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就活を待つな、リングに上がれ!(全7記事)

Kaizen須藤氏「“優良企業”って言葉自体が危ない」正解がない時代のキャリアデザインを考える

法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔准教授が定期的に開催している「働き方を学ぶ」セッション。今回のゲストは、Kaizen Platform, Inc. のCEO須藤憲司氏とディライテッド株式会社CEO橋本真里子氏。学生たちから寄せられた「自社の知名度をどうやって上げた?」「優良企業ってどんな企業?」などの質問に、須藤氏が回答しました。

自社の知名度を広げるための手段

質問者7:今されているお仕事が、ABテストというのを用いたグロースハックですよね?

田中研之輔氏(以下、田中):はい、質問の内容がいいですね。

質問者7:そのグロースハックのお仕事を始めた段階って、どうしても知名度が低いと思うんですけど、まず自社の知名度を上げるために、どういったグロースハックをしてきたんですか?

須藤憲司氏(以下、須藤):なるほど。何をしてきたか?

質問者7:パーティーに出席するとか、そういう人脈的なこともあると思うんですけど、どういう……。

須藤:そういうのはあんまりやらなかったですね。僕は異業種交流会とか嫌いなんで。行かないです。

質問者7:(笑)。

須藤:何をしてた……人前でしゃべれる機会があったら、全部しゃべってた。あと、ピッチって言って、要はプレゼンテーション。自分たちのサービスをプレゼンするコンテストとかに、全部出て。

質問者7:それは、日本も海外も問わずどんどん出るような感じで?

須藤:あ、そうそう。

質問者7:同じような仕事をしている会社は、ほかにもすでにいっぱいあったんですか?

須藤:いや、あんまりなかったね。

質問者7:ブルーオーシャンみたいな感じですか?

須藤:ブルーオーシャン、おしゃれに言うとそうだね(笑)。

田中:おしゃれに言わないとどういう感じなんだっけ(笑)。

須藤:ただ誰もやってない(笑)。オーシャンかどうかわかんないじゃん。誰もやってないことが、オーシャンかどうかって難しくないですか?(笑)。本当にやっても別にたいしたことないからかもしれないですよね(笑)。とりあえず、やってなかったです。

質問者7:ありがとうございます。

須藤:それこそログミーで、いろんなイベントとかピッチのコンテストとか書いてくれるから、まずそこでしゃべるでしょ。100人でも、500人でも、1,000人でも、2,000人でも、全部しゃべる。誘われたら出る、絶対出る。

田中:根暗だけど、出る?(笑)。

須藤:そうそう、本当ですよ(笑)。根暗だけど、出るんだよ! 僕プレゼンテーションとかで、正直な話、会社員のときでもホント負けたことないんですよ。コンペとかやらせたら。

勝てるに決まってるじゃんと思ってたけど。ちなみに、自分で起業して、ぜんぜん勝てなかったんですよ(笑)。大会みたいのにね、何個もあるよね?

橋本真里子氏(以下、橋本):行ってますよね。

須藤:6個か、今は10個くらいあるんじゃないですかね。俺は正直、優勝しかしないと思ってたんだけど、ぜんぜん勝てなくて(笑)。笑ったもん。

勝てなかったプレゼン、導き出された結論

田中:その理由は?

須藤:それが、なるほどなと思ったことで。スタートアップのプレゼンのコンテストっていうのは、勝ち負けが主観だよね。審査員がいて、その人たちが軸をある程度持っていて、美人投票にいってるわけだよね。美人投票って、なにが美人かって定義がすごく難しいじゃないですか。

だから、これの勝ちって難しいなと思って。後半は、「あれ、なんか俺、こんなにプレゼンで勝てないって初めて。逆に興奮するわ」、俺はちょっとネジが飛んでる人だから。

よくよく考えて出した結論は、優勝しても、あんまり意味がないから、マーケティングだと思って。そこにいる500人だったら500人全員、俺のことを知ってるようにしようって切り替えて、そうしたら優勝するようになりましたね。

田中:あー。

須藤:1,000人なら1,000人、2,000人なら2,000人。全員、僕のことを忘れられないようにしようと。

田中:そうすると、ちょっと内容が変わってきたんですね。届ける言葉が変わってきた。

須藤:そうそう。気に入られようとか一切しない。

橋本:たぶん須藤さんは起業した段階で、けっこう有名だったんですよ。さっきタナケン先生がおっしゃってたように、最年少でリクルートの執行役員をやっていた人が、そのリクルートを辞めて独立しますっていうだけで、私たちの業界では話題になるわけですね。

田中:いよいよ来たかっていう感じだね。

橋本:そうなんです。なのでピッチコンテストで、私みたいな、受付嬢をやっててよくわかんない子が起業しましただったら、応援しようなムードで、もしかしたら優勝できるかもしれないけども。

