記事)

就活では「どんな決断経験をしたかが市場価値になる」 サイバーエージェント曽山氏が学生たちにアドバイス

「大学生のマッチングを手助けしたい」という思いから開催されたイベント「東京リクルートフェスティバル」の中で、企業の取締役らが登壇し、「日本の就活に物申す」というテーマでディスカッションしました。登壇したのはサイバーエージェント曽山哲人氏、ニューズピックス坂本大典氏、エイベックス加藤信介氏。日本の就活の問題点や、就活生たちへの具体的なアドバイスを3氏が行いました。

気になる業界の「市場予測」を調べてみよう

曽山哲人氏(以下、曽山):お二人、逆になにか聞いてみたいことはありますか?

坂本大典氏(以下、坂本):曽山さんはどうだったか教えてほしいですね(笑)。

曽山:僕ですか。ありがとうございます。僕自身の就活は1999年なので、たくさん受けたパターンなんですよね。百貨店の伊勢丹に入社したんですけど、銀行や広告代理店、いろいろと受けました。そのなかで、僕はファッションで人を動かすってめっちゃいいなと思って伊勢丹に入社することにしました。

なんですけど、1個わかったのは、僕、就職活動でぜひみんなに見てほしいなと思ってる点があって。それは受けたい産業、受けたい会社の市場の将来は伸びそうかどうかという「市場成長性」は絶対チェックしたほうがいいですよ。

例えば百貨店業界って僕が入った時って、全部で10兆円の売上があった。でも今は5兆円台になっちゃったので、下がってきてるわけですよね。もちろん、その中で生き残る百貨店があるわけですが。

ただ、伸びる市場かどうかはぜひチェックしたほうがいいです。例えばグーグルとかヤフーでも、例えば化粧品や自動車に興味があるっていったら、単語のあとにスペースを空けて「市場予測」って書いて検索するとけっこうレポートが出てきます。それをチェックすると、みなさんのプラスになるんじゃないかと思います。

決断から学んだことがあなたの価値

坂本:なるほど。あと最近の就活で思うことはありますか?

曽山:最近の就活で思うところでいうと、実際インターン経験者がめちゃめちゃ増えていて、普通になっているので、やっぱり「インターンから何を学んだか」というのがすごく大事。

さっきの加藤さんのお話でいうと、「パッション」「情熱」というキーワードだったり、坂本さんのリアルな経営の近くでインターンをしたというお話がありましたけど、さらにもう1個でいうと、決断経験というのが僕はすごく大事だと思っています。人材の成長と育成においては、みなさんがどんな決断をしたかが市場価値になるんですよ。

例えば大学でも決断経験って得られます。「どのサークルに入った、どのバイトを始めた、バイトでクレームをこう処理した」とか。みなさんその場で判断したり決断したりするじゃないですか。それがみなさんの財産なんです。ほかの人はやったことがないから。

なので、それをぜひインターンに行ったら、インターンに行ったということで一瞬「いいな」とか思われるかもしれないけど、そのインターンで「こんな決断しました」とか。例えばチームのグループワークがうまくいかないとき、「〇〇をしたらうまくいきました」とかね。

そういったことでもいいので、決断経験はぜひ紙に書き出すといいですよ。自分の決断経験を出して、それから何を学んだかは、すごく価値になると思います。

「NewsPicksをゼロから立ち上げました」「え、どんな大変なことがあったの?」とかめちゃめちゃ聞きたいし、エイベックス松浦社長の隣で仕事するって言って。

社長の影響力を小さくし、社員たちの活躍度合いを上げる

曽山:エイベックスの松浦勝人社長について、ちょっと伺ってもいいですか?

加藤信介氏(以下、加藤):はい。

曽山:松浦社長ってどんな人なんですか?

加藤:ええ、ちょっと ……。

曽山:松浦社長って聞いたことある? エイベックスの松浦社長って聞いたことある人? 

(会場挙手)

あ、けっこういるね。

加藤:創業社長ですし、ご存知の方も多いと思いますが、あんまりコミュニケーションが好きなタイプではないし、多くを語る方ではないですね。

曽山:そう、社長なのに(笑)。

加藤:なのでどんどん前に行くタイプではないんですけど、ただ、「今日絶対話聞いてないだろうな」と思うような時でもめちゃくちゃ本質的な一言をパって言ってくるんですよね。そういうところでいうと、マーケターであり、ある意味天才です。

ただ、多くを語らないので、我々はきちんとずれなく理解するのは大変ですが(笑)

曽山:ちなみにユーザベースの創業社長はどんな方なんですか?

坂本:ユーザベースの社長ですね。こういった言い方が正しいのかわからないんですが、僕たちは上場企業の中で、社長の影響力が一番会社を目指してまして。

曽山:社長の影響力を小さくする?

