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働き方トリートメント(全5記事)

「女性は“仕事軸”をしっかり持ったほうがいい」女性起業家が語る、選択肢を減らさないライフキャリア

法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔准教授が定期的に開催している「働き方を学ぶ」セッション。今回は、受付嬢から起業家になったディライテッド株式会社CEO橋本真里子氏と、独立までに27職種経験した株式会社クリエイターズマッチ代表取締役呉京樹氏をゲストに迎え、トークを繰り広げました。常識にとらわれない自由なキャリアの築き方について、学生たちを交えて議論を深めました。

周りの人のモチベーションを上げるには?

質問者6:環境に甘えない人がいいとおっしゃっていたと思うのですけど、自分がいつもモチベーションが常に高くて絶対にやると決めていても、周りの人が天候とか条件に左右されてモチベーションが低いことがあると思います。そういうときにどうやって周りの人のモチベーションを一緒に上げていったらいいのかなというのが聞きたいです。

田中研之輔氏(以下、田中):橋本さんからいきましょう。良い質問だと思う。受付時代の話でもいいですよ。

橋本真里子氏(以下、橋本):今はありがたいことに、うちの会社にはそういう社員がいなくて、わりとみんなニュートラルにモチベーションを維持してくれている人が多いです。けど、受付時代は不安定な子がが多くて。私たちの受付という仕事って、雇用形態が派遣で時間給が決まっていて、だいたい毎日決められた業務をこなすみたいなルーチンワークのお仕事が多いんですね。

やっぱり受付をやることに対してそもそもモチベーションが高くない人が圧倒的に多いんですよ。その中で1人私が暑苦しくリーダーをやっている中で、女性特有の職場だからだと思うんですけど、やっぱり体調によって気分が下がったりとか、プライベートのことであーだこーだみたいなのはあるんです。でも、そういうのは一切全部無視して、あなたがなんでここにいるかというところから一緒に考えていきました。

「あなたがそういう気持ちで一緒に仕事をすることによって、私たちは会社の顔として受付に立っているので、あなたの今のモチベーションがそのまま会社の印象に反映される。それでは困るよね」っていう話をしました。表面上のことよりも、もっと私たちがいる存在価値とか、自分たちが就いている仕事に対しての特別感みたいなものを見直して共有し、それでも今もそのままのテンションで仕事をするのであれば、もうちょっと違う方法を考えましょうかという。

コミュニケーションを密に取るということを意識してやってきたんです。コミュニケーションを取らないと、何に対してその人がモチベーションが下がってしまっているのかとかがわからないので。ちゃんと話を聞いて、じゃあそれを解決するにはどういう方向に行くのがいいのかとか、何が必要なのかというのを考えました。私はリーダーをやってたので、それも私の仕事でした。なので、けっこうコミュニケーションを多くとるようにしましたね。

田中:1対1で話すの?

橋本:そうですね。1対1で話しますね。

田中:どういう感じですか? 呼ぶんですか? 「ちょっとモチベーションがない」みたいな。

橋本:2人になるタイミングのときに話をしたりとか、けっこう深刻なときは呼び出したりもします。

田中:リーダーが手紙書いたりもする? そういうのはしない? ウェットにはしない?

橋本:しないですね。けっこうドライな感じです。重たくなったり恩着せがましい感じになると、それだけでも嫌がられることもあるので、けっこうサラッとやるようにしてました。

田中:良い質問ですよ。

起業したいなら目標時間の設定を

田中:聞いてみたいことはだいたい聞けた? 何か悩んでいることない?

質問者7:橋本さんは前回来ていただいたときに少しお聞きできたので、呉さんに質問なんですけども、デザイナーさんをサポートしたいというふうに考える前の段階から、もう起業に対する思いはあったんですか?

呉京樹氏(以下、呉):そうですね。僕は30歳で起業するということだけをもう決めてたんです。

質問者7:いつぐらいからですか?