須藤さんは最初のハードルがめちゃくちゃ高いので、「あのスドケンが、どういうプロダクトで起業したのか」っていう見方で審査員の人もくると思うんですよね。なので、最初なかなか優勝できなかったっていうのは、理由の1つになるんじゃないかなと、私は聞いていていつも思います。

田中:という、優しいフォローが(笑)。

須藤:ありがとうございます(笑)。

田中:強い根暗だから大丈夫ですよ(笑)。でもおっしゃる通りだと思います。それがさっきの、裏返すと主観的なものだから、スドケンさんのレベルはこうだなって、やっぱり思っちゃうからね。

立場とは相対的である

須藤:でも、すごくいい話があって。スタートアップで自分が起業して、同じ起業家でも若い人もいるじゃないですか。20代の人から、「ちょっと須藤さん、出ないでくださいよ」って、「なんでだよ、俺、お前と同じじゃん」と。「でもそれって、ずるいじゃないですか。10年とかやって、実績を積んだ人がプレゼンするって」。

要は、立場って相対的なんですよ。その人から見たときの立場に過ぎないから、みんなすごく誤解する。さっきの面接官の話に戻るんだけど、10年とか15年先に生まれた人が、ただそこの場にいるだけでしょ。

でも、そのときに僕が思ってたのは、今はそういう目で見られたとしても、自分はその期待に対して、さらにはるかに超えて、「いいプレゼンだったね」と言わせられるかどうかが勝負だし、多少の贔屓があったとしても、そんなことに負けてどうするんだと思って。

僕はよく傾きで話すんだけど、人って、成長したい、なにかを目指したいって思ったときの人って、傾いてるんですよね。例えば孫正義って、あんなにお金持ちになって、あんなにどえらいことやってるのに、いまだに傾いてますよね。凄まじい角度で。どこに向かってるのかと思うくらい(笑)。

田中:すごいよね。そう思う。

須藤:でも別に、あの人はああじゃなかったときから、たぶん傾いてたんだと思うんですよ。例えば、学生が来て、すごく生きのいい学生さんだね、なんとかだねって言うのも、こいつすげぇ傾いてるから、ああいうふうになるかもしれないと思うか、ちょっと舐めてかかるかで、すごく差があるというか。

「この子くらい傾いてるのかな」と毎回思うよ。だから、逆に、もっと傾いたほうがいいんじゃないかなというふうに、いっつも思いますけどね。

新卒一括採用というシステムについて

田中:残り30分くらいになってきましたね。聞きたいことはどんどん聞いたほうがいいよ。

質問者8:さっきの、就活がゴールになってしまうというシステム的なところが聞きたいんですけど。それっていうのは、そもそも学生自体に問題があるのか、企業に問題があるのか。それとも、政府が作ってるシステム自体に問題があるのか。そのへんは今、実際に働いてみて、新卒の人とかと出会って、どういうふうに考えますか?

須藤:端的に言うと、個人の問題だと思いますけどね。例えば、新卒一括採用って日本独自のシステムなんですよ。フランスとか行ったら、就職するの超大変なんで。すげぇ失業してるし。お年寄りがすごく多いから、新卒が入れない。だから席がないんだよね。

中途採用もするから、新卒と中途で、さっきの「ずるいじゃないですか」っていう状態になるわけよ。僕が転職するのと、みなさんが就職する同じ先を競争してるんだよね。ほとんどの国はそうですよね。

だから、はっきり言うといいシステムなんですよ(笑)。それを利用するかしないかは、個人側の問題がすごく多くて。政府の問題なんかどうでもいいというか、どこの政府もそんなにたいしたことないから。アメリカだってたいしたことないし、日本だってたいしたことない。

逆に言うと、みなさんは政府に期待したことあるんですかとか、国に期待したことがあるんですかっていうことを、俺は思うのね。

だって、それを同じルールの中でも、同じシステムの中でも、すごく最大限活用してやってる人もいれば、そうじゃない人もいるっていうのは、システムの問題でもなんでもなく、俺は、個人の問題なんじゃないかなと思う派ですね。

田中:どうですか?