坂本:はい。象徴的な例として、最近、うちの会社はチーム経営を執っていて社長が2人いるんですけど、新野という片方の社長が体調不良のため長期療養に入るって発表したんですね。

もともと身体が弱い方ではあったんですけど最近は忙しかったので、ちゃんと治そうということで療養に入りました。そのことでプレスを出したんですけど、株価に大きな影響がなかったですね。

曽山:おお、すごい。普通は社長が変わるってなると、マイナスの影響が大きくて株価が下がるはずなんだけど。

坂本:それこそソフトバンクで孫さんが倒れたら絶対株価下がりますよね(笑)。

曽山:確かに。

坂本:うちはぜんぜん下がらなかったんですよね。経営陣がチームでやっているということ、そして一人ひとりのメンバーにちゃんと権限を渡して、なおかつメンバーたちが個で動けるようにしているのはすごく大事にしているところですね。

曽山:だから、やっぱりそういう意味でも社長っていっても企業ごとにぜんぜん違うんですよね。

坂本:そうですね。

仕事には適材適所がある

曽山:私たちサイバーエージェントの社長で、藤田晋って聞いたことあるかな? 彼の一番の特徴は何かといったら、声が小さいという。

坂本・加藤:(笑)。

曽山:本当に声が小さい。8人で会議やってても聞こえないときがあるので。でもその分だけよく考えていて、すごく才能があるんですよね。

これ社会人も同様なんですよ。活躍する人に、一定のパターンがあるわけじゃない。どっちかというと、みんなが持ってる自分の才能を活かすほうが重要。なので、みんなの経験をもっと伸ばすとか、自分の持っている価値感を大事にする、強みを伸ばす、そういう人のほうがよっぽど企業側はほしいんですよ。

似たような人ほしくないですもんね。実際ね。

坂本:本当そうですよね。

曽山:どうですか。似たような学生とか。

加藤:いやいや、それぞれ違う人を採用したいですね。いや、まさに今おっしゃられたこととまったく僕も同じ意見ですね。

坂本:僕自身、学生時代、人の能力は全部比較できるんじゃないかと思っていました。だから就職ランキングもあるし、一番優秀な人はこういう企業に就職するというのが決まっている。ただ、社会人になったらまったくないなと気づきました。

やっぱり営業がめっちゃできる人はいるし、営業できないけどめちゃくちゃ管理がしっかりできる人もいて、それぞれが持っている能力と個性って違うなと。そういうのを自分で理解して、長所を極めるのが一番大事だなと思っていますね。

過去のどんな経験でも書き出し、「決断経験」を掘り下げてみる

曽山:ありがとうございます。ということで、今日は「就活に物申す」というテーマでスケッチブックに一言一人ずつ書いてほしいとご依頼をいただいているので、今書こうと思います。お2人に書いていただければと思います。

僕も書きますが、お2人に書いていただく間、何か質問があれば曽山が答えますけど、訊きたいことはありますか?

質問者1:お話ありがとうございました。先ほど決断経験を掘り下げることが大事だとおっしゃってたんですけど、僕は自分の人生を振り返ったときに、あまり大きいというか、水準が高いなと自分で思える決断経験がなかったんですね。

今からでも3月までにそういう経験をしておくべきなのか、それとも決断経験をもっと掘り下げて腑に落ちる切り口を考えるのか、どちらのほうがいいと思いますか?

曽山:ありがとうございます。決断経験は2つあります。1つは、まず自分の決断を書き出してそこから学ぶという「掘り下げる」もの。本当におすすめなので、子どもの頃からの決断を箇条書きで書いてほしいんですよ。

例えば僕だと、中学で卓球サークルに入って、高校に入って初めてできた彼女に「部活は何をしていたの?」って言われて「卓球」って答えたらすぐ振られたんですよね。もうそれが僕の中の決断経験としては、「マジ言わなきゃよかった」という、そういう学習があるわけ。

そういったものを書き出すと、なんか自分の個性が出てくるんですよ、決断って。なのでそれをまずは深掘りするのが1つ大事なことですね。

それは絶対ね、しょぼくてもいいんですよ。居酒屋でバイトしてた、テニスサークルに入っていたという自分の経験をたまに卑下する人がいるんだけど、それは絶対もったいない。いや、そのバイトやサークルでやったことあるでしょ。それを言えるか言えないかが試されてるんですよ、就活って。

なので、まずそれを書き出して、意味付けがあったら言ってほしいなというのと、あとは学生のうちにせっかく時間があるから、「よし、こんなことやってやろう」って決断をしたほうが絶対にいいに決まってるから、両方されてみるのがおすすめですね。ありがとうございました。質問をいただいてね。

経営が危うい企業は逆に狙い目

曽山:じゃあそんな感じで、お2人に立って説明していただければと思います。坂本さんからいきましょう。

加藤:先はしんどいな。

(一同笑)

曽山:はい、どうぞ。

坂本:これですね、NewsPicksの取締役という立場を離れて、個人としての意見ですよ。「やばいと言われている企業を受ける」のが良いと思います。

僕だったら「やばい」と思ったときこそおいしいと思うんですよね。僕がユーザベースに入ってやっぱり良かったのは、売上ゼロで、NewsPicksもない時点だったことですかね。今、ユーザベースを受けていただいている学生さんはいますけど、今、僕が学生だったらユーザベースに入らない。

なぜなら盛り上がっている会社に、今のタイミングで入社するのはおいしくないと思うから。僕はやっぱり、やばいところとか誰も行かなそうなところこそ一番チャンスがあると思っているので、そういう企業に入る。

なので、僕個人の意見としては、ユーザベース、NewsPicksの採用は一般的なオープン採用をあんまりやりたくないと思っています。

ただ、やばい環境でレアな経験をできる、例えばさっき言った役員直下で一緒にがっつり立ち上げられるぐらいのチャンスがあるなら、掴みにいってほしいなと思いますね。

みんなが行きたがってるから行くというのは、逆に考えると、そういう人はもういっぱいいるので差別化にはならない。ただ逆に、例えばシャープのやばかった頃の事業再生に携われたら、めちゃくちゃいい経験になると思うんですよね。

やっぱりそういう、誰も行きたがらないような環境に飛び込んでほしいなと思っています。

加藤:(笑)。

曽山:拍手。ありがとうございます。

(会場拍手)

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