:それは中学校ぐらいからですかね。

田中:○○君は起業したいんだもんね。

質問者7:はい。

:僕は家系がそうだったので、おじいちゃんも親父もみんな起業家だったので。

質問者7:それは継ぐのではなくて、みんな別々でバラバラ?

:バラバラです。なので何となく「俺も会社やりたいな」というのがあって、ただ「なんとなくやりたい」だったら一生終わらないと思ったので、ゴールを決めたってだけです。

質問者7:それで何となくがかたちになったのが、デザイナー仕事をバックアップするかたちでっていう。

:結果、今そうですね。だからもしかしたら変わってたかもしれないし、たぶんみなさんもこれからやるかもしれないですけど、目標時間っていうのは絶対に決めたほうがよくて、逆算しかないですよ。経営もそうで会社の事業を大きくするにも、例えば来年売上10億行きたいってなったら、10億行くために考えるんです。人は。「でも売上行くんだ。いつ?」っていうとダラダラ仕事するので、僕は30歳で独立すると僕の中で決めて。

ただ何で独立するかは何も決めてないです。30歳で独立するにはいろんな経験しなきゃいけないなと思って27職種やってきた中で、デザイナーを幸せにするというのが見つかっただけで、もしかして見つからなかったら営業会社を作ってたかもしれないし。要は仕事関係なく30歳で独立することは決めてました。だから僕の場合、常に目標、ゴールをまず決めるという考え方です。

それを10代の頃からやってたんですけど、まず10年ピッチで目標を決めて、それをまず5年刻みでやって、それを1年刻みでやっていく。最終的にそこまで落とし込むと1ヶ月単位で決めていくんですね。これを1年までに落とし込めると12ヶ月しかないので、今月これができなかったらこの1年の目標をできないって話を落とし込んでいくやり方をやってます。結果的に29歳8ヶ月で独立したんですけど、ギリギリといえばギリギリ。半ば強引なんですけど。

独立したいんだったら僕は反対もしないし、やったほうがいいと思うんですけど、いつやるかはもう今から決めて、そのためには何をやらないといけないのかを逆算したほうがいい。そう考えるとさっきの話じゃないですけど、時間の使い方がまるっきり変わります。例えば電車の中でスマホいじってる時間なんか「ダメだよそんなことやったら」となる。そうするとだいたい多動症になりますね(笑)。「これもやらなきゃいかん! あれもやらなきゃいかん!」って(笑)。

なので経営者は多動症が多い。突き詰めると最近堀江さんもTwitterで言ってるけど、「電話してくるやつは嫌だ」とか。イーロン・マスクも言ってて。最近メディアでもよく出てますが、イーロン・マスクは電話に出ないんですね。究極のトップクラスに行くと電話に出る時間ももったいないぐらいで、電話って人の思考を止める唯一のツールなので。電話取ったら考えてることが止まってしまうじゃないですか。

それほど無駄なものはないので、堀江さんも言ってるしイーロン・マスクも言ってて。考えているときに邪魔されたくないので。電話じゃなくてチャットでいいんじゃないかな。チャットは読みたい時に読めればいいという考え方なので。

なので常にゴールを設定する。よくゴールを設定するって言うじゃないですか。それはサッカー選手でもなんでもそうですけど、それをまず自分の中で決めることをやっていけば現実的になってきます。

質問者7:そうですね。輪郭が見えてきますね。

「仕事」と「プライベート」の両軸で人生設計を考える

:そうね。もう1個突っ込んだ話をすると、社長になりたいならそれでいいんですけど、例えば社員も仕事でどうなりたい、プライベートでどうなりたいっていうのがあるんですよね。これからみんな猛烈に考えてほしいですけど、だいたい仕事とプライベート、どちらか片方なんですよ。例えば仕事でどうなりたいか、わかりやすく言うと給料でいきましょうか。

