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SEKAI NO OWARIのプロデューサーと進撃の巨人の編集のプロデュース講座!(全6記事)

『進撃の巨人』担当編集が語る、漫画づくりの出発点「“漫画が好きだから”だけでは戦えない」

多種多様なクリエイターが登壇し、メソッドや哲学を学ぶ学校「QREATOR SCHOOL」で、SEKAI NO OWARIのプロデューサーである宍戸亮太氏と、漫画『進撃の巨人』の担当編集である川窪慎太郎氏によるプロデュース講座が行われました。作品やサービスを多くの人に届けるにはどうすればいいのか? また、ヒットの種をどうやって見つけたのか? 大ヒット作を手がける2人がアーティストや作家との運命的な出会いから現在に至るまでを赤裸々に語りました。

漫画づくりもプロモーションもコンセプト命

佐藤詳悟氏(以下、佐藤):他の方、どうぞ。

質問者3:先ほどのお話で、ファンの参加型にして楽しんでもらいながら隣の人に広げていくという「マス」への広げ方のお話の中がありました。

とはいえ「参加する人がなにを楽しいと思うか」「自分が考える上でも、これを楽しいと思うのかな」「ここまで難しくしちゃうと、参加判断が上がるかな」など、そのキャンペーンの作り方はすごく難しいなと思います。そうした口コミを生み出したり、参加型で発信をしてもらうというときに、気をつけていることなど、大切にしていることはありますか?

川窪慎太郎氏(以下、川窪):やっぱりコンセプトをまず決めるということだとは思うんですよね。もう、仮に決めるしかないというか、そこを外さないように決めるというのは、なかなか難しいと思いますが。

外しちゃいけないのは、コンセプトや目標から外れることだと思うので、まずそれをしっかり決めるということが大事です。

僕は「目標からの逆算」かなと思っていますね。ちょっとプロモーションとは違うかもしれませんが、漫画を作るときも、「この漫画を読んで、人にどう思ってもらいたいのか」ということが出発点です。

「おもしろい」とよく僕らは使いますが、その「おもしろい」は無数に存在しています。「笑える物語」もおもしろいし、「泣ける物語」もおもしろいし、「辛い物語」もおもしろいし、「勇気が出る物語」もおもしろい。先ほどの「漫画を再定義する」じゃありませんが「言葉を再定義」していかないと。

「おもしろいってなにか?」ということを分解していったときに、自分が目指すものがもし、「明日も生きよう」と「明日も笑顔で生きよう」と思うことが、おもしろいということだと目指して作るのであれば、そこから外れない物語やキャラクターを作っていかなければいけません。

プロモーションもそれに近いところがあるというか、このプロモーションをして「なにを最終ゴールとしたいのか」というのが、大事です。ただ「おもしろいプロモーションをしたいね」「話題になるプロモーションしたいね」というのでは、だいたい失敗します。

クリエイターの「長所」を伸ばす

川窪:では、「どういう話題になりたいのか」「どういうおもしろがり方をしてほしいのか」といったことは、受け取り手が決めるのではなくて、発信する側が決めるというか、そのゴールを決めるということだと思うのですが。

あとはそこに向かっていくだけで……まぁ、スタート地点が間違っていたら、大失敗します。それは仕方ないというように考えてやっています。

宍戸亮太氏(以下、宍戸):僕で言うと、マネージャーとして大事にしていることの1つに「長所を伸ばす」があります。もしかしたら、その話の流れとつながらないかも知れませんが……彼らの魅力や彼らのいいところ、彼らの好きになってもらえる部分を最大限に伸ばす。

僕が感じていて「すごくここがいいな」と思うモノって……例えば、「嫌いなモノ」を発信するより「好きなモノ」を見せて「好きな魅力」を伝えることで、それが自然と同じように共感してくれたり、同じように感じてくれたりする人に伝わっていき、そこから先も同じことが起きていく。

「長所を伸ばす」と「どこにいいところがあるんだろう?」というのは、判断の基準としては一致しているところではありますね。

質問者3:ありがとうございました。

売れるために意識すべきことは?

佐藤:ありがとうございます。あと、ひとつくらい、最後、もしいらっしゃれば。あっ……選んでもらってもいいですか?

宍戸:いや。

川窪:ぜんぜん、ここのみなさん。

佐藤:いっちゃいましょ。

川窪:いっちゃいますが。

佐藤:今、手をあげていただいた3人の方で、それぞれ最後にします。……3人、大丈夫です。

川窪:じゃ、どうぞ。

質問者4:世の中には、漫画家や音楽家で、売れたいと思って、いろいろ描いたり、活動したりしている人がたくさんいると思います。

その中で、なかなか売れなかったり、うまくいかないなどと悩んでいる人も、たくさんいると思うのですが。そういった人たちに対して、実際に売れるためにどんなことを意識すればいいのか、教えてください。

宍戸:僕は編集者ではありませんが、マネージャー的なプロデューサーとしての意見では、先ほどの話にもありましたが「可能性を潰さない」ということですね。

受け取ったモノを、最大限にどう伝えるかという役割でしか、僕は存在できないと思っているので。本人から出てきたモノを、どうやればいろんな人に届けられるかということしか、僕にできることはないなと思っています。