質問者8:僕のイメージの中では、今の若者ってけっこう活用できてないのかなって思って。それが問題で就職がゴールになって、それがけっこう一般化しちゃってると思うんですけど。そうすると、個人レベルで若者のレベルが低いっていうふうに考えているのかと……。

須藤:あー、それは逆に、ごめんね。そんなことないかもしれないって、今思ったのは、そういう価値観で仕事してきた人たちが、こっち側のほうに、自分たちより年上にたくさんいるわけだよね。これはこれで問題だよね。

田中:そういう価値観っていうのはありますよね。

須藤:会社に入って、ずっとその同じ会社で仕事をしていけばいいという世界観の中で、生きてきた人たちがいっぱいいるんだけど。はっきり言って、今の時代に東芝が傾くって、僕が子供のころはあり得ないから。

田中:そうだよね。

須藤:だって『サザエさん』のスポンサーしてる会社だよ!? 日本を代表する会社だよ。経団連の会長を何人送り出してると思ってんの、って会社が傾くわけだよね。かつ、人の寿命が伸びてるから、たぶんこれからは会社の寿命のほうが人の寿命より短いんだよ。

だから、そういう価値観とか世界観で生きてる人が、けっこう苦労する時代に突入してくるんだと思うんだよね。問題は、若者がどうとかっていう話でいくと、そもそも世の中の常識とか疑えばいいんじゃないのっていうのが、1個思うこと。そもそも、世界は変わってるんだしさ。これからも変わっていくと思う。今は出てないけど、空飛ぶ車ももしかしたら出るかもしれない。

田中:技術的にはできそうですしね。

須藤:スマホがそうだよね。10年前はなくて、今はあって、すげぇじゃんって話なんだけど。もはや、それが生まれたときからある人たちは、ああいう画面は全部触れるものだと思ってる。そういうパラダイムとか世界を生きてるから、そうだよね。

だから、そういう世界を生きてる人たちが、これまでの価値観とかルールとかを、強要するほうが間違ってるし、そもそも疑ったほうがいいんじゃないかなと思いますね。

優良企業なんて存在しない

質問者8:須藤さんにとっての優良企業みたいなものは、そのカルチャーがない、リクルートみたいなそういうカルチャーがある会社になってきますか?

須藤:優良企業って、それは、何にとっての優良企業? 自分にとって?

質問者8:あー、そうですね……。

田中:入ってみたい企業とか?

質問者8:そうですね、若者が伸びる企業。

須藤:若者がそこに入って、いい経験が積めるかどうか。それも、俺はわかんないけど、今はあんまり正解がない時代だから、自分がこういうことをやっていきたいっていう、そっちの方向感に合う会社を選んでいったほうがいい気がするけどね。今のリクルートが本当にいいかどうかって、今の状況はもう辞めちゃったからわかんないしさ。

これから先の時代を、もう1回デザインしていくって考えたら、ぜんぜん違うことを考えたほうがいいかもしれないし。伸びてる国に行ったほうがいいかもしれないし。会社とか、優良企業って言葉自体が危ないんだよ。俺はすごく危ないなと思う言葉なんですよ。だから、あのランキングとか絶対嘘だと思ってるんです。

橋本:優良企業なんてないですよね。

須藤:ないと思う、本当に。せいぜい自分が優良と思うかどうかしかないから。

橋本:そうそう。

田中:人間って、行列や渋滞っていう現象から見られるように、普通に考えると人と同じことをしちゃうと思うんです。同調行動っていうか。だって、「あの店おいしい」って言ったら食べたことないのに、まず並んでみようって、ウワーッて3時間並ぶわけでしょ。おいしかったらいいんだけど。

あの会社がいいっていって、ランキングが出て、10位からスクロールして上にいって、1位はここか。大学でもそうじゃないですか、6大学があって。結局、あれも誰かが作ってるっていうところに、気づいたほうがいいんじゃないかな。

まあ、ちゃんと投票したり、インターネット会社が調査をしてると思うけど、あれですら一時的な段階で。限られた情報の中で作られた虚像とまでは言わないけど、ランキングというふうに思えば、須藤さんと橋本さんが言ってるように、優良という言葉を信じてその優良企業を受けるためには、1次、2次、集団、グループみたいにしてやってかなきゃいけないというふうになっちゃって、ハマっていくんですよね。オープンエントリーでみんなそこにいって、渋滞ができて。

須藤:でも、逆に言うと、先週くらいにちょっとお手伝いしてた経産省の資料があがってきて。「不安な個人、立ちすくむ国家」でしたっけ。

田中:液状化する社会。

須藤:今までは、こういうふうにしていればとりあえず安牌、っていうことがけっこうあったんですけど、今は本当になくなってきちゃってるから。安心感が逆に無いんですよね。だって、『サザエさん』の会社が潰れるってすごくね? それくらい安心できる拠り所とかがないから、これからはすごく難しい時代を生きていくんだと思うんですよね。

周りがしてることをやってたらいいってわけでもなく、ランキングを信じればいいというわけでもなく。食べログの点が3.5だけど、あんまりおいしくないなぁとかさ。3.0だけどすげぇおいしいなとかさ。これはなにかの力が働いてんのかなとか、あるじゃないですか(笑)。そういう時代を生きてるから、なにが信頼できるか、安心できるか、まぁ難しいよね。

橋本:自分だけですよね。

須藤:うん。考え方とか、自分で作っていくしかないよね。と、思ってます。

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