例えば「30歳でいくらぐらいお金もらいたいの?」って言うと、「月40万ぐらい。30歳で年収500万ぐらい欲しい」って言ったら、じゃあどういう仕事ができるようになっておかないといけないという仕事軸があるんですよ。一方で「30歳でプライベートはどうなっていたい?」って言うと、これがぜんぜん噛み合ってないんですよ。

要はプライベートで「30歳でどうなっていたい?」っていうと「結婚してて子ども2人で品川のタワーマンションに住んでおきたい」っていう話をする。もうこの時点で給料40万じゃ足りないんですよ。70万ぐらいないとダメなんです。だからぜんぜん軸が合ってなくて、プライベートラインと仕事、ワークタイムラインをいかに並行して考えていくかって考えると、すごくわかりやすいんですよ。

これがだいたいずれているから、どこかで諦めたりとか環境のせいにしたりするので、これが「ピタッ」と合っていると意外に上手くいくんですよ。だからプライベートのタイムラインと仕事のタイムラインを常に両軸で考えていくというやり方を僕は常にしています。僕は50歳までに牧場をやるというのをいつも言ってますけども。

牧場経営をやろうとしているので、そのために逆算して事業をやっているのもあるし、もちろんデザイナーを幸せにしたいというのもあるし。ただデザイナーを幸せにするという事業というのは永遠僕がやることでもないので、誰かに引き継いでもその会社が回るようにするというのを今取り組み始めているんです。

質問者7:ありがとうございます。あとお2人はさっきおっしゃっていた電車の中とか移動時間というのを、どのように有効活用されているのかというのをおうかがいしたいのですけども。

:僕はずっと情報収集してますね。

田中:ゲームはやらない?

:ゲームもやりますね。息抜きに。キャンディークラッシュとか(笑)。

田中:やってたんだ(笑)。

:情報収集と、あとはメールの返信をずっと。たまに人によくぶつかるし、電車を乗り間違えたりもするぐらいずっと下向いてる感じですね。それは良くないなと思いつつも。情報処理能力が追いつかないので、メールがくる数とかが、1日24時間の中で対処するには、移動時間もずっと見続けないといけないみたいな状態になっています。それはたぶんいろいろ変わっていくんだろうとは思うのですけども。

田中:橋本さんどう?

橋本:私もやっぱりだいたい電車ではスマホかPCを開いていることが多いです。今ってFacebook、Line、メールといろんなコミュニケーションツールがあって、いろんな方法で連絡がくるので、どうしても管理が煩雑になってしまって。なので会社に戻ったらメールを確認する。電車に乗ったときはFacebookを返信するみたいな、何となく自分の中でルールを作って返信してます。私の今のメインの仕事って営業することなんですよ。

お客さんとのコミュニケーションを取ったりするなかで、やっぱり個人の考えがあると思いますけど、連絡が遅い人は私は嫌なんですよね。なのでけっこうマメに連絡しようとか、レスを早くしようと思っているので、ほぼほぼ移動は何らかのレスに使うことが多いです。私も呉さんの話を聞いてて自分も多動症だなとすごい思って。友だちと話していてもオフィスにいても、急に違う話をし出すんですよ。

自分の頭の中ではずっといろんなことを考えてるから話は繋がっているんですけど、それは周りのみんなは知らないから、急に今話している文脈とは違うようなことを言い出したり。日々何かしら考えてます。夢でも仕事してます。私がなんで今パソコンをここに持っているかとか、アップルウォッチを使っているかというと、うちは内製でソフトウェアを作り提供しているので、何かバグがあったりとかすると、それはすぐ対応しなければいけないというのがあるからです。

女性は「仕事軸」をしっかり持ったほうが選択肢が広がる

田中:緊急で連絡が入るんですね。

橋本:そうです。なので社長になるということは自分の時間がなくなると思ったほうがいいぐらい、覚悟ができないとオススメはあまりしないです。さっきの呉さんのお話でプライベート軸と仕事軸というお話があったと思うのですけど、男性はたぶんそれがすごい大事だなと思います。でも女性の場合はあまりそこをフィットさせ過ぎないほうがいいと私は思ってます。

