2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中研之輔氏(以下、田中):先ほど準備する学生たちと話をしてて印象的だったのが、例えばある歌手が、一時すごくいい曲を出して、みんなが買って売れていく。そうすると、その人たちもキャリアを積み重ねていくので、ファンと一緒に年齢を積み重ねていく。例えばディナーショーをやって、そこに来てもらう。あるいはコンサートをやる。ファンの世代も上がって、キャリアを一緒に過ごす人たちがいる。そんななかで、小室さんは違う。
やっぱりTM NETWORKの時の、あの世代を共有したこと。僕なんかもずっと耳に馴染んでいる。僕らより10個上の人たちがメインで熱狂されていて、一緒に小室さんと時間と空間を共有していく。けれど、そのままファンと一緒に行かずにピボットを効かせて、実は若い人たちとコラボをどんどん積極的にやられている。ある種の内から湧き出るモチベーションのようなものは、「まだ俺はこの日本の文化を絶対つくっていくぞ」みたいな野心はあるんですか?
小室哲哉氏(以下、小室):うーん……ないです。
(会場笑)
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お兄ちゃん、おじさんだったり。僕はたまたますごい早熟で、先ほどの連鎖じゃないですけど、そういう人たちが周りに言ってくれて、教えてくれていた。だから広まって知ってもらったんです。
「コンピューターミュージックの始まりは誰々なんだよ」ということから、「へえ、誰々って誰?」「うーん、小室哲哉かもね」みたいに。それで検索してくれたりする。そして「あ、おもしろい」って思われたりする。それから、オファーは相手から来ることがほとんどです。100パーセントに近いと思います。なので、僕が作ってる文化なんてないんですよ、今のところ。
田中:いやいや。
小室:その人たちが作ってくれている。
田中:でも、一緒にこう……。
小室:一緒に。うん、そうですね。
田中:ある種、小室さん自身のフレキシビリティといいますか、オファーに対して、「この人とはこういうふうに組んでくといいよね」というところのセンスといいますか、卓越した……。
小室:なるべく引くようにしています。引くというのは、要するにこっちから押さない。自分が受け皿になる感じですかね。一番いい例としては、今年の頭にYouTuberのHIKAKIN & SEIKINくんとコラボしたんです。
彼らはYouTubeのテーマというのを作っていて、TeddyLoidくんっていう人がつくったものを小室さんに頼んで、という流れで。やってみて、結果すごく満足してもらって、よかったんですけれども。打ち合わせした時に、「どんなふうにしたいの?」って聞いた時に、「Aviciiみたいにお願いします」って言われて。
(会場笑)
「Aviciiか」みたいな。
田中:(笑)。
小室:「あとは?」と聞くと、「Zeddみたいな感じでお願いしたい」と言うんです。それでこっちは「Zeddね」という感じでした。「あの曲だよね」と言ったら、HIKAKINくんとSEIKINくんで「あれはZeddさんだよ」と言ってて、「『Zedd“さん”』って言うんだ」と思って(笑)。僕はどうすればいいのかなと思ったんですよ。「僕の色はいらないのかな?」みたいな(笑)。
(会場笑)
そこでキレたり怒ったりしたて、「なんだよ」って思ったらダメなんですよ。思わないようにするとかじゃくて。本当に僕も「Aviciiいいよね」と本当に思わないと、お話にならないんです。「じゃあ、頼めばいいじゃん。Aviciiに」というのは、ありえないんです。そのかたちが。だから「じゃあ、がんばってみる」で、Avicii(の音楽)を聞きました。
(会場笑)
聞いたけど、そんなに深く聞かなかった。「このキックの音どうしてるのかな?」とか、どんな音なのかをけっこう聞いてそういう感じにはしたけど、どうしても僕の色が出ちゃうんです。ああいうふうにはならないし、できないんです。
あの感じの軽い、気持ちのいい感じにはできなかった。それが僕の持ってるものなんです。そういうふうにやっていくしかないんです。それも、金曜日が締め切りで、彼らがお仕事でラスベガスかなんかに行ってたんです。YouTuberの集いみたいなものがあって。そこに送って聞いてもらったんです。そしたらダメで。
田中:え?
小室:「もうちょっとZeddさんみたいな感じが」と。
(会場笑)
小室:「今度はZeddさんなのか」という感じで、「うーん、そっか」となった。それで直したら、その時はもうアーティストの名前は出てこなくて、「小室さんっぽくて最高です」と言ってもらったんですけど。
結局、自分を1回消しても、自分は結局出てくるんですよ。自分が消えたつもりでも、みんなのなかでは自分は消えないんです。決して人にはなれないので、どんなに影に潜んでも、我を出さなくても、エゴを出さなくても、自分は消せない。自分の個性が絶対に出るので。
もう言いなりになったほうがいいぐらい。「わかりました」っていうか、「全部言われるようにやります」ということになっても、絶対に個性は出てくると思うんで。
田中:そのオファーをいただいた方に、グッと入り込むといいますか、合わせていく。そのために消して、結果、またさらに個性が出てくる。
小室:とにかくアジャスト、アジャスト、アジャスト、アジャストですよ。どれだけ寄せられるか。相手の言うことをどれだけ聞けるか。オーダーに、オファーに、リクエストに応えられるか。応えると、「いいですね」という時に、「誰々みたいでいいよね」とは言われないです。
「あ、小室さんっぽい」「良かったね」って。「あれ、言ってたのと違うじゃん」って(笑)。でも、結果それでOKになってくれて良かった。これも消去法じゃないですけど、消すっていうのも大事ですよね。
田中:この先にまた見えてくる。
小室:決してディスアポイントメントでいう消すではないんです。失望するわけじゃないので。
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