僕、SEKAI NO OWARIという子たちしかマネジメントしたことがないのですが。例えば、「このアイドルの子たちをやってください」と言われても、僕はたぶんできないし、自分が魅力を感じない人では、なかなかそれができないと思います。

たまたま僕は好きな音楽を作る子たちに関われて、今それをやっている。彼らが作った好きな、いいなと思う部分を、人に伝えることを、自分ができる役割で繰り返しているというように。

「漫画が好きだから」だけでは戦えない

川窪:漫画家さんでいうと、「実現したいことはなんなのか」「実現したい自分はなんなのか」ということを考えることだと思っています。

新人の漫画家さんによく「なんで漫画家になりたいの?」というと、「漫画が好きだから」「漫画家に昔からなりたかったんで」といった答えが返ってくるのですが、それだとかなり厳しいですね。

漫画を描いて「どんな自分になりたいのか」、漫画を描くことが「どういった目的のだめの手段となっているのか」ということを考えないと、漫画はうまくならないというか、売れないのです。

諫山さんでいえば、日々付き合っていて思うのは、彼は「人に後ろ指をさされる人生は、絶対送りたくない」と思っているように僕には見えています。「かっこいい人間になりたい」というよりは、「かっこ悪い人間になりたくない」といった気持ちが、彼の中にはすごく強い。それを実現するために、漫画を描いているようなところがあります。

それは、なんでもいいのいいんですよ。なんでもいいのだけど、そういったものが、漫画を描くことの隣というか、先にないと、いい作品は作れません。

もし、今、うまくいかない子や売れなくて悩んでる子に関していうなら、「漫画家になってなにがしたいの?」「漫画を描いて、どういう自分になりたいの?」というようなことを考えることかなと思っています。

それをしたところで、99%の人がうまくいかないというのは現実ではあるので。そのことは残念ながら、そうした世界なのだということを認識して出発しないと怖いですよ。そのように思っています。

質問者4:ありがとうございます。

成功するプロデューサーは「貪欲」である

佐藤:ありがとうございます。あと……はい。

質問者5:ありがとうございます。漫画であったり、音楽に限らずに、さまざまな領域で優れたプロデューサーの方がいらっしゃるかと思いますが。今まで出会った中であったり、ご自身が考えていく中で、共通しているなと思う要素というか、考え方などがあれば教えてください。

宍戸:うーん。

川窪:「貪欲」とか(笑)。

宍戸:そうだね、それはあるかもね。

川窪:みんな、その……意外と成功してる人ほど、人の話を聞くなとは感じますね。だいたい僕の方が年下だったりするのですが、僕からもなにかを奪っていこうとする姿勢が(笑)。

(会場笑)

佐藤:(笑)。

川窪:こんな俺からでも奪っていくんだ、みたいな。

宍戸:そりゃそうかもね。

佐藤:僕、芸人さんとかのマネージャーをやっていたのですが、「真面目」というのもあるなと思って。バカ真面目。

宍戸:ああ、なるほど。

佐藤:今、「いきものがかり」の水野(良樹)のマネジメントをうちでやっているのですが、やっぱり「バカ真面目」ですよね。

宍戸:「ピュア」と「狂気」が紙一重だと思っています。「ピュア」なことを突き詰めていくと狂っていて。そこの……危うさを持っていることが、1つかなと思います。

質問者5:真面目、貪欲、純粋、狂気。

川窪:どんな人間なのか、ちょっとわかんないですね(笑)。

(会場笑)

宍戸:ヤバいですよ(笑)。

お互いの存在を知ったのは『進撃の巨人』劇場版の後

佐藤:大丈夫ですか? はい、ありがとうございます。あと、最後、はい。

質問者6:お話をありがとうございました。『進撃の巨人』劇場版 前篇・後篇があったと思いますが。そのテーマ曲はセカオワさんでしたが、そのコラボレーションというのは、お2人が中心になってやられたのですか?

宍戸:そのときは、ぜんぜん知り合いじゃなかったのですよ。その後に知り合って。あの辺のタイミングだよね。映画のタイアップが決まるときは、いろんな違う話の中で、お話をいただいて。たぶんその先には、川窪くんが「SEKAI NO OWARIがいいんじゃないですか」と言ってくれたと思いますが、その中で決まっていって。

そのときは、僕はマネージャーとしてSEKAI NO OWARIが初めてで、川窪くんが『進撃の巨人』の編集をやったのが初めてで、年齢が同じ……というので、いつか会いたいなと思っていたんです。そうしたら、そのタイミングで自然とつながって会えたので。あのときは、とくにないよね? 裏話的なものは。

川窪:存在を知ったのは、映画が終わってだいぶ経ってからみたいな感じですかね。

佐藤:あまり宍戸くん、前に出てこないですよね。

宍戸:そうね。目立ってもいいことないから(笑)。

質問者6:ありがとうございます。

宍戸:はい。

司会:ということで、今日はお2人、ありがとうございました。

川窪・宍戸:ありがとうございました。

(会場拍手)

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