ぜひ時間がある時に私のブログを読んで欲しいんですけど、女性が働くということに対して、今は女性が子ども産んでも仕事するとか、そういうのが当たり前になってきた世界だとは思うんです。でも、やっぱり女性っていつか仕事を辞めていいんじゃないかとか、辞めたいなとか、家庭に入りたいなとか思う人がけっこう多かったです。

私は女子大出身だったので周りに女子しかいなかったんですが、とりあえず就職して結婚相手見つけて、年収いくらぐらいの人とかこういう業界の人を見つけて、結婚して仕事を辞めようと考える人が、多かったです。だけど結局働くということはすごく大事で。学校卒業したら絶対働かなきゃいけないので、どういう仕事に就くかというのは、人生への影響が大きいです。その後に出会う人たちによって左右されるといっても過言ではないくらいです。

自分の人生を豊かにするという意味では、やっぱり仕事は一生懸命続けたほうが絶対女性にとってはいいと思うんです。あまり何歳までに結婚してとか、何歳までに子どもつくってみたいに考え過ぎちゃうと、それとかけ離れたときに、もう道がなくなっちゃうんですね。なので女性に関しては、仕事軸をしっかり持っていたほうが後々の自分を豊かにする。プライベートの軸はあまり作り過ぎないほうが、自分が選択肢をたくさん持てるようになります。

田中:これはおもしろいね両方とも。両方の考えをそれぞれみんなが咀嚼して、理解していけばいいね。例えば何歳までが呉さん派で、あるいは女性で橋本さんのようになりたい、憧れる、だからまずは数年考えてみようと。

橋本:辞めることはいつでもできます。続けることのほうが難しいというのが前提にあるので。とにかく辞める前提とかじゃなくて、続けるということをベースに考えてほしいなと思います。

田中:最近、ふと考えるのは、社会構造的に考えれば、60歳で定年退職という社会は絶対持たない。どういうことかというと、辞めないで続けることが大事というのは男性も女性も同じで。60歳でいらないっていわれて、今まで部長だったんだけど、あるいは副社長だったんだけど、名刺失くしちゃって、ぶらぶらっていう人がすごい沢山いて、コミュニティにも入ってないから友だちもいなくて。

最初のほうは「来てください」って会社の部下から、いろんな仕事を回してもらったり、アドバイザーに入ったりするんだけど、それがなくなってくるとまだ63歳。でもまだ元気。まだ30年ある。ということは、どういう場でもいいし、どういうスキルでもいいんだけど、100年プランニングした上で、生涯現役というか働き続けるようにしたいなと自分でも思うね。

だから大学の教授の70代定年みたいなのは全く思ってなくて、別にそこでいらなくなった時点でいらないって言われるのではなくって、自分のフィールドを作っておくとか。自分の会社なのか、自分の作品をつくる実験室かなんてわからからないけど、とにかく自分がやっていけるかは自分で考えるんだよ。

だからいかに30歳ぐらいで子ども産んで、子育てをしてということが、今から迎える我々の社会でどのくらいリスクがあるかどうかだよね。やっぱり女性も働いてもらわないと女性自身のライフキャリアも豊かにならないよね。

橋本:子育てもいつか終わってしまう。今寿命がどんどん伸びていて、100歳も当たり前になってきている。そこで少なくとも自由になるお金があれば、趣味に時間を費やしたりとか、何か新しいことを始めようってなれると思うんですけど。今の社会制度のままだとその年齢になったら何も残らない可能性もあるし、なかなか今の社会構造や退職金制度や年金制度って、そういうふうにはなっていないと思います。いかに自分でどういう人生設計をつくるかで自分たちの人生の豊かさもだいぶ変わってくると思います。

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